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374:食の祭り
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「コクだ。」
「愛しい人、人が来る。」
「うん。」
向こうから数人が走ってやってくる。
ボルタオネの人?
「いたぞ!」
「よかった。どうしたんだ?ほら、戻ろう。おい!!」
コクがこちらに気付いたのか振り切って
やって来た。
「コク!久しぶりだね?どうしたの?祭りできたの?」
マティスに一度すり寄ってから、わたしの方にすり寄る。
マティスが威嚇するから。
「おい!あんたたち!」
「はい?」
(鶏館に来た者たちじゃないな)
(そうだね)
「我々はボルタオネ領国のものだ。
この黒馬を知っているのか?」
「ええ、以前王都で。どうしたんですか?」
「先程コットワッツの領主館に着いたんだが、急に逃げ出して。」
「・・・なんでしょうね?
あ、わたしたち明日の祭りで馬を預かる商売をするんですよ。
餌籠付きで。ブラッシング付きですよ?
良ければ今夜から預かりましょうか?
これ、領主様の許可書。」
許可書を見せて、看板も見る。
梃でも動かない様子なので、1銀貨を払って引き上げていった。
明日はまた預けるなら1銀貨もらう。当然だ。
番号札は1番だ。毎度あり。
「で?どうしたの?とりあえず中に入ろう。
あ、おしっことうんちは向こうで。」
さっぱりしてから、テントの中に入れ、きれいにする。
ビャクが帰ってきてたのか、コクをみて威嚇をする。
コクも一瞬固まる。
「ビャク、コクだよ。コク、ビャクだ。うん、大丈夫だから。
ビャクは何か食べるでしょ?なにがいい?
コクはうまうま籠だよ?感想聞かせてね。
水はここに入れるから。」
水桶は個別で用意したほうがいいかな?
ビャクはキトロスを希望。
横半分に切って、グレープフルーツのように、食べていく。
「そういえば、ビャクはうんちとかおしっこはどこで?
あ、外ね。トイレ使う?そこの扉の奥がトイレ。うん、どうぞ?」
トイレは簡易型を設置している。
見た目は従来型だが、常にきれいになる。物移転装置付き。
馬さんのもそうだ。
わたしたちも軽く食べる。
お酒と、干し肉、チーズ。砂漠の民の定番晩酌セット。
コクの話。
ボルタオネは食の祭りに参加はしないが、
ちょうど、タオルができたという連絡と、鉛筆の納品もあり、
こちらに来てくれたそうだ。
ペリーヌたちも来ている。
そこかしこに、わたしの匂いがしたから、探しに来たと。
「・・・わたしの匂いってどんな?」
「好き好き大好き?」
「いや、それはマティスが感じる匂いでしょ?ビャクも匂いだって。
なんだろ?動物に好かれる匂いかな?
臭いとかじゃないよね?」
それは違うとビャクとコクは言ってくれた。
マティスは抱きしめて耳に後ろを嗅ぐ。
「この匂いだな。ずっと嗅いでいたい。」
「もう!それはマティスだけだから!」
加齢臭ではないよね?
結局、今日はここで泊まることになった。
朝一番から客が来るかもしれないしね。
夜中に到着するかもしれない。
月明かりは十分。
寝ずに準備をしておこうか。
ビャクはこの街の鳥屋にも行ってきたそうだ。
ザバスさんが黒と緑というから。
ほかのトリヘビを見たことがなかったらしい。
向こうも白ははじめてだと言っていたようで、
よくよく話を聞けば、移動?なにそれ状態だったと。
やはりここから王都までは往復で1日。それも会わずの月前後でだ。
「へー、ビャクは優秀なんだね。」
「ビャク、ワイプにはもっと要求をだせ。」
わかった、そうすると返事をするビャク。
師匠はいろんな人に好かれるからね。
もしかして師匠も匂いを出しているのかもしれない。
「師匠の匂いは?」
ときくと、匂いのない匂いといわれた。
さすが、師匠、匂いまで消すとは。
マティスは?と聞くとわたしを好きな匂いといわれた。
ん?わたしが好きじゃなくて、わたしが?
「よくわかるな。」
おでこをカリカリしてあげてる。
ん、わたしも。
コクは満足だといってくれた。
うまうま籠。
カンランは半分に切ってほしいとのこと。
あ、食べにくいか。キトロスもそうしよう。
籠も持って帰りたいそうだ。
帰り道に残した半分食べるのもいいだろう。
鞍に引っかけれるようにする。
「あ、あの香木。ありがとうね。ものすごく高価なものだよ?
半分、ここの領主さんにあげちゃたけど。
うん、マティスの弟、もちろんわたしの弟でもあるよ。
あのあと、わたしたちも森に入ったの。水と香木見つけたよ?
水は栄養剤だって。あまり飲まないようにって。
うん。銀の馬に言われた。スーっていうの。
明日来るかな?ああ、軍馬リグナってしってる?
あ、知ってるんだ。リグナおすすめ!そう似顔絵にてる?
リグナは明日くるとおもうよ?」
ほんと、リグナは有名なんだな。
「馬って長生きなの?」
「人と同じぐらいだ。生まれて1年で大人だ。死ぬまで働く。
働く時間は人より長い。」
「へー。えらいね。じゃ、明日はゆっくりしていってね。
うん、今日はもう寝よ。馬って立って寝るの?あ、横になることもなるの?
いいよ?ここは安全安心だから。」
よっぽどここは安全だとわかったのなら横になるそうな。
ここは安全だろう。
魚の皮の下に砂漠石でエアークッション。
その上に横になる。
あっというまに寝始めた。
わたしたちは今テントの外だ。
軽石で火鉢を作り樹石で暖を取る。
竹かごの改造と、Wベビーカーの設計だ。
興奮して寝れないのだ。
コクの鼻息が大きいとは言わないが。
クッションとマティスにもたれて、
これからの予定を話していく。
次の次の合わさりの月の日後がまた王都で会合だ。
そしてもう一度合わさりの月があって、雨の日が来る。
いつもより長い、らしい。
なんせ終わったら、茸祭りだ。筍掘りもね。
その前にカエル狩り。メイガもだ。チョコも大量生産しなくては。
「次の会合は?また一緒に行くのか?」
「どうだろうね。護衛として雇われれば行こうか?お仕事だよ?」
「そうだな。そうしよう。
では、これが終われば、また旅に出るか?」
「そうだね。今回のうまうま籠はお馬さんたちがもってる
おいしいもの情報が目当てだからね。
出店はないにせよ、客でくるでしょ?
そんなに遠くからは来ないだろうけどね。
間の砂漠、ダカルナとピクトを旅しよう。」
「それが終わって会合か。」
「ん?」
「家を建てたい。雨の日にあなたを迎える。」
「うふふふ。どこに建てようか?」
「それはまだわからない。あの砂浜もいいと思った。」
「そうだね。砂漠も、湖もいいね。どこでも。
じゃ、材料をとにかく集めないとね。ほかの国のお風呂事情を研究しないと。
あ、雪見風呂もしないとね。これは後半でもいいか。
あー、楽しみだ。」
「愛しい人。私もなんだ。雨の日が待ち遠しい。初めてなんだ。」
「うん。うん。マティス、マティス。
わたしもなんだ。もうね、銃も糸もどうでもいいんだ。
マティス。幸せだね。
うん、だからね、ほかの人もそうだったらいいなって思う。」
「そうだな。お前がそれで幸せならそうなればいい。」
「うん。うん。」
月が沈む少し前、あたりは薄っすらと暗くなる。
そしてまた明るくなっていくのだ。
湿地の2人がまずやって来た。
樹石を積んで。
荷を下したらこちらに戻っておいでと声を掛ける。
コクも起き出し、うまうま籠の説明を馬にしているのだろうか?
馬同士の話は分からないのだ。
ヤンはコクに驚いていた。
大きいからね。
そこからひっきりなしで馬車が来る。
まだ店は開いてない。
うまうま籠は飛ぶように売れる。
馬が看板を見て止まるのだ。
リグナ効果だ。
素早く説明をする。それはいいなと、馬や馬車を下りていく。
貴重品だけ持っていくように念押し。
ここで盗難はあり得ないが、
無かったものをあったはずだと言われては困るから。
簡単にベンチを竹で組み。樹石を置き、
休憩してもらう。水はサービス。
が、人間相手に商売はできないのだ。
「お前、うまそうだな。ちょっと寄こせよ。」
「あ!プニカはダメですよ!おなか下します。中の実は加工しないと。
ここでプリン食べてくださいな。お店でね。
海苔、海藻はいいですけど、それは米に巻いたほうがいい。
お店出ますよ。取って置いたら?カンランは生だし、
ダルクは干したほうが人には食べやすいかな?
リンゴも加工したものが売りに出されます。」
生のダルクと干したもの交換。
籠の中身は冷やしたものと、干したもの半々にした。
干したダルクは売ってないからいいだろう。
「へー、うまいな。」
「もっとおいしいものが売り出されますよ?
どうぞ、馬たちはこっちで預かりますから楽しんできてください。」
ぼちぼちお店に商品が並びだす。
1銀貨は高いかなと思ったが、ここまで、食べるためだけに来る人たちだ、
余裕はあるようだ。
「モウさん!!」
「可愛いテムローサ!来たんだね!」
テムローサが飛び込んでくる。
昨日のうちに先発隊は来たそうだ。あとは荷馬車で数人が乗ってきている。
どうやら湿地に行っている間に、
デイやコム、端の村の人たちは来ていたようだ。
領主館の近くで野宿というか野営。
後の人たちはこの時間につくように村を出たそうだ。
「そうなんだね。ゆっくり楽しんでおいで。
馬と荷車は1銀貨で預かるよ?馬には餌とブラッシングが付くからね。
人間様はゆっくりできるよ。」
「そうなんだ!モウさんは?いっしょに祭りをみましょ?」
「もちろん、落ち着いたら見て回るよ。それまで、どこのなにがいいか、
偵察しておいて?」
「はい!!わかりました!」
村の女の子たちも来ている。
内緒だよ?とクッキーをあげた。
食べている間に簡単に髪を結い上げる。
女の子におそろいのリボンを。
キャーっとよろこんで中央広場に走っていく。
あの守衛はマティスと話をしている。一緒だろうし大丈夫だろ。
腕を三角に振るとまた噴き出していた。
そのあいだ、どんどん番号札をさばいていくマティス。
籠の説明はコクが。
「「モウ様!!」」
「美しきペリーヌ!可愛らしきフローネ!」
こちらは中央から。
コクを迎えに来たのだ。
「預けたと聞いて、驚きました。わたしたちはちょうど領主様たちと
面会していたときなんです。」
「そうみたいだね。タオル、どうだった?」
「ええ。それはもう、ふわふわで!
こちらが持ってきましたえんぴつも喜んでいただけました。」
「そうか。それはよかった。さ、2人とも、祭りは楽しんでいけるんだろ?
コクは預かるから。あ、悪いが、もう1銀貨といいたいけど、
なにやら、説明してくれてるようだから、無しだね。助かるよ。」
「うふふふ。モウ様、それでは黒馬が話をするようではないですか。」
「そりゃ、馬同士話をするだろう?一緒だよ?人間と。
さ、きれい処2人でまわるのはそれこそ心配だね。
他は?だれか一緒?」
「いえ、他の方は領主様の護衛に。」
「そうか。お!ドーガー!!」
ドーガーがこちらにやってくる。
この2人にはわたしがセサミナの兄、マティスの妻だと知っている。
赤い塊モウだとも。
「モウ様!大盛況ですね!あ、こちらにいらしてたんですか。」
「ドーガーは見回り?」
「ええ、そうです。客として廻りながらでいいと。
ラーメン開発に頑張った褒美ですよ。」
「そうか、それはいいな。じゃ、このお二方も案内しておくれ。
2人並ぶと目立つ。よからぬものが近づくからな。」
「モウ様は?ご一緒できないんですか?」
「ここが一息ついたらもちろんいくよ?さ、ドーガー頼めるか?」
「ええ、もちろん。」
「楽しんでおいで。」
あとで、きっちり報告させねば。
「モウ様!」
今度はカップ君たちだ。
母さんたちと一緒に来たのか、一緒に馬車に乗っている。
おお、なんとなく気品がある。
ツイミさんの母君にもなるからかなりの年齢を想像したけど、
ここは成人期間が長いから、ものすごくきれいなご婦人にしか見えない。
「ツイミ殿、カップ君たちの母君ですね?初めまして。
砂漠の民、モウです。向こうにいるのが夫、ティスです。
長旅お疲れ様です。」
「あなたが?ああ、モウ様。ツイミから、話を聞きました。」
「想像でしかないのですが、まさに身を切られる思いだったでしょう。
いまはなにも憂いがなくなっていればよろしいのですが。」
「ええ、それはもちろん。ありがとうございます。」
「もしよろしければ、そのときの、苦労話をお聞かせ願いますか?
わたしの近しいものが双子だと言われたのです。
やはり不安がっているようなので、おなじような説明はしたのですが、
経験者からの言葉が一番安心でしょう。」
「!!もちろん、ええ、もちろん、お話させてください。」
「ああ、ありがとうございます。では、まず、祭りを楽しんでください。
馬は預かりますよ?餌付き、ブラッシング付きで1銀貨です。
貴重品はお持ちになって下さい。」
あとは端の村の人たちも集団で。
じーちゃんばーちゃん大丈夫なのか?ティータイのプリンを制覇するそうだ。
一番元気だ。奥さんたちはぜんざいと五平餅もどき。
コムのお茶とタイアップすればいい。村長さんに教えておく。
エスワさんとビヤンさんもやって来た。
店は完全に休みにしたそうだ。手羽先の唐揚げが売れまくりらしい。
宿の方は御父上に頼んでいるそうだ。
デイの豚料理はなかなかだと、進めておく。
同じ肉料理、刺激し合えるだろう。
メジャーとの器屋さんも6人でやってくる。
食ではないが、特別に器もうっていい許可をもらったそうだ。
リンゴジャム、餡子のところに置いて一緒に売ればいいよとアドバイス。
番号札は58まで。
スーとホーもやってきている。
クーもだ。スーの鬣に隠れている。結構コンパクトになるのね。
師匠は今日は完全に客だ。それとなく探りはいれているのだろうけど。
リグナもやってきた。
コクの態度が面白かった。
むっちゃ緊張している。あこがれの存在なんだそうだ。
リグナがいれば当然、ガイライがいる。
「モウ!」
「ガイライ!いらっしゃい。軍部は?ニックさんは?」
「軍部はニックとルカリに。わたしだけです。
休みです、わたしは。もちろん、ここに来ていることは内緒ですが、
ニックにはばれています。土産を買っていかないと。」
「あははは!悪い隊長だな。
ここにはコットワッツ産のお米が出てるはず。
おにぎりにはいいんじゃないないかな?
海苔もあるからそれはお裾分けするね。
ニックさんはリンゴジャムとか。イリアスの端の村で
ぜんざいとか、お餅に樹脂蜜塗ったのあるよ。それがいいとおもう。」
「・・・イリアスの端の?あの?話は聞きました。」
「そ。いい人だよ。知ってる?」
「ええ、即位の時に一度。まだ、自分で立つこともできない赤子でしたが。」
「そうなんだ。てか、ガイライはあれだね。いくつから軍にいるの?」
「?10そこそこで、見習いから。」
「うわ。そうなんだ。さすがだね。ま、祭り楽しんでおいで。」
「一緒には回れないんですか?」
「そうだね。もう少し落ち着いたらね。
つかれたら、奥のテント入っていいから。見つからないようにね。」
「わかりました。それで、それは?」
ビャクがわたしのポッケに入っているのだ。
「ああ、あたらしく師匠のところで働くトリヘビのビャク。
ビャク、この人はわたしの息子で軍部の隊長だ。」
「!息子!ありがとうございます。」
「いや、そんなことで喜ばないで?」
「いえ、うれしですよ。で、どういういきさつで?」
「引き抜き?で、師匠が交渉したの。」
「また!モウ、言いたくはないですが、ワイプに甘くないですか?」
「あははは!ツイミ兄弟のことも同じように言ってたでしょ?
悪いが、ガイライと師匠では立場が違う。
ああ、勘違いしてはいけないよ?
ガイライは使う立場で、師匠は使われる立場だ。
使われる立場の方に言い方が悪いけど、優秀な手駒があるほうがいい。
ガイライは師匠を使う立場だからね。ガイライの手元にいたら
師匠は使えない。ん?師匠なら使うかな?なんだかんだいって。
うふふふ。決してガイライをないがしろにしてるわけじゃないよ?」
「ええ。わかっています。ワイプをも使いこなしましょう。」
「がんばって?あ!筏の話、ちょっと作ったんだ。
あとで湿地に見に行く?」
「!ええ。お願いします。」
そのタイミングで湿地の2人、アバサネ君とルコール君が
戻ってきたので、帰りに一緒に戻ろうという話になった。
打ち上げで焼き鳥をしてもいいかもしれない。
番号札は追加で作り、最終的に128。
馬が128頭いるわけではない。
荷車の預かりもある。
場所がかさばるので、テントの中で~なんて言いながら、
砂漠のドームの中で預かる。
まさに大盛況だ。
カップ君たちにお手伝いをお願いしたかったが、
母さんたちと楽しんでいる。邪魔はできないな。
テムローサ達がひっきりなしに戻ってくる。
これがおいしい、これがすごい人気、と。
ラーメンは最初に食べることができたそうだ。
それをここに持ってこれないと申しわけなさそうに言うので、
あれは先に食べさせてもらったよ、と。
コネがあるんだと言えば、
鏡を領主からもらえるんだ、なるほどと納得してくれた。
はんばーがーはもう一度並んで食べるそうだ。
そのときコムの村長の息子が順番を譲ってくれたとか。
キャーっと女の子3人できゃいきゃいいってる。
お米だけ大量に買ってきてもらう。
お駄賃付きだ。
もっとお店を見ておいで。
広場以外の店で本場のプリンを食べておいで、と勧める。
それから馬さんたちのご機嫌伺い。
ブラッシングは疲れるので、してるふりをしてきれいに。
どこから?お疲れ様。そこのおいしいもの?
なにか面白話、そんなことも聞いていく。
スー兄とホー姐、リグナも、話をしているような?
広場の中央で大歓声が聞こえる。
どうやらセサミンが挨拶をしているようだ。
おお!!やら、うぉーー!やら。
樹石、冷蔵庫、冷凍庫、ゴム、
タオル、歯ブラシ、ボルタオネの鉛筆もだと、と
耳のいいマティスが教えてくれた。
「愛しい人?行かなくていいのか?」
「いや、ちょっと無理だわ。今回はあきらめるよ。
それにテムローサたちがお使いしてくれたしね。
遠くから来た人たちはいまから帰るようだからね。
送り出さないと。」
「あれだけ楽しみにしてたのに。」
「でも、マティスと一緒に稼げたことの方がうれしいよ。」
「愛しい人、私もなんだ。」
「うん。頑張ろう?帰りもうまうま籠欲しがるかもね。
たくさん作っておいてよかった。売りまくろう!」
帰りのうまうま籠は馬の好みで選べるようにした。
海苔が売れる。これは飼い主の好み。
おにぎりとの組み合わせがよかったようだ。
当たり前だ。
帰りの籠にはプニカは無し。
勝手に食べておなか壊されても困るから。
人も食べれるものなので、土産にと買っていく。
同じ1銀貨だったけど、籠込みだと言えば納得してくれた。
おまけに背中かき、孫の手もつける。
これはテントの中で土下座級のお願いをした。
少し前にルグが来てくれたので、奥さんを呼んでもらい、
師匠を通じてカップ君、カップ君の母君を呼んでもらった。
人目もあるから小さなテントを出した。
お茶、ほうじ茶だ。それにミルクと砂糖。
ほうじ茶ラテとクッキーだけ出して、後は2人に任せておこうか。
大きなテントには、師匠とガイライ、トックスさんと
酒盛りをやっているからだ。
塩漬けの商品が多かったようで、
カップ兄弟に使い走りをさせている。
師匠?ガイライ?使うという意味が違うよ?
今回の売り上げ、合計24リング。
いいねー。
祭り関連では34リングか。
2人で生活するには十分。
カップ君の母君たちは一足先に帰っていった。
村長さんからものすごく礼を言われ、ジャムとチップスを
大量にもらってしまった。いえーい。
ルグの奥さんとは、笑い合って別れたようだ。
よかった。
祭りが終わり、それぞれが帰っていく。
テムローサたちに、お土産を持たせ、
コムのお茶葉屋の息子に、緑茶を飲んでもらう。
帰りは集団で戻るそうだ。
「自分で作ってみたらこんなになった。」と。
少しぬるめのお湯で入れる。
蒸して揉んですぐに乾燥させたものだ。
ほうじ茶も作ったのでそれも。
「へー。うまいな。」
「ほんと?うれしいな。」
チャーたち用に4番茶の株を持ってきてくれたと、
ルグが教えてくれたので、お礼に渡しておいた。
普通に飲めるように広まってほしい。
端の村の村長と湿地組はコンロの形で意見を出し合ったそうだ。
もちろん、鳥肉、豚肉会談も盛り上がったと聞く。
器屋さんたちは、ほくほくで帰っていった。
「姉上!!」
セサミンが皆が帰ったタイミングでやって来た。
「お疲れ様。うまくいったようだね。
イスナ殿、ご挨拶遅れて申し訳ありません。
コットワッツの食の祭りはいかがでしたか?」
「モウ殿!こちらにいらしてたんですね!
では黒馬を預かったというのは?
そうですか。ありがとうございます。
マティス殿も!ご注文の品、来月の今時分にはできますぞ!」
「イスナ殿、ご無沙汰しております。そうですか、ではその時分に、
ボルタオネに伺いましょう。」
「そうですか!それは楽しみだ。お待ちしております。」
「今から、お戻りに?もうじき月が昇りますよ?」
昨日は領主館に泊ったようだが、
連日というわけにもいかないようだ。
トップ営業は忙しい。
「ええ、砂漠を通るわけでもないので。
ペリーヌ!フローネ!戻るぞ!」
「モウ様!!結局、ご一緒できませんでした。残念です。」
「馬たちの話が楽しくてね。コクも手伝ってくれましたよ。
ドーガーは麗しき華たちを守れたのでしょうか?」
「ええ、とっても。ね?フローネ。」
「ええ、ペリーヌ。ありがとうございます。ドーガー様」
「いえ、お二方と廻れてわたしも楽しかったですよ。」
?なんか違う。思っていたのとなんか違う。
(セサミン、知ってる?)
(ああ、ドーガーに若い娘たちが群がってしまって、
このお二方が、ドーガーを守ったというか)
「逆か!!ドーガー!」
「あははは、、、はぁ。」
「強き麗しの華たち、すまない。いらぬ供を付けたようだ。」
「いいえ、モウ様!楽しかったのは本当ですよ?」
「ドーガー様をみなが熱い視線で見るのです。
わたしたちはこう、両方から腕組みをしてね。
皆がうらやましそうに見るのですよ。うふふふ。
いじわるい言い方ですが、気持ちよかったですよ?」
「あははは!そうですか。
楽しい気持ちになられたのならよかった。」
お土産にクッキーとうまうま籠4つ。
コクにもありがとうと言うと、
リグナ殿と仕事ができてうれしかったという。
そうか。ホー姐を見ると頷いていた。そうか、なるほど。
また、ボルタオネでお会いしましょう、とハグしてお別れ。
『道中気を付けて!無事にお戻りになりますように。』
見送る最中に、ドーガーが土下座をする。
「なに!何かしでかしたの!」
「モウ様!お願いです!あの紅箱をもう一つ譲ってください!!
2人に、2人にあげたいのです。」
「おお、どっちかではなくて?」
「2人にです。」
「1つは今あるの?ちょっと貸してごらん。」
移動させたのだろうか、素早く出してきた。
もう一つは自分用に作ったけど結局使わずの物を持ってくる。
ダイヤの横に、それぞれサファイヤとルービーを追加で付けやる。
「はい。同じものでもいいけど、
それぞれを思って選んだというのが大事だからね。
青と赤の絹の袋をつけてやろう。ほら、行っといで。走れば間に合う。」
「ありがとうございます!!」
「姉さん、甘いですね。」
「いや、どっちかとかな?って思たんだけど、両方とはね。
国にいい人がいたらどうするんだろうね。
ま、今日の礼ということだね、まずは。」
今日はこれで撤収。
簡易トイレの始末や、清掃等は明日するそうだ。
馬の糞尿箱はもう始末している。うん、馬ってすごいね。
みんなつやつやして喜んでくれたのがうれしい。
あとで、聞いた情報をまとめなくては。
「さ、湿地に帰ろうか。アバサネ君、ルコール君?
また台所貸してくれる?
焼き鳥ごちそうするよ?もちろん冷たいビールもね。
セサミンは?いったん戻る?じゃ、後でドーガーたちと来て?
カップ君たちも一緒に運ぶから。」
留守番組のチャーたちと駱駝馬たちの分の
うまうま籠をわたす。移動で運べるだろう。
とりあえず、みんなを運ぶ。
師匠とカップ君たちは一度王都に。
いろいろ面白い動きがあったようだ。
マティスとルコール君で焼き鳥の準備。
後はかんたんなおつまみ系を作っていく。
わたしとアバサネ君、ガイライで竹筏の話。
アバサネ君はさっそく竹筏の改良点を教えてくれた。
「やはり、進行方向にとがっている方が進みやすいんですよ。
板をつけるなり、細いほうを前にする方がいいですね。
あとは、樽を横に付けて、均衡を保つとか?」
なるほど。
あとは筏の説明もアバサネ君がしてくれる。
大分改良したようだから、わたしにはすでにわからんちんだ。
筏の情報料は10リング。
アバサネ君は遠慮したが折半だ。
みなが食べれるテーブルを出し、
ビールサーバーを作る。
家の周りに埋めた砂漠石は一カ所だけ、変形している箇所があった。
良からぬものが近づいたら、大きく膨らむのだ。
それだけでひるむならたいしたことないな。
セサミンに話しておこう。
引き続きよろしくお願いいたします。
ずっと一緒にいたビャクをスー達に紹介する。
ホーの鬣で良い場所を見つけたのか、4人?で話をし始めた。
そのなかになぜかトックスさんもいる。
赤糸のことを聞いているようだ。
手には砂漠石となんかいろいろ持ってきている。
「リグナ!ありがとうね!リグナの名前があったから
馬さんたちはみんな止まってくれたし、みな仲良くしてくれたとおもう。
お礼に本気のブラッシングするよ!」
細く割いた竹の先を丸めたものでブラッシング。
どちらかというとマッサージだ。
スーとホーも一緒に。
ビャクはおでこのカリカリでいいけど、クーは?
あ、クーもカリカリですか?
うっ、毛があるんですね。
満足してもらったようだ。
あー、いい匂いがしてきてる。
ある程度焼かないと、いっぺんになくなるからね。
焼いては保温、焼いては保温。
スー達のご飯は
うまうま籠と、おいしい水、キトロスの種、コーヒー豆、
ビャクはお酒がいいという。日本酒だ。
師匠が戻り、セサミンたちもやって来た。
ドーガーはむにゃふにゃしてる。
にやけているからいい返事でももらったのだろう。
「さ、今日はお疲れ様。大成功おめでとう!」
「姉さん!ありがとうございます。
姉さんが祭りを廻ることが出来なかったことが
唯一の失敗です。」
「そんなことないよ?デイの村の子がね?いろいろ持ってきてくれたから
一通り食べたんよ?そこらへんは抜かりなし!
さ、セサミンの方がろくに食べてないでしょ?ルグも?
焼き鳥だよ!カップ君たちもお疲れだったね。
チュラル君も、ルビス君も。母様、元気な人だね。」
「モウ様!元気になったのはモウ様のおかげなんですよ!」
「そうなの?だったらよかった。ツイミさんとニックさんも呼ぼうか?
師匠?ガイライ?いい?」
「あー。ツイミはまだ仕事してますね。院長と。」
「うちもです。ルカリと一緒だと思いますよ。」
「そうなの?いいよ、呼んどいでよ?
疑問に思っても、あの2人なら納得してくれるでしょ?」
「ある程度は話してますがね。オート院長はどう運びます?
わたしは運べませんよ?」
「ルカリは?信頼のおける部下だが、貴族だ。
それが邪魔をするだろう。」
「マティス?」
「抱きかかえればいいだろう。その手にあるものの移動で大丈夫だ。」
「ツイミの移動は隠してるので、ツイミごとですね。では。」
「モウが石を使ったということになりますよ?」
「大丈夫。わたしは異国の石使いだから。」
「そうですか?では戻ります。」
(呼ぶよ?)
((ええ)
『ワイプが抱えしもの、ガイライが抱えしもの、来い!!』
おお!!と皆で拍手。
力のお披露目のような感じ。
「モウ殿!!素晴らしい力ですね!」
「いやー、なんとかできましたよ。さ、食事会なんです。
一緒に。」
「ありがとうございます。」
「モウ殿!本当に不思議なお力ですな!」
「ルカリ殿!すごい!別人のようですね!
あ、今日は鳥肉ですよ?サイほど油が多いわけではないので、
多少食べても大丈夫。後で、軽い運動をお教えしますね。
女性がやれば、胸と尻に張りが出る運動です。
ニックの教え子テムローサにも好評ですよ?」
「!!それはありがたい!」
「モウちゃん、テムローサに?」
「そうそう、鍛錬とは別にね。こう、ボッキュポンとなるように。」
「いいなーそれ。俺も教えてもらおう。」
「そう?あとでいっしょにね。」
「モウ様。」
「ツイミさん、手紙、急でごめんね。」
一応、母君に双子のことを、聞いてもいいかと
連絡はしたのだ。ビャクの初仕事。報酬は頭をカリカリ。
「いえ。母がいいというのなら。どうでしたか?」
「うん。笑ってお話してくれたみたい。
なんだか、独特の苦労があるみたいだね。
聞いた奥方も笑っていたよ。すでにその兆候はあるんだって。」
片方が動けば、片方も負けじと動くらしい。
腹はまんべんなく撫でれば落ち着くと。
帰りにルグの奥方が嬉しそうに教えてくれた。
「ツイミ殿。」
「ルグ殿?」
「ありがとう、わたしの妻なのだ、双子を宿したのは。」
「!そうでしたか。それは・・」
「モウ様が祝ってくれた。だから大丈夫だ。」
「!それはいい!ああ、素晴らしい!!」
あとは、2人でいろいろ話してくれ。
カップ君がドーガーのにやけ具合を根掘り葉掘り聞いている。
その必死さをチュラル君達がわらう。
師匠と、ニックさん、トックスさんは焼き鳥と日本酒だ。
うわー、見たことあるような酔っ払い集団だよ。
ガイライは湿地のことを2人に聞いている。
セサミンはマティスと。
今日有ったことをうれしそうに報告。
わたしとオート君、ルカリ殿とひたすら食べ、焼き、
ダイエット話で盛り上がる。
オート君もその知識を彼女に披露したいそうな。
いや、それは痩せたほうがいいってこと?彼女傷つくよ?
「違いますよ!わたしから見たら太っているとは思わないんですが、
気にしているようなので。あの歯を磨くっていうのを
彼女に教えたら尊敬されたんですよ。だからほかにもあればと。」
「なるほど。」
「ルカリ!土産に歯ブラシは買ったぞ?そのお前の生徒の分もな。」
「さすが!ガイライ隊長!ありがとうございます。」
「ワイプ!わたしには?」
「え?そんなの買いませんよ?」
「使えない、ほんと使えない部下だ!」
「オート院長殿、こちらで用意しますよ?どうぞお持ち帰りください。」
「セサミナ殿!ありがとうございます。」
「別の土産はあるんですよ?じゃ、それはいりませんね?」
「どんな?」
「ザバス殿の新製品、大人の菓子ですよ。酒が入ってる飴ですね。
あとリンゴの粒が入ってるもの。
これは職場においてもいいと思いますよ?」
「すごい!さすがわたしの部下だ!」
「オート、騙されるな。自分が仕事場で食べたいだけだ。」
「!」
「マティス君!黙って!!」
串に刺したもの、全部を焼いてしまおう。
あー、楽し。
「愛しい人、人が来る。」
「うん。」
向こうから数人が走ってやってくる。
ボルタオネの人?
「いたぞ!」
「よかった。どうしたんだ?ほら、戻ろう。おい!!」
コクがこちらに気付いたのか振り切って
やって来た。
「コク!久しぶりだね?どうしたの?祭りできたの?」
マティスに一度すり寄ってから、わたしの方にすり寄る。
マティスが威嚇するから。
「おい!あんたたち!」
「はい?」
(鶏館に来た者たちじゃないな)
(そうだね)
「我々はボルタオネ領国のものだ。
この黒馬を知っているのか?」
「ええ、以前王都で。どうしたんですか?」
「先程コットワッツの領主館に着いたんだが、急に逃げ出して。」
「・・・なんでしょうね?
あ、わたしたち明日の祭りで馬を預かる商売をするんですよ。
餌籠付きで。ブラッシング付きですよ?
良ければ今夜から預かりましょうか?
これ、領主様の許可書。」
許可書を見せて、看板も見る。
梃でも動かない様子なので、1銀貨を払って引き上げていった。
明日はまた預けるなら1銀貨もらう。当然だ。
番号札は1番だ。毎度あり。
「で?どうしたの?とりあえず中に入ろう。
あ、おしっことうんちは向こうで。」
さっぱりしてから、テントの中に入れ、きれいにする。
ビャクが帰ってきてたのか、コクをみて威嚇をする。
コクも一瞬固まる。
「ビャク、コクだよ。コク、ビャクだ。うん、大丈夫だから。
ビャクは何か食べるでしょ?なにがいい?
コクはうまうま籠だよ?感想聞かせてね。
水はここに入れるから。」
水桶は個別で用意したほうがいいかな?
ビャクはキトロスを希望。
横半分に切って、グレープフルーツのように、食べていく。
「そういえば、ビャクはうんちとかおしっこはどこで?
あ、外ね。トイレ使う?そこの扉の奥がトイレ。うん、どうぞ?」
トイレは簡易型を設置している。
見た目は従来型だが、常にきれいになる。物移転装置付き。
馬さんのもそうだ。
わたしたちも軽く食べる。
お酒と、干し肉、チーズ。砂漠の民の定番晩酌セット。
コクの話。
ボルタオネは食の祭りに参加はしないが、
ちょうど、タオルができたという連絡と、鉛筆の納品もあり、
こちらに来てくれたそうだ。
ペリーヌたちも来ている。
そこかしこに、わたしの匂いがしたから、探しに来たと。
「・・・わたしの匂いってどんな?」
「好き好き大好き?」
「いや、それはマティスが感じる匂いでしょ?ビャクも匂いだって。
なんだろ?動物に好かれる匂いかな?
臭いとかじゃないよね?」
それは違うとビャクとコクは言ってくれた。
マティスは抱きしめて耳に後ろを嗅ぐ。
「この匂いだな。ずっと嗅いでいたい。」
「もう!それはマティスだけだから!」
加齢臭ではないよね?
結局、今日はここで泊まることになった。
朝一番から客が来るかもしれないしね。
夜中に到着するかもしれない。
月明かりは十分。
寝ずに準備をしておこうか。
ビャクはこの街の鳥屋にも行ってきたそうだ。
ザバスさんが黒と緑というから。
ほかのトリヘビを見たことがなかったらしい。
向こうも白ははじめてだと言っていたようで、
よくよく話を聞けば、移動?なにそれ状態だったと。
やはりここから王都までは往復で1日。それも会わずの月前後でだ。
「へー、ビャクは優秀なんだね。」
「ビャク、ワイプにはもっと要求をだせ。」
わかった、そうすると返事をするビャク。
師匠はいろんな人に好かれるからね。
もしかして師匠も匂いを出しているのかもしれない。
「師匠の匂いは?」
ときくと、匂いのない匂いといわれた。
さすが、師匠、匂いまで消すとは。
マティスは?と聞くとわたしを好きな匂いといわれた。
ん?わたしが好きじゃなくて、わたしが?
「よくわかるな。」
おでこをカリカリしてあげてる。
ん、わたしも。
コクは満足だといってくれた。
うまうま籠。
カンランは半分に切ってほしいとのこと。
あ、食べにくいか。キトロスもそうしよう。
籠も持って帰りたいそうだ。
帰り道に残した半分食べるのもいいだろう。
鞍に引っかけれるようにする。
「あ、あの香木。ありがとうね。ものすごく高価なものだよ?
半分、ここの領主さんにあげちゃたけど。
うん、マティスの弟、もちろんわたしの弟でもあるよ。
あのあと、わたしたちも森に入ったの。水と香木見つけたよ?
水は栄養剤だって。あまり飲まないようにって。
うん。銀の馬に言われた。スーっていうの。
明日来るかな?ああ、軍馬リグナってしってる?
あ、知ってるんだ。リグナおすすめ!そう似顔絵にてる?
リグナは明日くるとおもうよ?」
ほんと、リグナは有名なんだな。
「馬って長生きなの?」
「人と同じぐらいだ。生まれて1年で大人だ。死ぬまで働く。
働く時間は人より長い。」
「へー。えらいね。じゃ、明日はゆっくりしていってね。
うん、今日はもう寝よ。馬って立って寝るの?あ、横になることもなるの?
いいよ?ここは安全安心だから。」
よっぽどここは安全だとわかったのなら横になるそうな。
ここは安全だろう。
魚の皮の下に砂漠石でエアークッション。
その上に横になる。
あっというまに寝始めた。
わたしたちは今テントの外だ。
軽石で火鉢を作り樹石で暖を取る。
竹かごの改造と、Wベビーカーの設計だ。
興奮して寝れないのだ。
コクの鼻息が大きいとは言わないが。
クッションとマティスにもたれて、
これからの予定を話していく。
次の次の合わさりの月の日後がまた王都で会合だ。
そしてもう一度合わさりの月があって、雨の日が来る。
いつもより長い、らしい。
なんせ終わったら、茸祭りだ。筍掘りもね。
その前にカエル狩り。メイガもだ。チョコも大量生産しなくては。
「次の会合は?また一緒に行くのか?」
「どうだろうね。護衛として雇われれば行こうか?お仕事だよ?」
「そうだな。そうしよう。
では、これが終われば、また旅に出るか?」
「そうだね。今回のうまうま籠はお馬さんたちがもってる
おいしいもの情報が目当てだからね。
出店はないにせよ、客でくるでしょ?
そんなに遠くからは来ないだろうけどね。
間の砂漠、ダカルナとピクトを旅しよう。」
「それが終わって会合か。」
「ん?」
「家を建てたい。雨の日にあなたを迎える。」
「うふふふ。どこに建てようか?」
「それはまだわからない。あの砂浜もいいと思った。」
「そうだね。砂漠も、湖もいいね。どこでも。
じゃ、材料をとにかく集めないとね。ほかの国のお風呂事情を研究しないと。
あ、雪見風呂もしないとね。これは後半でもいいか。
あー、楽しみだ。」
「愛しい人。私もなんだ。雨の日が待ち遠しい。初めてなんだ。」
「うん。うん。マティス、マティス。
わたしもなんだ。もうね、銃も糸もどうでもいいんだ。
マティス。幸せだね。
うん、だからね、ほかの人もそうだったらいいなって思う。」
「そうだな。お前がそれで幸せならそうなればいい。」
「うん。うん。」
月が沈む少し前、あたりは薄っすらと暗くなる。
そしてまた明るくなっていくのだ。
湿地の2人がまずやって来た。
樹石を積んで。
荷を下したらこちらに戻っておいでと声を掛ける。
コクも起き出し、うまうま籠の説明を馬にしているのだろうか?
馬同士の話は分からないのだ。
ヤンはコクに驚いていた。
大きいからね。
そこからひっきりなしで馬車が来る。
まだ店は開いてない。
うまうま籠は飛ぶように売れる。
馬が看板を見て止まるのだ。
リグナ効果だ。
素早く説明をする。それはいいなと、馬や馬車を下りていく。
貴重品だけ持っていくように念押し。
ここで盗難はあり得ないが、
無かったものをあったはずだと言われては困るから。
簡単にベンチを竹で組み。樹石を置き、
休憩してもらう。水はサービス。
が、人間相手に商売はできないのだ。
「お前、うまそうだな。ちょっと寄こせよ。」
「あ!プニカはダメですよ!おなか下します。中の実は加工しないと。
ここでプリン食べてくださいな。お店でね。
海苔、海藻はいいですけど、それは米に巻いたほうがいい。
お店出ますよ。取って置いたら?カンランは生だし、
ダルクは干したほうが人には食べやすいかな?
リンゴも加工したものが売りに出されます。」
生のダルクと干したもの交換。
籠の中身は冷やしたものと、干したもの半々にした。
干したダルクは売ってないからいいだろう。
「へー、うまいな。」
「もっとおいしいものが売り出されますよ?
どうぞ、馬たちはこっちで預かりますから楽しんできてください。」
ぼちぼちお店に商品が並びだす。
1銀貨は高いかなと思ったが、ここまで、食べるためだけに来る人たちだ、
余裕はあるようだ。
「モウさん!!」
「可愛いテムローサ!来たんだね!」
テムローサが飛び込んでくる。
昨日のうちに先発隊は来たそうだ。あとは荷馬車で数人が乗ってきている。
どうやら湿地に行っている間に、
デイやコム、端の村の人たちは来ていたようだ。
領主館の近くで野宿というか野営。
後の人たちはこの時間につくように村を出たそうだ。
「そうなんだね。ゆっくり楽しんでおいで。
馬と荷車は1銀貨で預かるよ?馬には餌とブラッシングが付くからね。
人間様はゆっくりできるよ。」
「そうなんだ!モウさんは?いっしょに祭りをみましょ?」
「もちろん、落ち着いたら見て回るよ。それまで、どこのなにがいいか、
偵察しておいて?」
「はい!!わかりました!」
村の女の子たちも来ている。
内緒だよ?とクッキーをあげた。
食べている間に簡単に髪を結い上げる。
女の子におそろいのリボンを。
キャーっとよろこんで中央広場に走っていく。
あの守衛はマティスと話をしている。一緒だろうし大丈夫だろ。
腕を三角に振るとまた噴き出していた。
そのあいだ、どんどん番号札をさばいていくマティス。
籠の説明はコクが。
「「モウ様!!」」
「美しきペリーヌ!可愛らしきフローネ!」
こちらは中央から。
コクを迎えに来たのだ。
「預けたと聞いて、驚きました。わたしたちはちょうど領主様たちと
面会していたときなんです。」
「そうみたいだね。タオル、どうだった?」
「ええ。それはもう、ふわふわで!
こちらが持ってきましたえんぴつも喜んでいただけました。」
「そうか。それはよかった。さ、2人とも、祭りは楽しんでいけるんだろ?
コクは預かるから。あ、悪いが、もう1銀貨といいたいけど、
なにやら、説明してくれてるようだから、無しだね。助かるよ。」
「うふふふ。モウ様、それでは黒馬が話をするようではないですか。」
「そりゃ、馬同士話をするだろう?一緒だよ?人間と。
さ、きれい処2人でまわるのはそれこそ心配だね。
他は?だれか一緒?」
「いえ、他の方は領主様の護衛に。」
「そうか。お!ドーガー!!」
ドーガーがこちらにやってくる。
この2人にはわたしがセサミナの兄、マティスの妻だと知っている。
赤い塊モウだとも。
「モウ様!大盛況ですね!あ、こちらにいらしてたんですか。」
「ドーガーは見回り?」
「ええ、そうです。客として廻りながらでいいと。
ラーメン開発に頑張った褒美ですよ。」
「そうか、それはいいな。じゃ、このお二方も案内しておくれ。
2人並ぶと目立つ。よからぬものが近づくからな。」
「モウ様は?ご一緒できないんですか?」
「ここが一息ついたらもちろんいくよ?さ、ドーガー頼めるか?」
「ええ、もちろん。」
「楽しんでおいで。」
あとで、きっちり報告させねば。
「モウ様!」
今度はカップ君たちだ。
母さんたちと一緒に来たのか、一緒に馬車に乗っている。
おお、なんとなく気品がある。
ツイミさんの母君にもなるからかなりの年齢を想像したけど、
ここは成人期間が長いから、ものすごくきれいなご婦人にしか見えない。
「ツイミ殿、カップ君たちの母君ですね?初めまして。
砂漠の民、モウです。向こうにいるのが夫、ティスです。
長旅お疲れ様です。」
「あなたが?ああ、モウ様。ツイミから、話を聞きました。」
「想像でしかないのですが、まさに身を切られる思いだったでしょう。
いまはなにも憂いがなくなっていればよろしいのですが。」
「ええ、それはもちろん。ありがとうございます。」
「もしよろしければ、そのときの、苦労話をお聞かせ願いますか?
わたしの近しいものが双子だと言われたのです。
やはり不安がっているようなので、おなじような説明はしたのですが、
経験者からの言葉が一番安心でしょう。」
「!!もちろん、ええ、もちろん、お話させてください。」
「ああ、ありがとうございます。では、まず、祭りを楽しんでください。
馬は預かりますよ?餌付き、ブラッシング付きで1銀貨です。
貴重品はお持ちになって下さい。」
あとは端の村の人たちも集団で。
じーちゃんばーちゃん大丈夫なのか?ティータイのプリンを制覇するそうだ。
一番元気だ。奥さんたちはぜんざいと五平餅もどき。
コムのお茶とタイアップすればいい。村長さんに教えておく。
エスワさんとビヤンさんもやって来た。
店は完全に休みにしたそうだ。手羽先の唐揚げが売れまくりらしい。
宿の方は御父上に頼んでいるそうだ。
デイの豚料理はなかなかだと、進めておく。
同じ肉料理、刺激し合えるだろう。
メジャーとの器屋さんも6人でやってくる。
食ではないが、特別に器もうっていい許可をもらったそうだ。
リンゴジャム、餡子のところに置いて一緒に売ればいいよとアドバイス。
番号札は58まで。
スーとホーもやってきている。
クーもだ。スーの鬣に隠れている。結構コンパクトになるのね。
師匠は今日は完全に客だ。それとなく探りはいれているのだろうけど。
リグナもやってきた。
コクの態度が面白かった。
むっちゃ緊張している。あこがれの存在なんだそうだ。
リグナがいれば当然、ガイライがいる。
「モウ!」
「ガイライ!いらっしゃい。軍部は?ニックさんは?」
「軍部はニックとルカリに。わたしだけです。
休みです、わたしは。もちろん、ここに来ていることは内緒ですが、
ニックにはばれています。土産を買っていかないと。」
「あははは!悪い隊長だな。
ここにはコットワッツ産のお米が出てるはず。
おにぎりにはいいんじゃないないかな?
海苔もあるからそれはお裾分けするね。
ニックさんはリンゴジャムとか。イリアスの端の村で
ぜんざいとか、お餅に樹脂蜜塗ったのあるよ。それがいいとおもう。」
「・・・イリアスの端の?あの?話は聞きました。」
「そ。いい人だよ。知ってる?」
「ええ、即位の時に一度。まだ、自分で立つこともできない赤子でしたが。」
「そうなんだ。てか、ガイライはあれだね。いくつから軍にいるの?」
「?10そこそこで、見習いから。」
「うわ。そうなんだ。さすがだね。ま、祭り楽しんでおいで。」
「一緒には回れないんですか?」
「そうだね。もう少し落ち着いたらね。
つかれたら、奥のテント入っていいから。見つからないようにね。」
「わかりました。それで、それは?」
ビャクがわたしのポッケに入っているのだ。
「ああ、あたらしく師匠のところで働くトリヘビのビャク。
ビャク、この人はわたしの息子で軍部の隊長だ。」
「!息子!ありがとうございます。」
「いや、そんなことで喜ばないで?」
「いえ、うれしですよ。で、どういういきさつで?」
「引き抜き?で、師匠が交渉したの。」
「また!モウ、言いたくはないですが、ワイプに甘くないですか?」
「あははは!ツイミ兄弟のことも同じように言ってたでしょ?
悪いが、ガイライと師匠では立場が違う。
ああ、勘違いしてはいけないよ?
ガイライは使う立場で、師匠は使われる立場だ。
使われる立場の方に言い方が悪いけど、優秀な手駒があるほうがいい。
ガイライは師匠を使う立場だからね。ガイライの手元にいたら
師匠は使えない。ん?師匠なら使うかな?なんだかんだいって。
うふふふ。決してガイライをないがしろにしてるわけじゃないよ?」
「ええ。わかっています。ワイプをも使いこなしましょう。」
「がんばって?あ!筏の話、ちょっと作ったんだ。
あとで湿地に見に行く?」
「!ええ。お願いします。」
そのタイミングで湿地の2人、アバサネ君とルコール君が
戻ってきたので、帰りに一緒に戻ろうという話になった。
打ち上げで焼き鳥をしてもいいかもしれない。
番号札は追加で作り、最終的に128。
馬が128頭いるわけではない。
荷車の預かりもある。
場所がかさばるので、テントの中で~なんて言いながら、
砂漠のドームの中で預かる。
まさに大盛況だ。
カップ君たちにお手伝いをお願いしたかったが、
母さんたちと楽しんでいる。邪魔はできないな。
テムローサ達がひっきりなしに戻ってくる。
これがおいしい、これがすごい人気、と。
ラーメンは最初に食べることができたそうだ。
それをここに持ってこれないと申しわけなさそうに言うので、
あれは先に食べさせてもらったよ、と。
コネがあるんだと言えば、
鏡を領主からもらえるんだ、なるほどと納得してくれた。
はんばーがーはもう一度並んで食べるそうだ。
そのときコムの村長の息子が順番を譲ってくれたとか。
キャーっと女の子3人できゃいきゃいいってる。
お米だけ大量に買ってきてもらう。
お駄賃付きだ。
もっとお店を見ておいで。
広場以外の店で本場のプリンを食べておいで、と勧める。
それから馬さんたちのご機嫌伺い。
ブラッシングは疲れるので、してるふりをしてきれいに。
どこから?お疲れ様。そこのおいしいもの?
なにか面白話、そんなことも聞いていく。
スー兄とホー姐、リグナも、話をしているような?
広場の中央で大歓声が聞こえる。
どうやらセサミンが挨拶をしているようだ。
おお!!やら、うぉーー!やら。
樹石、冷蔵庫、冷凍庫、ゴム、
タオル、歯ブラシ、ボルタオネの鉛筆もだと、と
耳のいいマティスが教えてくれた。
「愛しい人?行かなくていいのか?」
「いや、ちょっと無理だわ。今回はあきらめるよ。
それにテムローサたちがお使いしてくれたしね。
遠くから来た人たちはいまから帰るようだからね。
送り出さないと。」
「あれだけ楽しみにしてたのに。」
「でも、マティスと一緒に稼げたことの方がうれしいよ。」
「愛しい人、私もなんだ。」
「うん。頑張ろう?帰りもうまうま籠欲しがるかもね。
たくさん作っておいてよかった。売りまくろう!」
帰りのうまうま籠は馬の好みで選べるようにした。
海苔が売れる。これは飼い主の好み。
おにぎりとの組み合わせがよかったようだ。
当たり前だ。
帰りの籠にはプニカは無し。
勝手に食べておなか壊されても困るから。
人も食べれるものなので、土産にと買っていく。
同じ1銀貨だったけど、籠込みだと言えば納得してくれた。
おまけに背中かき、孫の手もつける。
これはテントの中で土下座級のお願いをした。
少し前にルグが来てくれたので、奥さんを呼んでもらい、
師匠を通じてカップ君、カップ君の母君を呼んでもらった。
人目もあるから小さなテントを出した。
お茶、ほうじ茶だ。それにミルクと砂糖。
ほうじ茶ラテとクッキーだけ出して、後は2人に任せておこうか。
大きなテントには、師匠とガイライ、トックスさんと
酒盛りをやっているからだ。
塩漬けの商品が多かったようで、
カップ兄弟に使い走りをさせている。
師匠?ガイライ?使うという意味が違うよ?
今回の売り上げ、合計24リング。
いいねー。
祭り関連では34リングか。
2人で生活するには十分。
カップ君の母君たちは一足先に帰っていった。
村長さんからものすごく礼を言われ、ジャムとチップスを
大量にもらってしまった。いえーい。
ルグの奥さんとは、笑い合って別れたようだ。
よかった。
祭りが終わり、それぞれが帰っていく。
テムローサたちに、お土産を持たせ、
コムのお茶葉屋の息子に、緑茶を飲んでもらう。
帰りは集団で戻るそうだ。
「自分で作ってみたらこんなになった。」と。
少しぬるめのお湯で入れる。
蒸して揉んですぐに乾燥させたものだ。
ほうじ茶も作ったのでそれも。
「へー。うまいな。」
「ほんと?うれしいな。」
チャーたち用に4番茶の株を持ってきてくれたと、
ルグが教えてくれたので、お礼に渡しておいた。
普通に飲めるように広まってほしい。
端の村の村長と湿地組はコンロの形で意見を出し合ったそうだ。
もちろん、鳥肉、豚肉会談も盛り上がったと聞く。
器屋さんたちは、ほくほくで帰っていった。
「姉上!!」
セサミンが皆が帰ったタイミングでやって来た。
「お疲れ様。うまくいったようだね。
イスナ殿、ご挨拶遅れて申し訳ありません。
コットワッツの食の祭りはいかがでしたか?」
「モウ殿!こちらにいらしてたんですね!
では黒馬を預かったというのは?
そうですか。ありがとうございます。
マティス殿も!ご注文の品、来月の今時分にはできますぞ!」
「イスナ殿、ご無沙汰しております。そうですか、ではその時分に、
ボルタオネに伺いましょう。」
「そうですか!それは楽しみだ。お待ちしております。」
「今から、お戻りに?もうじき月が昇りますよ?」
昨日は領主館に泊ったようだが、
連日というわけにもいかないようだ。
トップ営業は忙しい。
「ええ、砂漠を通るわけでもないので。
ペリーヌ!フローネ!戻るぞ!」
「モウ様!!結局、ご一緒できませんでした。残念です。」
「馬たちの話が楽しくてね。コクも手伝ってくれましたよ。
ドーガーは麗しき華たちを守れたのでしょうか?」
「ええ、とっても。ね?フローネ。」
「ええ、ペリーヌ。ありがとうございます。ドーガー様」
「いえ、お二方と廻れてわたしも楽しかったですよ。」
?なんか違う。思っていたのとなんか違う。
(セサミン、知ってる?)
(ああ、ドーガーに若い娘たちが群がってしまって、
このお二方が、ドーガーを守ったというか)
「逆か!!ドーガー!」
「あははは、、、はぁ。」
「強き麗しの華たち、すまない。いらぬ供を付けたようだ。」
「いいえ、モウ様!楽しかったのは本当ですよ?」
「ドーガー様をみなが熱い視線で見るのです。
わたしたちはこう、両方から腕組みをしてね。
皆がうらやましそうに見るのですよ。うふふふ。
いじわるい言い方ですが、気持ちよかったですよ?」
「あははは!そうですか。
楽しい気持ちになられたのならよかった。」
お土産にクッキーとうまうま籠4つ。
コクにもありがとうと言うと、
リグナ殿と仕事ができてうれしかったという。
そうか。ホー姐を見ると頷いていた。そうか、なるほど。
また、ボルタオネでお会いしましょう、とハグしてお別れ。
『道中気を付けて!無事にお戻りになりますように。』
見送る最中に、ドーガーが土下座をする。
「なに!何かしでかしたの!」
「モウ様!お願いです!あの紅箱をもう一つ譲ってください!!
2人に、2人にあげたいのです。」
「おお、どっちかではなくて?」
「2人にです。」
「1つは今あるの?ちょっと貸してごらん。」
移動させたのだろうか、素早く出してきた。
もう一つは自分用に作ったけど結局使わずの物を持ってくる。
ダイヤの横に、それぞれサファイヤとルービーを追加で付けやる。
「はい。同じものでもいいけど、
それぞれを思って選んだというのが大事だからね。
青と赤の絹の袋をつけてやろう。ほら、行っといで。走れば間に合う。」
「ありがとうございます!!」
「姉さん、甘いですね。」
「いや、どっちかとかな?って思たんだけど、両方とはね。
国にいい人がいたらどうするんだろうね。
ま、今日の礼ということだね、まずは。」
今日はこれで撤収。
簡易トイレの始末や、清掃等は明日するそうだ。
馬の糞尿箱はもう始末している。うん、馬ってすごいね。
みんなつやつやして喜んでくれたのがうれしい。
あとで、聞いた情報をまとめなくては。
「さ、湿地に帰ろうか。アバサネ君、ルコール君?
また台所貸してくれる?
焼き鳥ごちそうするよ?もちろん冷たいビールもね。
セサミンは?いったん戻る?じゃ、後でドーガーたちと来て?
カップ君たちも一緒に運ぶから。」
留守番組のチャーたちと駱駝馬たちの分の
うまうま籠をわたす。移動で運べるだろう。
とりあえず、みんなを運ぶ。
師匠とカップ君たちは一度王都に。
いろいろ面白い動きがあったようだ。
マティスとルコール君で焼き鳥の準備。
後はかんたんなおつまみ系を作っていく。
わたしとアバサネ君、ガイライで竹筏の話。
アバサネ君はさっそく竹筏の改良点を教えてくれた。
「やはり、進行方向にとがっている方が進みやすいんですよ。
板をつけるなり、細いほうを前にする方がいいですね。
あとは、樽を横に付けて、均衡を保つとか?」
なるほど。
あとは筏の説明もアバサネ君がしてくれる。
大分改良したようだから、わたしにはすでにわからんちんだ。
筏の情報料は10リング。
アバサネ君は遠慮したが折半だ。
みなが食べれるテーブルを出し、
ビールサーバーを作る。
家の周りに埋めた砂漠石は一カ所だけ、変形している箇所があった。
良からぬものが近づいたら、大きく膨らむのだ。
それだけでひるむならたいしたことないな。
セサミンに話しておこう。
引き続きよろしくお願いいたします。
ずっと一緒にいたビャクをスー達に紹介する。
ホーの鬣で良い場所を見つけたのか、4人?で話をし始めた。
そのなかになぜかトックスさんもいる。
赤糸のことを聞いているようだ。
手には砂漠石となんかいろいろ持ってきている。
「リグナ!ありがとうね!リグナの名前があったから
馬さんたちはみんな止まってくれたし、みな仲良くしてくれたとおもう。
お礼に本気のブラッシングするよ!」
細く割いた竹の先を丸めたものでブラッシング。
どちらかというとマッサージだ。
スーとホーも一緒に。
ビャクはおでこのカリカリでいいけど、クーは?
あ、クーもカリカリですか?
うっ、毛があるんですね。
満足してもらったようだ。
あー、いい匂いがしてきてる。
ある程度焼かないと、いっぺんになくなるからね。
焼いては保温、焼いては保温。
スー達のご飯は
うまうま籠と、おいしい水、キトロスの種、コーヒー豆、
ビャクはお酒がいいという。日本酒だ。
師匠が戻り、セサミンたちもやって来た。
ドーガーはむにゃふにゃしてる。
にやけているからいい返事でももらったのだろう。
「さ、今日はお疲れ様。大成功おめでとう!」
「姉さん!ありがとうございます。
姉さんが祭りを廻ることが出来なかったことが
唯一の失敗です。」
「そんなことないよ?デイの村の子がね?いろいろ持ってきてくれたから
一通り食べたんよ?そこらへんは抜かりなし!
さ、セサミンの方がろくに食べてないでしょ?ルグも?
焼き鳥だよ!カップ君たちもお疲れだったね。
チュラル君も、ルビス君も。母様、元気な人だね。」
「モウ様!元気になったのはモウ様のおかげなんですよ!」
「そうなの?だったらよかった。ツイミさんとニックさんも呼ぼうか?
師匠?ガイライ?いい?」
「あー。ツイミはまだ仕事してますね。院長と。」
「うちもです。ルカリと一緒だと思いますよ。」
「そうなの?いいよ、呼んどいでよ?
疑問に思っても、あの2人なら納得してくれるでしょ?」
「ある程度は話してますがね。オート院長はどう運びます?
わたしは運べませんよ?」
「ルカリは?信頼のおける部下だが、貴族だ。
それが邪魔をするだろう。」
「マティス?」
「抱きかかえればいいだろう。その手にあるものの移動で大丈夫だ。」
「ツイミの移動は隠してるので、ツイミごとですね。では。」
「モウが石を使ったということになりますよ?」
「大丈夫。わたしは異国の石使いだから。」
「そうですか?では戻ります。」
(呼ぶよ?)
((ええ)
『ワイプが抱えしもの、ガイライが抱えしもの、来い!!』
おお!!と皆で拍手。
力のお披露目のような感じ。
「モウ殿!!素晴らしい力ですね!」
「いやー、なんとかできましたよ。さ、食事会なんです。
一緒に。」
「ありがとうございます。」
「モウ殿!本当に不思議なお力ですな!」
「ルカリ殿!すごい!別人のようですね!
あ、今日は鳥肉ですよ?サイほど油が多いわけではないので、
多少食べても大丈夫。後で、軽い運動をお教えしますね。
女性がやれば、胸と尻に張りが出る運動です。
ニックの教え子テムローサにも好評ですよ?」
「!!それはありがたい!」
「モウちゃん、テムローサに?」
「そうそう、鍛錬とは別にね。こう、ボッキュポンとなるように。」
「いいなーそれ。俺も教えてもらおう。」
「そう?あとでいっしょにね。」
「モウ様。」
「ツイミさん、手紙、急でごめんね。」
一応、母君に双子のことを、聞いてもいいかと
連絡はしたのだ。ビャクの初仕事。報酬は頭をカリカリ。
「いえ。母がいいというのなら。どうでしたか?」
「うん。笑ってお話してくれたみたい。
なんだか、独特の苦労があるみたいだね。
聞いた奥方も笑っていたよ。すでにその兆候はあるんだって。」
片方が動けば、片方も負けじと動くらしい。
腹はまんべんなく撫でれば落ち着くと。
帰りにルグの奥方が嬉しそうに教えてくれた。
「ツイミ殿。」
「ルグ殿?」
「ありがとう、わたしの妻なのだ、双子を宿したのは。」
「!そうでしたか。それは・・」
「モウ様が祝ってくれた。だから大丈夫だ。」
「!それはいい!ああ、素晴らしい!!」
あとは、2人でいろいろ話してくれ。
カップ君がドーガーのにやけ具合を根掘り葉掘り聞いている。
その必死さをチュラル君達がわらう。
師匠と、ニックさん、トックスさんは焼き鳥と日本酒だ。
うわー、見たことあるような酔っ払い集団だよ。
ガイライは湿地のことを2人に聞いている。
セサミンはマティスと。
今日有ったことをうれしそうに報告。
わたしとオート君、ルカリ殿とひたすら食べ、焼き、
ダイエット話で盛り上がる。
オート君もその知識を彼女に披露したいそうな。
いや、それは痩せたほうがいいってこと?彼女傷つくよ?
「違いますよ!わたしから見たら太っているとは思わないんですが、
気にしているようなので。あの歯を磨くっていうのを
彼女に教えたら尊敬されたんですよ。だからほかにもあればと。」
「なるほど。」
「ルカリ!土産に歯ブラシは買ったぞ?そのお前の生徒の分もな。」
「さすが!ガイライ隊長!ありがとうございます。」
「ワイプ!わたしには?」
「え?そんなの買いませんよ?」
「使えない、ほんと使えない部下だ!」
「オート院長殿、こちらで用意しますよ?どうぞお持ち帰りください。」
「セサミナ殿!ありがとうございます。」
「別の土産はあるんですよ?じゃ、それはいりませんね?」
「どんな?」
「ザバス殿の新製品、大人の菓子ですよ。酒が入ってる飴ですね。
あとリンゴの粒が入ってるもの。
これは職場においてもいいと思いますよ?」
「すごい!さすがわたしの部下だ!」
「オート、騙されるな。自分が仕事場で食べたいだけだ。」
「!」
「マティス君!黙って!!」
串に刺したもの、全部を焼いてしまおう。
あー、楽し。
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