いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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354:輪ゴム

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「でね、ジットカーフのデイとイリアスの端の村にはプリンを紹介してるのよ。
コットワッツのティータイが本場だって。
で、今度の食の祭りはそれを食べるのが楽しみだって。」
「なるほど。」
「でもさ、出してる食堂で味が違うと言っても、基本は同じでしょ?
期待度が高いとがっかりしちゃう。」
「そうなりますね。店を持っているものは広場に出店は出しませんが、
各国からくる客相手に商売はするつもりなので。」
「だよね。そこで、これです。
プリンアラモード。
アラモードっていうのが流行りのとか、最新のって意味だったかな?
こんな風に果物を飾って、クリームを乗っけると。」

食後の甘味を食べながらセサミン案件を報告。
簡単に、プリンを皿に入れて、
ブドウ、モモ、リンゴ、ウリ、生クリームを乗っけたものを食べる。
チェリーに相当する果物がない。木苺は季節外れだ。

「贅沢なものになりますね。」
「ここにね、赤いなんか小さい実があればいいんだけどね。」
「そのための、ダクルですか?」
「いや、これは違う、うまうま籠用。」
「ああ、馬ですね。」
「なんか、ないかな?
こういうのもあるよって教えてあげて?
基本を守りたいっていうのも有りだから。
あ、あと、髪ゴム。
デイの女の子に好評だった。ゴムを輪っかにして、布でまくのね。
髪の毛を結ぶの。こんな感じ。」

後ろで束ねている髪ゴムを見せる。
結局、まだ2人とも髪は切っていない。

「ああ、いいですね。」
「これは高いものはダメだよ。消耗品。
後は簡単に輪ゴムかな?袋をくくったりするのに便利。」


髪ゴムと輪ゴムをセサミンに渡す。
セサミンはゴムを伸ばして確かめている。
「下着に入れるゴムはできています。
あれは、綿糸との組み合わせですが、これはゴムそのものなんですね?」
「そうそう。ちょっとしたものを束ねるのに便利。」

昔の詐欺の話で、
このセットを買えばすぐに内職できますっていう広告が出ていて、
飛びついた主婦に送られてきたのが、
ゴムチューブとハサミだったというのを聞いたことがある。
要はそれを切っていけば、輪ゴムになって売れますよという奴だ。


「ああ、これ、いまはわたしが作っちゃうけどね。」


ゴムでチューブを作る。


「これ、細く切っていくと輪ゴムね。こんな風に遊ぶこともできる。」

ゴム鉄砲だ。

「わ!飛びますね。姉さん?大会の時にルグたちに話していた
ゴムの武器?ぱちんこ?これですか?」
「ああ、それはもっと、こういう感じ。」

Y字に砂漠石をかたどって、太めのゴムを付ける。
砂玉を挟み撃つ。


パッシュっとダクルの実にあたる。


「ね?なんでも、使い方次第なんだ。
体を貫通させるにはもっと威力がいるけどね。
けど、目にあたってみ?失明するよ?」
「・・・わかりました。隠匿を掛けましょう。使い方も隠匿できますから。
もちろん生産院に対しての隠匿型です。」
「え?そうなの?なんだ、そうなんだ。うん、そうして。
あははは!なんだ。そんなこともできるんだ。
よかった、マティス!よかった!」
「愛しい人。よかったな。私も知らなかった。
セサミナ?それはどこまでの効力があるのだ?」
「石の大きさに寄りますね。ゴムを使っての、
この弾性を使っての動物を傷つけることはできない。
これを宣言します。
だから、いま、姉さんが作ったぱちんこ?は、
なにかを飛ばすということはできますが、
それで、動物を傷つけることはできません。」
「植物は?」
「できます。動物とするか、動植物とするかです。」
「動植物にして。」
「今みたいに高い木の実を落とすとき便利ですよ?」
「んー、だけど、それをできるとわかってしまうと、人に向ける。
でも、できない。それに気付くことで、隠匿がかかっていると気付く。
より大きな石で解除しようとする輩が出るかもしれない。
0か1だ。0だよ。今回は。砂漠石はこちらで用意する。
コットワッツが開発したゴムで動植物を傷つけることはできない。
もちろん物体にもだ。故意でもそうじゃなくても。お願い。」
「ええ、わかました。」
「石はこれを使って?」

変動前にとった砂漠石の原石。
コットワッツ1年分の予算の大きさだ。

「ね、姉さん!これは原石です。わたしも初めて見た。」
「うん、サボテンの森を出るときにね。もらえるだけもらったの。
無理矢理じゃないよ?
わたしの欲望のままつかってもいいかって、聞いたから。」
「姉さんの欲望・・・。食関連に偏ってそうです。」
「あははは!そう!その通り。今回はちょっと違うけど。
これでね、いい?」
「ええ、もちろん。ここで宣言しましょう。」
「セサミナ、ありがとう。」

セサミンは自分の背丈以上の石に手を置き宣言をする。

『隠匿宣言!ゴムの木から生成されるゴム、並びにその関連のものは、
故意、過失に関わらず、その特性を生かしての
動植物及びあらゆる物体に対する殺傷行為はできないと宣言する。』

石が砂に代わって消えていく。
これで憂いは一つ消えた。

「セサミン、ありがとうね。」
「いえ、礼の言うのはこちらです。
コットワッツはルカリアの様にはなりたくはない。」
「なにかあった?」
「兄さん?」
「かまわない。話せ。」
「ルカリア式の銃で死人が出ています。
争いごとの延長から、ちょっとした小競り合いまで。
そのようなことで死ぬ人間はもちろんいままでもいます。
それが尋常ではない数で上がっています。
コットワッツでは幸いまだですが、
銃を購入した貴族、豪族間では多数です。
ルカリア式、ルカリアの銃、銃のことをルカリアと。
また、ルカリアで死人が出たという話が毎日のように上がっています。
遅かれ早かれコットワッツでも出てくるでしょう。
草原の民がサイを狩るのに購入したという話もありますので。
あのゴムでそのように言われたくはない。」
「そうか。それ今みたいに止められる?」
「無理ですね。誰も知らない状態でしたらできたと思いますが、
もう、大会では数千人の人間が銃を見ていて、
実際にそれで死んでいるものもいる。
広まったものに対しては隠匿はできません。
それでもというのなら、余程の石がいります。
今の原石が100あっても足らないでしょう。」
「・・・・それが1000なら?新年の王の言葉、真名の宣言と同時なら?」
「姉さん!!」
「いや、無くそうとしてるわけではないよ?うん。
結局自分が悪者にはなりたくないだけなんよ?うん。銃は仕方がないね。
できたんだもの。
役立つこともあるんだよ?その草原の民がサイ狩りに使うのもいいね。
うん。悪いことばかりじゃないよ。」

ただ、身内だけは守りたい。
砂漠石を集めておこう。

「さ、それとね、ブラスってしってる?
歯ブラシの柄とか、ラーメンを食べるお箸とかにいいよ?
こう、縦に割けるから。ささくれはきれいにとってね。
いくつか作ってるよ。持って帰って。
乾燥してるのもあるからね。あと、研究してね。」

うまうま籠はブラスで作ろう。

「今回はこんなもん?」
「あれは?星砂。」
「おお、そうだ、これ?なにかしってる?」

星砂をセサミン見せる。怒られ案件だろうか?

「ん?なんですか?きれいですね。どこで?
砂浜?イリアスの?わたしは見たことないです。」
「そう?じゃ、飾りとかに使っていいかな?」
「念のためトックスさんと、イリアス出身のニック殿に聞いてください。」
「はーい。」


あとは整理券の話。
時計はないから、時間ごとに目印の旗が出るようにすることになった。
赤い旗が出ているときは赤い旗の札を持っている人優先、みたいな感じ。
馬の待機所は確保できたのこと。
あまりここに引き留めておくこともできないので、
とりあえずお開き。
竹かごにおにぎりとおやつを詰めてそれはお土産だ。
プリンアラモードのチェリーに代わる果実は双方で探そうということになった。




セサミナを見送って、ダクルの実を収穫する。

「愛しい人?それをどうするんだ?」
「うん、乾燥させたら甘くなるかなーって。
どっか風通しのいいところで干そうと思うんだけど。
やっぱりサボテンの森がいいかな?」
「風が吹く前に家に入れるか、膜で覆えばいいだろ。」
「お、そうだね。」
「愛しい人?」
「うん。大丈夫。」
「そうか?」
「うん。そのさ、銃であろうと、ナイフであろうと
殺そうとおもったら、なんでもね。うん。」


気にするな、といってもダメなんだろう。
サボテンの森に戻り、
ブラスで作った台にダクルの実を並べていく。

「ああ、マティス。ほんとに大丈夫なんだ。
ゴムの殺傷性がなくなったしね。よかったよ。
もし、便利なもので、それの使い方によって怖いことになるのなら、
それを知っているのなら、止めることが出来るってわかったから。」
「そうだな。」
「うん。」
「では、いまなにを考えてる?」
「え?今?あの銃のこと。」
「考えるな!」
「いや、違うよ。純粋に道具として。
ね?聞いて?」
「・・・・。」
「あのね、銃弾がさ、砂玉でしょ?あれってさ、体内に入ってもそのままかな?
鉛玉だとさ、一つの塊でしょ?でもさ、砂だよ?
蜘蛛の唾液で固めてても、なんかばらけそうじゃない?
その砂がさ、まだ動いてる血管に入っていくと、
血抜きもうまくいかなさそう。で、食べるとジャリって。
それは嫌だなーって。」
「・・・食べ物のことか。」
「うん、食べ物のこと。」
「ふふふ。わからんな。サイに関しては血抜きのこともあるし、
うまくいかないんじゃないか?豚もダメだろう。」
「そうだね。どうなるかだけでも、ガイライに聞いてみる。」
「そうだな。買った肉がそれだったら、泣くな、愛しい人が。」
「うん、泣くね。」



言霊で水分を抜いたダクルは、
かなりの甘さがあるものになった。安納芋のようだ。
炙って食べればさらにおいしい。
しかし、これはお馬さんには不向きかもしれない。
よくよく考えると海苔も水分がない。

水分がある甘いもの。
やっぱり果物系だよね。

スー兄に相談してみよう。



師匠の家に行く前にトックスさんに
星砂のことを聞いたが知らないということだった。
じゃ、あとはニックさんに聞いて知らないってことなら、
ビーズのように使ってみようかな?


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