いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

文字の大きさ
上 下
320 / 863

320:狩人の目

しおりを挟む


トックスさんの家に勝手にお邪魔してラーメンの準備をするマティス。
わたしは一応きれいにとお掃除。

あとは、トカゲの皮とリンゴ飴も出しておく。
香木もお風呂に入れれるように丸くする。
ああ、樹石のアイロンも作っておこう。砂漠石とを組み合わせればいいだろう。
部屋の中央に陣取っている炬燵用の樹石も出しておこうかな。

あとはトイレとお風呂の不備がないか確認。
少しお風呂は広げておく。
樹石を入れる場所も作っておこう。
あ、スチームバスもできるね。これは研究案件だ。

トックスさんが戻ればすぐに食べられるようと、
準備が終わったマティスと一緒に炬燵に入る。

皆が入った炬燵なので大きい。
でも、前後ではいる。もちろんマティスがわたしの後ろだ。

「日に日に寒くなるね。
舞を見せるのなら外でしょ?早く見せてしまおう。
それでおひねりいっぱいもらおうね。
ガイライたちも呼ぼうか?稼いだお金でお米と小豆を買おう。
御餅作って、ぜんざいつくろうね。それで、餡子バターパンっていうの
作ってあげるね。おいしいんだよ~。始めた食べたときは衝撃だった。」
「あなたが?それはすごいな。」
「なに?その組み合わせ!って。
でも、餡子になれてないと、こんなもんかなって思うかもね。
どっちにしろおいしいから。」
「それは楽しみだな。」
「うん、楽しいね。
あのね、
・・・あの砂漠にいた人たちね、なにか悪いことしたなのかな?
おいしいもの食べられないのはつらいね。」
「・・・。あなたが寝ている間に、ガイライにも報告している。
ワイプとガイライが対処するから、
あなたは気にする必要はないとのことだ。」
「そうなの?そ、よかった。師匠だけでも大変だと思ったけど、
軍部、ガイライも知っててくれればそのほうがいいね。
なにも解決してくれとは言わないよ?自分たちだけ知ってるっていうのは苦しい。
誰かが知ってくれてるだけで安心する。無責任だけどね。」


それからトックスさんが戻るまで、餡子の多様性を力説した。
いちご大福も作ってみたい。

「戻ったようだな。」

マティスはすっとおこたから出ると、台所に向かった。
わたしとトックスさんにラーメンを食べさせてくれるためだ。
ありがとう。

「いやー、まいった、まいった!!」
「おかえりー。勝手におこたでくつろいでますよ。」
「かまわないよ。あー、あったかい。外はやっぱり寒いな。旦那は?」
「台所。ラーメン作ってるよ。すぐ食べられる?」
「もちろん。あのあと、旦那はどこだって質問されて、先に帰ったっていったら、
まー、あとは旦那のことを根掘り葉掘り。
嘘つくのもおかしいから、ジットカーフで知り合ったっていったよ。」
「嘘じゃないね。あのお店の人はトックスさんのことしってるの?」
「いや、知らないな。最近ティータイに来たぐらいしか。
名乗ってもいない。店は品物を下ろしてるだけだしな。」
「へー。あの服装飾を手掛けてるって知らないんだ。」
「俺の服が売れればいいんだから。
ありがたいことに、宣伝は領主さんがしてくれたからな。」

「できたぞ。」

おこたでラーメンとは贅沢だ。

「ありがとう!マティス!」
「いい匂いだ。旦那!食べる前からわかる!これはうまいものだ!」
「さ、食べよう。」

お酒を飲んだ後のラーメンはなんでこんなにおいしいのだろうか?
さすがに食べるときは並んで食べる。

「うまい!!」
「はー、おいしいね。昨日のもおいしいかったけど、さらにおいしい。」
「昆布だしの量を変えた。食事をしたあとだからな。
おまえがいう、あっさりめという奴だ。」
「さすが、我が夫。素晴らしい。」
「ふふふふ。」
「ほんとうまいな。そういえば、旦那のことは聞かれたが、
奥さんのことは聞かれなかったぜ?
唯一の奥さんがいるって言ったんだけどな。最初にあったあの娘さんも、
奥さんのことはあまり記憶に残ってなかったようだ。」
「トックスさんは常連で、マティスも行ったことある店だったんでしょ?
わたしははじめて行ったからね、目立たないように意識はしたよ。」
「私もだぞ?」
「今の時期だからじゃないの?
いい男はどこ?ってハンター、狩人の目で見られてたらだめだよね。」
「・・・くだらんな。」
「あはははは!街で食事もできたから、雨の日までもう来ないでおこう。
へんに騒がれても面倒だからね。」
「そのほうがいいな。どこに住んでるんだ、今何してるんだって聞かれたから。
知らんで押し通したけどな。」
「すまんな、トックス。手間を掛けさせた。」
「いいさ、こんなことぐらい。それで?トカゲの皮は?」
「うん、これ。それとリンゴ飴。これは香木を丸めたの。
お風呂に入れて、上がるときに外に出して乾燥させればいいよ。
あー、コーヒー入れようか。あ、私がするよ。
マティスは座ってて。」

鉢を重ねて、台所に行き、お湯を沸かしてる間に、
洗い物も済ます。この台所はマティスが改造したから家と一緒だ。
コーヒーカップはこの前買ったものがあるから、3つ出す。


「おまたせ~。」

2人で、メイガの羽根のドレスを考えていたようだ。


「ああ、奥さんありがとよ。んー、やっぱり早く舞を見せてくれ。
いまいち旦那が言うことがわからん。」
「そうなの?いつがいいかな?砂漠の端、タロスさんの家があったところに
家を立てたから、そこにステージ作ろうか。
芸のお披露目が終わったら、焼肉だからね。
師匠とかガイライも呼んじゃおうか?」
「呼ぶのか?ま、いいだろう。ひれ伏す姿は見たいからな。」
「だれがひれ伏すんだ?」
「ラーメン食べたらワイプ師匠がひれ伏すって。」
「ああ!そうだろうな!じゃ、その時に蜘蛛の糸も手に入るな。
あー、やることが沢山ある。久しぶりに忙しい。」
「そうなの?ジットカーフだとこの時期は魚の毛皮作りで忙しいでしょ?」
「意匠は変えるが、やることは同じだからな。やはり、初めての素材を
扱うほうが忙しいし楽しいさ。タオルローブや宿屋の改修で金は入るんだ。
じっくり、楽しませてもらってるんだよ。」
「稼ぐために働くのは当たりまえだけど、余裕は欲しいよね。
マティス、そういう商売を探そうね。」
「そうだな。まずは大陸を廻ろう。トックスも廻ったのだろ?」
「ああ、新しい素材を探してな。
しかし、アヒルを見ても羽毛なんて思いつかなかった。
やっぱり、奥さんの考え方は面白いな。
また、なにか、見つけたら持ってきてくれ。
ああ、わからない物は、領主さんにな。」
「はーい。」

結局一番忙しいセサミンの都合に合わせるということで、
マティスに聞いてもらうと、離れはじめの月の日の次の日となった。
わたしはそれを師匠に連絡。


(もちろん行きますよ。領地移動の連絡も来てますしね。税の確定通知、
それを届ける名目もありますから。しかし、湿地ですか?
あまり、良い買い物だとは思いませんがね。)
(そうですか?師匠に言われると不安だな。勧めたのはわたしなんですよ。)
(おや?そうなんですか?それは面白いですね。また詳しく教えてください。
メジャートとナソニールを廻ってそちらに伺いましょう)
(移動で?)
(そうですよ?なので、数日は休めますね。)
(さすがです!)
(また!愛しい人は!)
(え?だって、自分の能力を使って時間を生み出すんだよ?すごいでしょ?)
(・・・。まぁ、いい。ワイプ?腹を空かせて来い。
私が作ったうまいものを食わせてやる)
(それは楽しみだ!)
(あ!トックスさんが糸はどうなった?って)
(持って行きますよ。ああ、蜘蛛も連れていきます。
抱きかかえれば移動できることが分かったので)
(あ、そうなんだ。うん。大丈夫。)
(籠にいれてますよ。では、準備ができ次第そちらに)
(はーい)

(ガイライ?いまいい?)
(モウ!もちろん。いまはコットワッツ?元気そうな声だ)
(うん。元気だよ。毎日おいしいもの食べてる)
(そうですか、それはいいですね。)
(でね、ま、いろいろあってね、わたしの舞をみなに披露することになったの)
(舞ですか?剣?)
(ああ、その舞じゃなくてほんとの舞。踊りの方)
(え?あなたが?)
(そそ。でね、ま、それを披露して、そのまま食事会の流れ。これそう?)
(もちろん。いつ?)
(離れはじめの月の次の日)
(伺います)
(移動できるのかな?)
(コットワッツの領主館は一度訪れたことがあります。かなり昔ですが)
(そうなの?ちょっと不安だね。その日呼ぶよ?)
(そうですか?お願いできますか?その日は休みを取ることにしましょう)
(うふふふ。無理しないでね。前の日にまた声かけるよ)
(ええ、そうしてください。いつでも)
(ニックさんにもいっといて)
(ええ、わかりました)
(じゃ、またね。無理せずがんばってね)
(ええ、母さん、また)







「トックスさん、離れはじめの月の日の次の日に。」
「ん?いま、黙ってたのはなんかやり取りをしてたのか?」
「うん。そういうのもできるのよ。師匠も来ますよ。」
「はー、便利だね。じゃ、糸も?」
「うん。蜘蛛ちゃんも。」
「あれも来るのか?そうか。虫を取っておくかな。」
「たぶん、何でも食べると思うよ。」
「そうか。じゃ、わざわざ虫を用意することもないか。」
「うん。」


次にここに来た時に虫がいたら嫌だ。




「・・・コーヒー入れようか。あ、私がするよ。マティスは座ってて。」

彼女が頑張っておこたからでてコーヒーを入れてくれる。
うれしい。
その姿が台所に消えてからトックスが小声で話す。


「旦那?」
「なんだ?」
「ちょっと気を付けたほうがいいな。奥さんがいようがいまいが
関係ない勢いで聞かれたからな。」
「ああ、なるほどな。」
「旦那、あんたたち2人が唯一無二だというのはわかるよ?
でも知らない奴らにはそれこそどうでもいい話なんだよ、特に女はな。」
「王都でもそんなことがあったな。思い込みで話を進める女がいた。」
「それだよ。雨の日が近いほど女は必至だ。
旦那がよくても奥さんになんかあったら嫌だろ?」
「愛しい人はわたしと同等に強いぞ?」
「違うよ、強い強くないの話じゃないんだよ、女は怖いんだ。」
「うむ。愛しい人もそういうな。」
「そりゃ、奥さんも女だからだよ。わかってるんだよ。」
「わかった、気を付けよう。
しかし、トックスは男なのによくわかるのだな?女の気持ちが?」
「当り前よ。装飾を気にするのは女だ。男もいるがな。
女の気持ちが分からなければ、この商売はできねぇ。」
「そうか。やはり、わたしは世間知らずだな。
セサミナにもあのワイプにもいわれた。」
「領主さんに言われるのはわかるが、ワイプの旦那にも?
・・・。
旦那、よっぽどだな。」
「・・・・。」
「ま、そいうことだ。で?メイガの羽根を使った服の案はあるのか?」
「そうなんだ、やはりな・・・」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

義弟の婚約者が私の婚約者の番でした

五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」 金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。 自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。 視界の先には 私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。

完結 R18 媚薬を飲んだ好きな人に名前も告げずに性的に介抱して処女を捧げて逃げたら、権力使って見つけられ甘やかされて迫ってくる

シェルビビ
恋愛
 ランキング32位ありがとうございます!!!  遠くから王国騎士団を見ていた平民サラは、第3騎士団のユリウス・バルナムに伯爵令息に惚れていた。平民が騎士団に近づくことも近づく機会もないので話したことがない。  ある日帰り道で倒れているユリウスを助けたサラは、ユリウスを彼の屋敷に連れて行くと自室に連れて行かれてセックスをする。  ユリウスが目覚める前に使用人に事情を話して、屋敷の裏口から出て行ってなかったことに彼女はした。  この日で全てが終わるはずなのだが、ユリウスの様子が何故かおかしい。 「やっと見つけた、俺の女神」  隠れながら生活しているのに何故か見つかって迫られる。  サラはどうやらユリウスを幸福にしているらしい

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

魔法公証人~ルロイ・フェヘールの事件簿~

紫仙
ファンタジー
真実を司りし神ウェルスの名のもとに、 魔法公証人が秘められし真実を問う。 舞台は多くのダンジョンを近郊に擁する古都レッジョ。 多くの冒険者を惹きつけるレッジョでは今日も、 冒険者やダンジョンにまつわるトラブルで騒がしい。 魔法公証人ルロイ・フェヘールは、 そんなレッジョで真実を司る神ウェルスの御名の元、 証書と魔法により真実を見極める力「プロバティオ」をもって、 トラブルを抱えた依頼人たちを助けてゆく。 異世界公証人ファンタジー。 基本章ごとの短編集なので、 各章のごとに独立したお話として読めます。 カクヨムにて一度公開した作品ですが、 要所を手直し推敲して再アップしたものを連載しています。 最終話までは既に書いてあるので、 小説の完結は確約できます。

【R18】幼馴染の男3人にノリで乳首当てゲームされて思わず感じてしまい、次々と告白されて予想外の展開に…【短縮版】

うすい
恋愛
【ストーリー】 幼馴染の男3人と久しぶりに飲みに集まったななか。自分だけ異性であることを意識しないくらい仲がよく、久しぶりに4人で集まれたことを嬉しく思っていた。 そんな中、幼馴染のうちの1人が乳首当てゲームにハマっていると言い出し、ななか以外の3人が実際にゲームをして盛り上がる。 3人のやり取りを微笑ましく眺めるななかだったが、自分も参加させられ、思わず感じてしまい―――。 さらにその後、幼馴染たちから次々と衝撃の事実を伝えられ、事態は思わぬ方向に発展していく。 【登場人物】 ・ななか 広告マーケターとして働く新社会人。純粋で素直だが流されやすい。大学時代に一度だけ彼氏がいたが、身体の相性が微妙で別れた。 ・かつや 不動産の営業マンとして働く新社会人。社交的な性格で男女問わず友達が多い。ななかと同じ大学出身。 ・よしひこ 飲食店経営者。クールで口数が少ない。頭も顔も要領もいいため学生時代はモテた。短期留学経験者。 ・しんじ 工場勤務の社会人。控えめな性格だがしっかり者。みんなよりも社会人歴が長い。最近同棲中の彼女と別れた。 【注意】 ※一度全作品を削除されてしまったため、本番シーンはカットしての投稿となります。 そのため読みにくい点や把握しにくい点が多いかと思いますがご了承ください。 フルバージョンはpixivやFantiaで配信させていただいております。 ※男数人で女を取り合うなど、くっさい乙女ゲーム感満載です。 ※フィクションとしてお楽しみいただきますようお願い申し上げます。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

処理中です...