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295:不法入国
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イリアスとニバーセル、マトグラーサの間には当然国境がある。
今までのように、村や街に入るものとは違い、
見渡す範囲に柵があり、見張りもいる。赤のレンガを飛び越えて終わりではない。
「厳重だね。」
「そうだな、しかし、出入りは多いぞ。ニックの弟夫婦のように
買出しでしょっちゅう出入りがあるのだろう。
かなりの速さでさばいている。問答でもないし、嘘を見抜く守衛がいるのか、
また違うものか、通ってみるか?」
気配を消し、上空から国境検問所を見下ろす。
「いや、問答よりもなんか恥ずかしいことだったら、困るからやめておこう。
それに、森に入って、リンゴ取ってまた戻ってくるには、
時間的におかしいことになる。
申し訳ないけど、不法入国ということで。」
「ははは、そうだな。」
「その前にリンゴ、勝手にとってもいいの?」
「少年の話だと、酒を仕込むぐらいしか用途がないそうだ。
いつも、動物が食べるか、枯れているかだそうだ。」
「リンゴなのに?うん、リンゴの味がするなにかなんだよね。
とにかく取りに行こう!」
そのまま検問を過ぎ、森沿いに進んでいく。
赤く色づく実が特徴だ。
「ああ、あれだな。人も、動物の気配もないな。
虫はいるぞ?手甲を嵌めておけ。」
「はーい。」
木の根元から、上部まで絡むよう木にへばりつき、赤い小さな実がなっている。
「ああ、なるほど。山芋のムカゴ?そんな感じだね。
これは実ではなく茎の一部だよ。」
「茎?」
「そう。ムカゴっていうんー、そういう形態?
お店で売ってたの。山芋のムカゴって。どんなもんかわかんなかったから、調べたのよ。
炊き込みごはんにしてもらったよ。」
「母君がか?」
「あはは、そう。大抵、そういうのはわたしが買ってきて、調べて、
それをみて母さんが料理してくれるの。
おしいんだけどね、結局の結論は、買ったほうが手間じゃないなーって
いつも笑うの。」
「それは、母君も大変だな。しかし、うまいものをお前に食べさせてやりたいとおもうから
手間をかけて作ってくれるのだろう。」
「うん。そうなの。
わたしの家はね、貧乏じゃないけど、裕福でもない。
でも、外で食事をしたときにね、いい大人が、
”こんなの生まれて初めて食べた”って言わないように
一通りのものは食べさせてもらったよ。
ああ、あの米の肉詰めとか、違うけどね。あんなのめったに食べないよ。
このムカゴの炊き込みご飯も田舎の料理かな?
普通に食べる、季節ごとにでる旬の物、そういうのね。」
「ああ、なるほどな。」
「ふふ。わたし、ほんと好き嫌いなく育ってよかったと思うよ。
魚の生臭さはダメだけどね。
それで、このムカゴもどきのリンゴね。
ほんと小さい。でも、ん。一個一個はまさしくリンゴ。
なぜに、手間をかけないんだろうね。
これ、根元を切って、引っ張るの?」
「そうだと聞いたぞ?なんで、そんなことを聞くんだといわれた。
少年は酒造りの手伝いをしたことがあるから知ってたそうだ。」
「へー、みんな働き者だよね。じゃ、ちょっと取ってみようか。
切って?引っ張る?」
樹に絡んでいるわけではないので、何なく外れていく。
途中で切れてしまうが。
「これさ、ちょっと、根元を掘ってもいい?」
「ん?根ごと取るのか?植物園に植える?」
「ううん、これは種から育てる。枯れてる、ひらひらしたのが種だね。
で、ちょっと、真下に、根の廻り掘るよ。」
彼女は如意棒をスコップの形に変えて掘っていく。
砂漠石の力か、言霊か、やわらかいものをくずように掘り進める。
「でた!!山芋!じゃなくてリンゴ!」
長い、土の付いたもの掘り起こす。
彼女の腕より長い。
水で洗い、皮をするする剥く。
「あー、りんごの匂い。毒ないよね?」
「!食べるのか?その根を?」
「え?もちろん!わたしがこんな作業をするのって食べ物関連だけでしょ?
食べてもいい?」
「・・・。ああ、毒の気配はないな。待て!私が先に食べる。
もしくはワイプに食べさそう。」
「いや、そこまで行かないよ。師匠は食べ合わせの時だけね。
単独では大丈夫。食べてみて?甘い匂いはするよ?」
「ああ、香はな。ん。はー、しゃくしゃく?歯ごたえがある。うまい。少し酸っぱいがうまいな。」
「わたしも!あー、リンゴ、リンゴ。うん、ちょっと酸っぱいね。
実の方は甘いよ。蜜リンゴだね。」
「ああ、甘い。しかし、小さい。こんな風に一粒ずつとるのか?」
「まさか。ムカゴと、種と、蔓。これを分ければいい。」
「お願いしますか?」
「ううん。道具は作るよ。ちょっと待って。」
丸い形に砂漠石を変形させ、中央には小さ目な穴を開ける。
両手で持てるように持ち手も付けた。
その下には袋を付ける。
「ちょっと改良の余地がありまくりだけど、とりあえずね。
マティス、こう持って。うん、持ち手の位置が悪いね、でもいいか。」
いいんだ。
「で、こうね。動かないでね。じっとして。行くよ!」
穴に蔓を通し、向こうに走っていく。
ズボズボっと、種と実、彼女は茎だというが、リンゴが袋に落ちていく。
「どう?」
「なるほど。しかし袋の中に実と種が一緒だぞ?」
「それは大丈夫、籠にこうやって、ザックザック。重い実と軽い種とが分かれるから。」
「なるほど。では、蔦を取り、根を掘り、孔を通して、籠で振る?」
「・・・。」
「どうした?」
「お願いでいい?」
「あはははは!そうだな。やり方はわかったんだから、
お願いで収穫しよう。それで、いったん、イリアスの湖にもどろうか。
あの温泉は、ニックの弟が管理するのだろう?
奥の、もっと人の入ってこないところに2人だけの温泉を作ろうか?
温泉を作り、これで、甘味も作ろう。なにがいい?」
「あのね、リンゴのタルトと、ジュースとジャムかな?
リンゴチップも。あ、ポテトでも作ろう。
あとは、この小さいの利用して凍らせてリンゴのお酒に入れるとか?
焼きリンゴもいいかも!!」
「なるほど。それはいいな。」
「うん、じゃ、人が取らない範囲のリンゴをいただいていこう!!」
彼女が言う土下座級のお願いしますの言霊を使い、
リンゴの根、リンゴ、その蔓、種を回収した。
そのまま、湖に移動、上空に上がり、森の木々で死角になる場所を探す。
「ここいいね。地面も温いし、また温泉掘るよ。
マティスはリンゴの甘みをお願いできる?」
「わかった。今日はここで泊まろう。」
「うん。楽しみにしてて!!」
「ああ、甘味も楽しみにしておけ。」
「はーい。」
湖面にデッキを展開して作業を始める。
このデッキはいいな。扉君も出している。
本体は、森の地面の中だ。
小さなリンゴは、笊にこするように押し付け洗い、皮をむく。
それを砂糖と、すこしの蜜、彼女の故郷の酒で煮込む。
なにもしないままのものも凍らせておく。
根の方も皮をむき、同じように煮込む。
薄く切ったものはそのまま窯にいれ、水分だけ飛ばす。
タルトはすぐに作れるようになった。
あとは焼きリンゴ?焼くのか。
根の部分の一部だけくりぬき、その中に、甘煮にしたものを詰める。
これを窯で焼いてみよう。
しかし、なにか香りが足りない。リンゴの酒はあんなにいい香りなのに。
?蔓か?
蔓の皮をむき、細く刻む。味は?少し苦みがあるが、香はいい。
これが酒の匂いだな。焼く前に少し上に掛ける。
どうだろうか?
そうだ、中の甘煮はリンゴ酒で煮詰めよう。
風呂で食べるか。リンゴをくりぬいた器を焼いて、そこにアイスと、
酒で煮詰めた甘煮か。これだな。
セサミナがいれば悪い顔をしているといわれるだろうが、仕方があるまい。
この頃は2人で何かをすることがすくなってきたのだから。
「出来たよ~。」
「ああ、こちらもだ。甘味はもう少し冷やしておこう。
軽くなにか食べながら入るか?」
「うん!」
酒のあてとすこし腹にたまるもの。
それらを用意して、彼女のもとに行く。
「あ、うれしいな。最初にごちそうしてくれた奴だね。
うん、砂トカゲの干し肉はおいしいもんね。」
彼女は砂漠の民が好む、いわば、タロスが好む料理が好きだ。
砂トカゲのしっぽ煮もサボテンも。薄く焼きた小麦焼きに巻いて食べる。
彼女の母君が料理上手なので、なにが一番好きなのだと聞いたことがある。
「んー、水菜の炊いたやつ?」
「菜?それを炊く?」
「そう。ここじゃ、サボテンを細く切った奴ににてるかな?」
それも作ってみる。昆布出汁ででさっと煮てみた。
それにオショーユをすこし落とす。
持ってきたものをみて、それを見つける。
「ん?これ?サボテン?あ!作ってくれたの!味見!味見!」
「少しだけだぞ?」
「うん。おいしい!サボテンすごいね。マティスもすごい。」
「うまいならよかった。」
「うん!すごい!温泉もすごいよ!見て!」
広くはないが、深さ?が違うらしい。
立ったまま浸かれる場所に、水流が腰あたりにあたるようにしたとか。
じゃぐじいーを立ったまま?
「やっぱりさ、肩まで浸かりたい。のぼせるけどね。
ここはちょっとぬるいからいいかなって。
ちゃんと、食べ物とか飲み物を置く台も作ってるから。
ここではだれもいないから裸でいいよね?」
一応、膜を張る。私もできるようになった。
月が昇り始まる前の少しの薄暗さを、湯の中で、湖を見ながら堪能する。
その中で、ゆるり、食べて、呑んでく。
「月が昇るところも、沈むところも見たいね。
砂漠を南下したら、またイリアスに戻ってこようね。
雪の日は温泉はいんないと。それから、ちゃんと国境を超えて、マトグラーサの横?
ダカルナに入っていこう。」
「ダカルナとその南、ピクトの間にも砂漠がある。そこも通っていこう。」
「その砂漠はなんて呼んでるの?ダカルナの砂漠?
ピクトの砂漠?」
「ダカルナはダカルナ、ピクトはピクトと。マトグラーサも接しているが、
権利は18か国協定で放棄している。
他の国は間の砂漠と呼んでるな。ダカルナ、ピクトは戦争まではいかないが、仲が悪い。
砂漠の利権争いが常にある。」
「やっぱり、砂漠石がでるの?それと鉱石?」
「そうだな、砂漠石は多いと聞く。海にも面しているから、漁業も盛んだ。
似たような国だな。」
「へー、それは楽しみだ。
冷やしてるリンゴの甘みも気になるけど、深いところに行こう!
うまく、水流が当ればいいんだけど。」
今までのように、村や街に入るものとは違い、
見渡す範囲に柵があり、見張りもいる。赤のレンガを飛び越えて終わりではない。
「厳重だね。」
「そうだな、しかし、出入りは多いぞ。ニックの弟夫婦のように
買出しでしょっちゅう出入りがあるのだろう。
かなりの速さでさばいている。問答でもないし、嘘を見抜く守衛がいるのか、
また違うものか、通ってみるか?」
気配を消し、上空から国境検問所を見下ろす。
「いや、問答よりもなんか恥ずかしいことだったら、困るからやめておこう。
それに、森に入って、リンゴ取ってまた戻ってくるには、
時間的におかしいことになる。
申し訳ないけど、不法入国ということで。」
「ははは、そうだな。」
「その前にリンゴ、勝手にとってもいいの?」
「少年の話だと、酒を仕込むぐらいしか用途がないそうだ。
いつも、動物が食べるか、枯れているかだそうだ。」
「リンゴなのに?うん、リンゴの味がするなにかなんだよね。
とにかく取りに行こう!」
そのまま検問を過ぎ、森沿いに進んでいく。
赤く色づく実が特徴だ。
「ああ、あれだな。人も、動物の気配もないな。
虫はいるぞ?手甲を嵌めておけ。」
「はーい。」
木の根元から、上部まで絡むよう木にへばりつき、赤い小さな実がなっている。
「ああ、なるほど。山芋のムカゴ?そんな感じだね。
これは実ではなく茎の一部だよ。」
「茎?」
「そう。ムカゴっていうんー、そういう形態?
お店で売ってたの。山芋のムカゴって。どんなもんかわかんなかったから、調べたのよ。
炊き込みごはんにしてもらったよ。」
「母君がか?」
「あはは、そう。大抵、そういうのはわたしが買ってきて、調べて、
それをみて母さんが料理してくれるの。
おしいんだけどね、結局の結論は、買ったほうが手間じゃないなーって
いつも笑うの。」
「それは、母君も大変だな。しかし、うまいものをお前に食べさせてやりたいとおもうから
手間をかけて作ってくれるのだろう。」
「うん。そうなの。
わたしの家はね、貧乏じゃないけど、裕福でもない。
でも、外で食事をしたときにね、いい大人が、
”こんなの生まれて初めて食べた”って言わないように
一通りのものは食べさせてもらったよ。
ああ、あの米の肉詰めとか、違うけどね。あんなのめったに食べないよ。
このムカゴの炊き込みご飯も田舎の料理かな?
普通に食べる、季節ごとにでる旬の物、そういうのね。」
「ああ、なるほどな。」
「ふふ。わたし、ほんと好き嫌いなく育ってよかったと思うよ。
魚の生臭さはダメだけどね。
それで、このムカゴもどきのリンゴね。
ほんと小さい。でも、ん。一個一個はまさしくリンゴ。
なぜに、手間をかけないんだろうね。
これ、根元を切って、引っ張るの?」
「そうだと聞いたぞ?なんで、そんなことを聞くんだといわれた。
少年は酒造りの手伝いをしたことがあるから知ってたそうだ。」
「へー、みんな働き者だよね。じゃ、ちょっと取ってみようか。
切って?引っ張る?」
樹に絡んでいるわけではないので、何なく外れていく。
途中で切れてしまうが。
「これさ、ちょっと、根元を掘ってもいい?」
「ん?根ごと取るのか?植物園に植える?」
「ううん、これは種から育てる。枯れてる、ひらひらしたのが種だね。
で、ちょっと、真下に、根の廻り掘るよ。」
彼女は如意棒をスコップの形に変えて掘っていく。
砂漠石の力か、言霊か、やわらかいものをくずように掘り進める。
「でた!!山芋!じゃなくてリンゴ!」
長い、土の付いたもの掘り起こす。
彼女の腕より長い。
水で洗い、皮をするする剥く。
「あー、りんごの匂い。毒ないよね?」
「!食べるのか?その根を?」
「え?もちろん!わたしがこんな作業をするのって食べ物関連だけでしょ?
食べてもいい?」
「・・・。ああ、毒の気配はないな。待て!私が先に食べる。
もしくはワイプに食べさそう。」
「いや、そこまで行かないよ。師匠は食べ合わせの時だけね。
単独では大丈夫。食べてみて?甘い匂いはするよ?」
「ああ、香はな。ん。はー、しゃくしゃく?歯ごたえがある。うまい。少し酸っぱいがうまいな。」
「わたしも!あー、リンゴ、リンゴ。うん、ちょっと酸っぱいね。
実の方は甘いよ。蜜リンゴだね。」
「ああ、甘い。しかし、小さい。こんな風に一粒ずつとるのか?」
「まさか。ムカゴと、種と、蔓。これを分ければいい。」
「お願いしますか?」
「ううん。道具は作るよ。ちょっと待って。」
丸い形に砂漠石を変形させ、中央には小さ目な穴を開ける。
両手で持てるように持ち手も付けた。
その下には袋を付ける。
「ちょっと改良の余地がありまくりだけど、とりあえずね。
マティス、こう持って。うん、持ち手の位置が悪いね、でもいいか。」
いいんだ。
「で、こうね。動かないでね。じっとして。行くよ!」
穴に蔓を通し、向こうに走っていく。
ズボズボっと、種と実、彼女は茎だというが、リンゴが袋に落ちていく。
「どう?」
「なるほど。しかし袋の中に実と種が一緒だぞ?」
「それは大丈夫、籠にこうやって、ザックザック。重い実と軽い種とが分かれるから。」
「なるほど。では、蔦を取り、根を掘り、孔を通して、籠で振る?」
「・・・。」
「どうした?」
「お願いでいい?」
「あはははは!そうだな。やり方はわかったんだから、
お願いで収穫しよう。それで、いったん、イリアスの湖にもどろうか。
あの温泉は、ニックの弟が管理するのだろう?
奥の、もっと人の入ってこないところに2人だけの温泉を作ろうか?
温泉を作り、これで、甘味も作ろう。なにがいい?」
「あのね、リンゴのタルトと、ジュースとジャムかな?
リンゴチップも。あ、ポテトでも作ろう。
あとは、この小さいの利用して凍らせてリンゴのお酒に入れるとか?
焼きリンゴもいいかも!!」
「なるほど。それはいいな。」
「うん、じゃ、人が取らない範囲のリンゴをいただいていこう!!」
彼女が言う土下座級のお願いしますの言霊を使い、
リンゴの根、リンゴ、その蔓、種を回収した。
そのまま、湖に移動、上空に上がり、森の木々で死角になる場所を探す。
「ここいいね。地面も温いし、また温泉掘るよ。
マティスはリンゴの甘みをお願いできる?」
「わかった。今日はここで泊まろう。」
「うん。楽しみにしてて!!」
「ああ、甘味も楽しみにしておけ。」
「はーい。」
湖面にデッキを展開して作業を始める。
このデッキはいいな。扉君も出している。
本体は、森の地面の中だ。
小さなリンゴは、笊にこするように押し付け洗い、皮をむく。
それを砂糖と、すこしの蜜、彼女の故郷の酒で煮込む。
なにもしないままのものも凍らせておく。
根の方も皮をむき、同じように煮込む。
薄く切ったものはそのまま窯にいれ、水分だけ飛ばす。
タルトはすぐに作れるようになった。
あとは焼きリンゴ?焼くのか。
根の部分の一部だけくりぬき、その中に、甘煮にしたものを詰める。
これを窯で焼いてみよう。
しかし、なにか香りが足りない。リンゴの酒はあんなにいい香りなのに。
?蔓か?
蔓の皮をむき、細く刻む。味は?少し苦みがあるが、香はいい。
これが酒の匂いだな。焼く前に少し上に掛ける。
どうだろうか?
そうだ、中の甘煮はリンゴ酒で煮詰めよう。
風呂で食べるか。リンゴをくりぬいた器を焼いて、そこにアイスと、
酒で煮詰めた甘煮か。これだな。
セサミナがいれば悪い顔をしているといわれるだろうが、仕方があるまい。
この頃は2人で何かをすることがすくなってきたのだから。
「出来たよ~。」
「ああ、こちらもだ。甘味はもう少し冷やしておこう。
軽くなにか食べながら入るか?」
「うん!」
酒のあてとすこし腹にたまるもの。
それらを用意して、彼女のもとに行く。
「あ、うれしいな。最初にごちそうしてくれた奴だね。
うん、砂トカゲの干し肉はおいしいもんね。」
彼女は砂漠の民が好む、いわば、タロスが好む料理が好きだ。
砂トカゲのしっぽ煮もサボテンも。薄く焼きた小麦焼きに巻いて食べる。
彼女の母君が料理上手なので、なにが一番好きなのだと聞いたことがある。
「んー、水菜の炊いたやつ?」
「菜?それを炊く?」
「そう。ここじゃ、サボテンを細く切った奴ににてるかな?」
それも作ってみる。昆布出汁ででさっと煮てみた。
それにオショーユをすこし落とす。
持ってきたものをみて、それを見つける。
「ん?これ?サボテン?あ!作ってくれたの!味見!味見!」
「少しだけだぞ?」
「うん。おいしい!サボテンすごいね。マティスもすごい。」
「うまいならよかった。」
「うん!すごい!温泉もすごいよ!見て!」
広くはないが、深さ?が違うらしい。
立ったまま浸かれる場所に、水流が腰あたりにあたるようにしたとか。
じゃぐじいーを立ったまま?
「やっぱりさ、肩まで浸かりたい。のぼせるけどね。
ここはちょっとぬるいからいいかなって。
ちゃんと、食べ物とか飲み物を置く台も作ってるから。
ここではだれもいないから裸でいいよね?」
一応、膜を張る。私もできるようになった。
月が昇り始まる前の少しの薄暗さを、湯の中で、湖を見ながら堪能する。
その中で、ゆるり、食べて、呑んでく。
「月が昇るところも、沈むところも見たいね。
砂漠を南下したら、またイリアスに戻ってこようね。
雪の日は温泉はいんないと。それから、ちゃんと国境を超えて、マトグラーサの横?
ダカルナに入っていこう。」
「ダカルナとその南、ピクトの間にも砂漠がある。そこも通っていこう。」
「その砂漠はなんて呼んでるの?ダカルナの砂漠?
ピクトの砂漠?」
「ダカルナはダカルナ、ピクトはピクトと。マトグラーサも接しているが、
権利は18か国協定で放棄している。
他の国は間の砂漠と呼んでるな。ダカルナ、ピクトは戦争まではいかないが、仲が悪い。
砂漠の利権争いが常にある。」
「やっぱり、砂漠石がでるの?それと鉱石?」
「そうだな、砂漠石は多いと聞く。海にも面しているから、漁業も盛んだ。
似たような国だな。」
「へー、それは楽しみだ。
冷やしてるリンゴの甘みも気になるけど、深いところに行こう!
うまく、水流が当ればいいんだけど。」
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