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282:寄席
しおりを挟むカランカランと集合の鐘を鳴らす。
皆が、行商が来たことを知っているので、集まってくれた。
しかし、そこは魚の皮を地べたに並べた簡易寄席。
「ささ、みなさん、靴を脱いでおあがりください。
どうぞ、どうぞ。
お楽にしてください。
ええ、皆さま、初めまして。隣国ニバーセルが一領国
コットワッツの砂漠から来ました、砂漠の民、ティスとモウです。
あ、あれが、内の主人、ティスです。わたくしめはモウと申します。
あ、初めましてじゃない方もいらっしゃいますね、あ、寿限無!
今日も朝からいったの?さすがですね。
それでですね、昨日は結構喜んでもらえたので
気を良くして、また違うおもしろいお話をと思いましてね。
こうして集まってもらいました。
しかしですよ?先に面白い話って、期待しちゃだめですよ?
よくあるでしょ?やった!この豆はでかいっておもって殻をむいたら、
まー、小さいこと。そのがっかり感。それね、あまり期待はしないように。
では、お聞きください。
お題、プリン問答
-----
”わかった、ここは俺に任せとけ!
ふん、こういう場合は黙ってどっしりかまえておけばいいのよ!”
”平に、平にご容赦を!!”
”あっかんべーだ!けっ!ざまぁみやがれ!!”
これが世にゆうプリン問答でございます。」
ぷっ。
あ、あはははははは!!!!
なんだよ!それは!!あはははははは!!
いやだわ、ほんと!!!!
よし、大丈夫。
「ささ、皆さま。まー世の中にはお間抜けが話があるということで。
しかし、で、そのプリンて何ぞ?とお思いでしょ?
奥さーん、ティス、お配りして!!」
「はーい。」
「わかった。」
なんとかかき集めた器で作ったプリン。
スプーンも何とかご近所さんにも借りた。
奥さんとティスが配っていく。
皆がうれしそうだ。
「これがコットワッツ、ティータイで流行ってるプリンです。
機会があれば、ぜひ本場、ティータイで食べてみてください。
さまざまなお店でいろいろなお味が楽しめますよ?
ご家庭でももちろん作れます。
作り方は簡単。こちらの村長の奥方が知っております。
また皆さまで楽しく作ってみてください。
材料は卵と乳と樹脂蜜です。
その材料、卵と乳。
本日はたくさん用意しております。よろしければお買い上げください。
みなさまが必要とすれば、デイの行商の品目にも入りますでしょう。
さ、ハムもありますよ。どうぞ。味見用に少し切ってあります。
お好みのをどうぞ。おととい狩ったばかりの血の出ていない豚もあります。
ああ、リングでなくて結構ですよ。豆でも米でも結構。
あ、樹脂蜜もいいですね。
小麦もいいですよ?
あ、村長さん!適正価格でさばいて!
それ、もらいすぎだから!」
金額はわからないからそこは村長さんにお任せした。
豚は10匹、ハム、卵、乳が売れまくった。完売しても、十分に確保している。
地べたにひいた魚の皮も売れた。使い捨てなものだから
沢山あっても困らないものらしい。きれいになめしていると褒められた。
ここに納める税は、土の切り出しと井戸のことでもらいすぎだというので
販売を手伝ってもらっている。
井戸のことはまだ皆には言わないらしい。この次の雪の日が終わってからすると。
万が一この井戸が枯れたら、準備不足となるからだ。ああ、そうか。
滑車はゆっくり作っていくとのこと。
豆と小麦、米、樹脂蜜、たっぷり交換で来た。
豆もいろいろ。小豆、大豆、黒豆。この状態だけど、きっと実がなる形状は違うのだろうな。
皆が土の中でできると言ってたから。
しかし、小豆っぽいのがあるからあんこができる。
奥さんが甘く煮ていたものだ。
ぜんざいができるね。
御餅はお米をこねてみよう。
保存食だという豆の塩漬けもあった。
ここからお醤油になってもらうこともできる。
結構な量になったので、やっぱり荷車に積んで出発することになる。
もう一泊していってくれと言われたが、
名残惜しくなるので、イリアスの王都で人探しをするので、急いでいるといって断った。
いい人ばかりなので、ここにいる時間が長いほど、
なにかできないかと考えてしまうだろう。
別にここの人たちが困ってるわけでもないのに。
井戸のことは、井戸まで掘ってあるんだ、砂漠石に一言加えるだけの話。
村長さんのように、万が一、もしも、と先を考えることはまだできないのだ。
それこそ経験値が違いすぎる。
月が昇る前に出発。
皆が見送りに出てくれる。なぜか、寿限無の大合唱。
夜に来ていなかった人も一生懸命覚えてくれている。
いや、別にそれが見送りの言葉じゃないからね?
ちょうきゅうめいのちょうすけ!!
声をそろえて、みなが笑って見送ってくれた。
「なにをつくるっていってたの?からだの調子はもういいの?」
「はい。大丈夫です。ご心配には及びません。」
「そう。かわいい奥様ね。」
「ええ、私の半身です。」
「あら?素敵ね。わたしも異国の者なのよ?」
「!!」
「ああ、でも奥様とは違うわ。ずっと南の、いまはサナカルタって呼ばれている国よ。」
「ああ、南の。サナカルタ。ナルーザの下の国ですね。」
「あら、よくご存じね。ああ、コットワッツからだと近いかしら?」
「あなたもよくご存じのようだ。」
「ふふ、そのサナカルタの前の国の名はご存じ?」
「いえ。サナカルタ国になってからやっと交流が始まったと聞いています。」
「ああ、そういう風にね。その前の国、イナスドラというのだけど、そこから逃げてきたのよ。」
「逃げて?」
「そう、逃げて、逃げて、やっとここに落ち付いたの。
生きよと、こころの赴くまま生きよと、その言葉を頼りにね。
そこで、ライバーに会ったの。ああ、違うわ。ライバーに会ったからここに落ち着いたの。」
「その話は?どうして私に?」
「あの子が、あなたしか見ていないから。わたしと同じだとおもったの。
だからどうか、あの子を悲しませないでね?あの子にはあなただけなの。」
「ああ、なんだ。」
「?」
「心配いりません。私には愛しい人しか見えていないし、
愛しい人にも私だけだ。見えないようにしていますが、私は緑の目。
対象は彼女です。受け入れてくれる彼女もまた緑の目。」
「緑の目!知ってるわ!そうなの!よかった。なら安心ね。」
「そういってもらえればうれしいです。
しかし、ご自身の身分を明かしての忠告、なにか不安がありましたか?
イナスドラ国王、いや、元か。」
「うふふふ。やはりご存じなのね。」
「いえ、その名を聞いて。国王の逃亡話は有名でしたから。
しかし、それ以上のことはなにも。それで?
愛しい人になにか不安が現れていましたか?」
「いいえ。そうではないの。ただ、昔のわたしに似ていたから。
なにかしないといけない、でも、そんなことはいい、
あの人といればいい、でもって繰り返していたの。
そのなにかはわからない。今もよ。」
「ああ、その話は繰り返し、彼女としています。
しかし、最後は、まぁ、いいかで落ち着きます。」
「ま!あはははは!素敵ね、その言葉!
まぁ、いいか。ほんと素敵!」
「そうですね。あと、彼女が言うには食がこころを豊かにすると。
おなかがすいているとろくなことは考えない。
今から作らせてもらうものはあとでみなに振舞います。
甘味です。彼女が好きなものです。」
「まあ!わたしも甘いものはすきなのよ。」
「それはよかった。作り方は簡単ですよ。」
「そうなの?お手伝いするわ!あら?わたしが手伝うことになるのね?
たのしいわ!」
「ええ、すいませんが、お願いします。
まずは容器の確保ですね・・・」
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