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274:怖い話
しおりを挟む半分が過ぎ、仕留めた豚を軽く食べ、残りを担いで街道に戻る。
だったら、月が昇る直前に狩ればよかたんでは?と聞くと
それだと私たちなら問題ないが、一般人では無理だと言われた。
豚は月が沈んでから半分ほどしか動かない。あとは寝ているそうだ。
巣穴を探すのは難しいらしい。
もうそろそろ、月が昇る頃になり、
街道からそれて、林の入り口近くでテントを張る。
馬車は見えないが気配はあるという。
あとで、気配を消して見に行くかと聞かれたが、
それも面倒なはなしなので、
気付きませんでした作戦を実行することになった。
初便所である。この世界のトイレにも入ったことないのに!
野外が初とは、何たる仕打ち!!
におい消しの葉の使い方もいまさら教えてもらう。
揉んで、拭いて、かぶせるように捨てる。なるほど。
終わったとは土をかぶしておわり。目印に小さな石を置く。
同じ場所を掘らないように。
「できたよ!」
「そうか!よかったな!」
変なんところで2人で喜び合った。
晩御飯は豪快に肉を焼く。
「おお!これぞ冒険って感じする!!」
「え?こういう料理のほうがいいのか?」
「たまにだからだよ?毎日にはいやだな。毎日ならマティスの煮込み料理がいい。」
「そうか。ここでも、鍋は使えるんだ、作ろうか?」
「うん!赤茄のスープがいい」
「わかった。」
それどこにしまっていたの?ってならないギリギリの量で料理をする。
サスペンスでいつも疑問に思うところだ。
え?あの小さな鞄にその着替えはいってたの?って思う。
さすが世界一の嫁、野外料理も世界一だ。
「はー、おいしいね。あったかい。
ほんと寒くなるね。月が昇れば一段と寒くなった。」
「そうだな。魚の皮があってよかった。」
「そうだね。寝るときはくっついて寝ようね。いつもだけど。」
「ああ、くっついて寝よう。いつもよりな。」
「「うふふふふふ。」」
おなかもいっぱいになって、2回目の便所も済ます。
テントも設置して、一応この中で寝ることになった。
ただし、扉君を出し、下半身だけ洗う。だって、絶対するもの。
その間、マティスはテントの廻りに杭をうちロープを張る。
「なに?鳴子?」
「さすがだな。簡易なものだがな。本当は交代で火の番をするが、
ここら辺の獣は豚だけだ。一応警戒はしている風を装えばいい。」
「向こうは何してる?通り過ぎる気配はした?」
「いや、向こうはよほど気配探りがうまい人間がいるようだ。
私もうまいと自負していたがな、それと同等ではないか?
私でわかるギリギリのところにいる。」
「そうか、困ったね。でも、いいか。なんだか楽しいもの。
このまま3日掛けてイリアスに入ろう。」
「楽しいな。」
「うん、たのしい。さ、寝よう?」
「ああ、愛しい人。寝よう。」
狭いテントの中、風呂上がりでない肌を絡める。
声を押さえ、薄い膜の向こうは外だいうことに興奮してしまう。
もうこのままほんとに寝ましょうというときになって、
何かが近づく気配がする。あわてて服を着こむ。
パキリと小さな音がした。
ロープを張った下に枝を置いただけのものだ。
注意してまたいだつもりでも、その下にある枝まで気付かないというものだ。
(寝たふりをする?)
(気配探りにたけているようだが、自身は消せないようだな)
(盗賊?密偵?)
(どれでもないな。素人だ。自分の気配を消していない。)
(じゃ、こっちを本当に盗賊かなんかと勘違いして偵察に来た?
もしくは盗賊の新人さん?)
(ぶは!!盗賊の新人か、いいな。ん?帰っていくな)
(そう?じゃ、もういいや。寝よう、もう眠いのですよ)
それがジットカーフの街道での1日目。
2日目も馬車は付かず離れず。
1日目と同じような行動をとる。
トイレも同じように。1日目のトイレ跡を探った様子はなかったが念のため。
肉はまだあるので今日は狩らない。
また少し食べて、歩き始める。
普通に歩いているようで、今日は重さは3倍。低酸素はなしだ。
ここはもともと標高が高い。高原と同じぐらいだそうだ。
イリアスはもっと高い。なので、イリアスの男は強い。軍に出稼ぎで入る。
「イリアスに軍はないの?王都?帝都?」
「王都だな。王は無能ではないが、資源がない。なので金がない。
貧しい国だ。軍は金がかかるからな、持っていない。」
「そうか。いろいろあるね。でも、カエルの羽根で大儲けは?」
「それができれば苦労はないな。」
「こう、大きな網でぐわーってとるとか。」
「その網を動かしている間にカエルは逃げるだろうな。」
「そうか、あの青い実もほんとにたべるかどうかわかんないしね。
あの寝てるカエル、呼び寄せて研究しようか?」
「やめておけ。それを知ってどうする?イリアスの人間に教えるのか?
お前をそれこそ賢者だと担ぎ出されるぞ?」
「うー、それはご勘弁。うん、生きてるんだ、今の環境で。
なにもよそ者がどうこうすることはないよね。うん。」
「そうだ。愛しい人。イリアスにはニックに祝いをせしめるためと、
コリコリと、槍術の手ほどきをしてもらうためだ。」
「そうだ、そうだ。謎のコリコリ!なんだろうね。なまこでもいいな。
食べ方が違うかもしれないしね。うん、コリコリ探求隊だ!」
2日目のご飯は、やっぱり肉。
そしてチーズを絡める。うまい!
「チーズとか卵とか、乳、これは確実になくなるね。
次の街であるかな?」
「それはある。商売にまで行かないだろうがな。肉と交換してもらえばいいだろ。」
「そうか、じゃ、明日は持てるだけ狩ろう。」
「そうなるな。どこまで持てるだろうな?」
「浮かすの無しで?10匹はいけるよ?」
「そうか、では私は20だな。しかし、イリアスに入ると林がないから、
それ以上に狩ろうか。」
「おお!狩りまくろう!」
「しかし、あの馬車の人間は?」
「んー、昼間はつかず離れずだからいいんじゃない?
林の中で何をやってるかまではわからんでしょ?
しかしなんなんだろうね?気にしすぎなのかな?
そうだったらいいんだけどね。」
「街に入ればわかるだろう。」
「そうだね。」
そして夜。
さ、寝ましょうというタイミングでやっぱりこちらに近づいてくる。
しかし、今度はロープを超えない。
ぐるぐる回って、また帰っていった。
「怖い話していい?」
「今か?」
「うん。」
「どうぞ?」
「実はあれは生きてなくてさ、死んでる人なの。
それがどうしてかわたしたちを追い越せないから、
仕方がなくついて来てるの。」
「・・・・。」
「?」
「寝よう。」
「あ、こういう怖い話はダメ?」
「ダメだ。」
「そうか、ダメか。うん。はなしておいてなんだけど、外でトイレできないね。
うん、家に帰ろうか?」
「そうしよう。」
2日目は家で寝ました。
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