いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

文字の大きさ
274 / 869

274:怖い話

しおりを挟む

半分が過ぎ、仕留めた豚を軽く食べ、残りを担いで街道に戻る。
だったら、月が昇る直前に狩ればよかたんでは?と聞くと
それだと私たちなら問題ないが、一般人では無理だと言われた。
豚は月が沈んでから半分ほどしか動かない。あとは寝ているそうだ。
巣穴を探すのは難しいらしい。

もうそろそろ、月が昇る頃になり、
街道からそれて、林の入り口近くでテントを張る。
馬車は見えないが気配はあるという。
あとで、気配を消して見に行くかと聞かれたが、
それも面倒なはなしなので、
気付きませんでした作戦を実行することになった。


初便所である。この世界のトイレにも入ったことないのに!
野外が初とは、何たる仕打ち!!
におい消しの葉の使い方もいまさら教えてもらう。
揉んで、拭いて、かぶせるように捨てる。なるほど。
終わったとは土をかぶしておわり。目印に小さな石を置く。
同じ場所を掘らないように。


「できたよ!」
「そうか!よかったな!」

変なんところで2人で喜び合った。
晩御飯は豪快に肉を焼く。

「おお!これぞ冒険って感じする!!」
「え?こういう料理のほうがいいのか?」
「たまにだからだよ?毎日にはいやだな。毎日ならマティスの煮込み料理がいい。」
「そうか。ここでも、鍋は使えるんだ、作ろうか?」
「うん!赤茄のスープがいい」
「わかった。」

それどこにしまっていたの?ってならないギリギリの量で料理をする。
サスペンスでいつも疑問に思うところだ。
え?あの小さな鞄にその着替えはいってたの?って思う。


さすが世界一の嫁、野外料理も世界一だ。
「はー、おいしいね。あったかい。
ほんと寒くなるね。月が昇れば一段と寒くなった。」
「そうだな。魚の皮があってよかった。」
「そうだね。寝るときはくっついて寝ようね。いつもだけど。」
「ああ、くっついて寝よう。いつもよりな。」
「「うふふふふふ。」」

おなかもいっぱいになって、2回目の便所も済ます。
テントも設置して、一応この中で寝ることになった。
ただし、扉君を出し、下半身だけ洗う。だって、絶対するもの。


その間、マティスはテントの廻りに杭をうちロープを張る。
「なに?鳴子?」
「さすがだな。簡易なものだがな。本当は交代で火の番をするが、
ここら辺の獣は豚だけだ。一応警戒はしている風を装えばいい。」
「向こうは何してる?通り過ぎる気配はした?」
「いや、向こうはよほど気配探りがうまい人間がいるようだ。
私もうまいと自負していたがな、それと同等ではないか?
私でわかるギリギリのところにいる。」
「そうか、困ったね。でも、いいか。なんだか楽しいもの。
このまま3日掛けてイリアスに入ろう。」
「楽しいな。」
「うん、たのしい。さ、寝よう?」
「ああ、愛しい人。寝よう。」

狭いテントの中、風呂上がりでない肌を絡める。
声を押さえ、薄い膜の向こうは外だいうことに興奮してしまう。

もうこのままほんとに寝ましょうというときになって、
何かが近づく気配がする。あわてて服を着こむ。

パキリと小さな音がした。

ロープを張った下に枝を置いただけのものだ。
注意してまたいだつもりでも、その下にある枝まで気付かないというものだ。


(寝たふりをする?)
(気配探りにたけているようだが、自身は消せないようだな)
(盗賊?密偵?)
(どれでもないな。素人だ。自分の気配を消していない。)
(じゃ、こっちを本当に盗賊かなんかと勘違いして偵察に来た?
もしくは盗賊の新人さん?)
(ぶは!!盗賊の新人か、いいな。ん?帰っていくな)
(そう?じゃ、もういいや。寝よう、もう眠いのですよ)

それがジットカーフの街道での1日目。
2日目も馬車は付かず離れず。

1日目と同じような行動をとる。
トイレも同じように。1日目のトイレ跡を探った様子はなかったが念のため。

肉はまだあるので今日は狩らない。
また少し食べて、歩き始める。
普通に歩いているようで、今日は重さは3倍。低酸素はなしだ。
ここはもともと標高が高い。高原と同じぐらいだそうだ。
イリアスはもっと高い。なので、イリアスの男は強い。軍に出稼ぎで入る。

「イリアスに軍はないの?王都?帝都?」
「王都だな。王は無能ではないが、資源がない。なので金がない。
貧しい国だ。軍は金がかかるからな、持っていない。」
「そうか。いろいろあるね。でも、カエルの羽根で大儲けは?」
「それができれば苦労はないな。」
「こう、大きな網でぐわーってとるとか。」
「その網を動かしている間にカエルは逃げるだろうな。」
「そうか、あの青い実もほんとにたべるかどうかわかんないしね。
あの寝てるカエル、呼び寄せて研究しようか?」
「やめておけ。それを知ってどうする?イリアスの人間に教えるのか?
お前をそれこそ賢者だと担ぎ出されるぞ?」
「うー、それはご勘弁。うん、生きてるんだ、今の環境で。
なにもよそ者がどうこうすることはないよね。うん。」
「そうだ。愛しい人。イリアスにはニックに祝いをせしめるためと、
コリコリと、槍術の手ほどきをしてもらうためだ。」
「そうだ、そうだ。謎のコリコリ!なんだろうね。なまこでもいいな。
食べ方が違うかもしれないしね。うん、コリコリ探求隊だ!」


2日目のご飯は、やっぱり肉。
そしてチーズを絡める。うまい!

「チーズとか卵とか、乳、これは確実になくなるね。
次の街であるかな?」
「それはある。商売にまで行かないだろうがな。肉と交換してもらえばいいだろ。」
「そうか、じゃ、明日は持てるだけ狩ろう。」
「そうなるな。どこまで持てるだろうな?」
「浮かすの無しで?10匹はいけるよ?」
「そうか、では私は20だな。しかし、イリアスに入ると林がないから、
それ以上に狩ろうか。」
「おお!狩りまくろう!」
「しかし、あの馬車の人間は?」
「んー、昼間はつかず離れずだからいいんじゃない?
林の中で何をやってるかまではわからんでしょ?
しかしなんなんだろうね?気にしすぎなのかな?
そうだったらいいんだけどね。」
「街に入ればわかるだろう。」
「そうだね。」

そして夜。
さ、寝ましょうというタイミングでやっぱりこちらに近づいてくる。
しかし、今度はロープを超えない。
ぐるぐる回って、また帰っていった。

「怖い話していい?」
「今か?」
「うん。」
「どうぞ?」
「実はあれは生きてなくてさ、死んでる人なの。
それがどうしてかわたしたちを追い越せないから、
仕方がなくついて来てるの。」
「・・・・。」
「?」
「寝よう。」
「あ、こういう怖い話はダメ?」
「ダメだ。」
「そうか、ダメか。うん。はなしておいてなんだけど、外でトイレできないね。
うん、家に帰ろうか?」
「そうしよう。」

2日目は家で寝ました。











しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜

タナん
ファンタジー
 オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。  その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。  モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。  温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。 それでも戦わなければならない。  それがこの世界における男だからだ。  湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。  そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。 挿絵:夢路ぽに様 https://www.pixiv.net/users/14840570 ※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

どたぬき
ファンタジー
 ある日乗っていた飛行機が事故にあり、死んだはずの井原は名もない世界に神によって召喚された。現代を生きていた井原は、そこで神に”ダンジョンマスター”になって欲しいと懇願された。自身も建物を建てたい思いもあり、二つ返事で頷いた…。そんなダンジョンマスターの”はじまお”本編とは全くテイストの違う”普通のダンジョンマスター物”です。タグは書いていくうちに足していきます。  なろうさんに、これの本編である”はじまりのまおう”があります。そちらも一緒にご覧ください。こちらもあちらも、一日一話を目標に書いています。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。 そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。 しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの? 優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、 冒険者家業で地力を付けながら、 訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。 勇者ではありません。 召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。 でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。

処理中です...