いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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240:展示場

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酔いました。
今度は憂いのある美しさだそうです。そうですか。
でも、今は元気です。
ドーガーがクッキーを分けてくれました。
いたずら仲間ではなく、心の友です。
試合中はクッキーを食べる暇もなかったので、ちょうどよかった。

ルグ、セサミン、ドーガー、その後ろにマティスにエスコートされたわたし。
ここでなにか有ったら王都の恥になるとかで、武器の所持は禁止。
そんなこと言っても襲ってきたんじゃなかったけ?
今回は銃もある。
館には誰も来れれないようにしたし、月無し石君にもお願いしてきた。
セサミンたちの下着は砂漠石の糸でさらに補強。
狙われたら自動で砂漠に移動する。
わたしの下着は紐と化したので、自分とマティスの言霊で。

紺色のドレスのわたしと、少し薄いグレーブルーの礼服を来たマティス。
セサミンは薄紫、ルグたちは薄い赤茶。なんせ、わたしの紺色が目立つのだ。
セサミンをより目立ってどうする?
いまはグレーの毛皮のコートを着ているからいい。
しかし、部屋に入った時は脱ぐだろ?

「お預かりします。」

ほら。

「コットワッツ、セサミナ様~」


呼び出しとともに大広間に入る。
今まで一番金がかかっている部屋だ。

王様はいない。
こういう下々の行事には参加しないという。
妖精さんと戯れているのだろう。

仕切るのはやはり中央院。主催者だからだ。
院長ではない。

王族のお嬢様方も煌びやかだ。

うん、これなら大丈夫。

正面から見た場合。
出かけに、急遽、装飾類を後ろに回したのだ。
前から見れば、耳飾りだけ。
後ろは、大きく開いた背中に、ダイヤとサファイヤ、ルビーが散りばめてある。
それが、縁のレースの中で輝くのだ。上にいけば、ヘッドアクセサリーでまとめた髪につながり、
下はお尻ギリギリまで浮くような感じで散りばめてある。
そう、透明な蜘蛛の糸を使っている。
トックスさん、いい仕事してますね。
背中が宝石の展示場なのだ。


さっそく、セサミンが説明をしながら、小さな飾りを配っている。
立食のようで、試合の健闘を称え、優勝者を称え、銃のすばらしさをうたっている。
王都とルカリアは協力して大量生産していくことになったと。
そうなるよね。次は銃を使った大会も催すようだ。
皆が興奮して銃のすばらしさを話している。
もう、こうなってしまってはどうしようもない。
食事はお上品な味だった。

師匠とガイライがそばに来てくれた。
「モウ殿。素晴らしい。」
「・・・」
「?モウ殿?」
「ああ、ガイライ殿、彼女はこの姿でしゃべらないように言われているんですよ。
普通の話し方ならいいんじゃないですか?」

師匠が言うが、どうなんだろう?
マティスの顔を見上げるとかまわないという感じ。
「ふー、もうね、すでに疲れたのよ。視線で。
師匠もガイライも後ろ姿見てみ?」

くるりと背なかを見せる。
どよめきが起きる。今まで背中を見てた人たちがわたしの顔を見たからだ。
なんだ?ダメなのか?営業スマイルしとこうか?

また、どよめきだ。
帰ろうか?

マティスを見ると笑っている。珍しい。
「誰もあの桃色のドレスを着た赤い塊のモウだと気付かなかったんだ。
赤い塊では強さを、技場ではかわいらしさが。
いまここでは妖艶な美しさだ。驚くのは無理はない。
しかし、ほんとうのあなたを知っているのは私だけだと思うと笑ってしまった。」

うわー、独占欲ですな。

「モウ殿、これは、ガラス?違いますね?」
「うん、コットワッツの新商品。」
「そうなのですか?ドレスもそうですが、
素晴らしいという言葉しか出ませんね。」
「うふふふ、それで十分。ありがとう、ガイライ。」
「・・・」
「モウ、師匠として言いますが、その微笑みは禁止ですよ。」
え?師匠まで。
「んじゃ、これは?」
営業スマイルをしてみる。
「ああ、それなら。マティス君?」
「そうだな。」
「ああ、さっきのは、禁止ですね。」

ガイライまで納得している。
わたしは納得できん!



「兄上、姉上。紹介しましょう。
ボルタオネ領国、領主イスナ殿です。
イスナ殿、兄のマティス、兄の伴侶モウです。」

マティスと対戦した人だ。
いい試合だった。
後ろに控えているから筆頭なんだろう。ルグと同じぐらいか?

「はじめまして。マティス殿、赤い塊モウ殿。
貴殿と対戦出来たのは、我がボルタオネの誇りです。
あの歓声!心が震えました。フックが対戦後頂いた、タオルも!
あの肌触りはいいですな。さっそくセサミナ殿に注文したところなんですよ。」

おお!大口発注者様!

(セサミン!ここの特産品てなに?)
(ボルタオネはジットカーフ国境沿いの森の管理も任されています。
林業が主です。木材加工は素晴らしいものがありますよ)


「いえ、こちらこそ素晴らしき槍使いと対戦出来感謝です。
フック殿の槍捌きは見習うべきものが多々あった。槍のしなりがよかった。やはり樹の国、
木の特性を掴んでいます。さすが、ボルタオネの筆頭だ。」

マティスが営業モードだ。ルグとドーガーが固まっている。
フックさんはもちろんのことイナスさんも嬉しそうだ。
わたしだって木材加工の知識はあるんよ?




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