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238:異国
しおりを挟む「姉さん!お見事でした!あの後、ライガー殿と
話をされていたようですが?」
「うん。まーがんばれーってはなし?」
「?そうですか?この後、城の広間で懇親会があります。
各領国領主、大会上位20名。姉さんも入ります。
これは半分はけがで出れないでしょうね。
あと、筆頭以下10名。結局、会合に来たものほとんどですね。」
「はは、でもさ、20名で来たマトグラーサはもめるんじゃないの?
今度はなんの順番だろうね?」
「若い順だろう。王族でも、貴族でも、見染めてくれれば領国は安泰だ。」
「よし!ドーガー!頑張って捕まえてこい!」
「え?いやですよ。おっかない。館まで来た人みたいな性格だったら怖いですよ?」
「そうだよね。帰ったら嫁が先に家にいたら怖いね。
うん、ここではやめておこう。営業、営業!各自着飾るよ!
他の領国も撤収作業してるね。いったん館に帰れるんだね。そこからお城?へはどうやって?
また馬車?」
「そうなると思います。」
「思うんだけど、いつも馬車は迎えに来るだけだね。送ってはくれないの?」
「そうですね。また、ここをでれば、領国の駆け引き合戦ですから。
それを待っていてはいつまでたっても終わりませんからね。」
「なるほど。じゃ、撤収してさくっと帰ろう。トックスさんはマティスとね。
ガイライは?」
「わたしは、警備を兼ねて懇親会には出ます。
モウ殿、先程の話は?」
「うん、故郷の話。ああ、糸の話はなんか聞けました?」
「特には。
ずっと話しかけてはいました。わたしの思うようになるとか、
あなたは素晴らしいとか?」
「?マティス聞いてた?」
「いや、お前と話をするのに夢中だった。」
「夢中って、想像するのにでしょ?ふーん。暗示かな?
糸の粉で拍手するぐらいなんだから、暗示にかかりやすくなるとか?」
「そういう報告もありましたね。確認する前に出回らなくなったので。」
なんだろな?
本人ではなくて糸を動かしている?
素晴らしいのは糸?糸自身が生き物とか?
「うわっ。」
「どうした?」
「いや、糸自身が生き物で、それを操っていたのかな?と。」
「また、怖いことをいいますね。」
「うー、トックスさん?その糸、生き物?」
「へ?これが?まさか!」
「生き物の定義って難しいよね。とりあえず、これは細かい糸を縒って長さを出していると。
糸として紡いでいるから死んでる?。あ、収納してみればいいのか。
糸玉も。なかに生き物がいれば無理だ。」
恐々、まずは糸だけを収納してみる。
よかった、出し入れ自由。
糸玉は?
無理でした。
「なかに生き物がいるよ。うわー。」
「これはこちらで預かってもいいですか?」
「師匠?かまわないですよ。ああ、ぎりぎりまで糸はもらえますか?
マティス?中のものを閉じ込めるまでの糸と、不要な糸と分けられる?」
「もちろん。お前もできるだろ?」
「いやいや、ちょっと間違うと、Gだよ?ここ吹き飛ぶよ?」
「マティス君、お願いします。あなたは向こうに行ってなさい。」
「はーい。ルグ、ドーガー、片付けをしよう。」
収納袋に次々入れていく。
マティス、師匠、セサミン、ガイライ、トックスさんは、
蜘蛛の糸玉観察中だ。
「ルグ、ごめんね。やっぱり、武を極めるもの、
頂点に立ちたかったよね。」
「はは、奥方様、いえ、モウさん。まずは主を守ることが従者の務めです。
この大会で、得るものも大いにありましたし、気にしないでください。」
「うん。ルグはわたしの言いたいことがわかったの?」
「ええ、まぁ。銃のことはわたしも不勉強でしたし、
息子が一所懸命考えたことを伝える目と同じでしたので。」
「ははは。そうか。」
「奥方様?跳弾の話をしてくれた時に、
銃の弾を剣で跳ね返すっていうのありましたよね?
あれ、できますかね?」
「んー、物語だからね。銃の弾道をそもそも見れるかってところもるし、
その衝撃に耐える剣かどうかも不安だしね。
でも、跳弾はあるよね。ドーガーの槍がうまくいったのはたまたまだからね。
角度、相手の強度がうまくいっただけだけだから。多用しちゃだめだよ?」
「ええ、わたしは2本槍を極めるのです。」
「んー、それもね。銃が進化すると、銃を防ぐ盾を持つことになるでしょ?
そういえば、こっちは盾はあまりみないね。というか見ない。」
「盾ですか?そうですね。剣、槍、それで防げますので。
あることはありますよ。弓矢を防ぐときとか。」
「ああ、弓矢はあるのね。当然か。
ああ、ゴムができたから、パチンコができるね。
それが進化して銃っていうのはわかるけど、いきなり銃だもの。
やっぱり違うね。」
「ぱちんこ?ですか?」
「うん。ゴムの力で石を飛ばすの。ああ、威力が増せば人は死ぬね。
最初はほんとに生きるための、動物を狩るための道具なのにね。
ルカリアも便利だ、画期的だってなってるんだろうね。危険性に気付くのはいつも後だ。
それを知ってるのに。声高に教えないわたしはやっぱり卑怯者だ。」
「モウさん?」
「奥方様?」
「あと任せていい?」
「ええ。」
「マティス?」
「ん?やはり蜘蛛だったぞ?種類は違うらしいが。どうした?」
「ははは、見なくてよかった。
ん、先帰っててもいい?お風呂入ってくる。」
「もちろん。一緒に入ろうか?」
「うん。」
「ん?どうした?」
「ん、帰ろう。」
「ああ。
セサミナ?トックスと一緒に帰れるか?無理か。
もの限定か。ワイプは?」
「わたしも無理ですね。
トックスさんはわたしが馬車で送りますよ。
もう少し、この糸のことを調べておきたい。」
「ああ、そうしてくれ。ガイライ?お前はモウの臣だ。
モウが不利になることはするな?」
「言われるまでもない。モウ殿?顔色が悪い。」
「んー、ちょっと疲れただけ。マティス帰ろう?」
「わかった。」
マティスの腕の中に抱かれたときにわたしはそのまま気を失った。
「奥さん大丈夫なのか?えらい顔色が悪かったぜ?」
「蜘蛛がいやで?違いますよね?
ルグ!ドーガー!姉さんは?」
「はい、棄権をさせたことを気にいておいででしたが、
そんなことはないと。あと、ドーガーの跳弾は多用するな、
あとは盾の話、ぱちんこ?ゴムを利用した武器なようで、
それも威力が上がると人も殺せると。そこから顔色は悪くなりまして、
ご自分のことを卑怯者だと。」
「跳弾の話をしていただいたときに、銃の弾を剣で跳ね返すとか、
そういう戦いの一場面を面白おかしく教えてもらっていたので、
それが可能かと聞いたのですが、あくまでも物語の中の話だと。」
「彼女の故郷ではよくよく残酷な物語があるようですね。
笑い話もたくさんあるのようですが。
それが現実になっていくことを危惧したのでしょう。
いえ、現実にあるから物語になっているのか。」
「ええ、危険性に気付くのはいつも後だ。
それを知ってるのに、声高に教えないわたしはやっぱり卑怯者だ。と。」
「ワイプ?彼女、モウ殿は異国の方なのだな?どこなのだ?」
「本人に聞いてください。ああ、まだ、便所はそのままですか?
そこに入ってください。えーとなんでしたっけ?
座るような台があって、
近づくと勝手にフタが開く。
それに背を向けて座り、もちろん、尻を出した状態で。
で、用を足すと。終わったら横に石があるからそれを押す。
押すと、尻に暖かい湯が掛けられる。
きれいになったら風が吹き乾かしてくれる。
終わったら、下ばきを履いて、壁から出てる突起物の前に手をかざす。
水が出る。手を洗ったら、そのまま横に移動して、風で乾かす。
フタが開いている間は水音が聞こえているが気にするな。
説明は以上です。どうぞ?」
「・・・・」
「お疲れ様です。彼女の故郷の便所らしいですよ。」
「異国なのだな。」
「そうです、異国です。」
「セサミナ殿はもちろんご存じなのだな?」
「ええ。しかし、姉さんは姉さんなので。」
「そうですね。彼女、モウはわたしの一番弟子ですから。」
「ああ、そうか、そうだな。」
「さ、はやく撤収しましょう。トックスさんはこのまま資産院に来てもらえますか?
糸のことを話したい。ガイライ殿は?」
「わたしは軍部に戻る。」
「わかりました。では、後程。」
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