いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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211:マティス&ワイプキャンプ

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朝はシフォンケーキの失敗作で作ったフレンチトースト。
師匠もいつの間にか戻り一緒に食べている。
ご飯も炊いといてくれたようで、卵ご飯も食べる。

今日から3日間の鍛練場の使用はきちんと予約しているそうだ。
資産院の方は大変で、オート君が頑張っているみたい。
ダートは今回の補填は必ずしなければいけない。
犯人を血眼になって探すことになるだろうと言っていた。
師匠がいなければうやむやになっていただろう。
コットワッツにかまってる暇はなくなったのだ。
さすが、師匠だ。



館をまた収納するか考えたが、
この館の区画に膜を張ることにした。
害のあるものがふれれば、元来た道を戻るように。
これで、いつでもトイレをしに戻れる。


皆でお揃いのジャージを作る。芋ジャージ。
ファスナーは作れないのでかぶりだ。
それと学校の上履き。
もちろん砂漠石入りで、重みが増すようになっている。



マティス&ワイプキャンプが始まった。

1日目

マティス組とワイプ組に分かれる。
マティス組はルグたちコットワッツ3人衆。
基礎力の底上げ。
わたしと師匠は棒術のさらなる向上。
最適な長さと太さで棒を選んでもらう。
その大きさを砂漠石で作ろう。
鍛錬に関してはマティスは師匠に対して何も言わない。
そこは信頼しているようだ。

髪が伸びて今は完全に結べるようになっている。
マティスもくくっている。
師匠がうらやましそうに見るがこれには何も言ってはいけない。

髪用のゴムを作ること
心のメモに書いておく。

体の重さは徐々に重くなる。

わたしの場合長いほうがいいようだ。
しかし長いと持ち運びがしにくい。
砂漠石で作れば長さは変えられる。
短くしたときには太くなる。

「これは面白いですね。ではこの長さと太さ、2種類を使いこなせるようにしましょう」

これが間違い。
2倍の鍛錬が必要になる。
師匠は当然、長棒も短棒も使いこなす。
マティスと同じで、修造方式だ。それに理論を解いてくれる。
相手の出方で短く、長く。師匠はすぐに持ち変えれるが、わたしは一拍遅れる。
指さすように、長さを変えることが出来るようになったころに、
今日の鍛錬は終了となった。

屋上の大きいテーブルで誰もしゃべらず晩御飯。
セサミンの顔が1日で精悍な顔つきになっている。
師匠とマティスが、勉強会の時に使ったホワイトボードをだしてなにか話している。
声は聞こえるが脳が理解しようとしない。
なんとかお風呂に入り、眠りについた、


2日目

前半は合同で基礎鍛錬。
体の重さはそのままで、高地トレーニング仕様でやる。
師匠が喜んでいる。変態だ。
トランポリンも設置して、空中戦もする。
わたしとマティスは飛べることはさすがに黙っているので、意識して浮かないようにする。
同じ動きを地上でする。できるわけがない。
が、繰り返していくと、できてくる。移動の応用だ。
これは体の重さをもとに戻したり、重くしたりと変えて鍛錬。

後半が組手、乱取り。
師匠とマティスにつられて演武になるのを、意識してそらす。
これがまた、つらい。流れに逆らうことになるからだ。
そこでやはり一拍遅れ、そこを突かれる。
次に複数戦。5人が入り乱れて打ち合う。
セサミンはこの鍛錬には不参加。黙々と基礎鍛錬をやらされている。
まったく軽くない。
マティスの剣術と師匠の棒術。
わたしの拳術+棒術とルグとドーガーの棒術による連携。
容赦ない。
ドーガー、ルグ、わたしの順で抜け、
マティスと師匠の乱舞。
ルグとドーガーは得るものがあると見つめている。
わたしはパス。
セサミンに柔術を教えておいた。痴漢撃退術に近い。

最後にまた複数戦。
ルグが師匠から1本とったところでいったん休憩。
懐かしのレモン砂糖漬けを食べている。
懐かしがったのはわたしだけだが。

「ルグ、でかした。あのまま、突き切ってしまえばもっとよかった。」
「ありがとうございます!」
後半の言葉の意味は解らず礼を言っている。
「ドーガーもよかったぞ。もっと思いっきり踏み込めばいい。
お前の足を引っ張ているのは戸惑いだけだ。」
「はい!」
「セサミナはどうだ?いまは体が重いと思うが、もう少しで軽く感じるはずだ。」
「はい、確かに重いです。しかし、体が思うように動くというのが実感できています。」
「いい傾向だ。だが、お前は守られるべきもの。
これ以上先に進むと己の危機の時に自分が動いてしまう。それはダメだ。2人を信頼してな。
愛しい人に柔術を教えてもらっただろう?自分の身を守るのにはちょうどいい。それを極めろ。」
「はい!」
「愛しい人は?私からもワイプからのかなりの確率で1本取れるだろ?
ほかになにか鍛えてほしいところはあるか?」
「モウ殿は体力も十分付きましたし、なにしろ瞬発力がいい。
持久力は、ま、これから鍛えていけばいいでしょう。それでも、
ルグとドーガーの上に行ってるのですから。」

そうなのだ、マティス、ワイプ、この2人は同格。次にわたし、ルグ、ドーガーの順は変わらない。
かなりの底上げ感はあるのだが、同じようにマティスと師匠も上に行っている。

「鍛錬だからね、気をまとっていないでしょ?
マティスも師匠も本気の気ってのをだしてないよね?
そういうのを出されたときはうまく動けるわからないな。」
「そうですね、気の練り方はしていませんでしたね。ではちょっとそれをやってみましょうか。
あくまでも模擬ですがね。ドーガー、あなた、気を最大限で出してごらんなさい。
ルグが御前試合でやったように。
各自は耐えるようにね。ああ、セサミナ殿はマティス君の後ろに。
モウ殿は気が外に漏れないようにできますか?」
「はい、砂漠石の膜があるので大丈夫だと思います。」

「では、行きます。
はっ!!」


ドン!と衝撃波が来る。あの時のルグ以上だ。


続いてルグ。

「はっ!」


重い。地面が揺れる。格段に力がついていることが分かる。


続いて師匠。

師匠の威嚇は知っている。しかし、所詮威嚇だ。
それでも、一気に殺してしまおうとしたのは笑い話だ。うん。
念のためマティスの後ろにみんなが移動する。

「行きますよ~。」

掛け声だけが軽かった。
マティスに庇われても踏ん張らないと立っていられない。
セサミンの上にドーガー、ルグと、かばうように伏せていた。

「どうです~?」
「師匠!さすがです!これをすれば、あの副隊長になにも言わせないのに!」
「ふふふふ。だからいいのですよ?強さは見せるときと見せない時があるのです。それが強さというものです。」
「はー、師匠の弟子になれてよかったです。」
「愛しい人!そいつはただのさぼりなだけだ!」
「そうだね。それができるほど強いってことだよ。
わたしはできる人は全力でするべきだっておもってたけど、違うんだ。
弱いから全力をだして結果負けてしまう。強い人は出せる力を自分の意思で決められる。
それが強さだ。師匠は間違いなく強い人だ。もちろん、マティスもだ。わたしもそうなりたい。」
「・・・愛しい人が誰よりも強い。」
「そう?ありがとう。」


マティスの番だ。
先に師匠をほめてしまったからそれ以上を出すことはわかっている。
師匠を先頭に、わたし、ルグ、ドーガー、セサミンと並んだ。
同時に防御の気を出す。急遽その練り方の講義。
試合会場で師匠が出したものだ。
何とか形になる。
念のため、セサミンの後ろに特大クッションを出す。
この時点でやめておけばいいのに、みなテンション高く、その選択肢はない。

「では行くぞ。3、2、1、 はっ!」

ドーンという音。防御の気ごとうしろに飛ばされる。セサミンは完全にクッションにのめり込んだ。
皆髪の毛がオールバックだ。師匠は髪の毛が逆立っている。

すごいとかの次元ではない。
なぜかみんなで大爆笑になってしまった。
もう、笑うしかないのだ。

「愛しい人!」
マティスが笑っているわたしを抱きしめる。
「ああ!マティス!わたしの愛しい人。なんてすごいんだ!
マティスと一緒にいればわたしは絶対に安心なんだと思ったよ。」
「おまえがいう絶対か?」
「そう、絶対!ああ、ありがとう。わたしのマティス。必ずわたしのそばにいて。」
「ああ、必ず。」

マティスはわたしから離してはだめだ。
マティスを守れるぐらいわたしも強くならないと。



「モウ殿も出しますか?決闘の時より、
あのおぞましいものよりも今ならもっと上を出せるでしょう。」
「うん、やってみる。マティスと師匠はセサミンたちを守ってね?」
「わかった。」
「ええ、全力で来てください。」


クッションは3重にしてセサミンを守っている。
別にこの中で耐えることはないのだが、経験したいというのでしかたがない。
大丈夫だろう。
マティスと師匠もいるんだ。

この鍛錬場もある程度衝撃に強いと聞く。
うむ、全力。


マティスを守る。
それだけ。


「はっ!」








なにも起きない。


「あれ?不発?」
「モウ殿、何を考えました?」
「え?マティスを守ると。」
「んー、それだとここではなにも起きませんね。ここはマティス君を害するものはないですから。
仕方がないです、仮想の敵を作ってください。
その、あなたがじいと呼ぶものでもいいです。耐えてみせます。これも鍛錬です。」

えらい言われようだ。

「愛しい人、悲しい思いはしないな?大丈夫だな?」
「ははは!大丈夫!本気のG殺しの気を出すよ!!」


いつもは母親と2人で対決していたGを
1人で始末することになった時、ものすごく冷静だった。
誰も頼れないからだ。




「じゃ、行きます!3,2,1、死ね!!」




ズドーンという音、地響き。建物が揺れている。
みんながクッションにのめり込んでいる。



かなりの沈黙が支配した。











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