いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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140:押問答

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村長の息子が遅いぞとご立腹だ。
茶葉屋の息子さんは
「勝手に待ってたんだろうが!文句があるなら帰れ!!」
あまり威厳はないようだ。

「茶葉屋の息子さん?先ほどはありがとうございました。あの、なにか?」
「私には挨拶がないのか!!」
マティスが前に出る。
「お前は正式に名乗りを聞いていない。親切な守衛殿がいたから
黙っていたんだ。こちらは名乗っている!貴様は誰だ!!」
うわ!すごい威嚇。うん、威嚇だけ。
「わ、私は、ここコアの村長の息子、エトリーだ!!」
頑張ってエトリー君が答えている。
「で?」
「で?だと!なんだそれは!失礼な!!」
「?わからないな?どう失礼なんだ?」
「わからない?は!!田舎者が!!ここの村長の息子だと言っただろう!
耳が悪いのか!」
「お前は頭が悪いのか?だからそれでと聞いている?」

こちらにこっそり廻ってきた茶葉屋の息子さんが小声で
話しかけてきた。

「先ほどは本当にありがとうございました。いい記念ができました。
あのそれでなにか?」
もう一度聞いて見る。5銀貨では足らなかったんだろうか。
こっちに聞くからだよ!
「いや、あんたの旦那すごいな!笑いをこらえるのに苦労する。
あいつは間抜けな息子なのさ、あの調子であしらっておけばいい。
あの見学して、植木作って持って帰るのな?貸し馬屋と共同で
旅人に勧めようと思うんだ。」
「あ、それいいですね。時間が有れば参加できますし、いいお土産ができますし、
あ、ちょっと待ってください。」
マティスと村長息子は、間抜けといったほうが間抜けなんですといった問答を繰り返している。
こっそり部屋に戻って、かわいくラッピングした鉢を取りに行った。
「これ、かわいいでしょ?」
ちょっと自慢したかったのだ。
「お!いいじゃないか!緑と赤がいいね。」
「ええ、いろんな布切れを用意して、思い思いの飾りにするのもいいですね。
こういうの、旅人さんじゃなくても村のご婦人方も好きなんじゃないですか?」
「あー、そういうのな。あー、これじゃ足りないか。」
「?」
「いや、あの考えを使わしてもらおうとな、礼のつもりで
茶葉を持ってきたんだ。とにかく、もらってくれ。な?」
「いえいえ、何を!そんな困ります!」

押問答が始まる。

「あの、では遠慮なくいただきます。
でも、貸し馬屋さんと組んでするというのはあなたの考えなのですから
これ以上はもう。」
「いや、まだ足りないよ。」
「あー、では、あの人連れて帰ってください。」
「あー、あれか、、、」
「だいたい、何しに来たか知ってます?」
「いや、怪しい、絶対そうだとブツブツ言うだけでわからん」
「こわ!!あのお礼というならお願います。明日は早くにここを出るので
もう、寝たいんです。それに、わたしたち初めての旅で、その、、、」
「あーあー!それは悪かった!ああ、任せとけ!エトリー!!帰るぞ!
え?」
2人で振り返るとマティスの左腕にエトリー君がぶら下がっていた。

「はははははは!!」
なんだそのコアラ状態は?

ひーひー言いながら茶葉屋の息子さんはコアラもどきを引きはがし礼を言って帰っていった。
この様子を扉のすきまから見ていたほかの客に謝りつつ、部屋に戻った。

「何してたの?あれ?あはははは!!」
思い出しても笑える。
「あれが言うには私はマティスで間違いがないそうだ。」
「正解だね。」
「なのに左腕が動くのがおかしいと、両目も見えているのがおかしいらしい。」
「それで腕にしがみついていたの?」
「確かめさせろというのでな。
おまえは?あの茶葉屋の息子は?」
「なんか今日の見学でいい儲け話が浮かんだから、お礼に茶葉くれたよ?高いほう。律儀だね。」
「儲け話?」
「うーん、馬借りてお茶畑行って植木鉢作ってお茶飲んで?今日のわたしたちがした流れを
旅人とか奥様連中に勧めるんだって。観光で来た人は興味あるんじゃないかな?」
「そういう儲け話か。」
「うん。まだお礼したりないっていうから、連れて帰ってくれってお願いしたの。」
「殺気をあてるのもあとが面倒だしな。助かった。」
「でも、また来そうだね。明日は早く出発するって言っちゃたから
それ聞いて月が沈んですぐ来られるのも嫌だね。」
「今からでるか?家に帰ればいいし。」
「んー、今日は2人で新婚旅行で、初夜だから、、、」
「!そうだな。そうだった。おいで?」
「ん、お風呂は?」
「後で、それは家に戻ろう。」
「ん、暗くして?」
「ああ」
砂漠石のランプを消して、音が漏れないようにもしてもらった。
ベットが変わっただけなのに、いつも以上に求め、求められた。



月が沈むと同時に宿を出発。泊まらなかった日数分は返してもらった。
豚がいる森はどこだと聞くと、昨日いった茶畑の向こうになるという。
馬に乗るのは気持ちよかったので、また借りることにした。
豚を狩って戻らず北に向かう、
馬はそこで放すが問題ないか?と聞けば問題ないと、
あんたたちなら1リングでいいと言ってくれた。
が、帰りに馬が一人でけがなんかしたら申し訳ないから
5リングは受け取ってくれと押し付けた。
その代わり昨日の賢い馬を貸してくれた。
おすすめの森も。
彼ように赤い大根を大量に買い出発だ。
ここの馬は赤いのだ。

まだ活気が出きっていない街道を進み、茶畑の緑を堪能し
そこから先はラーゼムに似た風景と違いはところどころに森がある。
この森の中に豚がいる。
しかし、以前聞いた血抜きの方法は見たくないので、
わたしの寝ている間にしてくれるようにくれぐれも頼んだ。
この豚の毛は毒もないからお前でも狩ることができると。
眉間か心臓に確実に当てるだけで息絶えるそうだ、
その状態で収納すれば、鮮度も落ちず血抜きはできる。
一般に森では血を流さずに、そのまま、持ち帰り
逆さに吊るすから、そんなに急いで処理することもないようだ。
長い毛に興味があるので、その毛はうまくはいでもらうことにした。
あくまでわたしが見ていないところで!!


こんもりとした森につく。
ここでも茸は生えるのかと聞くとコットワッツだけらしい。
朝ごはんを食べて、馬君には赤い大根を好きだけ。
馬君の好きな食べ物シリーズの話は面白かった。
なんでも色がついたものはうまいと確固たる自信があるそうだ。
じゃ、皮をむいたサボテンは?と半透明な若葉を出してみると、うますぎるとうなだれていた。
もうこれは食べられないんだと言えば、まさにしょんぼりした。
悪いことをしたなと慰めて、帰ってもいいよと促し、トボトボ帰っていく。

「悪いことしたね。」
「そうだな、これから気を付けよう。」

そこから一度家に戻り、砂漠の民風の動き安い、砂漠石が練り込んだ服に着替えた。
森は薄暗い。サボテンの森でも、街道の森でもない、でも植物群は大きい。
匂いで豚が逃げると困るので虫よけを焚けない。この時点でもう、豚はいいとあきらめそうになった。
マティスが豚料理をあげていく。
ハム、丸焼き、蒸し肉、唐揚げにもできそうだと。

「狩らねばなるまい」
「狩らねばなるまい」
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