いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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131:手土産

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笑いながらの道中、2頭目のサイ。今度は南から。
サイに対して正面構えで打つ。巨体がこぶしを軸に回転する。
マティスの離脱が早かったから毛には触れなかったが、
私では一呼吸遅い。サイの巨体の下敷きだ。
「この方法はダメだ。」
「うん、ダメだね。最初のやり方で、手袋しよう。砂漠石で。
あ、膜を作っておいて、そのまま打てば、伸縮するから毛に触れない!!」
「それだ!!」

3頭目マティス4頭目わたし。
やはりわたしは打つのが遅いようで、マティスは心臓あたりを打ってるので
即失神するが、わたしは腹あたりになり気絶はしてるが苦しそうだ。ごめん。
ということで、残りはマティスにしてもらった。6頭目仕留めたところで、月が昇る。

狩りはやめて、食事をしてから、飛びながら進んだ。
それを繰り返し、後2日歩けば草原ラーゼムにつくところまで来た。
「ここから、風呂も入らず、飛ばずに進もう。
あまりに小奇麗な姿だと怪しまれるからな。」
「おお!なるほど、で、到着前ぎりぎりでサイを取って、手土産にしよう。
正面付きの方法でね。」
「それで行こう」

視界の向こうに木の柵をめぐらしたものが見える。
ここいらには木なんて生えてないのに、どこからか持ってきたんだな。
大変だね。
門があり、見張りが2人立っている。2人はまだ気づいていないので、
気配を消し、うまくサイが来るまで待った。
サイが来る、わたしたちが現れる、見張りが気付く、
で、サイを狩る、この流れだ。


うまく北側からやってきた。
2人で気配を戻し、見張りもこちらに気付く。
逃げろと声を張りあげてくれるが、そうはいかない。
マティスが腰を下ろした時に、サイは止まって草を食べ始める。
 「「え?」」
2人して声を上げる。そういえば草を食べているところは初めて見る。
突進した来たところを即狩っていたからだ。
むっしゃむっしゃと食べている。そしてたなびく毛がふわふわと広がり始めた。
「その毛は毒だ離れろ!!触れるな!!」
見張りが声を上げると同時に、マティスが私を抱え見張りのほうへ飛ぶ。
ギリギリ、ジャンプ力スゲーでごまかせるか?

近づいてきた見張りは心配そうに声を掛けてくれた。
「大丈夫か?毛に触れてないか?触れていたらすぐに洗い流さないと。
子供だったら死ぬぐらいの毒なんだ。」
「ああ、ありがとう。あんたたちが声を掛けてくれて助かった。
あれが有名な草原サイか?」
「そうだ、この頃は狩るやつがいなくてな。最近1匹石につまずいてこけた間抜けがいたのさ。
それは領主様に献上したがな。ああ。食いてえな。」
「今の状態で槍かなんかで突けばいいのでは?」
「ダメだ、ダメだ!!あの毛が廻りの気配を探っているし、
槍で突けば、毛が飛び散り、その毛が仲間を呼ぶ。
そうなったら、ここいらの草は全滅だし、風にのった毛が数十本と人に触れれば最悪死人が出る。
だからあの状態の時は何もしてはいけないんだ。」
「そうか、それは本当に命拾いしたな。ありがとう。」
「なに、あ、こっちに来る!!ちくしょう!!おおい、逃げろ!門は閉めろ!!」
「ティス!」
「ああ」

こちらに突進してきたサイはマティスの正拳付きで倒れた。
ズドーン、、、。

「おいおい!!すげえな!」

ついてる!もう一匹来た。南から。
こいつは止まらない。
ズドーン、、、。


うまく2頭仕留めました。
「おい、これはどうすればいいんだ?気絶してるだけだ。
心臓を付いてもいいのか?」
「ああ、そうだ、心臓を付いて毛を焼けばいい。おい!誰か村長を呼んで来い!
それで火だ!砂漠石だ!」
マティスは槍を出し素早く心臓を付いた。
「ああ、砂漠石ならある。大きさは?」
「火種にするだけだから小さいのでいい。小指の爪より小さいもので。」
それぐらいの石を2つ見張りの男にわたし、後はやってもらう。
きゅっと握り、放り投げると長い毛に付き、あっという間に燃え広がる。
もう一頭にも同じようにし毛をすべて焼いてしまう。
毛が膜のようになっていく。蛹?ちょっとグロい。
思わずマティスにすがった。
「モウ?ああ、少し怖いな。大丈夫だ。」
「ははは!なんだ?嫁さんか?こうして膜になるから血抜きはしなくていいし
このまま運搬できるんだ。この肉を食べたらそんな顔できないぜ?
ここの女子供はこの姿を見ただけで目がランランとする!当然男共もな!!
この前のサイは久しぶりだったんで領主に売ったが、なぁ、これを売ってくれねえか?」
「いや、売らん、ところで村長というのは?」
「けっ!なんだよ!!」
男が悪態をついているが、火の粉が廻りに飛ばないようにきちんと面倒を見ている。
いい人だ。
そうしているうちに村長がやってきた。
「旅の方、砂漠の民の方ですな。我々の遠い祖先は砂漠の民の出なのですよ?
縁とはるばるようこそ兄弟。聞けば門前で2頭のサイを仕留めたとか、
早速ですが、この2頭売ってもらえませんか?」
「ああ、この方にも言ったが、売りはしない。
この2頭は手土産がだ。
声を掛けてもらえなければ、毛にも触れていただろう、
それに処理もしてくれている。ありがとう。
出来れば一頭は領主殿に献上してくれ。世話になったんだ。」
「なんだよおい!!いい奴じゃないか!じゃ、1頭はまるまるいいんだな?
村長?」
「ああ、お言葉に甘えよう、ありがとう兄弟、遠路はるばるよくいらしてくれた。
草原の民の歓迎を受けてくれ。」
「ああ、喜んで。それと、これをゼムから預かっている。」
「おお!ゼムから?彼はわたしの年の離れたいとこなのです。
失礼。ああ、なるほど。そうですか。
サイのことがなくても客人です。さ、お二方、歓迎します。」

なんとか、スムーズに歓迎されました。
ただ気になるのはマティスを見る女性陣の目です。
そしてわたしを見下す目、、、あーあ。

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