いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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112:生産院

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ぽちゃがり2人組が手を引かれて入ってきた。
そういえば、この世界に来てから初めて女の人を見た。
変動の時はそれどころではなかったから。
おお?なんか、気配を探られてる。

(奴らは護衛だな)
(へー、この前はいなかったよ?)
(王都の者だ。探りに来てるんだろう。中央にいるのが王都の生産院のものだな。)
(へー、えらいさんなの?生産院?)
(あたらしく事業を起こすとかならず出てくる。そして先に隠匿を施し利権を物にする。)
(うわ、付き合いたくないね。)
(あの2人が報告したんだろうな。それにしても来るのが早い。
変動の時期を向こうは把握していたんだ
セサミナがどう動くかずっとこちらで待機していたんだな。)

先に2人の話から始めるようだ。
部屋の赤色のものがすべて除かれ、2人は目隠しを外した。
うわー、だいぶやつれてる。ポチャなんて言えないね。
お偉いさんは挨拶が済むと黙って座っている。

「兄上方?先触にありましたが、なぜ3日殺しがかかったのです?
説明していただきたい。」
「説明も何も、こちらが聞きたいわ!!間違えてかかったのに決まっているだあろう!!」
「そんな!!赤い塊殿に聞きましょう!」

カドルカは横の護衛の顔色を窺い、護衛が首を横に振る。
いるかいないか確かめさせたんだな。

(気配探りってあまり使えないね。強い力の前では意味ないし、
 セサミンもいるよーって教えてあげれば気付くしね。
横の彼女は何で得意げに首を振るんだろう?)
(過信しているんだろう。)
(なるほど、過信、絶対だめ。)
(ふふふ、そうだな。だが、寝床で過ごした1日は素晴らしかったぞ?
ああいう日をまた作ろう?)
(そうだね。おやつとか、いろいろ用意してね。ん、あん、だめだよ?)

マティスが抱き寄せて首筋を舐めてくる。
(兄さん!姉さん!!)
((すいません))
セサミナがカドルカと話しながら怒ってくる。器用だね。

「聞かなくてよい、現にこうしてかかっているんだ。もうよい。わたしは慈悲深く寛大だからな。
解呪の法を掛けておいてよかった。ほら、これで解かれるんだろう?
わられの全財産と利権だ。ふん、うまくいけば、手に入るでも思ったか?
しかし、すべては息子に譲ってある。残念だったな。」
「そのようなことは考えておりません。ご迷惑をおかけしたようですね。
・・・はい、書類に不備は有りませんね。スチック兄上も。
そうですか、あなた方の全財産は、今着ているお召し物だけなんですね。
屋敷も譲ったんですか?工場も?
横に控えている方も?」
「ふん、彼女らはメディング様がお付けしてくれたのだ。
女だてらにという認識は捨てねばならぬな。わが配下の者よりはるかに強かったぞ?
お前の赤い塊とやらでも敵うまい。」

(セサミナのものではない、私のだ。)
(ふふふ、そうだね。)

「しかし、その服をいま渡されても困りますね。
 そうですね、これに署名を。」

セサミナは紙を取り出し、さらさらと何か書いている。
これは、鉛筆だとかっこ付かないね。
書き終わると、握りこぶし半分ぐらいの石も取り出した。

「なんだ?」

覗き込むとこう書いてあった。


全財産、全利権譲渡の暁には
服は貸し出す。速やかに返却されたし。
ただし、譲渡時から価値が損なわれれば、
返却は不要だが、
今後一切、領家への立ち入りは不可とする。
これは石の契約である。


「ふん、くだらない。
書き加えろ、外部からの力では無効で、
2度と赤い塊に3日殺しは使わせないとな!!」

(石の契約って?)
(石の隠匿と同じだ、契約に石の力が加わる。守らなければいけない。
破れば、死にはしないが、嫌がらせのようなものが続く。腹が痛くなるとか、貧血になるとか。)
(地味だけどいやだね、それ。あ、セサミン、いいよ、それで、3日殺しが2日殺しになるだけだ。)

「わかりました。では、署名を。はい、ありがとうございます。
では、ここに正式に財産譲渡の手続きは終わりました。その書類も今より有効です。
自ら転倒して服を破かないように。」

石が砂になって消える。ほんと不思議だ。

「生意気な!!今日はメディング様が来てくださっているんだ、
その新規事業のことをよくよく”相談"するんだな。
それと、赤い塊を呼べ!謝罪させろ!!」

(奪う気満々だね。)
(セサミナの考えは素晴らしいから。あの小さな石をまとめて使うことを考えたのも
セサミナなんだよ。)
(お!なんだ、いろいろ研究してるんだな。えらいぞ、セサミン?)

(姉さん呼びますから、外から入ってきてください。)
(はーい)

「ルグ、赤い塊殿をお呼びしろ。」
「わかりました。しばらく、お待ちください。」

ルグが廊下に出ると同時にわたしたちも外に出た。
めんどいね。

「赤い塊殿は部屋にいるんじゃないのか?」
「ルグは適応性があるね。ここだよ?」

一応口元は隠す。
ルグの前に姿を現すと、びくりとしたが、顔には出さなかった。
「よかった、では、入りましょう。」
『わかりました。ルグ、案内ご苦労』
「はっ」

なぜか、マティスから冷たい空気が漂った。

「?」
「さ、赤い塊殿、セサミナ様がお待ちです。」
「はーい」

「セサミナ様、お連れしました。」
『お呼びと伺いました。何用でございましょうか?』

傍まで行き、挨拶をすると、
ぽちゃがりコンビがわたしを見上げ、思いっきり血反吐を噴き出した。

ドーガーが素早く書類を抱え避難する。

「なぜ?呪いは解けたはずでは?赤い塊!!だましたのか!!」
『なぜお二方がかかっているのかは捨ておきますが、我が一族に伝わる3日殺しを愚弄することは許しませぬ!!』
「ぐほっつ、、はぁはぁ、ふん、その3日殺しはもう使えぬわ!ぐぼっつ!!しかも腹が痛い!!」
「赤い塊殿、3日殺しは誤ってお二方にかかったそうだ。その理由はもうよい。
石の契約で二度と3日殺しは使えなくなった。
しかし、お二方。服が自らの血で汚れましたね。
石の契約により、今後一切、領家への立ち入りは不可となります。腹が痛いのはそのせいでしょう。
お引き取りを。」
『そんな、わたくし唯一の武器が・・・』

よよよとしなだれてみる。
2人の女護衛の気配がまとわりつく。値踏みされているようだ。

「解呪は?解呪は!!」

わたしの赤い服を見て吐き、吐いた血を見て吐く。

ルグが聞こえよがしにこういった。
「セサミナ様、”ご苦労”と言ってはいないのでは?」
「ああ、そうか、なるほど。それをいって解呪だったな?赤い塊殿?」
『・・・はい、そうです。』
わたしはしょんぼり答える。
マティスはかわいい、かわいいと抱き付いてくる。もう!!

「その服は、契約によりそなたたちのものになったが、
もう屋敷に来れぬ。
では、"ご苦労"であった。ドーガー、送って差し上げろ。
ああ、馬車の手配もしてやれ。わたしも慈悲深いからな。」
「はっ」

「血は、、止まった。あ、腹は痛いままだ。」
「兄上わたしは、足の小指が痛い。」

「早く出ないと、そのままですよ。」
「なにを!!と、とにかく一度屋敷に帰る!!」

ばたばたと2人は帰っていった。

「あはははは、これは愉快でしたな。
さすが、賢領主と呼ばれることは有る。2人が次期領主にならなかったわけですね。
なかなかに間抜けでした。おや、失礼、それでもあなたの兄上ですからね、言葉が過ぎました。」
「いえ、お気になさらずに、事実ですから。」
「ははは、あなたの兄は”すべて”間抜けということですね。」
「・・・」

(おう、おう、うちのマティスが間抜けとはどうゆう了見だ?表にでろぃ!!)
(お前以外はみな間抜けだからいいんだよ。)
(そう?ならいいいか。)
(2人ともじゃれないで!!)
((すいません))


「それで、メディング様。本日はどのようなご用件で。
ああ、赤い塊殿。さがってよいですよ。」
「いえ、赤い塊殿とお呼びしても?ぜひ、同席してください。
この2名は私の護衛でね、こちらのルグ殿やドーガー殿よりも腕が上と聞かされましてね、
ぜひ手合わせを願いたいと、いかがです?」

これにはルグが反発した。

「失礼いたします。メディング様、それはいささか失礼というものでは?
赤い塊殿はセサミナ様の護衛であって、メディング様のご趣味に付き合う義理はないのでは?
どうしても余興をご所望ならばわたしがお相手いたします。」
「ははは、ルグ殿は手厳しい。いや、男性相手に勝っても女性だから手加減したとあとで言われれば
なんともはや。なので、女性同士がいいのですよ。いかがですか?
セサミナ殿はあなたの腕を買っているのですよ?あの不思議なまじない以外でもね、
そうでしょ?セサミナ殿?」
「彼女は私の護衛です。必要な時にそばにいてもらっております。
それ以外は彼女の自由、赤い塊殿、いかがされますか?」

(姉さん、断って!!)
(ん?なんで?マティス、どう思う?)
(2人同時でもいいぞ?)
(兄さん!!)

『直答お許しください』
「ああ、許す」
『お初にお目にかかります。わたくしは赤い塊と呼ばれしもの。
以後お見知りおきを。』

同じような挨拶をする。これしか知らないから。

『さて、この二名と手合わせですか?それはよろしいのですが、
それにはどのくらいの金子が動きましょうか?』
「金子?金か?ははは、これは驚いた、金で決めるというのか?」
『?はい、もちろんでございます。わたくしは雇われの身。
セサミナ様からは必要な時の護衛を依頼されております。
手合わせはセサミナ様の依頼ではありません。
ならば、そもそも、この手合わせを望んでる、そちら様が提示されるべきものです。
それによって、受ける受けないはわたくしの自由。違いますか?』
「ははは、なるほど、では赤い塊殿は金で動くのだな?わたしの護衛をしないか?」
『それを受けるには金子の額ともう一つ条件がございます。
お望みでしたら、それは、その時に提示いたしましょう。
まずは、このお二方との手合わせ。そもそも、この方々はそれをお望みか?
負けた後で、領主の護衛に華を持たせたと言われても、なんともはや、ねぇ?』

ルグを馬鹿にしたので同じように言い返す。
2人から、なにやら嫌な気が漂う。
お昼休みに新作の鞄を持っていった時のあの更衣室の空気。なつかしい。

「2人ともが望んでおります。では、2人とそれぞれの手合わせ。
500リングでどうですか?」

(え?わからん。リングって何?これは多いの少ないの?)
(私もわからないな、今リングの価値ってどうなんだ?)
(あら2人でお間抜けだねー)
(50リングで1か月贅沢して暮らせる)

『ふふふ、何とも少ない。それだけなのですか?
ならば、このお話なかったことに。
それに、このような契約ごとは初めてなのでしょうか?
いつ、どこで、勝利条件など、なにもなくただ、金額だけを提示するだけとは。
やる気を出した、わたくしが恥ずかしい。』
「これは、これは、私に契約云々の講釈とは、恐れ入りました。
では、改めて、明日の月が沈んで、すぐに。場所はセサミナ殿に用意していただこう。
どちらかが戦闘不能になるまで。勝ったほうに1000リングを払いましょう。」

(おお!すごいね。セサミン、ねーちゃんがんばるよ。)
(姉さん!まって、まって!!)

『勝ったほうにですか?それではわたくしにうまみは有りませんね。』
「どうして?自信がおありでしょ?勝てばよろしいのです。」
『ふふふ、挑発してもダメですよ。どうしてもとおっしゃるのならば、
3000リング先に用意していただきましょうか?
それを見せていただきたい。あとで、今はないなど、小物の言い訳をされても困りますので。
そして、2人同時でお願いします。わたくしは忙しい身なのです。』

これには2人の護衛もむかついたようだ。
勝ったほうに1000リングと聞いてうほうほしたくせに。

「これは無知とは恐ろしい。王都、生産院のこのメディングに
契約の話だけではなく、小物扱いとは。
わかりました、その条件で。しかし、この2人が勝てば、
それは彼女たちに褒美をやるだけだ。わたしにもうまみがほしい。
赤い塊殿、こちらが勝てば、私の専属の配下になっていただきたい。」

(セサミナ、こいつが死んでなにか困るか?)
(兄さん!まって、まって!!)

『ふふふ、わたくしも安く見られたものです。
5000リングですね。それ以下ではありえない。』
「・・・わかりました。その口元の覆いと、赤い上着を脱いで見せていただきたい。
それが最後の条件です。」
『これは困りました。この覆いを外すのは伽のときのみ。ご容赦を。』
「・・・わかりました。ではそれはあとの楽しみにしておきましょう。」

(殺す!!)
(兄さん!!お願い!待って!!)

『上着の下を見たいとは。裸ではありませんよ?よろしいか?』

(わたし下になに来てる?ジャージのまま?ヒールはいてるけど?)
(あの先生のかっこうだ。)
(え?うまく着せれた?)
(あの格好なんですか!!)
(いい?)
(いいぞ?その中を知ってるのは私だけで十分だがな。)

上着を脱いで見せる。

『これでよろしいか?ああ、明日はこの服ではありませんよ。
では、これで、条件はそろいました。契約書は明日用意しておきましょう。
不履行のないように』


肩幅に足を開き、胸の前で手を組む。ちょっと持ち上げる風。
ああ、いいね、どーんって感じで。

ルグとドーガーが固まっている。
生産院の人は足にくぎ付けだ。
護衛2人は胸にだ。その大きさで戦闘ができるのかと思っているのだろうか?
ブラがあるのだよ。

「メディング様、もうよろしいか?
赤い塊殿も、もう上着を着てください。
ルグ、ドーガー、隙だらけだぞ?明日の場所の準備をして来い。
防音と強化もしてくるんだ。大講堂がいいだろ。ほら、急げ!!」
「はっ、わかりました。」
2人が前かがみになって出ていく。うむ、破廉恥なのだな。気を付けよう。
上着を着こみ、2人がいなくなったので、
護衛として傍に立つ。

「あ、赤い塊殿、その、装束は?」
『・・・・』

もう、めんどいから答えない。

「メディング様、それ以上は明日お聞きになればよろしい。
かなりの時間を取ってしまった。
それで、今日はどのようなご用向きで?」
「そうだな、明日聞けばいい。
そう、あの2人からなにやら新しい事業を行うと聞きましてね。
どういったものかはわからずだったので、直接聞きに来たのですよ。
もし、既存の権利とかぶっていればご忠告できるかと思いましてね。」
「なるほど、それはご親切に。兄2人もなんだかんだと、この弟を手助けしてくれる。
もう、会うこともないと思うと残念でなりません。」

(セサミンもよく言うね)
(そうだな、なかなかの嫌味だ、胡散臭さこの上ない)
(うるさい!黙って!!)
((はーい))

「それで、どういったものなんですか?」
「ええ、しかし、石の隠匿は済んでおりますよ。
王都のソースのように、作ったものが知らずに隠匿を掛けられ、
そのまま行方知れずになることのないように。
もちろん、発明者の承諾を得ています。」

(あー、王都のソース、そんな事情があるんだね。
セサミン、最初の発明者は大事にしないといけないよ?)
(わかっております。)

「ああ、あの事故ね。あれはかわいそうでしたな。
 なんでも、弟子が良かれと思って施したらしいですよ。」
「では、生産院のほうで公表すればよろしかったのに。」
「いや、それは、その弟子も行方不明なのでね。申し出があれば解除しますよ。
それまでは王都が管理します。隠匿するんはあまりにも惜しいですからね。」

(ん?石の隠匿って、生産院はなかみ見れるの?)
(生産院に対して公表型と隠ぺい型があります。もちろん、今回はすべて隠ぺい型です。)

「そうですか。
では、こちらをご覧ください。まだ開発途中ですがね。
ごむとたおるというものです。ここから発生するものにすべて隠ぺい型の隠匿を掛けております。」
「ん?これですか?
 ふ、ふははははは!!これは、これは!!あの2人が是が非でも生産したいと言っていたものがこれですか?
いやはやなんとも。ふ、ふ、あハハハハハ!!」

2人のの護衛も失笑している。え?なんで?

「これで、なにができるというのですか?ああ、この布は雑巾にいいですね。
この塊は?固くもなく柔らかくもない。なんの役にも立たない。
変動が起こり、石に頼らない模索をしていると中央院からも聞いていましたのに、
無駄足だったようですな。いや、赤い塊殿との出会いは素晴らしいものですよ。」

(え?わたしモテ期到来?)
(もてき?)
(うん、なぜかいろんな人から好意を寄せられる時期のこと。もててもてて仕方がない時期、それがモテ期)
(セサミナ、いつ殺せばいい?いまか?この館を出てからのほうがいいか?
(兄さん!館を出てからにしてください!)
(え?だめだよ。明日、お金もらわないと。)
((ふん、命拾いしたな))

「なんの役にもたちませんか・・・では、これらに関して
生産院、及び中央院は一切関与しないと、ここに署名していただけますか?」
「これはこれは。ええ、いいですよ。逆に生産院が関与しないということで人気が出るかもしれませんね。
民はなかなかに反発をしてくるので。はい、これで。お役に立てて何よりです。」
「ええ、ありがとうございます。はい、間違いありませんね。
では、月が沈んでかなりの時間だ。今日はどうされるのですか?」
「ええ、街の宿に泊まります。なんでも、街で人気のはんばあぐを食べさせてくれるそうで。
ご存じですか?」

(え?雑貨屋から宿屋になったの?)

「はんばあぐは知っています。雑貨屋が売り出していたと思いますが?」
「ええ、最初はね。しかし、はんばあぐは人気になったようだが、一人で作っているので
数が出ない。すると買えないものが出るでしょ?
あの店をひいきにしていた客も、はんばあぐが買えないから、本来の雑貨も買わなくなって
どうにもできなくなったとか。それに目を付けた宿屋が、はんばあぐを作る機械ごと
そのレシピを買い上げたそうですよ。もちろん、はんばあぐのレシピは隠匿済みです。」
「ああ、そうなのですか。レシピを隠匿しても、工業国で作られた機械があればできるのでは?」
「さすが、ご存じでしたか。あの機械はスパイルで作られたもので、
あの機械には、隠匿がかかっています。機械自体を買うことはできても、
肉を細かくして練り込んこんでもできないそうですよ。
そこに商機があるのですよ。この2つとちがってね。あはははは。」

(あれはそんなに特殊だったのか?)
(んー塩と砂糖水ってのがあれかね?それの比率?)

「しかし、遅いのでは?そのはんばあぐはわたしも食べました。
民も食べています。そこから真似をして作ることができるのでは?」
「いいえ、できません。あの材料の比率は雑貨屋しか知らなかった。そこに隠匿がかかるのです。
似たようなものはできても、あの味は出せないでしょう。」
「そうですか。食品のレシピは公開するほうが切磋琢磨してよりよくおいしいものができるのでは?」
「領主の言葉とも思いませんね。民は与えられたものだけを受ければいい。
それに隠匿を施したのはわたしです。そのとき少し味見をしたのですが、うまいこと、うまいこと。
あれ以上の味は出せないでしょう。
それが今日の夕食です。そうだ、お前たちも前祝いに食べるといい。」

2人の護衛はうれしいそうだ。
えー、ハンバーグがお祝い。いいけど。すき焼きがいいな。
ああ、お醤油がない、無念。

「赤い塊殿もいかかですか?いや、今日はやめておきましょう、
明日以降になればいっしょに食べられるのですから。」

(うわ、うざい!!)
(・・・・)

「それでは失礼しますよ。明日、月が沈めばまたこちらに伺います。
 その時に赤い塊殿がいなければ、契約にはありませんが、領主の名に傷がつくでしょう。
 護衛に逃げられたとね。あははは、それはそれで愉快だ。
ああ、送りはいりません、失礼しますよ。」

足音と気配が遠のいていく。
「イヤーすごいね。初対面のセサミンを嫌な奴だと思ったけど、
それの比じゃないね?むしろ正々堂々してすがすがしい。」
「え?姉さん、わたしのことをそんな風に?」
「ああ、最初よ最初。マティスと問答したとき。あ、落ち込まないで?だってしらなかったもん?ね?」

落ち込みセサミンを胸に抱き、頭をなでる。

「離れろ!!」

マティスが間に入る。もう、ほんと焼餅焼きだ。

「ありがとうございました。うまく、生産院と中央院のご免状も手に入れることができた。
これで、なにも手出しはできない。よかった。」

セサミンは椅子に沈むように力を抜いた。
「明日は大丈夫なんですね?」
「ああ、問題ない。私と組手してかなり持つ。攻撃も6割は躱すぞ。」
「それはすごい。よく短期間でそこまで鍛錬できましたね。」

準備が終わったのか、ルドとドーガーが戻ってきた。
「準備は整いました。」
「そうか、ご苦労。」

「しかし、あの味以上か、ふふ、姉さんのを食べればおどろくだろうな。」
「んー、それでも、あれは肉100%だからね。好みだよ。
あれをパンにはさんで、野菜とトマトもはさんでハンバーガーってのもあるよ。
あれは最初に作ったものが合うんじゃないかな?」
「はんばあがあですか?それは話を聞くだけでうまそうですね。」
「そう?作ろうか?」
「「「ぜひ!!」」」
「ははは、じゃ、作ってこようか。マティスはパンを焼いてくれる?こう、丸くてやわらかいの。」
「ああ、わかった。」
「じゃ、できたら来るよ。あ、そのあとお風呂貸してくれる?」
「ええ、もちろん。」
「じゃ、いったん帰るね。」
「セサミナ、またあとでな。」
「はい、兄さんも姉さんもありがとうございます。」

2人で帰って、ハンバーガーづくりに専念した。



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