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69:怒髪天
しおりを挟む人間、霞を喰って生きているわけではない。
作ってくれたものはチーズリゾットだった。
え?レストランテ開業するの?グルメ路線?パターンJ?
なにも言わず黙って食べました。
おいしかったです。三ツ星レストランの味です。
食べたことないけど。
コーヒーが白磁のカップで出てきた。
きれい。お祝いだそうです。ゼムさんからの。
ペアカップです。
奥さんからも別であるそうです。
あれから有ったことをどんどん話してくれた。
わたしは頷くだけ。
弟君のこと、
街の人の事、ゼムさんのこと。
飴は雑貨屋の親父さんの手作りとは驚いた。
菓子作りが得意なのだろうか?
クッキーとか作れないのかな?
給食の話をしたこと、喜んでいたこと、
バッカスの石をあげたこと、
王都のこと、3番目の兄のこと、血殺しの話、
ハゲチャビンの話。
そういう輩はどこにでもいるな。
弟君はかなりの曲者だな。領主の力か?まさか見えていたとは。
嘘は言ってないけど、すべてを話してるわけでもないって奴だ。
地方と中央の関係はどこも同じ。
でも、対等はだめだ。おいしくない。
下のようで上を使うようにしないと。
そんなことは兄さんには言えないか。
一度話をしてみたいな。
砂漠風の話。
壮大に勘違いしてた。よかったよ。炎症で。
力の影響で見たくないって思ってしまってたら、
盲目になってた。
この人だけが見えなくなっていたのだろうか?
耳掃除ね。して、、ないな。耳かきをを作ろう。
ガムね、塩磨きもしてないな、お風呂にもはいってない。
大体2日も経ってないはず。別れてから。
そう、別れたんよ。
なのになんで、もう普通にいっしょにいるの?
なんで優雅にお揃いのカップでコーヒー飲んでるの?
なんか、なんか、しらんが、腹が立つ。
だいたい、この状況、
軒下を貸して母屋を取られるなんて許し難し。
家がなくなってるから仕方がないのか?
許すまじハゲチャビン。そもそもあいつのせいだ。
しかし、弟君に国を出るって約束してるんだから仕方がない?
ここはもう国外?
ご飯のことさえ問題なければ生きていけるんだ。
金持ちなんだ、わたしは!
街にいって3度の食事だって食べることができるし、
何だったらお手伝いさんを雇ってもいい。
そうだよ、砂漠にいる必要はないじゃん。
この人が砂漠で生きるんならそうすればいい。
もうあの時で縁は切れたんだ。
ついていく約束もご破算だ。
めんどくさがらずに街に行こう。
欲望満載の家を建てるんだ。
そして、別嬪さんなぼっきゅんぽんなメイドさんと
ロマンスグレーな執事を雇うんだ。
今度は海に行こう。海峡石の親玉があるかもしれん。
水中散歩もできるかも。
ポン酒で海鮮尽くし。これで決まり!!
空になったカップを眺めながら、ぐるぐる考える。
斜め横に座る男も黙っている。
名前は呼ばない。
名は呪だ。縛り付ける。
わたしにはもう名前はない。思い出せない。
普通に向こうの記憶もあるのに。
教えられないんじゃなくて言えないんだ。
名を無くしたから帰れない?
帰れないから名を無くした?
どっちでもいい。
自由なんだ。しかもお金がある。
素晴らしい。
この男になんと言おうか?
先ほどはありがとうございました。
食事も素晴らしくおいしかったです。
家を無くされて大変だと思いますので、
お礼と言っては何ですが、こちらの家をお使いください。
おそらく収納関連の力もお使いいただけると思いますので
持ち運びも自由ですよ。
では、わたくしはそろそろお暇させていただきます。
今生での別れでごさいます。
本当にありがとうございました。
これでどうだろうか?
「・・・三度の飯は私が作る。
家を建てるのはいい。
ぽっきゅ?メイド?召使か?必要なら雇えばいい。
海に行くのも山に行くのも自由だ。2人でな。
だが別れる?今生の別れ?
それはダメだ!」
怒髪天を衝く、ブチギレルとはこのことだ。
「あんたに聞いてない!
そもそもあんたに拒否権はねえんだよ!
ここはあんたが好きに使っていいっていってんだ!
譲歩してんだよ!!こっちは!
力も使えるし、ここは砂漠の中心、
力を使って欲すれば砂漠石はゴロゴロでてくる!
それもって弟君のところにいけば
王都とのパワーバランスもすぐにひっくり返るわ!!
帰れよ!
それで、あんたが考えたようにウハウハな生活が待ってるよ!
子供も産めない女に固執する必要ないだろ!!
利用できるまで利用して楽しむだけ楽しんで婆になったら用済み?
今の緑の目で求められても、
それがいつかなくなってしまうのに怯えて生きろと?
捨てられる前に捨てるんだよ!!
あんたのために言ってるんじゃない!
わたしの為なんだよ!自分の身が一番かわいいんだ!
決定権はわたしにあるんだ!!
ええかげんにしさらせや!!!」
息が上がる、こんなに怒鳴ったのは初めてだ。
「ウハウハな生活?私が考えた?
子供のことはいい、怯える?捨てる?」
緑の目をこちらに向ける。
あれからずっと緑だ。
ん?わたし、声出していた?なにもしゃべってない、はず。
「・・・心の中が聞こえる。漠然としているが
ところどころ理解できる。
今生云々のあたりははっきり分かった。」
「!!」
逃げろ
月夜の砂漠にでた。真上に昇っている。
わぉ、瞬間移動。なんでもありやね。
どうする?ゼムさんの街まで行くか?
隣の国に行くか?月に向かっていけばいいのか?
「ダメだと言ってる。」
グリーンアイズモンスター
わたしは小さく丸くなるしかなかった。
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