いわゆる異世界転移

夏炉冬扇

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47:育つ

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目が覚めると、薄暗い。
腕の中には愛し人が、気持ちよさそうに眠っていた。
・・・よだれが出ている。

なにもかもが可愛らしい。
髪を撫でつけ、口元を拭ってやると、
「んぐぅ・・・」
といいながら、丸まってしまった。
その抱え込んだ胸の中に入り込みたい。
口元をたむたむさせている。また、なにか食べているのだろうか?

そっと、寝床から起き出し、着るものは風呂場に置いたままだと思い出した。
うっすらと見える扉を開けると、
真っ暗だ。当たり前だ、ここは深い土の中。

『月が沈みかけるぐらいの明るさを』
そこかしこに埋めたのだろうか?明るく照らし出した。

広すぎる便所に行き、やはり小ぶりに作ってもらおうと思い
風呂場に行き、せっかくのなので、熱い湯を浴びる。
なんとも贅沢だ。
水気を適度に飛ばし、服を”きれいに”してから身に着ける。
彼女の服も部屋に持っていったが、まだ、眠っていた。
さらに丸まっている。

暦をみると、月が昇るころだ。
彼女のかれんだあは6の場所が光っている。
彼女の言うあさなのだろう。

台所には石を仕込んでいなかったのか、ここだけ暗い。
私がいつでも使えるようにと渡されている砂漠石専用の小袋から
石を引きちぎり、天井にほり上げる。

『彼女の部屋やほかの部屋にあるように明かりをつけてくれ。』

彼女のしたことをまねるのはたやすい。
石もなすべきことを理解しているようだ。

湯を沸かし、彼女が入れたようにコーヒーを入れる。
このほうがうまい。が、彼女が入れてくれたほうがうまいような気がする。
飯をつくろう。
小麦をうすく焼き、樹液蜜をかけてやろう。サボテンの実もうまそうに食べていたから
甘いものは好きなのだろう。
そうだ、氷もつくらねば。酒もうまいだろう。
小さな氷室を開けるとサボテンの実は完全に凍っていた。
これでは食べにくいので外に出しておく。
彼女が起き出すころにはちょうどよく溶けているだろう。
ちいさな容器をいくつかつくり、これに水を入れ、氷室にいれた。
丸くもできると言っていたが、どうするのだろうか?あとでつくってもらおう。

彼女の気配が動く。
便所に行ってから風呂にもいったようだ。
ん?また、部屋にもどったのか?

少ししてパタパタと彼女の足音がし、
こちらに顔をだした。

「マティス、おはよう。ごめんね、服持ってきてくれたんだね。
 置きっぱなしだとおもって、裸でお風呂までいったら、ないんだもの。
 慌てて部屋に戻って電気付けたら机にあった。ありがとね。」
「なんだ、裸でだっしゅしたのか?見れなくて残念だ。おはよう。」
「ふふ、うん、残念でした。あ、電気つけたのね。ここに付けるの忘れてたよ。
うまいことできたね。もう、立派なえっと石使いだっけ?それだね。」
「そうだな。世間の石使いとは多少違う。
石を使っているというよりお願いして、力を借りている。」
「そうだね、感謝しないとね。ありがとう、ってね。」
「ああ、感謝だ。このコーヒーの淹れ方も教えてくれてありがとう。
私もうまく入れられたと思うのだが、飲んでみてくれるか?」
「モーニングコーヒー。ありがとう。」

こちらの小さなテーブルに座ったので、コーヒーを出した。
わたしがいれるよりおいしいと、いった。
コーヒーは人に入れてもらうほうがおいしいと。私もそう思う。
次は彼女が入れてくれるといってくれた。
正面に座るには狭いので、斜め横に椅子を置き座った。
こちらのほうが近くてよい。

「アサごはんはすぐ食べるか?小麦に樹脂蜜を掛けたものだ。
 細く切ったサボテンに夜に出した肉を混ぜたものもある。どうだ?」
「樹脂蜜ってメープルシロップ?あ、ホットケーキ。すごい!」
「そういうのか?」
「うれしい!好きなんだホットケーキ!」
「そうか?ここで食べるか?すぐ焼くぞ?」
「たべる!」

アサは軽くでいいと言っていたが、皿ほどの小麦を3枚食べ、
サボテンの実もすべて食べた。

そうか、それはいろいろ育つな。
それはそれで可愛らしい。
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