マグナムブレイカー

サカキマンZET

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第4章 覇気使い四天王。

第163話 期限前の行動にて。

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 品川が精神世界から解放され、目覚めた翌日にて……

「あ~なんか気持ち悪い」

 品川はボロボロのベッド上で、頭痛を抱えて上半身だけ起き上がらせ、不機嫌な様子。
 周辺は全てボロボロの設備だった。黒く汚れ所々が破れたカーテン、裏まで見える壊れた天井、埃まみれのベッドで悪環境だった。

「目覚めたか」

 その隣で閻魔がフルーツを切って、待機していた。

「閻魔さん、今からどうすればいい?」

 これからの事が気になり、品川は尋ねる。

「身体を癒し、また『アトラス財団』へ喧嘩を売る。今回は、こちらが後だしでな」

「じゃあ、今すぐ白龍で……!」

 品川は今すぐにでも行動しようとした。が、身体には力が入らず、目の前がフラフラしていた。

「黒政から受けたダメージを補う為に、身体がエネルギーを使いまくり、貧血と栄養不足となっている。これだけは白龍では治せない。万病と瀕死を治せても、栄養までは回復できない」

「な、何故……」

「人外の範疇ならば治す。だが、人知で治せる範囲は治さない。これが白龍という刀の能力と性格だ」

「能力は分かりますが、性格って?」

「コイツは元々何かの生物だった。もう忘れたが、龍という生物ではなかったのは覚えている。それだけだ」

「……」

「話を戻すぞ。身体を治した後というより、すぐ動いてもらう、ハードスケジュールだ。これを三日で完了してもらう」

「三日!?」

 あまりの日にちが無さすぎて驚愕する品川。

「お前が眠った時から目覚めた時で四日は経った。つまり一週間の半分を使った。三日でかなり時間稼ぎできたからな」

「どういう事ですか?」

「お前が殴ったパトカーの後処理だ。吹雪の覇気が三日間も凍結していた為、撤収するのに手間取っていた、そして『アトラス財団』の警備の再編成で四日だ。警視庁自慢の精鋭部隊が全滅したんだ。全国から優秀な奴等を集結させ、再編成する理由の四日間だ」

「四日も何でいるんですか? 優秀な奴等なら一日や二日で再編成できるでしょ?」

「非現実な物を体験した被害者が多い為、軽視せず厳重な考えでの二日。そして訓練の二日で四日間だ」

「……未来見ました?」

「いや、だが人間のする事ならそうするだろうなという考察。けれど四日間を絶対にする。お前が二日で強くなれる保証がないからな」

「……三日間で強くなる」

 今までなら三ヶ月や短くても一ヶ月ぐらいだが、今回は最短である三日間。未知の領域だ。

「これでも譲歩したぐらいだ。俺の知ってる人間は半日で強くなった」

 ここで閻魔の言う、半日で強くなった人間は神崎忍だろうと品川は思い浮かべた。

「……やります。三日でしか強くなれねぇのは悔しいが、今は贅沢言ってられねぇから!」

「だろうな。だから、これからやることは食い続ける事だ。腹一杯にな」

 そして閻魔は扉を開けて、「いいぞ」という合図を送った。
 すると黒服達が料理を乗せたカート押しながら、入室してきた。それも料理は大量に運ばれていた。

「……」

「一日の摂取カロリーだけは分からないから、ある俳優を参考にさせてもらった。まだまだあるぞ?」

「先ず肉からくれ、それから飲み込む為のスープも、そっから野菜を食う」

 品川は無心に荒々しく本能で食事を始めた。


 一方その頃、綺麗な白い空間にて二人の男女がいた。
 しかし、ある意味状況は違っていた。

「その程度やと、手負いの四天王一人倒したのはマグレやな。俺に触れられへんねんから」

 上半身裸で腹部を包帯グルグル巻きにし、ポケットへ手を突っ込み、余裕だが嫌悪感の表情を浮かべる吹雪。

「こっちはアンタ達と違って、覇気を扱う経験が少ないじゃん」

 肩で息を切らせながら吹雪を睨み付ける木戸。

「確かに覇気を扱う経験も少ない。けどな? お前が一番足らんのは喧嘩経験や。顔を狙ったどつき合いしたことないやろ?」

「するわけないじゃんっていうか、動いてる相手の顔を中心的に狙うなんて無理ゲー。そんな事できんの先生とアンタくらいじゃん」

「……おい、南雲手本見せてやれ」

「え?」

 ノートパソコンで二人の戦闘データだけ取っていたので、関係ない南雲は、突発的な事だったので、間の抜けた返事をした。

「お前、さっきの話し聞いてなかったんか?」

 どうやら嫌悪感の対象は南雲へ、八つ当たりの形で移ったようだ。

「いや聞いてたけど、今俺ってアレじゃん天才的なことしてるじゃん? こうやって戦闘データ取って、どう作戦に組み込めるか司令塔的な立ち位置だったじゃん?」

(南雲さんいたんだ。気づかなかった……)

 ここまで特訓しておいた木戸も、今気づいたようだ。

「お前それらしい事してるけどな……コッソリ、スパイダーソリティアしてんじゃねぇ!」

 キレた吹雪はノートパソコンを勢い任せでへし折った。

「あぁ! この天才が五年かけて全記録を網羅したゲームスコアが!」

 端から聞けば、戦闘に関係ない無駄な五年間の努力である。

(南雲さん、今までそんな事に総力注いでたんだ)

 そして南雲と数ヶ月築いた尊敬までもが数秒で崩壊した。

「……動きながら顔面を中心的に殴る方法? 相手の利き腕を見たらいい」

「利き腕を見るんですか?」

「天才の俺は人間の構造にある発見を見つけた。ボクシングでは右利きの人間は左へ避ける。左利きの奴は右へ避ける」

「……」

 木戸にすれば、何その根拠のない自信と理由はと思っていた。

「まあ試しだ。ボクシングスタイルで構えて、天才のパンチを避けろ」

「え? は、はい」

 戸惑いながら右利きのボクシングスタイルへ構える。

「じゃあパンチするぞ」

 南雲が遅い左ジャブを放つ。

(うわっ、遅っ! なんかこんなに遅いと今特訓してる意味あんのかなって思ってきちゃうな)

 木戸が軽い気持ちで思っていながら右へ避けようとした。が、違和感を感じた。

「えっ?」

 そして木戸は右ではなく左へ避けていた。
 暫くすると南雲の遅いジャブが軽く頬へ接触した。

「ほらな? 当たっただろ?」

「でも、なんで?」

「避けやすい方向に体が行動してるからや」

 吹雪は説明した。
 体の重心を安定させる為、右利きで構えると逆方向へ避けるという発想を教える。

「でも、ボクシングスタイルじゃなかったらどうするんですか?」

「「……」」

 そして誰も答えを用意していなかったので、返答が帰ってこなかった。

「そこは直感やな」

「本能のまま殴れ」

「結局、いつも通りでやれってことね」

 アドバイスにもならない意見に木戸は呆れてしまう。
 そして吹雪と南雲の指示で木戸は苦手な所を自主練する。

「なんか変化みたいなんあったか?」

 南雲はスマホで撮影した。吹雪と木戸が動いてる所を何度も巻き戻しながら、何か確認していた。
 すると吹雪が隣へ座り、何かしら発見を期待していた。

「……確証できないが、おそらく覇気が進化している。お前と木戸の組み手によって、発生した冷気が空気を凍結させていた」

「いつも通りちゃうん?」

「俺も最初はそう思った。だが、小さくダイヤモンドダストが発生していた。ここを見てみろ、お前は後ろで、木戸は集中し過ぎて見えていないが……」

 南雲が指差した所に、吹雪の背後では小さなダイヤモンドダストを発生していた。

「今までなら覇気を使って現象を起こしていた。けれど今回の場合は、覇気が意思を持ったような感じだ」

「……コイツを解決せぇへんことには、ちゃんと制御できひんわけやな」

「今まで通りに覇気を使えても、勝手に進化して強くなって制御できないを克服だな。何これ? お前育成バランスゲーム?」

「じゃあ、キモロンゲ。この三日間で何か考えておいてくれや。俺は後少しで何か掴めそうなんや」

「はいよ。この天才に任せておけ」

 二人は信頼のグータッチをする。
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