マグナムブレイカー

サカキマンZET

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第4章 覇気使い四天王。

第159話 痛覚。

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 どれだけの時間が経ち、それまで幾つも時間を無駄にしたんだろうと思う時があった。
 それでも時は無慈悲に進み、残酷と冷酷にも現実も見せる。
 何度も苦悩し続けても、失った人や時は後戻りできない。
 ならばどうするべきかは、自分で見つけるしか他ない。

「……」

 薄暗いジメジメとした場所で、瓦礫へ腰かけ、蝋燭の灯りだけで詩を読書する者がいた。
 新しいフード付きパーカーを着た黒政だった。

「黒政さん、飲み物買って来ました!」

 そこへ黒政の部下であるチンピラが、コンビニ袋を手に差し入れする。

「チューハイと鮭とば……」

 部下が購入してきた物が完全に夜のお供である、つまみだった。

「おい、総長につまみを差し入れって馬鹿か?」

「え? 総長、酒嫌いなんですか?」

 先輩チンピラが後輩チンピラへ説教を始めた。
 その間、黒政は栞だけ挟み、缶の蓋を開けて黙々と飲酒する。

「あのよ? この状況で差し入れるならな、コーヒーとかパンだろ? なんで集中力が切れる物を買ってくるんだよ」

「酒にはリラックス効果があるんですよ。それにコミュニケーションも円滑にできますし」

 二人が議論している間、黒政は鮭とばに手をつけて、皮だけ剥がし実のみ黙々と食していた。

「総長は無意味なエネルギーを使わないようにしてるから、コミュニケーションは最低限でいいんだよ。リラックスしすぎたら何かあった時に、どう責任とれんだよ?」

「でも、こんな場所だとストレス溜まってしょうがないですよ。だったら一時的でも気分転換できればいいじゃないですか!」

 まだ二人が議論している間、黒政は皮をジッポライターで着火し炙り、黙々と食していた。

「それもそうだが、コレに相応しっていう空気があんだろ?」

「空気ってなんですか!?」

「空気読めって意味だよ!?」

 そう二人が議論している間、黒政はIQOSで喫煙し、一服していた。

「よし、読書の続きだな」

 二人が終わらない議論している間、黒政は詩を読み直す。
 だが、目前に捜査令状と記載された書類が出現した。

「まあ、よくも派手に暴れてくれたな? 三番総長殿?」

「皆木か。ヤクザ刑事が、ここに来るのは大間違いだと思わないのか? 今いる連中はお前を殺す気だぞ」

 皆木が出現した事により、周囲は殺気剥き出しの状態へ変化した。
 一人は金属バット、鉄パイプ、角材まで持ち出していた。

「おうおう、いきなり敵意剥き出しか? テメェ等、指一本でも俺に触れてみろ! 二度とブタ箱から出れねぇようにしてやるからな!」

「今時、そんな脅し……お前等、大人しくしとけ。一応刑事でも魔界連合十三番総長だ。それに人間のお前等が勝てる未来が見えないから」

 皆木が十三番総長である事を思い出した黒政は、部下から手を出すなと命令した。

「……というのは建前だ。本音は違う」

「会長命令で渡せないぞ。指一本でも触れば分かってるよな・・・・・・・?」

「こっちも馬鹿騒ぎした原因を保護・・しねぇと依頼人がうるせぇから、こうやって交渉しに来たんだよ」

「じゃあ依頼人に伝えておいてくれ、無理な相談せず、黙って結果が出るまで待機してろと。理由は今回ばかり会長が絡んでるから、それで納得しろ。二度ぐらいなら言ってやるが、三度目は言わせるなよ?」

「だったら会長と相談するか。今、時間を無駄にした……一応、聞いておくか。なんの真似だ?」

 皆木が進もうとすると、黒政は地面へナイフを刺して阻んだ。

「まあ、会長が仕事中だから通すわけには行かないって話。そして俺は番人だから善吉でも通さない覚悟だ」

 詩から目を離さず、皆木へ返答する。

「……まあいいか。だったら最終的に会長に任せるとする」

 皆木はナイフを引き抜き、黒政へ手渡し、隣の瓦礫に座る。

「職務しなくていいのか?」

 手渡されたナイフを受け取り、皆木が帰らない事に不思議と思った黒政は尋ねた。

「捜査っていう名目で暫くいないって言ってる。それに上層部は俺の正体を知ってるから、何も言ってこねぇよ」

「それもそうか。飲むか?」

「おう」

 余っているチューハイを皆木へ渡し、閻魔の帰還を待つ。


 一方その頃、深淵へ進む人物がいた。

「……」

 その人物は周辺を見渡し、漆黒だらけの道を迷わず進む。
 暗く長い道のりをずっと歩いていく。息がつまる程に、精神的にも疲労していくが、その人物は歩き続ける。

「……ここか」

 やっとお目当ての場所へ辿り着いた。が、そこも漆黒で何も見えなかった。

「“我、光の使者であり。我、本来の記憶を探りし原因の癒し手であり。我、神の代理人としての進捗をする者なり。”……再生リブート

 呪文らしき言葉を並べると、周辺は夕暮れと変化し、住宅に囲まれた空き地へ姿を変えた。
 中心には不良中学生が怪我でボロボロで横たわり、番長らしき人物が赤髪の男に馬乗りされて、殴られていた。

「どうした! 俺に喧嘩売って、この程度ですむと思ってんのか!」

 どうやら少年は怒りで興奮が抑えきれず、相手の顔を変化するまで殴っていた。

「おい、そこのクソガキ。もう喧嘩できねぇ相手に死体蹴りっていうのは、穏やかじゃねぇし、大人として見過ごす訳にもいかねぇな?」

 そこへトレンチコートを風で靡かせ、ハット帽子を被った人物が、少年の行いを諌める。

「あぁん? うるせぇよオッサン。コイツが死のうがテメェには関係ねぇだろ」

「……」

 そんな初手から失礼な態度を取った不良少年は、ものの数分後には逆エビ固めされていた。

「て、テメェ! このウンコくせぇオッサン、いい大人が中学生相手に本気になるって恥ずかしくねぇのか!?」

「恥ずかしくないな! 何故ならば、礼儀のなってねぇクソガキを大人を怒らせると、どうなるのか、いい教訓として都合よく考えて行動しているからな俺は!」

「ふざけんな! 普通分からせるぐらいの体罰ですむだろうが!」

「テメェを分からせた所で、俺に得あんのか? だったら、こうやって俺の気分が晴れるまで、オモチャみたいに潰すのがスッキリすんだろうが!」

「大人として駄目な奴じゃねぇか!」

 よくも大声を張りながら羞恥心の欠片もない事を喋れるなと思った。

一時停止ストップ編集エディット、対象は桐崎流星」

 周辺は、その人物によって時を停止させ、発声のみで世界に手を加える。

「おら! おら! これで態度を……あれ?」

 桐崎は不良少年が、そろそろ降参だろうと思っていた。が、突如と自分以外停止したので不思議に思っていた。

「桐崎流星以外の全てを俺の権限で停止させた。お前と話す為にな」

「……アンタがいるって事は、俺に何かあったんだな?」

「あぁ、人質になって弟子に迷惑かけるぐらいなら死を選んだ。お前らしい判断だ」

「……どんな奴に殺られました?」

「一番弟子の部下に殺された。高島は最後まで慕ってた」

「あぁ、そうか。アイツじゃないんだな……じゃあ一番弟子がいるって事は、二番弟子もいるんだよな?」

「今、逆エビ固めをしてる奴だ」

「え? コイツがぁ?」

 人物は不良少年へ指差し、桐崎に真実を教える。
 そして桐崎は滅茶苦茶嫌な顔をし、不良少年から離れた。

「今、お前と話しているのは、そこにいる不良少年の過去の記憶だ。つまり、死に体のお前は意識に存在する幻覚、本物の魂ではない」

「……あのさ、昔からアンタは難しいことばっか言うよな?」

「簡単に言えば、過去の桐崎流星を真似した高性能な人工知能だ。そして今から、今まで起きた事の記憶を植え付ける」

「それって人格崩壊しねぇか?」

「これから起こる事は不良少年、すなわち品川修二の意識で起こった事だ。影響があるとすれば記憶障害が一時的に出る。時間が経てば正常な記憶として治る」

「じゃあやってくれ、俺は準備できてる……閻魔・・さん」

 桐崎が名前を呼ぶと、黒い靄が晴れ閻魔光の姿となった。

「では、始めるぞ」

「はい!」
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