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第4章 覇気使い四天王。
第155話 激闘の始まり。
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そして襲撃の日まで品川達は休み終え、屋敷前へ腕組みしながら三人で立っていた。
「とうとうきたな、この時が」
何処かで聞いた事のあるラッパーのリリックを呟く品川。
「え? もう最終回なんか?」
あまりにも衝撃的な発言に驚愕の反応を見せる吹雪。
「まだ最終回じゃねぇよ。アトラス財団を倒してないだろ」
そこへ南雲がツッコミへ入る。
「アトラス財団を倒したら最終回?」
「おい、なんでだよ。どんだけ最終回にしたがるんだよ。面倒くせぇか? これから喧嘩しに行くのに、全て最終回にしないと満足しねぇのか? アホパーマ」
「アホちゃうわ。いや、お前等が腕組みしながら立ってるから、もう最終回の雰囲気を醸し出してるから、俺聞いただけやん」
「とうとうきたな、この時が……」
「お前、それ言いたいだけやろ!」
同じことを品川が言い出すので、吹雪も突っ込みへ回る。
「おい、クソリーゼント。まだ何もきてねぇんだよ。屋敷前で立って、とうとうきたなって言われても、何もせず待ってるだけなんだわ」
「……これからバビロン相手となると、仕事なのに罪ない奴をぶん殴るっていうのがな」
「おい、警察って言えよ。お前ラッパーじゃねぇのに、一丁前にバビロンって呼んでんじゃねぇ! それにバビロンってレゲェ用語だからな、レゲェに謝れクソリーゼント!」
「悪かったな、レゲェ用語を安易に使ってよぉ。テメェより物知りじゃねぇんだわ、あぁだから頭にしか栄養行かねぇからキモロンゲで貧弱な身体なんだな?」
「あぁ、悪かったな貧弱な身体でよ。けど、頭に栄養行かねぇから無駄な筋肉が増えるクソリーゼントには言われたくねぇな?」
「「よし向こうに行くぞ、テメェをぶち殺してやる!」」
「おい、今からアトラス財団に行くってゆうのに俺達が争ってどうすんねん」
「「お前が最終回なんてくだらねぇボケ言わなかったら、こんなに喧嘩してねぇわ! アホパーマ!」」
「なんだとゴラァ! よし、アトラス財団に行く前にテメェ等をぶちのめしてから行ってやるわ!」
そしてゴタゴタな三人は喧嘩をし始める。
「奇襲するのに騒がしくしてどうするんだろうな。お前等、それでも勝てるというなら行く前に、俺と手合わせするか?」
あまりにも、しつこい喧嘩だったので鬼塚が現れ注意する。
「「「コイツから喧嘩売った! なんだとテメェ!」」」
全員でハモりながら同じ事を言っている。
品川が南雲に指差し、南雲が吹雪、吹雪が品川という順番で責任転嫁する。
「俺からすれば全員だ。どうしたら不完全でもウロボロスに勝てた? 俺と会長が見てたのは幻か?」
「だってそれは……」
「ウロボロスが……」
「ムカつく悪魔やったからや」
品川、南雲、吹雪の順で当然のごとく返答する。
「……分かった。もうそろそろ行け、ここで騒がれると近所迷惑……」
「おい、ゴラァ。テメェの皮膚が剥がれるまでストレス与えてやろうか? キモロンゲ」
「おう、やってみろよ。その時はテメェの頭をドリルにしてやるよアホパーマ」
「お前の髪の毛全部、似合わねぇように馬鹿改造してやるよ、クソリーゼント」
もはやここまでくるとギャグでやっているのは?と疑いたくなる鬼塚。
「……よし、そろそろ行こうぜ」
そして覚悟が決まったのか、品川は行動しようと発言する。
そして対決の場へ歩み始めた。
「対戦相手は決めたか?」
「俺は内藤やるわ。お前は?」
「初めてだが竹島とやる。俺がどれだけ天才なのか元神崎の仲間でも思い知らせてやる品川は?」
「クソ兄貴」
「お前兄貴いたのか?」
長年一緒に働いていた南雲にも知らない事実が発覚したので驚愕し、品川へ尋ねた。
「なんか最近できた。アトラス財団の社長やってるって」
「おい、俺の元同僚の頭が心配になんだが?」
流石にも唐突すぎる事は対処できない南雲は吹雪へ助けを求める。
「……まあ暫く付き合ったら慣れるわ。っていうか、俺より五年付き合ってるお前の方が詳しいやろ?」
南雲は立ち止まり、品川だけ先に進ませて吹雪も立ち止まる。
「そんなに仲良くないっていうより、アイツは自分を語ろうとはしない。語りたいが語れない傾向がある」
「おいおい、こんだけ長く付き合ってきて、いきなり元気で無神経な奴がコミ症か? ……いや、コミ症ってそんな物か、なんで今まで気がつかなかったんや」
品川の今までの言動を振り返ると思い当たる節がありすぎて納得してしまう吹雪。
「おいおい、まあ多分だけどよ。アイツは悩みなさそうに見えて、結構大変な環境に置かれてんじゃねぇかって思う。閻魔さんから貰った右腕で起こった感情が無くなる事態、自分の過去すらも話したがらねぇ……お前が心配すんのも分かる気がするぜ」
「でも、品川には借りがあるってゆってたやん。敵を心配すんのか?」
「敵と言っても俺が目指してるのは覇気使い最強を倒す事だ。それはつまり神崎忍を倒したアイツを倒すのが目的だ」
「おいおい、神崎忍はもういいのか? 学生の頃から復讐するぐらい嫌ってたのによ」
「……悔しいが、もう神崎忍は人間レベルで倒せる領域にはいないだろうな」
「なんで? 忍はかなり弱体化してんだぜ? お前にも勝ち目ぐらい……」
「二つの覇気を持つのは品川と神崎忍ぐらいだと思ってた。俺もゆくゆくはもう一つ手に入れられたら勝機ぐらいは考えたが……三つを持ち始めた奴には敵わないとな」
「弱気やな。臆病風に吹かれたか?」
「あぁそうだ。だから、品川が神崎忍に勝って、俺が弱ってる品川をぶち殺せば、自動的に俺が天才で最強の覇気使いになれるって事だ!」
「お前って姑息やな」
自慢にもならない姑息な手段を聞いた吹雪は、引き気味で蔑んだ目で南雲を見る。
「なんとでも言え! いや、むしろ感謝してもらいたいな! 俺が最強で天才の覇気使いになればクソリーゼントは誰からも狙われず、平和に暮らせる。俺は救世主って事だ!」
一人でテンション上げながら高笑いをする自称天才で二十代悲しき男。
「はいはい、じゃあ天才さん。アイツが覇気使い最強になるまで、俺達が守ってやろうや」
「それは……面倒くさいな……」
折角ヤル気になっていた南雲は吹雪の余計な一言で冷め、テンションが下がる。
「おいおい」
「守ってやるのは守ってやるが、お前はどうすんだ?」
「?」
「品川が頂点とったら、お前はどうする?」
「……」
それは吹雪が今まで五年間、考えてこなかった事だった。
「アイツが頂点に上がれば、最強は一人。孤高の存在で、二人も最強はいらなくなる。チーム最強としたら聞こえはいいが、結局は最後に残るのは一人だ。二番手なんて最強には不必要だ。それが最強っていう意味だからな」
「俺は……」
南雲の自信が思う最強の理論に対して、吹雪は否定できなかった。肯定しようにも迷いが生じた。
「おーい、お前等ずっとそこで何やってんだよ! 俺だけ勝手に行ってるから、滅茶苦茶バカみてぇじゃねぇかよ!」
そこへ一人で先に行っていた品川が戻ってきて、二人へ文句垂れる。
「あぁ悪かった。コイツが天才である俺の理論を聞きたいってうるさくてな。そしてアホだから理解させるのに時間が掛かった」
「マジかよ。アホな癖に自称天才の鵜呑みにするって完全アホだろ」
二人で馬鹿話している間、吹雪は品川を見ていた。
(確かに、いつもお前は神崎忍の背中を追い掛けてる。そして俺も南雲も神崎忍を見ていたが、今となっては、お前が前へ走っていた。俺はどうしたい? 蹴落としてでも前へ出るべきか? それとも……)
「おーい、何悩んでんのか知らねぇけどよ。今は集中しようぜ」
そう言って品川は霧の中を迷うことなく進む。
(品川……俺はどうしたらいい?)
解せない表情のまま、吹雪は品川を追う。
アトラス財団の周囲は他のビルも巻き込む形で遊撃車、パトカーに囲まれていた。
無線で連絡する数十人の警察官や臨時体制の五部隊の機動隊で埋め尽くされていた。
T部分の最上階で二人の人影が、そんな祭り騒ぎな景色を眺めていた。
「副社長、これだけの人選を手配すればテロリストなんて余裕ですよ」
少し小太りで眼鏡を掛けた中年の警察官が虹矢へ問いかける。
「……警視長、これから来る連中はただのテロリストとは思わない事だ」
少しピリついている虹矢は警視長へ油断するなと返答する。
「いやでも、いくら凶悪な兵器を持ってきたとしても、この人数ではジリ貧がいいどころですよ」
「兵器? 彼等はそんな安っぽい近代兵器を使う連中ではないよ……」
「というと?」
「――拳だけで突破してくる。それも少人数で、ものの数分後には……」
虹矢が語る中、二台のパトカーは大きく上空へ吹き飛ばされていた。オマケで轟音が聞こえてきた。
「半分は壊滅してるでしょうね」
警視長は非現実な光景を見て驚愕していた。
パトカーが吹き飛ぶ数分前にて……
「「「……」」」
三人はアトラス財団の前まで立っていた。が、パトカー二台に阻まれて進めなかった。
「ちょっと君たち! 今ここらへんは緊急警戒されている。大人しくこの場から離れ家に帰りなさい!」
テロ警戒でピリピリしている二人の警察官が品川、吹雪、南雲へ警告する。
「……よし行くか」
品川が呟き前へ進む。
「ちょっと君……ぐっ!」
接近してきた警察官二人は品川の目に見えないアッパーで脳を揺らされ、気絶した。
「うわっ、えげつな」
容赦ない品川のアッパーが見えていた南雲は、ドン引いていた。
「この際だが公務執行妨害とか暴行罪なんて、やわなこと言わねぇよな?」
「言うかよ。というより久し振りに暴れられるとなると腕が鳴るな」
「……」
「吹雪、どっか具合とか悪いのか?」
未だに迷い続けている吹雪を見た品川が心配していた。
「いや、ちょっとくだらん事を考えてただけや。明日の朝ごはん何しよっていうな」
「それだったら松屋の朝定食食べたい! 牛皿付いてくるから!」
「天才の俺は海苔定食だ。頭の働きが良くなるからな、それに納豆付きでな」
「あぁ? お前等バカか? 朝食ってゆうたら銀鮭定食に決まってんだろう」
三人揃って意見はバラバラだった。
「そんじゃあ早く終わらせて、朝飯でも食いに行こうぜ」
そして品川は両腕を高く上げ、ハンマーの如く振り下ろした。
ボンネットに両腕が衝突した二台のパトカーは上空へ舞い上がった。
「喧嘩の始まりだ」
「とうとうきたな、この時が」
何処かで聞いた事のあるラッパーのリリックを呟く品川。
「え? もう最終回なんか?」
あまりにも衝撃的な発言に驚愕の反応を見せる吹雪。
「まだ最終回じゃねぇよ。アトラス財団を倒してないだろ」
そこへ南雲がツッコミへ入る。
「アトラス財団を倒したら最終回?」
「おい、なんでだよ。どんだけ最終回にしたがるんだよ。面倒くせぇか? これから喧嘩しに行くのに、全て最終回にしないと満足しねぇのか? アホパーマ」
「アホちゃうわ。いや、お前等が腕組みしながら立ってるから、もう最終回の雰囲気を醸し出してるから、俺聞いただけやん」
「とうとうきたな、この時が……」
「お前、それ言いたいだけやろ!」
同じことを品川が言い出すので、吹雪も突っ込みへ回る。
「おい、クソリーゼント。まだ何もきてねぇんだよ。屋敷前で立って、とうとうきたなって言われても、何もせず待ってるだけなんだわ」
「……これからバビロン相手となると、仕事なのに罪ない奴をぶん殴るっていうのがな」
「おい、警察って言えよ。お前ラッパーじゃねぇのに、一丁前にバビロンって呼んでんじゃねぇ! それにバビロンってレゲェ用語だからな、レゲェに謝れクソリーゼント!」
「悪かったな、レゲェ用語を安易に使ってよぉ。テメェより物知りじゃねぇんだわ、あぁだから頭にしか栄養行かねぇからキモロンゲで貧弱な身体なんだな?」
「あぁ、悪かったな貧弱な身体でよ。けど、頭に栄養行かねぇから無駄な筋肉が増えるクソリーゼントには言われたくねぇな?」
「「よし向こうに行くぞ、テメェをぶち殺してやる!」」
「おい、今からアトラス財団に行くってゆうのに俺達が争ってどうすんねん」
「「お前が最終回なんてくだらねぇボケ言わなかったら、こんなに喧嘩してねぇわ! アホパーマ!」」
「なんだとゴラァ! よし、アトラス財団に行く前にテメェ等をぶちのめしてから行ってやるわ!」
そしてゴタゴタな三人は喧嘩をし始める。
「奇襲するのに騒がしくしてどうするんだろうな。お前等、それでも勝てるというなら行く前に、俺と手合わせするか?」
あまりにも、しつこい喧嘩だったので鬼塚が現れ注意する。
「「「コイツから喧嘩売った! なんだとテメェ!」」」
全員でハモりながら同じ事を言っている。
品川が南雲に指差し、南雲が吹雪、吹雪が品川という順番で責任転嫁する。
「俺からすれば全員だ。どうしたら不完全でもウロボロスに勝てた? 俺と会長が見てたのは幻か?」
「だってそれは……」
「ウロボロスが……」
「ムカつく悪魔やったからや」
品川、南雲、吹雪の順で当然のごとく返答する。
「……分かった。もうそろそろ行け、ここで騒がれると近所迷惑……」
「おい、ゴラァ。テメェの皮膚が剥がれるまでストレス与えてやろうか? キモロンゲ」
「おう、やってみろよ。その時はテメェの頭をドリルにしてやるよアホパーマ」
「お前の髪の毛全部、似合わねぇように馬鹿改造してやるよ、クソリーゼント」
もはやここまでくるとギャグでやっているのは?と疑いたくなる鬼塚。
「……よし、そろそろ行こうぜ」
そして覚悟が決まったのか、品川は行動しようと発言する。
そして対決の場へ歩み始めた。
「対戦相手は決めたか?」
「俺は内藤やるわ。お前は?」
「初めてだが竹島とやる。俺がどれだけ天才なのか元神崎の仲間でも思い知らせてやる品川は?」
「クソ兄貴」
「お前兄貴いたのか?」
長年一緒に働いていた南雲にも知らない事実が発覚したので驚愕し、品川へ尋ねた。
「なんか最近できた。アトラス財団の社長やってるって」
「おい、俺の元同僚の頭が心配になんだが?」
流石にも唐突すぎる事は対処できない南雲は吹雪へ助けを求める。
「……まあ暫く付き合ったら慣れるわ。っていうか、俺より五年付き合ってるお前の方が詳しいやろ?」
南雲は立ち止まり、品川だけ先に進ませて吹雪も立ち止まる。
「そんなに仲良くないっていうより、アイツは自分を語ろうとはしない。語りたいが語れない傾向がある」
「おいおい、こんだけ長く付き合ってきて、いきなり元気で無神経な奴がコミ症か? ……いや、コミ症ってそんな物か、なんで今まで気がつかなかったんや」
品川の今までの言動を振り返ると思い当たる節がありすぎて納得してしまう吹雪。
「おいおい、まあ多分だけどよ。アイツは悩みなさそうに見えて、結構大変な環境に置かれてんじゃねぇかって思う。閻魔さんから貰った右腕で起こった感情が無くなる事態、自分の過去すらも話したがらねぇ……お前が心配すんのも分かる気がするぜ」
「でも、品川には借りがあるってゆってたやん。敵を心配すんのか?」
「敵と言っても俺が目指してるのは覇気使い最強を倒す事だ。それはつまり神崎忍を倒したアイツを倒すのが目的だ」
「おいおい、神崎忍はもういいのか? 学生の頃から復讐するぐらい嫌ってたのによ」
「……悔しいが、もう神崎忍は人間レベルで倒せる領域にはいないだろうな」
「なんで? 忍はかなり弱体化してんだぜ? お前にも勝ち目ぐらい……」
「二つの覇気を持つのは品川と神崎忍ぐらいだと思ってた。俺もゆくゆくはもう一つ手に入れられたら勝機ぐらいは考えたが……三つを持ち始めた奴には敵わないとな」
「弱気やな。臆病風に吹かれたか?」
「あぁそうだ。だから、品川が神崎忍に勝って、俺が弱ってる品川をぶち殺せば、自動的に俺が天才で最強の覇気使いになれるって事だ!」
「お前って姑息やな」
自慢にもならない姑息な手段を聞いた吹雪は、引き気味で蔑んだ目で南雲を見る。
「なんとでも言え! いや、むしろ感謝してもらいたいな! 俺が最強で天才の覇気使いになればクソリーゼントは誰からも狙われず、平和に暮らせる。俺は救世主って事だ!」
一人でテンション上げながら高笑いをする自称天才で二十代悲しき男。
「はいはい、じゃあ天才さん。アイツが覇気使い最強になるまで、俺達が守ってやろうや」
「それは……面倒くさいな……」
折角ヤル気になっていた南雲は吹雪の余計な一言で冷め、テンションが下がる。
「おいおい」
「守ってやるのは守ってやるが、お前はどうすんだ?」
「?」
「品川が頂点とったら、お前はどうする?」
「……」
それは吹雪が今まで五年間、考えてこなかった事だった。
「アイツが頂点に上がれば、最強は一人。孤高の存在で、二人も最強はいらなくなる。チーム最強としたら聞こえはいいが、結局は最後に残るのは一人だ。二番手なんて最強には不必要だ。それが最強っていう意味だからな」
「俺は……」
南雲の自信が思う最強の理論に対して、吹雪は否定できなかった。肯定しようにも迷いが生じた。
「おーい、お前等ずっとそこで何やってんだよ! 俺だけ勝手に行ってるから、滅茶苦茶バカみてぇじゃねぇかよ!」
そこへ一人で先に行っていた品川が戻ってきて、二人へ文句垂れる。
「あぁ悪かった。コイツが天才である俺の理論を聞きたいってうるさくてな。そしてアホだから理解させるのに時間が掛かった」
「マジかよ。アホな癖に自称天才の鵜呑みにするって完全アホだろ」
二人で馬鹿話している間、吹雪は品川を見ていた。
(確かに、いつもお前は神崎忍の背中を追い掛けてる。そして俺も南雲も神崎忍を見ていたが、今となっては、お前が前へ走っていた。俺はどうしたい? 蹴落としてでも前へ出るべきか? それとも……)
「おーい、何悩んでんのか知らねぇけどよ。今は集中しようぜ」
そう言って品川は霧の中を迷うことなく進む。
(品川……俺はどうしたらいい?)
解せない表情のまま、吹雪は品川を追う。
アトラス財団の周囲は他のビルも巻き込む形で遊撃車、パトカーに囲まれていた。
無線で連絡する数十人の警察官や臨時体制の五部隊の機動隊で埋め尽くされていた。
T部分の最上階で二人の人影が、そんな祭り騒ぎな景色を眺めていた。
「副社長、これだけの人選を手配すればテロリストなんて余裕ですよ」
少し小太りで眼鏡を掛けた中年の警察官が虹矢へ問いかける。
「……警視長、これから来る連中はただのテロリストとは思わない事だ」
少しピリついている虹矢は警視長へ油断するなと返答する。
「いやでも、いくら凶悪な兵器を持ってきたとしても、この人数ではジリ貧がいいどころですよ」
「兵器? 彼等はそんな安っぽい近代兵器を使う連中ではないよ……」
「というと?」
「――拳だけで突破してくる。それも少人数で、ものの数分後には……」
虹矢が語る中、二台のパトカーは大きく上空へ吹き飛ばされていた。オマケで轟音が聞こえてきた。
「半分は壊滅してるでしょうね」
警視長は非現実な光景を見て驚愕していた。
パトカーが吹き飛ぶ数分前にて……
「「「……」」」
三人はアトラス財団の前まで立っていた。が、パトカー二台に阻まれて進めなかった。
「ちょっと君たち! 今ここらへんは緊急警戒されている。大人しくこの場から離れ家に帰りなさい!」
テロ警戒でピリピリしている二人の警察官が品川、吹雪、南雲へ警告する。
「……よし行くか」
品川が呟き前へ進む。
「ちょっと君……ぐっ!」
接近してきた警察官二人は品川の目に見えないアッパーで脳を揺らされ、気絶した。
「うわっ、えげつな」
容赦ない品川のアッパーが見えていた南雲は、ドン引いていた。
「この際だが公務執行妨害とか暴行罪なんて、やわなこと言わねぇよな?」
「言うかよ。というより久し振りに暴れられるとなると腕が鳴るな」
「……」
「吹雪、どっか具合とか悪いのか?」
未だに迷い続けている吹雪を見た品川が心配していた。
「いや、ちょっとくだらん事を考えてただけや。明日の朝ごはん何しよっていうな」
「それだったら松屋の朝定食食べたい! 牛皿付いてくるから!」
「天才の俺は海苔定食だ。頭の働きが良くなるからな、それに納豆付きでな」
「あぁ? お前等バカか? 朝食ってゆうたら銀鮭定食に決まってんだろう」
三人揃って意見はバラバラだった。
「そんじゃあ早く終わらせて、朝飯でも食いに行こうぜ」
そして品川は両腕を高く上げ、ハンマーの如く振り下ろした。
ボンネットに両腕が衝突した二台のパトカーは上空へ舞い上がった。
「喧嘩の始まりだ」
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