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第4章 覇気使い四天王。

第138話 アトラスの四天王 その1

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「さて、どうします? 貴方が動けば桐崎流星は死にます。けど、貴方が動かなかったら私を殺せないですね」

 理不尽な選択を迫られる品川。
 木戸を助け虹矢を倒しても桐崎が爆殺される。
 自分が出なければ、虹矢は何をしでかすのか分からない。
 品川は発汗させ、返答を決めかねていた。

「……そんなに人間となった桐崎流星が大切ですか? 私達、数少ない覇気使いより、人間の方が大事ですか?」

「……トロッコ問題でもやってんのか?」

 品川が決めたのは、時間を稼ぎ、話に付き合う事だった。

「絶滅危惧種でも人間は大切に扱うじゃないですか。だったら私達は特別に扱われても良い筈ですよ」

「……その様子だと過去に何か嫌なことされたんだな。けどな? 自分が嫌なことされたからって、他人にして良いことじゃねぇだろ」

「違いますよ。別に嫌なことされた覚えはありません、ただ馬鹿・・共が無意味な代表を決める票集めして、世界の均衡を保とうという……茶番劇が嫌いなだけですよ」

「なんだと?」

「だって茶番じゃないですか。会議でも平気な様子で寝る議員、汚職や賄賂までして登り詰めたい議員、いざ災害が起こっても何もしない政治家……うんざりですよ。だったら神より授かった覇気で、我々が人間達を管理するんです。そして魔界連合と手を組み、裏の人間までも……せっかちなのは嫌われますよ?」

 虹矢の顔をスレスレで何かが飛翔した。けれど当てる気がないのを虹矢に見透かされ、不発となった。
 品川が投げたのは屋上のコンクリートを抉り取り、その破片を投擲したのだ。
 その顔は無表情だったが、目だけは殺意に満ちていた。

「今すぐにでも殺しそうな目ですね。お忘れですか? 私の手には人質がいるん……ですよ?」

 虹矢は木戸の手を品川へ見せびらかそうとした。が、そこには木戸の腕はなかった。
 代わりとして大きな達磨を持たされていた。

「……礼を言うぜ忍」

「気にするな。コイツの話を聞いてたら、こっちまで殺したくなってきた……うんざりするほど、自分勝手な奴だな」

 空間から闇の渦が出現し、そこから呆れ返った忍が現れた。

「……神崎忍。貴方だけはお呼びじゃないんですが?」

「なんだよ。俺だけ仲間外れか?」

「えぇ、貴方だけは社長命令で仲間にできないんですよ。残念ですが、社長には逆らえませんから……そうですね。ここで貴方を始末させて……!」

「お前能書き長いんだよ」

 虹矢が何か仕掛ける前に、忍は目前へワープしており、首もとへ靴裏を接近させていた。

「さ、流石ですね。これが覇気使い最強……」

 あんなに余裕あった虹矢も、目前にある恐怖には勝てなかった。

「今更、誉められても嬉しくねぇよ。けど、貴様には聞きたいことがある……爆弾の解除方法を教えてもらおうか?」

「吹雪雅人の能力を使えば、電子機器は反応しなくなり、無事に解除できますよ。意外と脆いんですよ、人間が開発した物って……」

「あっそ、じゃあ……俺を狙ってる高島くんと出会うにはどうしたらいい?」

「……アッチから会ってくれますよ。余程気に入られた様子ですね、あんなに喜んでる社長は初めて見ますよ」

「ついでに聞くけどさ、社長は覇気使い? もし覇気使いなら、どんな能力を使うのか教えてくれたりする?」

「社長も覇気使いですよ。残念ながら能力までは私も把握してないのですよ」

「あっそ」

 にこやかな表情の忍だが、サングラスで隠された目付きだけは、笑っていなかった。寧ろ、敵視していた。

「社長とコンタクトを取れる携帯電話です。どうぞ」

 虹矢は達磨を片手で抱えながら、左ポケットから携帯電話を取り出し、忍へ手渡す。

「……爆発したりしないよな?」

「そんな小細工で倒せるとは思ってませんよ。今でも、逃げ出したい気持ちが強いですし、貴方達も下手に手出しできない事も承知してますから」

「そうか。なら、今からお前をボコボコにして『アトラス財団』に向かうとするか……勿論、道案内しながら仲間内で殴るけどな?」

 俺よりえげつない事を考えやがると品川は思っていた。
 そして虹矢を拘束し、一華の家まで連行しようとした瞬間、忍と品川は何かに気付き、一緒にバックステップで離れた。
 すると虹矢の目前に何かが人影が落下した。

「遅くなりました副社長」

 なんと黒い道着を着て、虹矢の盾となり、二人と対立する竹島が現れた。

「……久しいな権田」

「えぇ、貴方も……随分と優しくなりましたね? 昔は殺伐とし近寄りがたい雰囲気でしたのに」

「少し事情が事情でな。こうなっちまった……後悔はしてねぇよ。俺が決めたことだ……お前も決心したんだろ? だったら責めたりしねぇよ」

「……安心しました。貴方の雰囲気は変化しても、性格までは何時も通りですね」

「……全く、お前の褒め方は良く分からないな……品川、お前は副社長と遊んでろ」

「はいよ。折角の同窓会だ、楽しめ」

 品川は忍の右肩にポンっと優しく触れ、煙草を咥えて、虹矢へ向かう。

「煙草を吸って余裕ですね? 嫌いなんですよ、そのヤニ臭い物体が!」

 そう言って虹矢は何も考えなしで突っ込んだ。
 彼には余裕があった。このスピードで品川が対応できてないと判断し、もう一度同じ手が通じると思い、突撃した。

「ふぅ~なあ? 忍ってプレイステーション派? それとも任天堂派?」

「どっちもだ。まあ特に好きなのはプレイステーション2だ。名作が多すぎて困る」

 煙草を吹かしながら品川は半目な状態で、忍にゲームを尋ねていた。
 結局の所、忍はプレイステーション派だと返答していた。

「だよね~じゃあ、人を舐めきった馬鹿をぶちのめすにはコレしかねぇよな?」

 すると品川は真っ直ぐ大きく右ストレートを目前へ放った。
 拳は何かと激突した。顔が大きく窪みを作った虹矢だった。

「頑張って移動したつもりだろうが……輝さんに比べた遅せぇよ」

 更に膂力を込めて力一杯押した。
 虹矢は屋上端っこまで吹き飛ばされる。が、なんとか意識だけ取り戻し、落ちないように努力していた。
 今の一撃が重かったのか、倒れたまま身体は震えていた。

「な、何故……私の居場所が……」

「確かに、テメェの移動は速い。だが、相手が俺だから見切られたんだよ」

 もはや意味不明な理屈で品川はゴリ押したのだ。

「虹矢、お前の負けだ」

 突然と忍はニヤニヤしながら、虹矢へ敗北宣言した。

「な、何故!? まだ終わってません! 私はまだ戦え……な、何!? か、身体がッ!」

 虹矢は立ち上がろとする。が、足に力は入らなかった。

「モロに顔面から喰らったんだ。脳震盪を起こしてる、早く言えばテメェはリタイアだ」

 虹矢は忍の言葉が理解できなかった。

「解説してやろうか? テメェが虹状態で特攻した時に、品川は見えていた・・・・・んだよ。戦闘が下手くそなテメェのウザイ姿がな、その時ただの右ストレートで倒せたんだよ」

「ふ、ふざけるな! そ、そんな出鱈目な!」

「テメェの不手際を棚に上げて、何言ってんだぁ? テメェが下手くそだから顔面殴られたんだろうが! 副社長が何言ってんだ?」

 そこへ死体蹴りのように品川はヤンキー座りで、虹矢を罵倒する。

「そうそう、ちょっと不手際があると隠蔽しようとする副社長って、テメェの嫌いな人間と変わらねぇな。あ~やだやだ、これだから人間嫌い妄想くんは現実を見ようとしねぇな」

 ここで忍も死体蹴りに参戦し、品川と同じヤンキー座りで煽る。
 虹矢の目には、二人が角を生やし、ケタケタと笑いながら、自分を弄ぶ、悪魔の姿があった。

(副社長、大丈夫かな? まあ、あの人嫌いだったし暫くは二人を応援するか)

 竹島は参戦せずに、虹矢のメンタルがボロボロになる所を観戦する状態だった。
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