マグナムブレイカー

サカキマンZET

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第3章 東と西 黒の追憶編。

第125話 再会と説明。

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 それから忍達の事業が始まり、余裕で半年は経った。

「あ~なんやねん、この忙しさ……」

 吹雪は机へ項垂れながら、仕事の忙しさに対して文句を述べていた。

「お疲れ様です。吹雪さん、今日もミヤッビーさんに振り回されて大変ですね」

「あ、どうもありがとうございます……」

 受付嬢からミルクコーヒーが入ったカップを手渡され、吹雪は礼を述べて、一口飲む。

(……そう言えば、いつの間におった受付の人って、名前なんやったっけ? なんか知らん内におったから忍の知り合いって思ってたけど、あんまり親しそうじゃなかったし、閻魔さんの関係者かと思うから不審者扱いする訳にもいかんから、黙ってるけど……)

 吹雪は知らず内にいた受付に対して、密かな恐怖心を抱きながら、知り合いなのではと模索しながら、コーヒーを飲む。

「おい、私が大変な時、よく呑気にコーヒーなんか飲めるな?」

 そこへ腕組みしながら、アイドルみたいなヒラヒラとしたドレスを着用し、鋭く敵意が剥き出しな睨みつけで、吹雪を見る雅だ。

「あのさ? 上司から休憩と命じられたら、休憩も仕事になんだよ。いくら俺より立場が上なアンタの命令でも、川神忍社長の命令だったら、どっちが上だろうな?」

 普段は違う立場で上下関係が変わる場合は、ここぞとばかりマウントを取り、今まで喰らって来たので、仕返しする。

「……そうか。なら――死ぬがよい」

 右手には刀、左手にはクナイを持ち構え、殺意丸出しの死んだ目付きで、吹雪へ狙いを定めていた。

(……よし逃げるか)

 『氷の覇気』で霜を瞬時に発生させ、目眩ましとして使う。
 その間に吹雪はなに食わぬ顔しながら、駆け足気味で逃走する。

「鬼ごっこか。懐かしいな、相手が逃げながら恐怖に染まる顔を見て楽しんでいた!」

 『風の覇気』で追い風を吹かせて、加速力により、吹雪へ追い付いた。

「え!? 嘘でしょ……」

 気づくまでの反応速度以上で逃走したつもりだ……だが、突如と隣まで追い付かれていた事に、吹雪は目を点にしながら驚愕するしかなかった。

「さあ、死ぬ時間だ!」

 雅は走りながら吹雪の首を目掛けて、刀を横一閃と降った。

「危なッ!」

 この半年で忍から暇さえあれば、鍛え上げられた反応速度によって、回避は容易かった。が、これが連続攻撃となると吹雪もしんどくなる。
 できれば体力を保持したいので、更に吹雪は足の回転を上げて逃げる。

「さあ、逃げろ逃げろ! 貴様の体力が切れた時が最後だ!」

 後ろから大量のクナイを投擲し、吹雪を追い詰める雅。

「……アイツ等、会社を潰す気か?」

 遠くからスターバックスで購入したコーヒーを飲みながら、無表情だが忍は二人に対して愚痴を述べていた。

「だったら、そろそろ止めた方が良いんじゃないのか?」

 そこへ伊達眼鏡を装備し、サラリーマンスーツへ身に包んだ代表取締役の鬼塚がいた。

「おい、半年間ツッコミするのもアレだから黙ってたが……お前が堅気に寄せるのは無理があるだろ!」

「どうしてだ? 十分に頑張ったつもりだったんだが?」

 忍のツッコミに対して、鬼塚は呆然とした表情で、自分の身体を見る。

「身体じゃねぇ。お前の人相で堅気の代表取締役は無理があるって話だよ!」

「そうか? 俺的にはパソコンという物で調べて、堅気さんを模倣したつもりだったんだが?」

「鏡を見ろ、鏡を。顔だけで子供が逃げ出すぐらい怖いぞ」

 彼に自覚がないと分かると、もう適当となった。

「それより止めないのか?」

「止めたら、アイツ等の溝は埋まるか?」

「君の弟、神崎輝は品川修二と南雲暖人が喧嘩をし出すと、町と仕事に被害が起きない限りは好きにやらせるって聞いた」

「……俺は面倒だから止める気は、更々無かったつもりだったが、このまま続けると仕事にも支障が出るな」

「ちゃんとしてくれよ。あんな濃い連中を扱えるのは、お前ぐらいしかいないからな?」

「俺も、あんな濃い連中は扱える範囲だが……」

「噂の品川修二か?」

 ここで和やかな雰囲気から、真剣な話へと変わった。

「……どうだった。お前の目から見た品川修二は?」

「彼は優しい人間だな。ちゃんと真っ直ぐを見て行動する……だが、今のままでは本気になった――お前に勝てない。無酸素状態のまま酸素不足で倒れるのがオチだ」

「じゃあ、俺が負けるようになるにはどうするべきだ?」

「……酷いこと言うつもりは無いが、あの子に必要なのは非情だな。相手の骨を遠慮なく殴って粉砕骨折するぐらいの非情さは必要だ」

「俺と同じ意見か。確かにアイツからは非情さが欠けている上、注意散漫な印象がある」

「……その位の相手なのに、右腕の左足折ったりするかね?」

「若気の至りだ」

「それを言い切る態度も凄いな……まあ、分かった。お前にとっては品川は脅威ではないと判断する訳だな?」

「少し、気になる事がある。閻魔光が品川修二に右腕を与えた行動だ。俺の目玉は力を抑え込む為の制御装置、けれど医療目的なら白龍で切りつければ済む話だ。何故、白龍で切れば終わる事を回りくどい方法で、移植したんだろうな?」

「……俺は兄貴と何も関わりはない。兄貴がすることは、別に手下の俺に知る必要はない。神に誓って企んでいることはない」

「……悪かった。アンタは不意打ちする真似は嫌いだったな。真っ正面から申告して、全て破壊する性格だった」

「よく分かっているじゃないか」

「相手のことを分かっていないと、痛い目に合うのが身に染みている」

「さて、俺は事務作業に戻る。そろそろ喧嘩をやめさせて……何処に行ったアイツ等?」

 そろそろ仕事を始めようとした忍は、二人の喧嘩の仲裁へ入ろうとした。が、静けさだけが残っていた。

「受付嬢が連れて行ったぞ。雅の方は血相を変えて急いで行ったが?」

「……なんだかんだで嫌な予感がする。俺、ちょっと見てくる」

 二人の様子が気になり、急ぎ忍は探索する。


 その頃、受付嬢から神崎輝・・・が来てると伝えられ、雅は吹雪を放っておき、応接室へとウキウキな雰囲気で向かう。

(輝様が私の為に会いに来たとは……少し、浮かれた格好だが、説明すれば分かってくれるだろう……多分……)

 最後だけ自信は持てなかったが、優しい輝なら分かってくれるだろうと、淡い期待を持っていた。

「はぁ~い、今旬の歌手、ミヤッビーで~す! 今回は私の為に贈り物をくれて、ありが……!」

 そう雅は固まってしまった。
 応接室に座って待機していたのは、お洒落なハット帽を着用し、その帽子から溢れる赤髪、人をイラつかせるようなふてぶてしい表情、忍よりも身長だけ除き、ガタイの良い……品川修二だった。
 オマケ感覚でしか、南雲暖人を見ていなかった。
 驚愕よりも神崎輝と偽り、それを名乗っている事に殺意が湧いていた。

(このクソ赤髪野郎、輝様と偽りやがって……絶殺ぜっさつしてやる!)

 腹の底がマグマのように煮えたぎり、殺意まで孕ます始末。

(あ、完全これキレてんな。でも、ここまで来たら引き返せねぇ……続行だ!)

 雅に恨まれる覚悟で修二は、泥を被る役へ出た。
 そして案の定、このような事態へとなってしまった。

「どうもミヤッビーさん、初めまして神崎輝です。今回は贈り物を届けに参りました」

 悪意のない似合わないスマイルで対応してしまう修二。
 それが火に油を注ぐ事態となってしまった。

(絶対どころの騒ぎじゃない! 今すぐ絶殺する!)

 煽られたと勘違いし、更にジリジリと接近したので、今すぐにでもクナイを突き刺しそうな雰囲気だ。
 だが、受付嬢に見られているので、ここは営業スマイルで対応する。

「どうもどうも神崎輝さん! 今日は私の為に贈り物を届けてくれて……ここで何やってるんだ! 本当に貴様、切り刻んでやるぞ!」

 頬は限界まで引き釣り、コメカミには青筋が浮かび、張本人の修二と握手する。が、握手すると小声で脅迫し、ギチギチと膂力を込める。

(いてぇぇぇぇぇッ! このアマ! 堂々と潰しにかかるな!)

 修二は痛みに耐えながら対応していた。
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