マグナムブレイカー

サカキマンZET

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第3章 東と西 赤の書編。

第108話 関西弁口喧嘩。

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「悪いなミヤッビーは痛いってうてんねん。そろそろ離してくれまへんか?」

 その男の指示通りに修二は雅から手を離して、睨みつける。

「なんや? なんか文句でもあんのか?」

 気に障った様子の男は修二へ喧嘩腰で文句を述べていた。

「いや別に。ただ頭悪そうな奴が俺に対して舐めた口利いてるから、滑稽やなと思ってな? 気に障ったんやったらゴメンな?」

 修二も挑発するように男へカウンター文句を述べていた。

「なんや喧嘩売っとんのかいな? ええで表出ろや、ボコボコにしたるわ」

「上等や! 掛かって来いやコラァッ! なんやビビって手出されへんのか?」

「ええで手出したるわ。そっちから先に手出せや!」

「アァン! お前が先に手ぇ出せや! なんで俺が手ぇ出さなアカンねん! しばくぞ!」

「もはや不毛な争いに見えるのは俺だけだろうか?」

 修二と男の永遠と続く不毛な関西弁喧嘩に、南雲は飽きてポツリと呟いてしまった。

「「なんや、このキモロンゲクソ野郎!」」

 いつの間にか互いの胸ぐらを掴みながら、剣幕な表情で、ポツリと呟いた南雲へ怒りの矛先が向かっていた。

「なんで俺を巻き込むねん!」

「「テメェがつまんねぇこと呟くからやろ! 真似すんなやゴラァッ!」」

 二人は以前と口喧嘩はするが互いに手は出さず、拮抗状態が続いていた。

「あの……警察呼んだ方が?」

 心配になった受付嬢が雅に相談していた。

「……あのあの? 私の為に争わないで欲しいな? 受付嬢さんも困ってるみたいだし、ここは話し合いで穏便に済ませたいな~?」

 収集つかなくなる前に、仕方ないと思った雅は、猫被りしながら二人の喧嘩を止めようとしていた。

「うるさい、アッチ行ってろ。バカ危険人物」

「お前は俺に大人しくボディーガードされとけ、アホ女。後、目障りやから向こうに行っとけ!」

 二人共、頭に血が上っているので止める雅に対して、ボロクソで返答してしまった。
 すると雅からドス黒いオーラが出現し、何も言わず、机上にあったクリスタル製の灰皿を持ち、殺気を放ちながら二人へ殴り掛かろうとしていた。

「土曜サスペンスにする気かアホ! お前も知ってるやろ! このアホ二人が喧嘩しだしたら収集つかん事ぐらいは!」

 そこへ冷静な判断できる南雲だけは雅を羽交い締めし、なんとか頑張って止めていた。

「うるさいわ! なんで、このアホ二人に文句言われなアカンねん! ウチやって忍様の為に頑張って歌手してたんやで! それやのにボロクソに返答されて頭に来ぃひんのがおかしいで!」

 流石の雅も日頃のストレスが貯まっていたのか、南雲へ吐露しながらジリジリと力強く二人へ近づいて行く。

「あの……本当に警察呼びますよ!」

 もう収集つかなくなり、気も動転している受付嬢は携帯電話を取り出し、警察へ連絡しようとしていた。
 すると受付嬢の手を優しく片手で包み込み、静止させる人物がいた。その人物は前へ出て、大きく両手で叩き、室内に轟音を響かせた。
 そして全員は静粛し、手を叩いた人物へと目を向けていた。

「皆様、お静かに……ミヤッビーと受付の人が困ってます。ここは穏便に話し合いで解決しませんか?」

 それは相も変わらないコーンロウな髪型、室内なのにサングラス、紺色のサテンシャツ、黒色のスラックス、高級黒革靴の神崎忍がいたのだ。

「……神崎忍」

 依然として男の胸ぐらを掴んだまま、修二は忍を睨むのだった。

「おや、。今日は兄の為に事務所まで来てくれたのか?」

 薄気味悪い演技で修二を輝と呼び、完全に嘘と付き合う忍。

「……あ、あぁ、そうだぜ……兄さんよ。本当はミヤッビーからサプライズで渡して貰おうと思ったんだけどよ……その必要もなさそうだからな?」

 最初は嘘に付き合う事で動揺した。が、ここは演技に合わせて輝へ成りきり、穏便な解決を目指すのだった。

「え!? 神崎プロデューサー、弟さんいたんですか!」

 そこへ冷静となった雅が忍と合わせるよう演技を始めた。

((この切り替えの早さは流石だよな……))

 南雲とボディーガードは雅の身軽な変化を軽く頷きながら称賛していた。そして何故か気持ち悪いくらいに心と行動も二人はシンクロしていた。

「そうなんだ。ちょっと弟と友達を私の部屋で懐かしく話してくるよ。すまないね受付さん、騒いだりして?」

「いえいえ、大丈夫ですよ。神崎プロデューサーなら信用していますから!」

「それじゃあ……さあ、行こうか」

 忍は二人と一緒にエレベーターへ乗り込み、部屋まで向かうのだった。エレベーターは大きく、スタンダードな壁紙で落ち着く大きめの内装だった。
 忍はボタンの近くへ立ち、修二と南雲は壁際へ凭れながら立っていた。エレベーターはゆっくりと上へ登って行く。

「……質問を纏めておけ。感情的で話をされると説明するのが面倒だ」

 忍から二人へ質問の内容を纏めておけと命令した。

「色々と聞きたい事はある。けどよ……お前ここで何やってんだよ?」

「……閻魔光と契約・・したと言ったら、お前も意味は分かるだろ?」

 契約・・という単語だけで修二は理解し、納得してしまった。
 隣の南雲だけは契約・・の事を知らないので、理解できず忍を訝かしんでいた。

「ウロボロスの件から魔界連合の力を借りた。これは仕組まれたとしても借りた・・・という事実がある。だから、面倒事なる前に悪魔との約束を果たしに行った。これが大変なのか分かるだろ?」

「お前本当契約絡み好きだよな? もしかして呪われてんのか?」

 修二の的を突いた言葉により、心当たりがありすぎる忍にとっては全て痛いところだった。

「多分、『覇気使い』とかじゃなく女難関係で恨み残してそうだしな?」

 南雲からこれもまた痛いところを突かれ、忍は反論できなかった。

((図星かよ……))

 反論できない様子を見て、まさか本当に女難で恨みを残していた事で、二人は静かに驚愕していた。
 暫くしてからエレベーターは到着し、扉は
開かれ一人ずつ出た。
 目の前には大きく広がるアクアブルーのカーペット、ズラリと沢山並んだオフィスデスク、幹部が個人で持てるガラス張りのオフィスまであった。

「こっちだ」

 すると先に出た忍が案内し、ガラス張りの事務所へと辿り着いていた。名札として神崎忍と書かれていた。

「……お前なんか賄賂的なことしたか?」

 流石に五年も行方不明な男が半年で幹部まで登り詰めたことに対して、修二と南雲は不信感を抱いていた。

「――全て閻魔光が提供したって言ったら納得できるか?」

 説明するのも面倒になったので、忍は閻魔の名前だけ出して後は想像に任せたのだ。

「極道って利益にならない事はやらないって聞いてるが?」

 そこへ疑い深い南雲は更に忍へ突っ込んだ。

「アイツ等は悪魔極道だぞ? 悪魔は飲まず食わずでも現界でき、更に人間組織を自由に操れる。それに奴等は死ぬことが無い、それを利用しては弱味を握り、警察の摘発も喰らわない。存在はしていても実態を捉えないことには起訴できない」

「やりたい放題だな。お前が困ってるのは借りで俺達の対決を妨げてる事だけだろ? それに魔王契約書を使った訳じゃねぇ事だろ、だったら無視しても問題ねぇんじゃね?」

「……お前は閻魔という悪魔を知らない。アイツの約束を先伸ばせば先伸ばす程……世界最大級の仕事を押し付けてくるぞ」

 忍の表情はみるみると青ざめ、過去に閻魔より仕事が与えられた物が余程キツかったと思える。

(忍が青ざめるぐらいって……閻魔さん何してんだよ!?)

 そんな『最強の覇気使い』が恐れる閻魔の仕事内容はどんなのか気になって仕方なかった。

「それより話があるんだろ? 入れ」

 先に忍が入りオフィスチェアに座り、足を組んで二人を見る。
 続いて先導されながら二つのオフィスチェアに座る。修二と南雲だった。

「それじゃあ、お前達が東京に来た理由を教えてもらおうか?」
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