マグナムブレイカー

サカキマンZET

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第3章 東と西 赤の書編。

第100話 中分けと外ハネの聴取と尋問。

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 もう終わりだと修二は心で確信していた。
 全身からは未知なる体験で冷や汗が流れ、ワイシャツはぐっしょりと濡れて、身体に貼り付いていた。

「前進すれば貴方は総武線に乗れて私から逃げられる。けど、私も刑事だから逃げたら……その場で躊躇なく射殺する」

 それは脅迫だった。一歩でも動けば一華は拳銃を取り出して、修二を射殺すると脅した。
 修二は拳銃という単語には何も動じなかったが、逃げたあと面倒なことが起きそうと感じていた。
 そうとなれば修二も冷静になって考えて行動しなければならない。選択肢と言葉を間違えれば、本当に逃走しないといけなくなる。

「……つまり、俺と話がしたいと?」

「えぇ、大人しく従うなら私は公務執行妨害で訴える気はない上、これ以上に深入りするつもりもないわ。どう? 弁護士の貴方なら良い条件だと思わない?」

「結構調べたんだな。俺の名前と前職を……」

「弁護士界では有名人よ。海道短期大学の僅か二年で六法全書を暗記し、二人して高得点を取り卒業、そのあと神崎法律事務所で弁護士として活躍。それも勝訴が多い。相手の刺客とかは怪我も一切なく、相手が半殺しの状態で緊急搬送されてるケースが多い……これで有名にならないと思った?」

「……海道じゃ普通だと思うぞ?」

 すっとぼける事もなく素直に修二は返答していた。が、誰も鵜呑みにするわけなく事実なのに信じてもらえない。

「そう……じゃあ取引しない?」

 意外だった。それは真面目そうな一華から放たれる事がなさそうな言葉だった。

「取引? 刑事が昇進のために汚職すんのか? こんなチンピラみたいな元弁護士に?」

「えぇ、そうよ。私の得になるからチンピラみたいな貴方と取引しようとしてるの。承諾するなら私の方に向いて、拒否するなら……言わなくても分かるよね?」

「……」

 修二は静かに小さくタメ息を吐き、瞼を閉じて考えた。自分にとって近道を選ぶべきか遠回りの道を選ぶべきかと……だが、そんな事は最初から決まっていた。

(またアイツから遠退いてしまうな……)

 そして修二は瞼を開いて答えを出した。一華の方へと振り向き、刑事に協力する事を決めたのだ。

「!」

 修二の意外な行動に一華は初めて驚愕を見せていた。普通なら内容を知る前に逃走するのが当たり前なのに、修二が内容も聞かず、まさか振り返るとは正しく思っていなかった。

「どうした? 話すんだろ?」

「え、えぇ……彼処の喫茶店で少しお話しましょうか。それでいいですか?」

 少し動揺しながらも近くにある喫茶店へ行こうと一華は修二に提案していた。

「あぁ、良いぜ。丁度腹減った所だ」

 気だるげな雰囲気で修二が先行して近くの喫茶店へ入店した。

(アレ? 私って尋問する為に彼と出会ったんだよね? なんでアッチのペースで巻き込まれてんだろう?)

 物の数時間で修二のペースへ巻き込まれて、一華は違和感を覚えていた。だが、コレの怖いところは暫くすると違和感が全く感じなくなる事だ。
 ある二人を除けば質の悪い自分勝手な喧嘩スタイルだからだ。

「どうした? 行かねぇのか?」

「え、えぇ行くわ。ちょっと待ってて……」

 一華はポケットから茶色い長財布を取り出して、中身を確認した。
 因みに一華の服装は三日前とは違い、黒くビシッとした綺麗なレディーススーツ、それに合わせて水色のワイシャツだった。
 ちゃんと走りやすいようにロウヒールの靴を履いていた。

(これって予算で落ちないかな? 今月、色々と出費がかさんでピンチなんだよね……仕方ない、ここは実家に頼んで仕送りで乗り切るしかない! あんまり頼りたくなかったけど……)

 財布をスッと静かに閉じて意を決した表情で修二へと振り向いた。

「お待たせ」

 一華はニコニコとした表情で喫茶店へと先に入って行った。

「……冷静な刑事でも中身は女の子なんだな」

 一華の行動全て終始一貫し見てた修二は、大変なんだなと同情していた。
 喫茶店へ入り、修二と一華はあまり目立たない窓際で片隅のテーブル席へと座り、メニューから色々と注文していた。

「えっと、ミックスサンドイッチとアイスコーヒーをください」

「私は……彼と同じ物をください」

 一華は暫く考えた後、修二と同じ軽く安い物を注文したのだ。
 「かしこまりました」と軽く店員は二人に伝え、厨房へと駆け寄った。

「さて、刑事さん。アンタは俺のを聞きたい?」

 水を飲んだ後、本題へ入り修二は一華へ何を尋ねたいのか聞いた。

「……そうね。じゃあ、貴方の名前と住所と年齢を教えくれる?」

「――品川修二、住所は大阪府大阪市海道区海渡町○○○号室、年齢は二十一、生年月日もいるか?」

「えぇ、お願いするわ」

「一九九五年、九月十五日産まれ……俺の情報は以上」

 完全に嘘偽りのない情報だった。その情報を一華はメモ帳に書き記していた。

「そう、じゃあ次は私が自己紹介する番ね、私の名前と身分は省略する。そして個人情報でもあるから住所は言わない、それで了承できる?」

「あぁ、構わねぇぜ」

「一九九一年、七月二十日産まれ、年齢は二十五歳、私の情報も以上」

 お互いに年齢と名前を教え情報交換し、早速これから尋問を始まる所だ。

「先ずは貴方が東京に来た目的は?」

「わざわざ海道まで俺達に喧嘩を吹っ掛けた連中に、お礼参りと目的を聞きに東京まで来た」

「そう……じゃあ、それは個人的な恨み? それとも組織からの依頼?」

「個人的」

「……そうなのね。じゃあ次はギャング集団に何をされたの?」

「器物破損、傷害、住居不法侵入、それから決闘罪」

「そう……次は過去にギャング集団に対して危害を加えた事は?」

「ない。身近で恨まれる事はあっても東京まで恨まれる事はしてない」

 普段からチンピラに喧嘩している修二でも、見に覚えのない喧嘩はしたことないとキッパリと言った。

「もしかしたら海道から出てから、暫くして感情が爆発する事もあるじゃない?」

「俺に対する恨みなら聞いて解決する。けど、今回は俺の仲間も巻き込まれた。しかも俺じゃなく上司に対してだ。何かあると思って、俺はここまで来た」

「……そうね。じゃあ、次が本題に入るわよ?」

 修二の目的を知らされた一華は出来るだけ納得し、肝心な話へと移るのだった。

「三日前に見せた手品みたいな物は何?」

 そして空気でも読んだのか如く、「お待たせしました」と店員がミックスサンドイッチとアイスコーヒーを二人へ提供した。
 修二と一華は同時に店員へ礼を述べた。

「……そうだな。どう説明したら良いのか困ったな――」

 分かりやすく狼狽しながら、修二は顎に手を当て、どう説明しようとかと考えていた。
 そして考えが決まるとアイスコーヒーをブラックのままストローで吸飲し、一息いれて説明する。

「……う~ん、まあ何だ――人間の波動的なアレだ! うん、そうに違いない!」

 人差し指を立て、何も考えていない呆けた表情で自信満々に答えた。

「自信満々に適当な答えを言うな! 分からないなら分からないってハッキリ言いなさい!」

 適当な返答に激情したのか、立ち上がり一華は右片手で胸ぐらを掴み、ブンブンと前後へ重い修二を振り回していた。

「お、落ち着けよ……ちょっと冗談言っただけじゃねぇか……アハハ、いきなり掴み掛かるなんて酷いな~刑事さん……」

 何も反応できず利き腕のみで、ブンブンと振り回されるを経験させられて、ヨソヨソしくなる修二だった。
 弁解を聞いた一華は落ち着き、座席へと腕組みながら座った。

(この刑事さん、ヤベェ……一瞬でも反応できなかったぜ。この速さは神崎忍並みだな……今度はちゃんと言葉選んで発言しよ)

 次は怒らせないように言葉を選んで発言するよう反省した。
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