マグナムブレイカー

サカキマンZET

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第3章 東と西 赤の書編。

第95話 大体できててたらOK

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 そして桐崎と修二が合流して、修行最終日となった。
 色々と修行方針で修二と桐崎と南雲とのいざこざはあった。が、なんとか喧嘩しながらも最終日まで辿り着いた。

「さてと、修行開始して一週間が経った訳だ。どうだ? 調子の方は?」

 修二は少し疲労しきっている木戸の体調を気にして尋ねた。

「…最終日に三人が子供みたいに喧嘩して、宥めてる私を見て、大丈夫だと思いますか?」

「思わん!」

 三人は揃いも揃って責任放棄な事を大声で言っていた。

(なんか頭が痛くなってきた…でも、こんな人達でも最後まで見てくれたし、感謝する所なのかな?)

 ここまで面倒を見てくれた事に対して、木戸は感謝ぐらいはと考えていた。

「おい、クソリーゼント。これが終わったら叙々苑で飯にしようぜ」

「あ~そうだな。丁度腹減ったし、足立区に行く前に食べとくか、キモロンゲ」

「なんだ二人が奢ってくれるのか? だったら遠慮なく注文しまくってブラックカードを破産させてやるぜ」

 だが、三人は飯の事しか頭になく。木戸の事は蚊帳の外だった。

(なんか三人を見直した私が馬鹿だった気がする。これ私が強くなっても、三人に追い付けないから止められない…なんか…もう…帰りたくなってきた…)

 一週間前の自分に止めてでも、絶対この三人には付いて行くなと言ってやりたいと後悔していた。

「よし、最終試験である『覇気玉』を作ってみろ!」

(『覇気玉』? なんだそのダッセェ名前は?)

 修二が『覇気玉』を作れと指示する中、桐崎だけは表には出さないが、名前を貶していた。

「はい!」

 そして指示通りに木戸は『覇気玉』を作る体勢へと入った。腰を低く、両手を突きだして、脳内でイメージ通りの玉を想像する。
 深く深呼吸し、瞳を閉じ、余計な考えは捨てきる。

「『覇気玉』!」

 そう木戸が目を開けて大声で発すると両手には、ビー玉サイズの燃えた岩が出現していた。
 そのまま『覇気玉』を数秒維持していた。

(これで維持できれば!)

 そう思い、木戸は更に『覇気』を流し込み大きくしようと試みた。が、途中で『覇気玉』が流された用量に耐えきれず暴発した。
 負傷すると思い、痛みを我慢するため目を閉じた。

「全く無茶しやがって、誰も大きくしろなんて一言も言わなかったぞ?」

 だが、痛みではなく優しい言葉が返って来たのだ。木戸は目を開き、驚愕していた。
 そこには『太陽の覇気』でマグマ熱を吸収しながら無効化し、木戸の盾となっている修二がいたのだ。

「おいおい、お前そんな事ができんのか!?」

 隠された能力を見て、南雲は修二へ問い掛ける。

「あぁ、木戸と初めて会った時に気づいた。炎系統なら吸収できる事に」

「…と言うことは電気熱で倒すのは無理だな。よし、データに書き加えておくか」

「お~い、聞こえてんぞ?」

「聞こえるように言ってんだよ。分かったか? クソリーゼント?」

「よし、そこに立て。今から、ボコボコにしてやるからよ」

 お互いに血走った目で睨み合い、殺気丸出しだった。隣で喧嘩を見ていた桐崎はヘラヘラと笑いながら楽しんでいた。
 ついでに互いに潰し合って、更には殺し合えば良いとも思っている様子だった。

「…何時もと変わらぬ場面…それとオマケに腹黒い人つき…」

(あ~なんだか、頭も胃が痛くなってきた。多分、このまま付き合っていると……過労で死ぬ)

 木戸は外面だけはニコニコとはしていたが、内心は疲労とストレスでノックアウト寸前だった。

「面倒だ。最終試験も終わったことだし飯に行こうぜ?」

 修二は喧嘩に飽きてしまい、腹減りが優先となり下山しようとする。

「賛成」

「歩きながら喧嘩して殺し合え。お前等の財布だけ預かってやるから」

 残り二人も修二の後へ付いて下山しようとしていた。

「あ、あのさ!」

 そこへ木戸が静止すると三人が止まり、怪訝そうな表情で振り向いた。

「最終試験なんだよね? 合格とか不合格とかないの? 採点とか改善点もあるはずだし?」

 木戸が気になっていたのは合格か不合格の結果だった。未だに何も言って来ない事が不安で尋ねたのだ。

「大体できてるからOK」

「大体できているから文句は無い」

「大体できててたら良いんじゃね?」

 修二、南雲、桐崎の順で、なに食わぬ顔をしながら随分と適当な返答をしていた。

「はあ!?」

 流石に適当な返答だけは引っ掛かり、木戸は三人へ怒る寸前だ。

「『覇気玉』が出来ただろ? だったら、俺達が修行を続ける意味もなければ、お前は合格した事でいいんだよ。俺達がお前に今後の事を決める道理もねぇしさ?」

「でも、『覇気』の使い方とか戦闘方法とか教えてないよ!?」

「多分だが、俺達の感覚で教えたら絶対どっかで躓く。それに人それぞれにがあ  る。それは個人的な課題となるから自主トレとなるぜ」

 そろそろ腹減りが限界に近い為、下山したがる修二。

「それじゃあ私が役に立たない!」

「役に立つ立たないじゃなくて、お前がコレから学ぶんだよ。実際に見て体感し、何かに気づき、そして新しい物を組み込む。こっからは俺達が選択するんじゃねぇ、これからお前が選択するんだ」

「きゅ、急にそんな事を言われても…」

 どうやら木戸は早い終了期間に動揺し、自信なさげな様子だ。

「…分かった。お前がそこまで言うなら俺も何か考えよう。その最終試験が合格したら、もう俺達を頼ることなど無くなるだろ。それならどうだ?」

 修二による最終通達。
 それは修二が考えた最終試験を乗り越えれば木戸は自信が出てくると力説していた。
 そして修行する前より、冷たく鋭い目付きで返答していた。右腕の影響ではなく、本人の感情だった。

「は、はい!」

 凄みのある気迫に負けて木戸は動揺しながらも返答した。
 修二が本気だということは本人には伝わったようだ。

「…話長くなったな。飯にしようぜ、それから足立区に攻めるぞ」

 煙草を一つ咥え、ジッポライターで着火し、深く吸い込み、紫煙を吐いた。

「じゃあ飯にしようぜ」

 飯が食える二人はウキウキな状態、修二は気ダルげな状態、木戸は心配な状態のまま食事へと出掛けたのだ。

 食事を終えると駅前に桐崎と木戸を置いて、修二と南雲は何処かへ行った。

「師匠達、何処へ行ったんでしょうね?」

「…知らん。というか知りたくもなければ興味ない」

 桐崎は無表情でスマートフォンを高速で操作しながら木戸へ返答していた。

「待たせたな」

 暫くすると修二が帰って来た。それも一変と様変わりして…
 髭を剃り、センター分けをアップバングでアレンジし、近くで購入した清潔な紺色のスーツ姿で現れた。

「……」

 木戸は惚けた表情で修二を眺めて見ていた。

「どうした? 俺の顔に何か付いてるか?」

 ジッと見られていたので修二は気になり、尋ねた。

「い、いえ。すっかりと見違えまして…」

「あ~コレか? まあ普段からスーツしか着ねぇから戦闘着みたいな物だ。これでビシッと気合いが入る」

 修二がスーツを着た理由を木戸へ淡々と説明していた。

「…おい。コレ買ったのは良いが、久し振りにやるから気持ち悪くねぇか?」

 南雲は安物のサングラスと肩まで伸びたロン毛の鬘を被っていた。
 二人それぞれが別の形で原点へと回帰していた。

(なんでだろう、南雲さんはあの姿が似合うって思う事って…)

 木戸は原点回帰した南雲に何処か、似合うと思ってしまい、納得してしまった。

「…原点回帰か。まあ、気合いを入れ直すには丁度いい時期かもな。それより早く行くんだろ? 足立区に」

 桐崎は修二達の行動に納得しながら携帯を仕舞い、二人へ尋ねた。

「あぁ。あのマスク集団を見つけて半殺しにして、誰が黒幕か問いただす。そして…なんやかんやする以上!」

 修二は途中まで物騒な事を言って最後には適当な事になっていた。

「…大丈夫かな?」

 木戸はこんな状態で勝てるのかと心配となっていた。
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