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第2章 魔導使い襲来。
第75話 魔王戦、後編。
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「遅れるなよ輝。」
「兄さんこそ、途中で倒れないでよね?」
二人の姿は一瞬にして消失した。二人は一般人が目視できないほど、神速な速さで動き回っていたからだ。
ウロボロスはただ立ち尽くしている所に、両頬から大きな凹みができていた。
それは両側から忍と輝が同時に、力強く殴っていたからだ。
「うぉぉぉぉぉッ!」
更に二人は膂力を込める。それは喋らずとも息の合ったコンビネーションの動きで、ウロボロスを翻弄していた。
(流石、神崎兄弟。目に見えないほど速さと容赦ない攻撃だ。さっきまでのゴミとは違い、楽しめる。)
ウロボロスは傷が再生しながらも、二人の攻撃に対しては称賛していた。
そう物の数秒後には、ウロボロスの身体は切り傷だらけになっていた。
(何もしてこないとは言え。コイツの再生能力は異質だ。疲労でも精神に異常をきたしている訳でもない…まさかとは思うが。)
ウロボロスの何かを感づき始めた忍は、いきなり立ち止まった。『ダークネスホール』へ手を突っ込み、何かを探っていた。
「輝! ウロボロスから離れろ!」
忍の言葉を聞き、輝はウロボロスから遠く離れた。それを確認した忍は、力強く何かを投げつけた。
それは雅が持っていたダイナマイトだった。
(これで何か分かる筈だ。)
そしてダイナマイトは爆発し、ウロボロスの頭は吹き飛ばされた。肉片や目玉は散乱し、グロテスクな光景になっていた。
だが、散乱した肉片と目玉は巻き戻しの様に再構成され、ウロボロスは復活した。
「いい判断だ。爆発物で殺すとは…。」
「…何が、いい判断だ。このインチキ蜥蜴野郎が。」
「気づいたな。」
ウロボロスは不適に笑っていた。
「…お前も『魔導使い』だったとはな。魔王の風上にもおけねぇ、とんだ小心物だな。」
忍が能力を見破った途端、ウロボロスは高らかで狂気的に笑っていた。
「そうだ! 『逆行の魔導』。年老いて衰退する力を阻む為、我は『魔導』で全盛期の力を維持している。」
そうウロボロスは千年前の力と姿を維持し、『覇気使い』と戦っていたのだ。
「進化ではなく退化を選んだか…コイツは品川修二以上の馬鹿かもしれんな。」
期待していた事と違う能力内容だったので、忍は呆れていた。
「…どうゆう訳?」
「確かに、『逆行』で全盛期を維持しながら即席の不死身は強い。」
「それの何処が馬鹿という理由になるの?」
「理由は簡単だ。閻魔光は無限に進化し続ける事を選んだ。だが、その後継のウロボロスだけは維持がしたい為に退化を選んだ。それは二度と強くなる事はない、一生そのままだ。」
まさしく忍の言う通りだった。ウロボロスは死ぬ度に、全盛期へ力は『逆行』をする。
それは強くなる事もなく、進む事もない。そのままで、何もかも全て成長しない事だった。
「神崎忍、その通りだ。もう一つ教えてやろう、我は『魔導』を得て、更には『魔力』まで使える。貴様の弱点となる“神”に近い力は我も所有している。誰も我には勝てんよ。」
「……。」
「……。」
誰も無敵に近い、ウロボロスに戦意損失したかと思われた。アルカディアも完全に諦めていた。人間では、やはり魔王に『無敵の存在』に勝てないのかと…。
だが、忍は右手で顔を隠し、高らかに笑っていたのだ。
「そういうの負ける奴が、吐く言葉だぜ? 知ってるか? 俺を負かした相手はな、こんな絶望的な状況でも諦めず。三度目で、やっと俺に勝てたぐらいだ。全て完璧な奴なんて絶対にいねぇよ。必ず、何処かに綻びはあるだろ?」
忍は瓦礫へと目を向け、そして問いかけたのだ。
すると瓦礫は動き、崩れ、修二が復活したのだ。苦悶と気だらけの表情で起き上がり、左手で煙草を咥えた。
「まさか! 有り得ん、『魔王爆裂拳』を喰らって生きているなんて!」
「…忍のパンチとかキックの方が痛ぇし、頭揺れんだよ。テメェのは痛いだけのパンチだけだ。」
修二は右腕を形成させ、その炎で煙草へ着火させ一服していた。
「殴られて目覚めた気分はどうだ? テメェの馬鹿面で気絶している所を見れなかったのは残念だがな。」
「うるせぇよ。それよりコイツをどう倒すのか分かったのか?」
「…あるにはある。条件は『覇気』が七つあることだ。ここには『太陽』、『月』、『氷』、『雷』、『光』、『風』、『闇』がある。雅、起きろ!」
その忍の叫びで雅は起き上がり、隣へ瞬間移動していた。
「ただいま参上しました。」
「これで七つの『覇気』は揃った…というより、あの馬鹿二人は早く起きないのか?」
忍は輝へ目を向けて、吹雪と南雲に指差して尋ねていた。
「さあ、狸寝入りは止めて早く起きてね。」
輝が二人へ問いかけた。
「あ、バレてました?」
「電熱で傷を塞いでるのを見てたからね。僕等が戦っている隙に、致命傷は避けられたね。」
そう直ぐに意識を取り戻した南雲は隙を見て、『雷の覇気』で治療していた。それは修二が五年前にやった、焼杓止血法だった。
「どうだ? 意外と便利だったろ?」
「痛いに決まってんだろ! お前よく耐えられたな! やっぱネジとか数本外れてんだろ!? 神経に響くし、冷めても熱いしよ! 狂ってんじゃねぇのか!」
吹雪は怒り狂いながら修二へ、焼杓止血法に文句を言っていた。
「知らねぇよ。そんなのテメェが我慢すれば良いだけの話だろ?」
「我慢って…まあいい。それより、神崎忍。コレで『覇気』が七つ揃ったぜ、何かスゲェ物が出るんだよな?」
「まあな。お前等、もう人間に戻るのが嫌になるぞ?」
そう聞いた吹雪は鼻で笑っていた。
「覚悟する前にセーブしてきた。つまり、つべこべ言わずにやれ。」
「…分かった。それじゃあ俺に近寄れ。」
急いで五人は忍へ近づいた。
「足りねぇのは俺を使う。お前等、ハイになるなよ? 『宇宙の覇気』…『七星の輝き』!」
忍の身体が黄金に輝き、天へ光を放った。それは北斗七星となり、光は六人へ降り注いだのだ。
六人の身体は黄金へと輝いていた。
そして一名だけは、この輝きの正体を知っていた。
「これってよ…『覇気』の『限界突破』に似てる。」
「似てるんじゃない、『限界突破』その物だ。『宇宙の覇気』は“法則”が一切存在しない。だから、『限界突破』を簡単に引き出ささせる。それに効果が切れても『覇気』が消滅する事はない。」
そんなインチキとも思える能力に、輝以外は唖然としていた。
「おい! 忍の彼女なら知ってて当たり前だろうが! 何、テメェが驚いてんだよ!」
「か、か、彼女ちゃうわい! 私だって知ってる事もあれば知らない事ぐらいあるわい!」
吹雪の彼女発言で、雅は口調も変わるぐらい動揺し反論していた。
(この状態なら神崎忍に勝てるのでは? よし、天才の俺なら終わってから奇襲するか。)
密かに南雲は忍を倒そうと考えていた。
「さてと、皆が強化された所で魔王をクリアしようぜ。」
「あぁ。」
「人間共がぁぁぁぁッ!」
諦めない人間の姿を見せられ、そんな鬱陶しい気持ちが高まり、ウロボロスは更に怒り狂った。
そして背中から蝙蝠型の翼が生え、両肩、両脇から腕も生えて強化された。
「行くぜ!」
六人は一斉にウロボロスへ走り出した。
「『魔王煉獄拳』!」
六本の腕で六人へ向けて、無数とも思える拳の嵐を放った。が、全ては空振りという結果に終わった。
その理由は、強化された『闇の覇気』で全員を物理攻撃全て透過させていたからだ。
「おらぁッ!」
修二は大きく振りかぶって、ウロボロスの足を殴った。するとウロボロスの足は拳に触れた時点で吹っ飛んでいた。
「マジか!」
強化された拳で足を殴った感触は、とてもコットン並に軽く、それで驚愕している修二だった。
「氷れ!」
更に追撃で吹雪が割り込んだ。が、威力を調整できなかったのか、忍と輝以外は仲間ごと凍結させてしまったのだ。
「アレ!? いつも通りに放ったつもりだったんだけどな…なんか、ごめん。」
「ソイツ等は放っておけ、勝手に自由になる。それより全力でアイツに叩き込め!」
忍の言う通りに凍結された四人は自由となり、戦闘を続行していた。
黒焦げになる威力の電撃、身体がバラバラになるほどのカマイタチ、身ですら消滅させる太陽、身体の自由を奪う凍結、翻弄する鬱陶しい光。
この全てと全力をウロボロスへ力一杯に叩き込んでいた。
「調子に…乗るな! 『煉獄火柱』!」
ウロボロスは六本の手に火玉を形成する。そして地面へ叩き込んだ。
すると六人へ業火の火柱が襲った。
「な、何!」
全て倒したと確信していたウロボロスだった。が、火柱に包まれたのは『月の覇気』による幻覚だった。
「ど、何処に!」
「合わせろよ、品川修二!」
「そっちこそな、神崎忍!」
油断しているウロボロスに、二人は天井まで飛翔していたのだ。
そしてライダーキックという形でウロボロスの胸へ衝突する。ウロボロスは大きく後退し、壁まで激突し、瓦礫へ埋もれたのだ。
「ぐっ! まだ人間ごときに…!」
ウロボロスが態勢を直そうと瓦礫を退かし、復活した。が、目前にあったのは修二が右腕を掲げ、巨大な太陽を形成していた。
その太陽は『氷』、『雷』、『風』、『光』の自然物を混ぜた輝かしい物だった。
「舐めるな!」
それに対抗してウロボロスは六本の手で円を作り、紫色とした『魔力』を収縮していた。
それは禍々しく不穏な気配を漂わせていた。
「『炎王爆裂弾』。」
「『煉獄死中玉』!」
修二は思いっきり投擲し、ウロボロスは放った。『太陽』と『死』が衝突する。
それは周囲のオブジェを破壊し、今にでも飛ばされそうな風圧、時空にも亀裂が入る。想像以上の危険な状態だった。
だが、危険な状況だろうと修二は、苦悶の表情で右腕へ膂力を込める。
「苦しそうじゃないか! 今、諦めれば楽に死ねるぞ!」
「…諦めんのは簡単だ。今ここで力込めんのん止めたら終われる。けどな、ここで諦めたら忍との決着がつけられへんやろうが!」
その言葉と同時、修二の背中に暖かい感触が伝わる。それは、ここまで戦ってきた“仲間”の手だった。
「最後までやってやろうぜ、俺達が支えてやるからよ。」
吹雪が代表として伝える。吹雪以外の人物はバラバラだが頷き、皆の思いは一緒の様子だった。
「…ありがとう…行けぇぇぇぇぇぇッ!」
そして『太陽』は『死』を消滅させ、ウロボロスへ辿り着いた。
「ぐっ! こ、この力…あの時と…。」
そして『太陽』はウロボロスを飲み込み、大爆発を起こした。が、そんな猛烈で巨大な爆発を『闇』が一瞬にして飲み込みんだ。
「……。」
それは忍の『ダークネスホール』だった。
「もう立てねぇ…。」
修二は疲労で右腕が消滅し、地面へ仰向けで倒れた。が、それは阻止され五人が支えてくれていた。
「あー疲れた! おい、神崎忍! ここまでやったんだ。なんかくれんだろうな!?」
「…軽口を叩く元気はあるようだな。休んでいる所、悪いがウロボロスはまだ生きている。」
その言葉と同時、瓦礫は大きく爆発し破片が飛散する。それは巨大なウロボロスの姿ではなかった。
禍々しい西洋の鎧に包み、薄く黄色の長髪、立派な髭を蓄え、歴戦を掻い潜ってきた風格がある顔の老人がいた。
「ウロボロス最終形態って所だな。」
「マジかよ。こっちは動けねぇのによ。」
吹雪や他は満身創痍で、とても戦闘を続行できる状態ではなかった。
「いや、もう何もしなくていい。この戦いは俺達の…勝利だ。」
だが、忍だけは絶望的な状況でも余裕を見せ、勝利を確信していた。何故なら…
「いい戦いだった。ウロボロスを本気にさせた時点で、お前達の勝利だ。」
それは忍と輝と修二以外は聞き覚えのある声だった。
「やっと来たか。途中で酒盛りして寝てるかと思ったぜ。」
「それも良かったが、俺にも極道としての約束もあるから急いで来た。」
それは先代魔王でもある、入口付近で腕組みした閻魔光だった。
「久し振りだな、ウロボロス。お前を半殺しにして千年か? 随分とやさぐれた物だな?」
「分かってらっしゃる癖に…。」
「分かってる? お前の心情なんて知るか。俺は俺なりの生き方を見つけただけだ。それならば、俺がここに来た理由もお前には分かるという事か? 答えてみろよ、ウロボロス。」
「……。」
流石のウロボロスも閻魔の質問された事には返答できなかった。
「…できねぇだろうな。まあいい、それはそれだ。俺が来たのは…ケジメをつけに来ただけだ。」
そう言うと閻魔は真っ白い刀、白龍を引き抜いていた。
「兄さんこそ、途中で倒れないでよね?」
二人の姿は一瞬にして消失した。二人は一般人が目視できないほど、神速な速さで動き回っていたからだ。
ウロボロスはただ立ち尽くしている所に、両頬から大きな凹みができていた。
それは両側から忍と輝が同時に、力強く殴っていたからだ。
「うぉぉぉぉぉッ!」
更に二人は膂力を込める。それは喋らずとも息の合ったコンビネーションの動きで、ウロボロスを翻弄していた。
(流石、神崎兄弟。目に見えないほど速さと容赦ない攻撃だ。さっきまでのゴミとは違い、楽しめる。)
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「輝! ウロボロスから離れろ!」
忍の言葉を聞き、輝はウロボロスから遠く離れた。それを確認した忍は、力強く何かを投げつけた。
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(これで何か分かる筈だ。)
そしてダイナマイトは爆発し、ウロボロスの頭は吹き飛ばされた。肉片や目玉は散乱し、グロテスクな光景になっていた。
だが、散乱した肉片と目玉は巻き戻しの様に再構成され、ウロボロスは復活した。
「いい判断だ。爆発物で殺すとは…。」
「…何が、いい判断だ。このインチキ蜥蜴野郎が。」
「気づいたな。」
ウロボロスは不適に笑っていた。
「…お前も『魔導使い』だったとはな。魔王の風上にもおけねぇ、とんだ小心物だな。」
忍が能力を見破った途端、ウロボロスは高らかで狂気的に笑っていた。
「そうだ! 『逆行の魔導』。年老いて衰退する力を阻む為、我は『魔導』で全盛期の力を維持している。」
そうウロボロスは千年前の力と姿を維持し、『覇気使い』と戦っていたのだ。
「進化ではなく退化を選んだか…コイツは品川修二以上の馬鹿かもしれんな。」
期待していた事と違う能力内容だったので、忍は呆れていた。
「…どうゆう訳?」
「確かに、『逆行』で全盛期を維持しながら即席の不死身は強い。」
「それの何処が馬鹿という理由になるの?」
「理由は簡単だ。閻魔光は無限に進化し続ける事を選んだ。だが、その後継のウロボロスだけは維持がしたい為に退化を選んだ。それは二度と強くなる事はない、一生そのままだ。」
まさしく忍の言う通りだった。ウロボロスは死ぬ度に、全盛期へ力は『逆行』をする。
それは強くなる事もなく、進む事もない。そのままで、何もかも全て成長しない事だった。
「神崎忍、その通りだ。もう一つ教えてやろう、我は『魔導』を得て、更には『魔力』まで使える。貴様の弱点となる“神”に近い力は我も所有している。誰も我には勝てんよ。」
「……。」
「……。」
誰も無敵に近い、ウロボロスに戦意損失したかと思われた。アルカディアも完全に諦めていた。人間では、やはり魔王に『無敵の存在』に勝てないのかと…。
だが、忍は右手で顔を隠し、高らかに笑っていたのだ。
「そういうの負ける奴が、吐く言葉だぜ? 知ってるか? 俺を負かした相手はな、こんな絶望的な状況でも諦めず。三度目で、やっと俺に勝てたぐらいだ。全て完璧な奴なんて絶対にいねぇよ。必ず、何処かに綻びはあるだろ?」
忍は瓦礫へと目を向け、そして問いかけたのだ。
すると瓦礫は動き、崩れ、修二が復活したのだ。苦悶と気だらけの表情で起き上がり、左手で煙草を咥えた。
「まさか! 有り得ん、『魔王爆裂拳』を喰らって生きているなんて!」
「…忍のパンチとかキックの方が痛ぇし、頭揺れんだよ。テメェのは痛いだけのパンチだけだ。」
修二は右腕を形成させ、その炎で煙草へ着火させ一服していた。
「殴られて目覚めた気分はどうだ? テメェの馬鹿面で気絶している所を見れなかったのは残念だがな。」
「うるせぇよ。それよりコイツをどう倒すのか分かったのか?」
「…あるにはある。条件は『覇気』が七つあることだ。ここには『太陽』、『月』、『氷』、『雷』、『光』、『風』、『闇』がある。雅、起きろ!」
その忍の叫びで雅は起き上がり、隣へ瞬間移動していた。
「ただいま参上しました。」
「これで七つの『覇気』は揃った…というより、あの馬鹿二人は早く起きないのか?」
忍は輝へ目を向けて、吹雪と南雲に指差して尋ねていた。
「さあ、狸寝入りは止めて早く起きてね。」
輝が二人へ問いかけた。
「あ、バレてました?」
「電熱で傷を塞いでるのを見てたからね。僕等が戦っている隙に、致命傷は避けられたね。」
そう直ぐに意識を取り戻した南雲は隙を見て、『雷の覇気』で治療していた。それは修二が五年前にやった、焼杓止血法だった。
「どうだ? 意外と便利だったろ?」
「痛いに決まってんだろ! お前よく耐えられたな! やっぱネジとか数本外れてんだろ!? 神経に響くし、冷めても熱いしよ! 狂ってんじゃねぇのか!」
吹雪は怒り狂いながら修二へ、焼杓止血法に文句を言っていた。
「知らねぇよ。そんなのテメェが我慢すれば良いだけの話だろ?」
「我慢って…まあいい。それより、神崎忍。コレで『覇気』が七つ揃ったぜ、何かスゲェ物が出るんだよな?」
「まあな。お前等、もう人間に戻るのが嫌になるぞ?」
そう聞いた吹雪は鼻で笑っていた。
「覚悟する前にセーブしてきた。つまり、つべこべ言わずにやれ。」
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そして一名だけは、この輝きの正体を知っていた。
「これってよ…『覇気』の『限界突破』に似てる。」
「似てるんじゃない、『限界突破』その物だ。『宇宙の覇気』は“法則”が一切存在しない。だから、『限界突破』を簡単に引き出ささせる。それに効果が切れても『覇気』が消滅する事はない。」
そんなインチキとも思える能力に、輝以外は唖然としていた。
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「か、か、彼女ちゃうわい! 私だって知ってる事もあれば知らない事ぐらいあるわい!」
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(この状態なら神崎忍に勝てるのでは? よし、天才の俺なら終わってから奇襲するか。)
密かに南雲は忍を倒そうと考えていた。
「さてと、皆が強化された所で魔王をクリアしようぜ。」
「あぁ。」
「人間共がぁぁぁぁッ!」
諦めない人間の姿を見せられ、そんな鬱陶しい気持ちが高まり、ウロボロスは更に怒り狂った。
そして背中から蝙蝠型の翼が生え、両肩、両脇から腕も生えて強化された。
「行くぜ!」
六人は一斉にウロボロスへ走り出した。
「『魔王煉獄拳』!」
六本の腕で六人へ向けて、無数とも思える拳の嵐を放った。が、全ては空振りという結果に終わった。
その理由は、強化された『闇の覇気』で全員を物理攻撃全て透過させていたからだ。
「おらぁッ!」
修二は大きく振りかぶって、ウロボロスの足を殴った。するとウロボロスの足は拳に触れた時点で吹っ飛んでいた。
「マジか!」
強化された拳で足を殴った感触は、とてもコットン並に軽く、それで驚愕している修二だった。
「氷れ!」
更に追撃で吹雪が割り込んだ。が、威力を調整できなかったのか、忍と輝以外は仲間ごと凍結させてしまったのだ。
「アレ!? いつも通りに放ったつもりだったんだけどな…なんか、ごめん。」
「ソイツ等は放っておけ、勝手に自由になる。それより全力でアイツに叩き込め!」
忍の言う通りに凍結された四人は自由となり、戦闘を続行していた。
黒焦げになる威力の電撃、身体がバラバラになるほどのカマイタチ、身ですら消滅させる太陽、身体の自由を奪う凍結、翻弄する鬱陶しい光。
この全てと全力をウロボロスへ力一杯に叩き込んでいた。
「調子に…乗るな! 『煉獄火柱』!」
ウロボロスは六本の手に火玉を形成する。そして地面へ叩き込んだ。
すると六人へ業火の火柱が襲った。
「な、何!」
全て倒したと確信していたウロボロスだった。が、火柱に包まれたのは『月の覇気』による幻覚だった。
「ど、何処に!」
「合わせろよ、品川修二!」
「そっちこそな、神崎忍!」
油断しているウロボロスに、二人は天井まで飛翔していたのだ。
そしてライダーキックという形でウロボロスの胸へ衝突する。ウロボロスは大きく後退し、壁まで激突し、瓦礫へ埋もれたのだ。
「ぐっ! まだ人間ごときに…!」
ウロボロスが態勢を直そうと瓦礫を退かし、復活した。が、目前にあったのは修二が右腕を掲げ、巨大な太陽を形成していた。
その太陽は『氷』、『雷』、『風』、『光』の自然物を混ぜた輝かしい物だった。
「舐めるな!」
それに対抗してウロボロスは六本の手で円を作り、紫色とした『魔力』を収縮していた。
それは禍々しく不穏な気配を漂わせていた。
「『炎王爆裂弾』。」
「『煉獄死中玉』!」
修二は思いっきり投擲し、ウロボロスは放った。『太陽』と『死』が衝突する。
それは周囲のオブジェを破壊し、今にでも飛ばされそうな風圧、時空にも亀裂が入る。想像以上の危険な状態だった。
だが、危険な状況だろうと修二は、苦悶の表情で右腕へ膂力を込める。
「苦しそうじゃないか! 今、諦めれば楽に死ねるぞ!」
「…諦めんのは簡単だ。今ここで力込めんのん止めたら終われる。けどな、ここで諦めたら忍との決着がつけられへんやろうが!」
その言葉と同時、修二の背中に暖かい感触が伝わる。それは、ここまで戦ってきた“仲間”の手だった。
「最後までやってやろうぜ、俺達が支えてやるからよ。」
吹雪が代表として伝える。吹雪以外の人物はバラバラだが頷き、皆の思いは一緒の様子だった。
「…ありがとう…行けぇぇぇぇぇぇッ!」
そして『太陽』は『死』を消滅させ、ウロボロスへ辿り着いた。
「ぐっ! こ、この力…あの時と…。」
そして『太陽』はウロボロスを飲み込み、大爆発を起こした。が、そんな猛烈で巨大な爆発を『闇』が一瞬にして飲み込みんだ。
「……。」
それは忍の『ダークネスホール』だった。
「もう立てねぇ…。」
修二は疲労で右腕が消滅し、地面へ仰向けで倒れた。が、それは阻止され五人が支えてくれていた。
「あー疲れた! おい、神崎忍! ここまでやったんだ。なんかくれんだろうな!?」
「…軽口を叩く元気はあるようだな。休んでいる所、悪いがウロボロスはまだ生きている。」
その言葉と同時、瓦礫は大きく爆発し破片が飛散する。それは巨大なウロボロスの姿ではなかった。
禍々しい西洋の鎧に包み、薄く黄色の長髪、立派な髭を蓄え、歴戦を掻い潜ってきた風格がある顔の老人がいた。
「ウロボロス最終形態って所だな。」
「マジかよ。こっちは動けねぇのによ。」
吹雪や他は満身創痍で、とても戦闘を続行できる状態ではなかった。
「いや、もう何もしなくていい。この戦いは俺達の…勝利だ。」
だが、忍だけは絶望的な状況でも余裕を見せ、勝利を確信していた。何故なら…
「いい戦いだった。ウロボロスを本気にさせた時点で、お前達の勝利だ。」
それは忍と輝と修二以外は聞き覚えのある声だった。
「やっと来たか。途中で酒盛りして寝てるかと思ったぜ。」
「それも良かったが、俺にも極道としての約束もあるから急いで来た。」
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「久し振りだな、ウロボロス。お前を半殺しにして千年か? 随分とやさぐれた物だな?」
「分かってらっしゃる癖に…。」
「分かってる? お前の心情なんて知るか。俺は俺なりの生き方を見つけただけだ。それならば、俺がここに来た理由もお前には分かるという事か? 答えてみろよ、ウロボロス。」
「……。」
流石のウロボロスも閻魔の質問された事には返答できなかった。
「…できねぇだろうな。まあいい、それはそれだ。俺が来たのは…ケジメをつけに来ただけだ。」
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よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
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スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
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小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
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