マグナムブレイカー

サカキマンZET

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第1章 覇気使い戦争。

第26話 最強への挑戦。

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 十一月十日の冬、三銃士全員を倒し更に吹雪と南雲の蟠りも解かれた一ヶ月後。待ちに待ったこの時が来た。
 それは修二に初めての敗北を与え、更に目指すべき場所にいる『覇気使い最強』の称号を持つ神崎忍との決戦が始まろうとしていたからだ。
 三人は日曜日の昼頃に海道喫茶で集まっていた。

「いよいよだね、やっとここまで来たんだ。」

 相川は赤いチェック柄のワイシャツを着て、下には黒いジーンズを穿き、スニーカーを履いた。
 普通スタイルで修二に激励の言葉を送っていた。

「長く苦しかったけどよ、お前に付いて来て良かったと思ってるよ。」

 吹雪はロゴが髑髏マークの黒いシャツを着て、下には青いジーンズを穿き、黒いスニッポンスニーカーを履いた。
 完全にヤンキーの相棒スタイルの吹雪も相川と一緒に応援の言葉を送った。

「……。」

 後ろに龍の刺繍が入った黒いスカジャンを羽織、中には赤いシャツを着て、下にはベージュ色のボトムスを穿き、赤いスニーカーを履いた。
 番長の風格が出てきた修二が珍しく真剣に考え込んでいた。

「どうしたんだよ、そんなに考え込んでよ?」

 そんな修二を不思議に思ったのか吹雪が顔を覗き込んで聞いてみた。

「…俺、アイツの住所知らねぇんだ。それも何時来るか分かんねぇし…。」

 口を開けば残念な答えで返ってきたので二人はズッコケる。

「…いつも、この調子だな。」

 吹雪は頭を抱え呆れながら立ち上がる。

「まあ、品川らしいちゃらしいよね。」

 相川は苦笑いしながら立ち上がる。

「本当に君は面白い人ですね品川くん。」

 いつの間に修二の隣で柏木が珈琲を飲みながら話に紛れ込んでいた。

「って柏木さん、いきなり現れんなよ! ビックリするじゃねぇか…。」

「いや、すみません。なんだか楽しい会話に混ざりたくなってしまいましてね…それより忍様からお迎えの命を仰せつかまつりました。表にリムジンを停めております。さあ、行きましょう忍様の元へ。」

 三人は柏木の指示に従い、会計を済ませてから喫茶店に退店し停車しているリムジンに乗り込む。
 静かに四人を乗せたリムジンは出発した。


 やがてリムジンは森の前に停車し、数時間にも渡る長い道のりで、三人は乗車で疲れてクタクタになっていた。

「もうちょっと近い場所で待ち合わせしていれば良かったですね、こちらです。」

 そんな三人の様子を見て柏木は次回から反省するように案内を始めた。

「柏木さん、海道の丘ってそんな場所ってありましたっけ? 僕たち海道には住んでますけど、そんな丘は知りませんよ?」

 歩きながら相川は忍が決闘場所に選んだ海道の丘に疑問を持ち、柏木に聞いた。

「海道の丘は、海道と外には一般公開されていない自然の島でして、神崎の人間と許可を貰った関係者でしか立ち入れない場所です。まあ、我々が占拠してるのは間違ってないですけどね。」

「なるほど…これって何処に向かっているんですか?」

「神崎邸です。忍様から万全な状態で勝負するのが条件ですので疲れた体を癒してもらいます。」

 柏木の説明に誰も意義を申し立てる事もなく三人は、ちゃんと付いて行く。
 そして森の奥から光りが差し込み、四人は光りを目指し歩き森から抜ける。
 森を抜けた先には人工で作られた石の道に、端側に大人数の執事とメイドが挟み、修二達をお出迎えしていた。

「いらっしゃいませ品川様、吹雪様、相川様。」

 執事とメイドが三人の名前を呼び、深々とお辞儀していく。
 そんな金持ち環境に見慣れていない一般人代表の三人組はたじろいでいた。

「お、おい、なんか商店街の福引きで一等当たった感じだな。」

「こ、これってアレだろ!? あの…テレビがどっかあるんだ! それも一般人代表のドッキリとか!」

「本物のメイドさんが一杯だ…。」

 珍しく修二は苦笑いを浮かべ、見慣れない状況を商店街の景品で例え、あまりにも衝撃だったのか吹雪は目に写っている物が信じられなくドッキリ番組だと疑い、相川は喫茶店で営業しているスタッフではない本物のメイドを見て呆然としながら涎を垂らし歓喜で三人は色々なリアクションをしていた。
 柏木はそんな三人の光景が微笑ましかったのか、本人でも気づかずに自然に笑っていた。

「あれ? どうしたんですか、柏木さん?」

「いえ、なんだか昔を思い出していました。まあ、もう過去の事ですけど…それでは行きましょう。」

 吹雪の問いに柏木は懐かしむように黄昏ていたが、途中で何か引っ掛かったのか曇った表情を浮かべた。
 だが、客を連れているので柏木は気持ちを切り替えて屋敷まで案内する。


 そして屋敷に入り、先ずは休憩と言う事で食堂に進む。
 食堂に着き三人の為に用意されていた豪華な食器があり、三人はぎこちなく席に座る。
 全てが高級で品がある空間で一般人の三人には少し合わなかったかもしれなかった。
 ドアが開かれ、メイドがワゴンカートで運ばれたケーキや紅茶を配置していく。

「お待たせしました。こちらイタリアシェフが気まぐれで作ったショートケーキでございます。」

 執事の説明でイタリアシェフという単語を聞いただけで、スポンジケーキ層の間に生クリームが塗られ、更に綺麗に盛り付けられた苺のショートケーキでさえ三人には手を付けるのが勿体ないと感じる程に豪華に思えた。
 だが、そんな緊張感漂う中で修二の顔に向かってクナイが飛んできた。が、柏木が簡単にクナイを掴み、一瞬にして消え投げた犯人を腕挫腕固で拘束し、三人の目の前に姿を表す。

「離せ! コイツだけは忍様の元へ行かせるか!」

「止めなさい雅。彼等はちゃんと条件を満たし、忍様に招待された人達です。これ以上醜態を晒すと忍様の顔に泥を塗ることになり、そうなれば貴方の腕の一つを折らなければなりません。」

「黙れ! 品川修二、もう一度戦え! 今度こそ!」

「客の前で恥ずかしい真似をするな、負け犬が。」

 目を見開き、親の敵みたいに狂気な顔で叫ぶ雅だが、何処からか一人の男が突然と現れ、雅の顎を目掛けて蹴り一撃で気絶させた。

「柏木、コイツの飼育はちゃんとやっておけってアレほど言っただろ? こんな狂犬みたいに客を攻撃して吠えられたら…処分するしかねぇぞ?」

 その言葉だけで三人の背筋は凍えてゾッとした。
 普段の喧嘩で不良から言われ慣れている言葉でさえ、目の前で穏やかそうに見える人物が発言した物とは思えないぐらいに恐怖を覚えたのだ。

「洋、雅だって人間だ。そんな動物みたいな扱いをするのは止めてくれないか?」

 その雅を蹴った人物は忍と輝の父、神崎洋だった。

「それを決めんのはレン、お前でも無いんだ俺なんだよ……だが、まあ好きにすればいい。今回暫くは帰ってこれない、また爺共が騒ぎ始めたからな…頼むから死人は出すなよ。」

「分かっている。」

「それじゃあな。」 

 洋は柏木を険悪な雰囲気を残しながら、食堂から去った。それを見た三人は大事にならなくなって一息をついて安心した。

「すみません、どうぞ食事を続けてください。雅は部屋で待機させます。」

 柏木は雅を抱えて食堂から退室した。雅のあの一戦で、この行動を起こされた修二は「相当恨まれてるんだな」とショートケーキを一口を食べて思った。
 暫く三人で対談していると食堂のドアが開かれ、執事がお辞儀をして三人に近づく。

「万全の状態でございますでしょうか?」

「はい。もう疲れてないし、何時でも全力を出せます!」

 修二は元気よく何ともないアピールをして、執事に問題ないと返答した。

「分かりました。それでは忍様をお呼びしますので、もう暫くお待ちください。」

 執事は再び深々と頭を下げ、食堂から退室した。

「いよいよだね。」

「どんだけ強くなったから見せてやろうぜ。」

「あぁ。」

 数分待った時、執事が再び入室した。

「それでは品川様、吹雪様、相川様、ご準備ができましたので外に出てください。」

 三人は外に出るために立ち上がり、執事が先に退出し後に続くように三人は歩きだした。

 黒いワイシャツ、黒いスラックス、黒い革靴の忍は携帯電話を使い、仕事の話をしながら待機していた。

「えぇ、手筈通りでお願いします…えぇ、五年はそちらでお厄介になります…すみませんが、客人が来ていますので切らせて頂きます。」

 やつれぎみの忍は通話を切って折り畳み、メイドに携帯電話を渡す。

「…品川たちは?」

「もうじき来られます。」

「そうか分かった…すまないが一人にしてくれないか?」

 一人になりたかった忍はそう言うとメイド達はすぐ消えるように退散した。

「お連れてまいりました。」

 執事はドアを開き、忍に伝達され三人が勇ましく外に出た。

「ありがとうございます。ここからは四人にしてください。」

 執事は深々とお辞儀をして屋敷に入って行き、残されたのは修二、吹雪、相川、忍だけだった。

「…先ずはおめでとう。見事に三銃士全員を倒し、ここまで辿り着いた事と途中で妨害があっても乗り越えた事に祝福しよう。」

 無表情のまま忍は拍手をしながら三人を褒め称えいた。

「それより戦うんじゃねぇのか?」

「…少しは胸を張ったらどうなんだ? 死と隣り合わせの戦いの中で勝ち進んで来たんだ。戦い以外の褒美を貰う権利はある。」

「…俺は目の前でコイツが『覇気使い最強』になる所を見たいからな、それだけで良い。」

「僕も品川が最強になる所を見たい。」

「そう言う事だ。ちゃんと難癖つけずに約束を守ってくれるんだろ? 神崎忍。」

 修二は忍を威圧するように顔を近づけ睨み合う。

「…困った連中だ。そんな誰が言ったか分からない称号の為に戦うのか?」

「そんなんで全力になれる奴だっていんだよ。それに『覇気使い最強』だけでも格好いいじゃねぇか。」

「…仕方ない、海道の丘へ向かうぞ。」

 忍が指を鳴らしすと先程まで、屋敷の外にいた筈なのに景色が一転し、草原が広がる場所にいつの間にか立っていて、吹雪と相川は驚愕していた。

「それが、お前の能力…。」

「四人移動させるぐらいは簡単だ。観客は多い方が好みか?」

 更に忍は涼しい顔をしながら再び指を鳴らす。
 すると吹雪の隣からラーメンを啜っている南雲とチャーハンを食べている途中の内藤と天津飯を食べていた仲村とトレーニングをしていた竹島が現れたのだ。

「お、お前等…。」

 吹雪はそんな不可思議な現象にドン引きしながらも未だに解明されていない忍の能力に理解をしようとしていた。

「これって兄貴の能力…。」

「これでギャラリーは揃った。さあ、始めようかーーーどっちが勝ち、どっちが最強なのかを。」

 そして、この戦いで、この場にいる忍以外の全員が信じられない光景を目にするのであった。
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