マグナムブレイカー

サカキマンZET

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第1章 覇気使い戦争。

第7話 パーマの決意!動き出したキモロンゲ!

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 激しい雷雨の中に古くからの知り合いの二人吹雪と南雲はいた。

 満身創痍で吹雪は仰向けで倒れ、黄色の傘をさしながら南雲は吹雪を嘲笑うかの様に見下す態度で対峙していた。

「なんで、海道に戻って来た?」

「なんで? そりゃ決まってるだろ、俺が再び海道でNo.1になるために、リハビリも頑張りながら『カンザキシノブ』を探し、同じ目に合わせるためだ。シンプルな動機だ。」

「また、全身を骨折されたいのか?」

 苦痛な表情で吹雪は南雲を睨み、立ち上がろうとするが竹島から受けたダメージが残っているため、簡単には起き上がれなかった。

「今の貴様が言えた事か? 俺は天才だ。あの時は能力の発揮方法を知らず、己を過信して、無様に汚なく負けたが、天才は失敗から何度でも成功に繋げるんだよ。」

「それが美鈴ちゃんを心配させて泣かす事か!?」

 吹雪の表情は怒りになり、南雲に向けた怒号が路上に響き渡る。

「お前も美鈴も内藤も俺の道具なんだよ、俺の土台で俺をNo.1にする為の捨て駒だ。」

 南雲は吹雪の顔の近くまで、自分の顔を近づけ挑発とも呼べる行為で、昔の仲間を見下し蔑む。

「テメェ!」

 吹雪が怒りに身を任せ、南雲を殴ろうと起き上がろうとした瞬間に吹雪は再び地面に倒されていた。
 何が分からずに困惑する吹雪だったが、自分の右肩にズッシリと重みを感じ、急いで見ると南雲のスニーカーを履いた足があり、力を入れて起き上がれないようにしていた。

「無駄だ。今の身体で俺に攻撃するのは無理だ。それに、『覇気』の使い方でも俺に勝てんよ。」

 得意気な表情で、その言葉を言い放った同時に、吹雪の肩に容赦ない痛みが襲いかかった。

「スタンガンって知ってるよな? その痛みと同じように電気を流したんだ。威力は抑えてるから暫くしたら動けるだろ?」

「て、テメェ…。」

「さてと、俺は課題があるから帰る。早く帰れよ、その身体で帰れるならな?」

 高笑いしながら南雲は吹雪の肩から足を離し、ゆっくりと自分が帰る道へとゆっくり歩いて雨の中へ消えた。

(身体が自由に動かねぇ…品川、今、お前の気持ちが良く分かった。これは悔しいし、怒りたくなるよな? あぁ、情けねぇな、本当によ。)

 吹雪は修二に言った言葉に後悔しながら、その場で力が抜け、ゆっくり眠るように気絶した。
 そして、吹雪が気絶したのを見越してなのか黒いローブを身に付けた深くフードをかけた人物が、一瞬にして現れ、暫く見た後に担ぎ上げ、また一瞬にして吹雪を連れ去り消えた。


 場所は変わり、神崎邸の一つの部屋にて

「負けたとは、なんたる失態だ。それに忍様の手をわずらわせるとは…。」

 アンティークで包まれた部屋で、仲村はカーペットの上で正座をして、一人の忍者に説教と罵声を受けていた。

「それは仕方ねぇッスよ、あっちの方が上手だっただけ、それに今更、二週間前の事を言われても…。」

「貴様、言い訳する気か?」

 忍者が木の棒で、仲村の頭に振りかざそうとした瞬間に腕に捕まれ誰かに止められる。

「忍様の部屋を血で汚す気か?」

 そこにいたのは、忍者の行動が気に食わなかったのか、もの凄い剣幕な表情で忍者を睨む竹島だった。

「竹島権田。」

「ゴン兄。」

「お主等、カリカリするのは良くない。私達が、バラバラになっては忍様を護る事はできないぞ?」

 竹島の説教で沈黙する中、三人の背後にある扉が大きく音を立て開かれた。

「…。」

 それはタキシード姿で、いつものサングラスを掛けてない、少しげんなりとした様子で帰って来た忍だった。

「忍様!」

 忍は沈黙したまま、ゆっくりとアンティークチェアに深く腰にかけ、グラス一杯に注がれた水を忍者が持って来て、忍はグラスを軽く持ち、一気に飲み干し、グラスを忍者に渡す。
 そして、右手で頭を抱え分かりやすく溜め息を吐いた。

「どうなされたのですか?」

 普段から冷静な忍が珍しく頭を抱える事に、忍者はアタフタした状態で心配した様子で語りかける。

「神崎当主代理っていうのも楽じゃないな。親父がサボるから俺が出向く訳なんだが―――どうも、あの気品の良すぎる空気が未だに慣れない。」

「参加せず、輝様に頼めばよろしかったのでは?」

 忍の悩み事が聞けた事により、忍者は冷静を取り戻し忍の相槌を打つ。

「今日、輝は出掛けていない。だから俺が窮屈なタキシードを着て、爺さんたちの相手しなければなかったんだよ。」

「あ、兄貴…肩、大丈夫ッスか?」

 ゆっくりと立ち上がり、申し訳なさそうな表情で仲村は忍の話しが終わるのを確認をして、二週間前の品川から受けた傷の心配をしていた。

「この火傷か? 大したことはない、仕事には影響しない。だが、お前が負けたのは少し驚いた。俺が鍛えたのに蒸発でゴリ押しだからな?」

 忍は机の引き出しを漁り、紙と羽ペンとインクを取り出し机に置き、優雅に羽ペンにインクを付けて素早く何かを書き出す。
 書き終わると、羽ペンを机にインクが付かない様にペン立ての中に入れ、書いた紙に丁寧に三つ折りにして封筒に入れ、何処から出したのか分厚い札束を封筒と一緒に机の上に置く。

「カズ、百万ある。これを二人分の入院費で話しをつけて、そして手紙を渡せるか?」

「え? えぇ構わねぇッスよ…この手紙は?」

 仲村は手紙と札束を恐る恐るで震えながら机から手に持ち、忍に手紙の詳細について聞いた。

「権田への挑戦状。後二人だろ?」

「忍様、折り入って頼みがあります。」

 竹島は机の前に立ち、忍に真剣な表情で深くお辞儀をする。

「どうした? 権田が頼み事なんて珍しいじゃないか、言ってみろ?」

 忍は優雅に足を組み、右拳で頬杖をつき、竹島の話しを聞く体勢になる。

「一週間、金剛山に引きこもらせていただきたく、お願いしに来ました。」

「―――お前がそうしたいなら構わない。止める理由も無いが、三銃士が一人不在になる訳だが?」

「無礼を承知の上でお願い申し上げます。」

「…。困ったな、またカズがボコられて次の番はいないってうのはな。」

 忍の無慈悲に容赦のない真実の言葉に、仲村は口をあんぐりと開きショックを受け頭と腕と一緒に項垂れてしまった。

「まあいいだろ。代理を探す、後は好きにして思う存分に暴れたら無事に帰って来い。帰って来た時には…一緒に飯を食おう。」

 忍は優雅に椅子から立ち上がり、歩きながら扉の前で竹島に伝えるべき事を言い終わると両開きの扉を片方だけ開け、部屋から退室する。
 忍者もハッとすぐに気付き忍の後を追い掛けるように後ろから付いて歩く。

「良かったのですか?」

 長く続く屋敷の廊下で、ゆっくりと歩きながら忍者は主語も言わずに唐突に忍に聞いた。

「何がだ?」

 忍は唐突に聞かれた事を邪険にして不機嫌になる事もなく忍者に耳を貸した。

「一之が負けた事についての処遇です。」

「初めて負けたんだ。大目に見てやれ、それに今まで三銃士が負けた前例がないから処遇のしようがないだろ?」

「忍様がそう仰るなら私は付き従うのみです。」

「そうか…それとメイド長、権田の代理は誰がいる?」

「シェリア・ローム様がいます。」

 忍はその名前を聞いた途端に立ち止まり、少し青ざめた表情を浮かべて、顔を忍者に向けて見た。

「他は?」

「残念ながらシェリア様しかおりません。」

「マジか…。仕方ない、シェリアに代理できるか頼んでみるか。」

 忍は頭を抱え、更に疲労感に見舞われ、目の前が真っ暗になりかけたが、なんとか臨機応変に対応してシェリアという問題児に代理を頼む事を決意した。

「シェリアが代理になったら『コードレッド』だ。その辺のやり方は任せる、住民の避難が最優先で考えてやってくれ…それからシェリアの『覇気』の後始末は俺がする。」

「そんなに嫌なら代理なんて止めたらどうでしょうか?」

「せっかく、アイツ等が作ってくれたチームだ。少しでも実用化させて役に立つ事を証明させたいからな。」

 忍が最後まで言い終わると忍者は「御意」と言葉だけを残し、一瞬にして消える。
 そして何かが気になったのか忍は廊下の窓に近づき外の景色を見る。

「今日は嵐でも来そうだな。」

 窓から離れ、再び長い廊下を歩きながら勢いよく、タキシードの蝶ネクタイを崩し、不気味に微笑みながら屋敷の奥へと消える。



「…ここ何処だ?」

 吹雪は薄暗く湿った場所で目を覚まし、身体を起こし状況を確認をした。

「目覚めたようだね?」

 そこに誰かの優しく透き通った声が響き渡る。

「アンタ、誰?」

 吹雪の目の前に現れたのはローブを身に付け深くフードを被り、いかにも怪しいですよと言う人物が立っていた。

「私は…ヘイムーン。君が倒れていた所を助けたのだ。」

「名前からして怪しいんだけどよ、先ず聞くけど人間?」

「な、何を言っているんだ。れ、れっきとした人間に、き、決まっているじゃないか。わ、わっはっはっはっは!」

 明らかに誰が見ても演技臭い動きと言葉に吃りを笑ってごまかそうとする怪しい人物は「怖くないよ、怖くないよ」と言いながら吹雪にジリジリと近づく。
 吹雪はこの言動にどうしたらいいのか分からず頭を抱えて困惑する事態に陥った。

「ったく、助けてくれたのは感謝する。すぐに俺は出ていくから…」

「残念だけどさ、ここからは出られないよ?」

 一刻も早くこの空間から抜け出したかった吹雪を遮るようにヘイムーンはここから出られないと言った。

「はあ? 冗談じゃねぇぞっていうか、なんでアンタに指図されなきゃなんねぇんだよ!」

 吹雪はヘイムーンから伝えられた事に怒りを露にして、必要以上に突っ掛かる。

「簡単だよ。君が私に指図されるのは“弱者は強者の物”だからだよ。」

 突然と言い放たれた言葉に流石の吹雪もキレたのか額に血管を浮き出させ、ヘイムーンを睨み、前触れもなく助走をつけて単調に殴りかかる。
 ヘイムーンは向かって来た吹雪の右ストレートを右に避け、足を出し、吹雪の足を引っ掛けて転ばせた。

「て、テメェ!」

「そうそう言い忘れてた。何故、ここから出られないって言ったのは迷宮の洞窟の奥深くだからだよ。入り組んだ迷路になって入ったら最後…死体になっても見つからないままになるから、あんまりウロチョロしないでね、回収する私に手間が掛かるからね?」

 ヘイムーンは吹雪に“動くと死ぬ”という分かりもしない脅迫をした。
 けれど吹雪はそんなヘイムーンの態度が気に入らず反論をする。

「テメェこそ何様なんだよ! 勝手に拉致って、急に説明もなしに俺に何させたいんだよ!」

「そうだな。ただの暇潰しで君を試して、君を弄んで、君を骨の髄までしゃぶり尽くして利用するって言ったら君はどう怒り、どう行動するのかな?」

 ヘイムーンは吹雪の周りを歩きながら『言葉の挑発』で、吹雪を完全に殺意を覚えさせる程にイラつかせた。
 吹雪は『氷の覇気』の冷気を両手に纏い、ヘイムーンにを凍結さそうと掴みかかるが、それは一瞬の出来事だった。
 浮遊感だった、吹雪は最初に感じたのは自分が浮いてる事と目の前が回転して、何も視点が捉えられない事だった。
 そして困惑する、自分に何が起こり、一体何をされたのかが不明過ぎて脳の理解が出来なかった。

(あの時と一緒だ。『カンザキシノブ』と戦った時と同じだ。攻撃してると思ったら、逆に意識がある中で攻撃された事に気づかず、この空中に浮かんでる感覚…。まさかコイツ!)

「どうかな? 痛みもなく身体の自由を奪われ、何もできない感覚。私の知ってる人達なら君は死んでるよ?」

 その言葉が言い終わると同時に、バタンと吹雪は背中から地面に激突する。

「低空だから痛みは少ないと思うけど、心だけは折れないでね? これから君が嫌っていうほど痛みを与えて―――今の君を“殺す”。」

 ヘイムーンは堂々と殺害宣言して、洞窟内で吹雪の悲痛な叫びが響いた。



 海道病院の個室にて

「なんか聞こえなかったか?」

 修二は身体を起こし正体は不明だが誰かの声が聞こえた気がしたので相川に問い掛ける。

「え? 僕は何も聞こえなかったよ。」

「そ、そうか…。」

 相川には何も聞こえなかったが修二には何処か不安になっていた。

「きっと疲れてるんだよ。」

「そうだな…吹雪にちゃんと謝らねぇとな。胸ぐら掴んで怒鳴ったからよ、ちゃんと話し合えば良かったな。」

 修二は暗い顔になり、自分が吹雪にした事を反省していた。
 普段の修二から考えられない言葉が次々と出てきて、相川は驚愕する事もなく微笑みながら相槌を打って話しを聞いていた。

「品川って大人なんだね。なんか僕たちより先に生きてるみたい、ちゃんと自分で反省できるから凄いよ。」

「相川だって勉強できて他の奴に優しいじゃねぇか、それに何時も俺達の喧嘩も止めてくれるしよ、こっちも感謝してるんだぜ?」

「…また三人で笑い合えたらいいな。」

「あぁ、また三人で馬鹿やって『カンザキシノブ』を探したりな…。」

「その為にも今は安静して怪我の回復をしないと、次また『カンザキシノブ』に負けるよ?」

「次は絶対に勝つ! アイツの攻略法が見えた。」

「本当に!? どんな方法?」

 相川は修二の言葉に目を輝かせ、ウキウキの気持ちにさせて、答えに期待したが…

「アイツは『覇気』を纏った時に触れたから『覇気』を纏って殴る以上!」

 馬鹿特有の頭で修二は清々しい顔で堂々と言い放ち、相川は前半の期待以上の答えに感銘を受けたが、後半の答えには肩透かしを受けた様子だった。

「それ攻略法って言わないよね? ただゴリ押しで突っ切ろうという無茶苦茶な戦いかただよね?」

「え? そうなの?」

 キョトンとした顔で、感覚だけで戦って考えないスタイルの修二に、よく仲村に勝てたなと未だに眉唾物な相川だった。
 そして修二の個室に購買から帰ってきた美鈴が入って来た。

「品川くん、待った? 雅人は?」

「いや、待ってない。それと吹雪は用事があるって先に帰ったぜ。」

「そうなんだ…あ、こんにちは。」

 美鈴は買い物袋を机に置き、近くに相川がいたので微笑みながら挨拶をした。

「こんにちは。天海美鈴さん?」

「はい。なんで知ってるのですか?」

 相川が不意に美鈴の名前を呼び、美鈴は教えてもないのに驚きを隠せない表情になり、相川は誤解を生まないために説明をする。

「僕は相川祐司、いつも品川から話しを聞いてるよ。クラスメイトで最初に学校で話した人物だって。」

「へぇ~ そうなんですか。」

 相川の簡単な説明のお蔭で誤解は免れた。

「美鈴ちゃん帰って来てから申し訳ねぇんだけどよ、もう帰った方がいいぜ? そろそろ面会時間も終わる頃だしよ。」

「うん、分かった。」

「僕が途中まで送って行くよ。女の子を一人で帰らせる訳にもいかないし、暴漢魔に襲われたら危ないからね。」

「ありがとう。」

 美鈴と相川は学校鞄を持ち、修二に手を振りながら二人は一緒に退室した。

「おい、出てこいよ。」

 修二が左手で窓を開けるとひょっこりと仲村が頭から姿を見せて華麗に病室に侵入する。

「玄関から来いよ。」

「鉢合わせになると気まずいのは嫌だったから、窓から訪問したんッスよ。」

「まあいいけどよ。何しに来た? 俺の状態を見たら再戦できねぇぞ?」

「いや、そっちの件じゃねぇッス。兄貴がアンタに手紙とこれを…。」

 レザージャケットの懐から忍に渡された手紙と札束を一緒に出し、机に置き、仲村は一息をつきながら丸椅子に座る。

「手紙は分かるんだけどよ。この紙束は何?」

 修二は札束を手に持ち、百人いる福沢諭吉さんを見ていた。

「札束ッスよ。兄貴が治療費として持っていけって言われたから持ってきたんッスよ。百万あるッスよ。」

「百万? それって桁が分かんねぇんだけどよ?」

 修二の発言に椅子から転げ落ちそうになるが、なんとか踏みとどまり話しを続ける。

「百万って言ったらあれッスよ…良く考えたら俺、百万も使って、さっきまで触った事もないんだった。」

「あ、急に熱く説明しようとしたら今、思えば経験した事のないやつで冷静になる良く分からない心のアレだ。」

 なんとツッコミとボケが逆転してしまう、おかしな事態になった。

「とりあえず渡しとくんで、いらなかったら…三銃士倒した後で突き返していいッスよ。」

「…そうか。」

 修二は百万の札束を机にそっと置いた。

「見舞いの品を持ってきてないッスけど…」

 仲村は少しバツが悪そうな顔をして、どうしようかと悩んでいた。

「それなら見舞いの品の代わりにアンタと『カンザキシノブ』の昔話してくれよ。兄貴って呼ぶぐらいだ、どんだけ尊敬を抱ける人物なのか聞かせてくれよ。」

 修二は微笑みながら仲村の昔話を聞かせてくれとせがんだのだ。
 仲村も少し何処まで話していいのやらと迷った表情を見せたが、正体に繋がる部分だけは省く事を決めて話し始める。

「そうッスね、兄貴と初めて会った時は俺が中学の一年の時だったッス…」



(あれから何時間経ったんだ? 感覚が分からねぇ、さっきから同じ事の繰り返しで嫌になってくる。)

 その頃、吹雪は地面にうつ伏せで倒れ瞳孔が開き、口が開きぱなっしになり涎が溢れ出ていた。
 学ランはボロボロで、所々に破れたり、埃が付いたり、血が滲んでいたりしていた。

「さっきまでの勢いはどうしたのかな?」

 余裕なヘイムーンは大きめな岩に座り、爪やすりで爪を研ぎ、精神異常をきたしている吹雪に問い掛ける。

「な、なんで俺ばっかなんだよ…。」

 今にも泣きそうに吹雪はマイナス思考になっていた。

「…君が『カンザキシノブ』という目標を持った時に覚悟しなければならなかったんだ。何故かって? それはね三銃士全員が『カンザキシノブ』の為に命を惜しまないからだよ。」

 ヘイムーンは爪やすりを懐に仕舞い、岩に座るのを止めて立ち上がり演説をする。

「何?」

 ヘイムーンの言葉に耳を疑ったのか、力のない空虚な表情で頭を上げる。

「彼等はね、『カンザキシノブ』の為なら世界を敵に回してでも守りたい存在だからだよ。何故、彼等が『カンザキシノブ』に付き従うのは……いや、この答えは今じゃないな。けどね、友達が重症を負ったから俺は逃げるなんて言う奴に私は虫酸が走る程に嫌いだ。守れなかった者が二度あるのは当たり前なんだよ、そんなに戦いは甘くないんだ。人は死ぬ、人は傷つく、それが世界なんだ。もし、また友達が傷つくのが嫌なら強くなれ、転んだっていい、泣いたっていい、人は守る者があるからこそ強くなれる。僕がそれを伝授しよう。」

 吹雪はヘイムーンの言葉に感化されたのか、力一杯に握りこぶしを作り、歯を食い縛り、拳を開き、ゆっくりと立ち上がる。

「アンタに伝授されれば三銃士の竹島権田を倒せるのか!?」

 吹雪の叫びが洞窟内で響く。

「約束しよう。」

「友達を守る力が手に入るのか!?」

「それも約束しよう。」

「『カンザキシノブ』にも一泡吹かせられるのか!?」

「見せてやればいい、俺たちはもう負け犬じゃないって所をね。」

「だったらアンタに賭ける。教えてくれ、力の使い方を! 俺は強くなりたい!」

 完全に立ち上がり、ヘイムーンに強くなりたいと心の底から懇願した。

「挫折を味わった人間は諦めるか這い上がるかと二択しか無い、けど最後まで這い上がり諦めなかった人間はもう一回、挫折を味わっても簡単に乗り越えられる様になる。それが君には足りなかったんだ。けど君は強くなった、前に進む事を決めた。君はもう負け犬じゃない!」

 その時、吹雪の氷はダイヤモンドの様に美しく輝き、幻想的なオーロラを作り出した。
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