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第10話 人は愛に跪く
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「……あんた、ヒーラーなワケぇ!?」
「ん? そうにゃよ? これでも諸国を巡っている僧侶にゃ」
「いや、僧侶が女の子口説いてていいのかよ!」
ウルリカの問いに、猫人の少女はとぼけたような緩い面持ちのままでこう答えた。
「にゃ? 口説くどころかクンクンしたりハグハグしたりサワサワしたり、たまにはにゃんにゃんしてるにゃよ?」
「ほとんど犯罪じゃあねーかっ!!」
「失礼にゃ! 全てお互いの同意の上にゃよ! 弁護士を呼ぶ必要はにゃいっ!!」
「……僧侶だと言うのに、教会に身を寄せずに世界行脚……あまつさえ性行為まで良心の呵責なく行なうとは……ある種の破戒僧という奴かね?」
「……WAAAAAAO!! 気に入ったぜ! ルールに縛られず自分の根源からの欲求に従って生きるその型破り具合ッ! まさにROCKな生き様だぜーっ!!」
「OH,YES!! RISK OF MY LIFE!! THIS IS MY SOULFUL LIFE!!」
「「YEAHHHHHHHHH!!」」
一瞬にしてその精神性に同調したのか、ヴェラと猫人の少女は喜びの声を上げながらパシーン、とハイタッチする。
「……しかし、そんな破戒僧はこの国だけでなく、何処の教会も近付くことを許さないはず……」
ラルフの言葉に、猫人の少女はハッと現実に返る。
「……そうにゃ……そんで元居た教会の人たちめっちゃ怒らせて追い出されちゃったにゃ……以来、こちとら己の性故に破戒僧のレッテルを貼られて流れる者にゃ……」
「……で、ですが、運良くヒーラーと出会えましたな」
「そうだな。君、ちょっとこの書状を――――」
「……にゃっ! オトコなんかに触られる筋合いにゃいにゃ! 読むならおにゃのこからにしなさいさいっ!!」
少女はラルフが書状を持つ手を払いのける。
「あー……わかったよ……ルルカ。悪いけど代わりに王の書状をこの子に読み上げてくれないか」
「私ですか? はい……わかりました」
<<
「……という訳でして……私たちはこの王国の王様のお触れで、勇者ラルフ様に協力して宝玉『憎悪の泪』を盗賊から取り返そうとしている一団ですの。……貴女は貴重な回復法術が使えるヒーラーですわ。どうか、ご協力願えないかしら?」
猫人の少女は顔を顰めた。
「……うむむう~……さすがにこんなめんこいおねいさんに頼まれると断りにくいにゃ……しかーしッ!!」
少女は手近な段差に飛び乗り、見栄を切るようなポーズを取って叫び出す。
「アチキだって生命は惜しいにゃ! どうしてもアチキに仲間ににゃって欲しいにゃら――――今すぐアチキの嫁・妾ハーレムをこの場で建造するにゃッ!! じゃにゃきゃ割に合わない、納得出来にゃい!! さあ一人ぐらい寄越すにゃ。どしたッ! カモンッ!!」
「……こいつ、とことん自分の欲望に正直ね~……そんな貞操を投げ出すようなことを誰が――」
「オレも。生き様は認めるけど、一匹狼が性にあってらあ」
ウルリカとヴェラが拒絶しかけたが――――
「あら。妾が欲しいのですわね? では私が貴女の妾となりましょう」
「「ええーっ!?」」
その思わぬ申し出に、比較的常識人のロレンスとウルリカは驚嘆した。
ルルカは仲間たちを睥睨し、何が問題なのやら、と言った様子である。
「えっ? だって、仲間に迎えるには妾に成る必要があるのでしょう? 幸い、私に抵抗はございませんわ……それに…………」
ルルカは静かに目を伏し、赤らめた頬に両手を当てながら悩ましげに囁く。
「……誰かに愛され、想われることは本来とても温かな心持ちですわ。愛を伝え合いながら生きるって……素晴らしいじゃありませんこと…………?」
「……あ、ああああわわわわ…………!」
猫人の少女は段差から転げ落ち、しばし口をあんぐりと開けて呆気に取られていたが、何とか感嘆の意を示す。
「ニャあんとワンダフルなおねいさんかッ!! こんなアチキの邪な想いを……真っ直ぐに受け止めてくれる人がいるにゃんて!!」
「あっ……邪なっていう自覚はあったのか…………」
ラルフは小さく呟いたが、当然感極まっている少女には聞こえていない。
「……たった今より、私は貴女様の妾となります…………だから、力を貸して? みんなを助けて?」
「みゃっ! まっ、眩しいッ!! おねいさんから愛のオーラが迸ってて眩しいにゃあ~っ!!」
どうやら感極まっている少女の目にはルルカの身体から愛のオーラが迸るのが見えるらしい……。
「……どう、ですか? 引き受けて、くださる…………?」
「ひゃいっ! もちろんですにゃ! ううっ……涙出てきた…………妾、にゃんて下手に扱ったらこの人が穢れるにゃ!!」
「あっ」
少女は跪き、ルルカの脚に頬を撫で付けて言う。
「ルルカさん――――いや! 『お姉様』と呼ばせて頂くにゃあーっ! どんな時にも貴女に従う! 貴女に仕える! 貴女様にこんなちっぽけなアチキの愛を注がせて頂きますにゃ!!」
「……ふふ。純真な人なのね」
「……お姉様! 貴女様のお名前《にゃまえ》は!?」
ルルカもしゃがんで、少女の手を取り真っ直ぐ目を見て答える。
「私の名前はルルカ。ルルカと呼んでくださいまし。……貴女のお名前も教えて頂戴?」
「アチキはベネットと申しますにゃ! これからずっと――――ずっと、お見知り置きを!!」
「……ベネット。よい名前ね……これから危険な仕事になりますけれど、困った時は私だけでなく、みんなを助けて……ね?」
「無論ですにゃっ! 貴女様の為にゃら、例え地獄でも魔界でもお供致しますにゃ!!」
目の前の尊き逢瀬に、ロレンスは困惑する。
「???? ……私には何が何やらわかりません……理解不能です……」
「ああ……気にしないでいいんじゃあないか? 幸い喜んで仲間に加わってくれるみたいだし」
ラルフはややポーカーフェイス気味の空虚な笑みでロレンスに答えた。
ベネットは滂沱の涙を流しながら、呟く。
「……アチキは破戒僧でロクデナシだけど……誰かの役に立ちたい。誰かに寄り添って生きてみたい。どこかでそう思っていたにゃあ…………それがこんなカタチで成し遂げられるにゃら、これ以上の幸せはにゃいにゃ…………うっくっ…………」
――――猫人の破戒僧・ベネットが仲間に加わった!!
「ん? そうにゃよ? これでも諸国を巡っている僧侶にゃ」
「いや、僧侶が女の子口説いてていいのかよ!」
ウルリカの問いに、猫人の少女はとぼけたような緩い面持ちのままでこう答えた。
「にゃ? 口説くどころかクンクンしたりハグハグしたりサワサワしたり、たまにはにゃんにゃんしてるにゃよ?」
「ほとんど犯罪じゃあねーかっ!!」
「失礼にゃ! 全てお互いの同意の上にゃよ! 弁護士を呼ぶ必要はにゃいっ!!」
「……僧侶だと言うのに、教会に身を寄せずに世界行脚……あまつさえ性行為まで良心の呵責なく行なうとは……ある種の破戒僧という奴かね?」
「……WAAAAAAO!! 気に入ったぜ! ルールに縛られず自分の根源からの欲求に従って生きるその型破り具合ッ! まさにROCKな生き様だぜーっ!!」
「OH,YES!! RISK OF MY LIFE!! THIS IS MY SOULFUL LIFE!!」
「「YEAHHHHHHHHH!!」」
一瞬にしてその精神性に同調したのか、ヴェラと猫人の少女は喜びの声を上げながらパシーン、とハイタッチする。
「……しかし、そんな破戒僧はこの国だけでなく、何処の教会も近付くことを許さないはず……」
ラルフの言葉に、猫人の少女はハッと現実に返る。
「……そうにゃ……そんで元居た教会の人たちめっちゃ怒らせて追い出されちゃったにゃ……以来、こちとら己の性故に破戒僧のレッテルを貼られて流れる者にゃ……」
「……で、ですが、運良くヒーラーと出会えましたな」
「そうだな。君、ちょっとこの書状を――――」
「……にゃっ! オトコなんかに触られる筋合いにゃいにゃ! 読むならおにゃのこからにしなさいさいっ!!」
少女はラルフが書状を持つ手を払いのける。
「あー……わかったよ……ルルカ。悪いけど代わりに王の書状をこの子に読み上げてくれないか」
「私ですか? はい……わかりました」
<<
「……という訳でして……私たちはこの王国の王様のお触れで、勇者ラルフ様に協力して宝玉『憎悪の泪』を盗賊から取り返そうとしている一団ですの。……貴女は貴重な回復法術が使えるヒーラーですわ。どうか、ご協力願えないかしら?」
猫人の少女は顔を顰めた。
「……うむむう~……さすがにこんなめんこいおねいさんに頼まれると断りにくいにゃ……しかーしッ!!」
少女は手近な段差に飛び乗り、見栄を切るようなポーズを取って叫び出す。
「アチキだって生命は惜しいにゃ! どうしてもアチキに仲間ににゃって欲しいにゃら――――今すぐアチキの嫁・妾ハーレムをこの場で建造するにゃッ!! じゃにゃきゃ割に合わない、納得出来にゃい!! さあ一人ぐらい寄越すにゃ。どしたッ! カモンッ!!」
「……こいつ、とことん自分の欲望に正直ね~……そんな貞操を投げ出すようなことを誰が――」
「オレも。生き様は認めるけど、一匹狼が性にあってらあ」
ウルリカとヴェラが拒絶しかけたが――――
「あら。妾が欲しいのですわね? では私が貴女の妾となりましょう」
「「ええーっ!?」」
その思わぬ申し出に、比較的常識人のロレンスとウルリカは驚嘆した。
ルルカは仲間たちを睥睨し、何が問題なのやら、と言った様子である。
「えっ? だって、仲間に迎えるには妾に成る必要があるのでしょう? 幸い、私に抵抗はございませんわ……それに…………」
ルルカは静かに目を伏し、赤らめた頬に両手を当てながら悩ましげに囁く。
「……誰かに愛され、想われることは本来とても温かな心持ちですわ。愛を伝え合いながら生きるって……素晴らしいじゃありませんこと…………?」
「……あ、ああああわわわわ…………!」
猫人の少女は段差から転げ落ち、しばし口をあんぐりと開けて呆気に取られていたが、何とか感嘆の意を示す。
「ニャあんとワンダフルなおねいさんかッ!! こんなアチキの邪な想いを……真っ直ぐに受け止めてくれる人がいるにゃんて!!」
「あっ……邪なっていう自覚はあったのか…………」
ラルフは小さく呟いたが、当然感極まっている少女には聞こえていない。
「……たった今より、私は貴女様の妾となります…………だから、力を貸して? みんなを助けて?」
「みゃっ! まっ、眩しいッ!! おねいさんから愛のオーラが迸ってて眩しいにゃあ~っ!!」
どうやら感極まっている少女の目にはルルカの身体から愛のオーラが迸るのが見えるらしい……。
「……どう、ですか? 引き受けて、くださる…………?」
「ひゃいっ! もちろんですにゃ! ううっ……涙出てきた…………妾、にゃんて下手に扱ったらこの人が穢れるにゃ!!」
「あっ」
少女は跪き、ルルカの脚に頬を撫で付けて言う。
「ルルカさん――――いや! 『お姉様』と呼ばせて頂くにゃあーっ! どんな時にも貴女に従う! 貴女に仕える! 貴女様にこんなちっぽけなアチキの愛を注がせて頂きますにゃ!!」
「……ふふ。純真な人なのね」
「……お姉様! 貴女様のお名前《にゃまえ》は!?」
ルルカもしゃがんで、少女の手を取り真っ直ぐ目を見て答える。
「私の名前はルルカ。ルルカと呼んでくださいまし。……貴女のお名前も教えて頂戴?」
「アチキはベネットと申しますにゃ! これからずっと――――ずっと、お見知り置きを!!」
「……ベネット。よい名前ね……これから危険な仕事になりますけれど、困った時は私だけでなく、みんなを助けて……ね?」
「無論ですにゃっ! 貴女様の為にゃら、例え地獄でも魔界でもお供致しますにゃ!!」
目の前の尊き逢瀬に、ロレンスは困惑する。
「???? ……私には何が何やらわかりません……理解不能です……」
「ああ……気にしないでいいんじゃあないか? 幸い喜んで仲間に加わってくれるみたいだし」
ラルフはややポーカーフェイス気味の空虚な笑みでロレンスに答えた。
ベネットは滂沱の涙を流しながら、呟く。
「……アチキは破戒僧でロクデナシだけど……誰かの役に立ちたい。誰かに寄り添って生きてみたい。どこかでそう思っていたにゃあ…………それがこんなカタチで成し遂げられるにゃら、これ以上の幸せはにゃいにゃ…………うっくっ…………」
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