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第51話 新規総合商業施設
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――オオズメの店を後にし、少々離れた場所にある駐車場までヨウヘイとペコはゲーム機5台という結構な大荷物を持って運び、マユの車のトランクに入れた。
「――ふう。ありがとうございんした。急な入用になりんしたが、男手が2人もたまたまいて助かりんした。礼は…………また今度喫茶店にお邪魔しに行くいうことで。」
「おう。そりゃあこっちとしてもありがてえな。しっかし、部下たちの為とはいえゲーム機5台もその場のポケットマネーでササっと支払えちまうなんて……さすが社長。太っ腹だぜえ……。」
ヨウヘイは嫌味を言うつもりは無かったが、さすがに部下へのボーナス、というそれほど重要性が高いとは言えない買い物で大枚をポンと出せてしまうマユに貧富の差による僻みが出てしまった。
「……文句があるなら、これからも精々働きなんし。不安定かもしれねえけれど、確実にウチでの働きでぬしの生活は安定するだけの給料は出ているはずでありんす。中には何日も働きづめの職員もいるんでありんすよ? ウチの会社は福利厚生は気を遣ってるけど仕事は厳しいから…………こうしてたまにはサービス品を支給しねえと部下の皆さんもやってられねえでありんす。」
――――過去の日ノ本、言うなればバブル景気で国民のほとんどが過去の歴史で一番浮かれていたような時代には、実は現代とは甲乙つけがたいほどに猛烈にサラリーマンたちは働いていた。
だが、それもやりがいだけでやっていけたわけではなかった。
働けば働くほどお金が湧き水の如く儲かるような時代だったからこそ、世の労働者たちはそれほどストレス地獄だのブラック労働だの言わずに仕事に従事出来ていたのだ。
バブル景気の頃はそれこそ福利厚生は成っていなかったかもしれないが、とにかく動けば動くほど儲かる時代だった。それだけのお金と欲が人々を精神的に支えていたのだ。
現代ではさすがにそれほどの潤沢なお金は世の中に循環しては来ない。ならば、せめてお金のあるうちはたまには社長自らサービス品の支給を…………ということなのだろう。
「このゲーム機、一台ぐらいミーティングルームとか社内食堂とかに置いたらゲーム大会トカ出来そうデースネー!! ゲームする社員サン、結構いるんですヨネ? 対戦ゲームとかで景品懸けてやったら盛り上がりソー!」
「ん……なるほど。たまの休暇時間にゲーム大会……それも社内でのリフレッシュに良いかも。まあ……そんな時間がいつ取れるかも怪しいもんでありんすが……取り敢えず社内に一台置いて、様子見て景品も準備してみんすかね…………。」
「そりゃあ良いじゃあねえか! きっとみんな憂さ晴らしにはちょうどいいぜ!! ――――ん? あれは…………。」
「――――おう。3人とも、奇遇だな。」
――往来の向こうから、アリノが手を振って近付いてきた。仕事上がりなのだろう。作業着姿で、油や炭のようなもので汚れている。
「アリノ。ちーっす!」
「奇遇でありんすね。こんにちは。」
「お疲れサマデース!!」
3人とも揃って挨拶。喫茶店に集まったわけでもないのに、実に珍しい日だ。
「お前たちも買い物か?」
「まあ、そんなとこだよ。ゲーム機買いに普段行かねえトコに来たら、マユとも偶然バッタリ、な。」
「ゲームか…………俺はまるで興味ない代物だな。俺はこの近くにスーパー……というか、割りと大きな総合商業施設が出来たから仕事終わりに食材や日用品の買い出しに行ってきたんだ。オープンしたてだから安いぞ。お前らも行ってみたらどうだ?」
「えっ! マジで!? 行くわ!!」
――カジタのもとで世話になって以来、赤貧の生活からは脱していたヨウヘイだが、庶民として生活の基盤になる施設が出来るのは有難い。
それが食材などを扱うスーパー、それもオープンセール中なら尚更のことである。
「――ふうん。総合商業施設、ねえ…………どんなお店が出来ているか気になりんす。わっちも見に行くわ。近くでありんしょう?」
「そうだ。あっちの方へ5分も歩くとすぐだな。」
「――よっしゃ行くぜ、ペコ!! 急遽飯の買い出しだぜ!!」
「ラジャー!!」
ゲームを買ったその足で、たまたま会ったアリノの情報で最近出来たばかりだという総合商業施設とやらにヨウヘイとペコは食材目当て、マユは新規店舗のリサーチに全員で向かうことにした――――
「――ふう。ありがとうございんした。急な入用になりんしたが、男手が2人もたまたまいて助かりんした。礼は…………また今度喫茶店にお邪魔しに行くいうことで。」
「おう。そりゃあこっちとしてもありがてえな。しっかし、部下たちの為とはいえゲーム機5台もその場のポケットマネーでササっと支払えちまうなんて……さすが社長。太っ腹だぜえ……。」
ヨウヘイは嫌味を言うつもりは無かったが、さすがに部下へのボーナス、というそれほど重要性が高いとは言えない買い物で大枚をポンと出せてしまうマユに貧富の差による僻みが出てしまった。
「……文句があるなら、これからも精々働きなんし。不安定かもしれねえけれど、確実にウチでの働きでぬしの生活は安定するだけの給料は出ているはずでありんす。中には何日も働きづめの職員もいるんでありんすよ? ウチの会社は福利厚生は気を遣ってるけど仕事は厳しいから…………こうしてたまにはサービス品を支給しねえと部下の皆さんもやってられねえでありんす。」
――――過去の日ノ本、言うなればバブル景気で国民のほとんどが過去の歴史で一番浮かれていたような時代には、実は現代とは甲乙つけがたいほどに猛烈にサラリーマンたちは働いていた。
だが、それもやりがいだけでやっていけたわけではなかった。
働けば働くほどお金が湧き水の如く儲かるような時代だったからこそ、世の労働者たちはそれほどストレス地獄だのブラック労働だの言わずに仕事に従事出来ていたのだ。
バブル景気の頃はそれこそ福利厚生は成っていなかったかもしれないが、とにかく動けば動くほど儲かる時代だった。それだけのお金と欲が人々を精神的に支えていたのだ。
現代ではさすがにそれほどの潤沢なお金は世の中に循環しては来ない。ならば、せめてお金のあるうちはたまには社長自らサービス品の支給を…………ということなのだろう。
「このゲーム機、一台ぐらいミーティングルームとか社内食堂とかに置いたらゲーム大会トカ出来そうデースネー!! ゲームする社員サン、結構いるんですヨネ? 対戦ゲームとかで景品懸けてやったら盛り上がりソー!」
「ん……なるほど。たまの休暇時間にゲーム大会……それも社内でのリフレッシュに良いかも。まあ……そんな時間がいつ取れるかも怪しいもんでありんすが……取り敢えず社内に一台置いて、様子見て景品も準備してみんすかね…………。」
「そりゃあ良いじゃあねえか! きっとみんな憂さ晴らしにはちょうどいいぜ!! ――――ん? あれは…………。」
「――――おう。3人とも、奇遇だな。」
――往来の向こうから、アリノが手を振って近付いてきた。仕事上がりなのだろう。作業着姿で、油や炭のようなもので汚れている。
「アリノ。ちーっす!」
「奇遇でありんすね。こんにちは。」
「お疲れサマデース!!」
3人とも揃って挨拶。喫茶店に集まったわけでもないのに、実に珍しい日だ。
「お前たちも買い物か?」
「まあ、そんなとこだよ。ゲーム機買いに普段行かねえトコに来たら、マユとも偶然バッタリ、な。」
「ゲームか…………俺はまるで興味ない代物だな。俺はこの近くにスーパー……というか、割りと大きな総合商業施設が出来たから仕事終わりに食材や日用品の買い出しに行ってきたんだ。オープンしたてだから安いぞ。お前らも行ってみたらどうだ?」
「えっ! マジで!? 行くわ!!」
――カジタのもとで世話になって以来、赤貧の生活からは脱していたヨウヘイだが、庶民として生活の基盤になる施設が出来るのは有難い。
それが食材などを扱うスーパー、それもオープンセール中なら尚更のことである。
「――ふうん。総合商業施設、ねえ…………どんなお店が出来ているか気になりんす。わっちも見に行くわ。近くでありんしょう?」
「そうだ。あっちの方へ5分も歩くとすぐだな。」
「――よっしゃ行くぜ、ペコ!! 急遽飯の買い出しだぜ!!」
「ラジャー!!」
ゲームを買ったその足で、たまたま会ったアリノの情報で最近出来たばかりだという総合商業施設とやらにヨウヘイとペコは食材目当て、マユは新規店舗のリサーチに全員で向かうことにした――――
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