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エピローグ、あるいは遙か昔のプロローグ
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――――これは、エリーたちの住む星に生命が宿る少し前の話だ。
遙か、遙か昔。遠く離れた星『地球』から巨大な宇宙船が流れて来た。
宇宙船の内部の廊下では、銃声が聞こえた――――乗組員同士の争いだ。
「――ルドガー…………!! 撃たれたのね――――」
「――ああ……撃ち殺してしまったよ、シズカ。もう、これで生き残りは俺たち2人だけ――――と言っても、俺はもう助からないし……じきに資源も尽きて全滅だろう――」
――我らが星、地球から飛び立ったはずの宇宙船。彼らは地球を穢し尽くし、大地の富を奪い…………住めなくなった地球を捨てて新天地を求めた。
最初のうちは皆希望に満ちて航海をしていた。
だが、しばらく旅を進めると……船内の資源の減少から端を発し、乗組員同士で派閥争いが起き――――ついには共倒れの最後を経ることとなった。地球人は、最後まで愚かな争いを捨てきれなかったのだ――――
「――もう、終わりなのね。私たち…………結局、人間ってこうなっちゃうのね。悲しいわ、ルドガー。」
「――ああ……もう新天地まで命がもたないとなると、これも意味が無くなるかな――――『アース・シード・システム』。」
――旧き人類は、新天地となる星を見付けられた時の為に、人類最大の発明品を用意していた。
地球に存在したあらゆる生命体の情報を含有した有機植物型人工生命体――――のちのこの宇宙船の窓から見える星で『創世樹』と呼ばれるようになる種だ。
これを環境が適合する星に撒けば、地球のような生命溢れる星を人工的に創れるようになる。
そして生命の刷新進化《アップデート》を周期的に行なわれることで、より良い環境の星へと絶えず進化していくのだ。
「――――そうね。今更こんなもの…………もし上手くいったとしても、もう人間なんか生まれない方がいいわ。あたしも、もう終わり――――」
「――シズカ!? ヘルメットを取ったら、もう空気《エアー》が――――」
ヘルメットを取ったシズカという女性。その素顔は、のちの世のアルスリアとよく似ていた。
「――ルドガー。貴方ももう取りましょう。どうせ、宇宙服は風穴だらけ……窒息で死ぬのと、失血死するのとどちらが早かろうが、もう関係ないわ。」
「……それもそうだな…………最後は……最後くらいは、君と素顔を突き合わせたまま死にたい……」
――ルドガーもヘルメットを取った。その素顔は…………のちの世のグロウが少し青年へと成長した姿を思わせる顔立ちだった。
「――全く。嫌な……人生だったよ…………君と出逢えたこと以外は…………この宇宙船は、すっかり地獄のようだった。だが…………せめて、賭けてみないか?」
「……賭ける?」
「アース・シード・システムそのものに罪は無い。人間があの星に生まれるかは解らないし、俺たちはそれを確認……出来ない、わけだが…………生命そのものは、俺たち人間を除けば……もっと、尊いもののはずだろ?」
ルドガーの失血が夥しい。間もなく死ぬだろう。シズカも空気が無くなり、顔色はみるみるうちに悪くなっていく。
「――そう…………ね……あたしたちが死んだ後のことなんて…………もうどうでもいいもんね――――だったら、ついでにこうしちゃいましょ――――」
――シズカは、アース・シード・システムの制御盤を操作した。
「――――シズカ……そん……な、ことをしたら――――」
「――そう……生まれて来る生命パターンに、さっきまでヒトに類するものはオフにしていたけど…………また、オンにしてみたわ。ずっと未来に、ヒトが……出て来る、かも、ね――――」
「――もう関係ない、か…………俺たち人間らしいな。最後まで無責任…………というのは――――」
ルドガーもまた制御盤を操作し、トリガーボタンを押した――――宇宙船から、『種』が、星へと落ちて行く――――
「――なあ……シ……ズカ…………俺たちは…………」
「――な、に……?」
「――今……ヒトの基礎データに、俺たち2人の遺伝子情報を参照、した、ろ…………と、なると――――生まれて来る人間たち、は……俺たち…………の、創造物か? 俺たちは……創造主に、なる…………のか――――?」
「――ふっ…………馬……鹿ね……アダムとイヴ……じゃああるまいし……本当に……あたしたちも、烏滸がましい、人間――――でもね……」
「――――ああ。せめて…………あの星で…………生まれて、くる生命たちに…………幸、多からんこと、を…………ね、がう――――」
「――ええ。ああ…………私たちの『創世樹』よ…………あの星を…………人間には、出来なかった…………美しい、星、に――――。」
「…………」
「…………」
――――そうして、地球最後の人類は、静かに息を引き取った。
かくして、星に創世樹はもたらされた。あらゆる生命の芽吹く星となった。
エリーたちの冒険も、ガラテア帝国の栄華も…………全てはこの瞬間から始まっていたのだ。
そしてやがて、グロウとアルスリア。そのおおもとの遺伝子を持っていた男女の願いの通り、再び人類は――――。
END
遙か、遙か昔。遠く離れた星『地球』から巨大な宇宙船が流れて来た。
宇宙船の内部の廊下では、銃声が聞こえた――――乗組員同士の争いだ。
「――ルドガー…………!! 撃たれたのね――――」
「――ああ……撃ち殺してしまったよ、シズカ。もう、これで生き残りは俺たち2人だけ――――と言っても、俺はもう助からないし……じきに資源も尽きて全滅だろう――」
――我らが星、地球から飛び立ったはずの宇宙船。彼らは地球を穢し尽くし、大地の富を奪い…………住めなくなった地球を捨てて新天地を求めた。
最初のうちは皆希望に満ちて航海をしていた。
だが、しばらく旅を進めると……船内の資源の減少から端を発し、乗組員同士で派閥争いが起き――――ついには共倒れの最後を経ることとなった。地球人は、最後まで愚かな争いを捨てきれなかったのだ――――
「――もう、終わりなのね。私たち…………結局、人間ってこうなっちゃうのね。悲しいわ、ルドガー。」
「――ああ……もう新天地まで命がもたないとなると、これも意味が無くなるかな――――『アース・シード・システム』。」
――旧き人類は、新天地となる星を見付けられた時の為に、人類最大の発明品を用意していた。
地球に存在したあらゆる生命体の情報を含有した有機植物型人工生命体――――のちのこの宇宙船の窓から見える星で『創世樹』と呼ばれるようになる種だ。
これを環境が適合する星に撒けば、地球のような生命溢れる星を人工的に創れるようになる。
そして生命の刷新進化《アップデート》を周期的に行なわれることで、より良い環境の星へと絶えず進化していくのだ。
「――――そうね。今更こんなもの…………もし上手くいったとしても、もう人間なんか生まれない方がいいわ。あたしも、もう終わり――――」
「――シズカ!? ヘルメットを取ったら、もう空気《エアー》が――――」
ヘルメットを取ったシズカという女性。その素顔は、のちの世のアルスリアとよく似ていた。
「――ルドガー。貴方ももう取りましょう。どうせ、宇宙服は風穴だらけ……窒息で死ぬのと、失血死するのとどちらが早かろうが、もう関係ないわ。」
「……それもそうだな…………最後は……最後くらいは、君と素顔を突き合わせたまま死にたい……」
――ルドガーもヘルメットを取った。その素顔は…………のちの世のグロウが少し青年へと成長した姿を思わせる顔立ちだった。
「――全く。嫌な……人生だったよ…………君と出逢えたこと以外は…………この宇宙船は、すっかり地獄のようだった。だが…………せめて、賭けてみないか?」
「……賭ける?」
「アース・シード・システムそのものに罪は無い。人間があの星に生まれるかは解らないし、俺たちはそれを確認……出来ない、わけだが…………生命そのものは、俺たち人間を除けば……もっと、尊いもののはずだろ?」
ルドガーの失血が夥しい。間もなく死ぬだろう。シズカも空気が無くなり、顔色はみるみるうちに悪くなっていく。
「――そう…………ね……あたしたちが死んだ後のことなんて…………もうどうでもいいもんね――――だったら、ついでにこうしちゃいましょ――――」
――シズカは、アース・シード・システムの制御盤を操作した。
「――――シズカ……そん……な、ことをしたら――――」
「――そう……生まれて来る生命パターンに、さっきまでヒトに類するものはオフにしていたけど…………また、オンにしてみたわ。ずっと未来に、ヒトが……出て来る、かも、ね――――」
「――もう関係ない、か…………俺たち人間らしいな。最後まで無責任…………というのは――――」
ルドガーもまた制御盤を操作し、トリガーボタンを押した――――宇宙船から、『種』が、星へと落ちて行く――――
「――なあ……シ……ズカ…………俺たちは…………」
「――な、に……?」
「――今……ヒトの基礎データに、俺たち2人の遺伝子情報を参照、した、ろ…………と、なると――――生まれて来る人間たち、は……俺たち…………の、創造物か? 俺たちは……創造主に、なる…………のか――――?」
「――ふっ…………馬……鹿ね……アダムとイヴ……じゃああるまいし……本当に……あたしたちも、烏滸がましい、人間――――でもね……」
「――――ああ。せめて…………あの星で…………生まれて、くる生命たちに…………幸、多からんこと、を…………ね、がう――――」
「――ええ。ああ…………私たちの『創世樹』よ…………あの星を…………人間には、出来なかった…………美しい、星、に――――。」
「…………」
「…………」
――――そうして、地球最後の人類は、静かに息を引き取った。
かくして、星に創世樹はもたらされた。あらゆる生命の芽吹く星となった。
エリーたちの冒険も、ガラテア帝国の栄華も…………全てはこの瞬間から始まっていたのだ。
そしてやがて、グロウとアルスリア。そのおおもとの遺伝子を持っていた男女の願いの通り、再び人類は――――。
END
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