創世樹

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第212話 終末と創世の光

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 ――――姿かたちが異形と化し、なお力を用いてグロウを救い出そうとしたエリー。



 だが…………もはやそこまでだった。




 エリーの中の何か神経か。骨髄か。重要な筋が千切れ、エリーはただ繭から離れて落ちゆく――――




「――畜生が……ッ!!」





 ガイは一旦二刀を納め、空中に飛び出してエリーを抱きとめた。すぐに近くの足場へ着地する。




「――ガイッ!! もはやこれまでだ……グロウとアルスリアが融合を果たしたことで、創世樹のフルパワーが解き放たれる!! この場にいると光熱で焼け死ぬ……すぐに脱出だっ!!」




 ――テイテツが警告するように、創世樹内部の光と熱はどんどんと眩しく、熱くなってきている。ここにいては命が危ない――




 一瞬、ガイはエリーを抱えつつも上層部のグロウとアルスリアを見た。




 すぐに繭だった二人の姿は解らなくなり、創世樹の深部へと一体化していってしまったようだ…………。




「――――グロウ…………許してくれ――――ッ!!」





 ――もう、どうしようもない。グロウは助けられなかった。





 ガイは苦悩と苦悶に強く歯軋りしながらも、急いで創世樹の地上部まで下っていった。





 創世樹自体も異様なまでに高エネルギーを発している為か、『セキュリティ』とやらの木枝も触手ももう襲って来ない。むしろ創世樹全体の高い光熱により焼き焦げていっている。





 障害を切り払う手間も省けたガイたちは、何とか地上部、創世樹の入り口付近まで戻った。何処へ行ったのか、リオンハルトとヴォルフガングの姿は無かった。





 地上に降りてすぐに、イロハはカプセルから縮小していた黒風・あらためを取り出して地に置き、セリーナも練気チャクラを練り直して龍を顕現し直す。





「――ガイさん、後ろ乗るっス!! 他の2人はセリーナさんの龍へ!! 行けるっスよね、セリーナさん?」




「――無論だ!!」




 是も非も無い状況。ガイはエリーを担いでイロハの後ろに跨り、テイテツとライネスはセリーナの龍に乗って、すぐに遠くへと脱出した。





 ――――戦いが始まってからもう半日以上は過ぎただろうか。辺りは暗い夜の帳が降りていた。





 ……だが、平野中、何処を見ても明るかった。





 何故なら、創世樹全体が青白い光を放ち、アメーバのように変形しながら動いていたからだ。





 光るアメーバのようなトランスフォーム。





 思えばグロウとアルスリアがこの星に生まれた時の事象と共通している。





 ただでさえ巨大な創世樹はさらにどんどんと巨大化し…………やがてヒト型に近い形態を取った。背には無数の樹木のような光のパイルが伸び、やがて顔のような部位も現れた――





 ――――全身から眩い光を放つ、光の巨人。その顔立ちはグロウのようでもあり、アルスリアのようでもあった。





 ――――黙示録アポカリプスの時は来た。





 戦場で生き残っていた、ガラテア軍も『震える星』も冒険者たちもクリムゾンローズ盗賊団も、その巨人の威容に…………半ば本能的な何かだろうか。『終末』の二文字を意識した。せざるを得なかった。





 ――創世樹から離れ、1㎞は来ただろうか。イロハは黒風・改を停め、ガイはエリーを地に下ろした。セリーナ、テイテツ、ライネスも同様に地に立ち、光の巨人を見ている。




「――エリーッ!! 死ぬんじゃあねえ、しっかりしろッ!!」




 ガイは慌てて、全身全霊を込めた回復法術《ヒーリング》をエリーに掛けるが――――




「――――これは重体だ……自律神経が完全に切断。内臓もほとんど破裂している…………脳もあちこち激しく出血している。いつもなら自然に働く超再生も働かない。幾らエリーでも、もうこれは――――」




「……黙ってろ、テイテツ――!!」




 ――切望虚しく。エリーの身体はもはや治癒不可能。死を待つほかなかった――――




「――ガ……イ…………」




「――何だ、エリー!?」




「――あ、た……し…………あたし、ら…………必死に、生きた、よね…………? 生命ある人間として…………最後まで、生き……切ったよね――――?」




「――――!!」




 ――意識が朦朧とするエリーだったが……自らの死を目前にして、恋人に問うた。




 『自分たちは、生命を全うしたか。生き切れたのか』という、シンプルだが、根源的な問いを――




 ――ガイもまた、頭上に迫る光の巨人が行なうであろう世界変革カタストロフィを感じ、涙ながらに答えた。




「――――ああ! お前は……俺たちは、しっかりと……全力で生きたぜ。もう……もう、何も悔やむことはねエ――――!!」




 ――エリーは静かに、辛うじて動く右腕を上げて、掌を光の巨人に翳した。掌の先の巨人を見つめ、何とはなしに、グロウの面影を感じていたが――すぐに自分の顔に当てた。




「――そっか……そう、だ、よね…………あたしら……頑張った…………んだよね――――」




 ――もう、エリーはだんだんと目も見えなくなってきていた――――両の目から涙が流れて落ちる。





「――で……も…………やっぱ、もっと生きたかった、なあ…………ガイと、グロウと……みんなで、幸せに……なりたかった…………悔しいなあ――――うっ、ぐすっ……ぐすっ――」




 ――悔しみ、悲しむエリーを、ガイはしっかりと抱き寄せた。




「――泣くんじゃあねえ。おめえも俺も、やれるこたあ全部やった…………そんで最期を迎えられるんなら上出来だぜ――――おめえと、一緒なら。」




 傍らに立つテイテツとセリーナ、イロハも…………絶望と言うほどではなかったが、ただただ悔しさと『終わり』が目前に迫り、自然と涙が零れ落ちた。




「――――ここで、終わるのか…………俺たちの努力も知恵も技術も…………生命すらも、全て水泡に帰すのか――――畜生…………ッ!!」





 ――堪らず何度も、自らの拳を地に打ち付けるテイテツ。





「――――これが…………こんなものが、私の終わりか。私の人生か――――もっと強くなりたかった。もっと強くなって、大切なものを守り切れる真の強者になりたかったな――――すまない。貴女のもとへ帰れなかった。許してくれ、ミラ――――。」





 ――セリーナの機械化された部位も酷使により限界を迎えたのか、ボロボロと崩れ落ちていく。セフィラの街で、恐らく『震える星』の電波ジャックによってこの終末をミラも見ているであろう中、セリーナも槍を地に落とし、拳を握って――――再び血涙を流した。悔しさのあまり下唇からは突き立てた歯で血を垂れ流しながら――――。






「――――ウチも、エリーさん同様、やれることは全部やったっス。後悔なんて、重箱の隅を楊枝でほじくっても歯クソほども出ないくらいやり切ったはずっス――――なのに、何だろうなあ、これ…………ああ、もう。もっと美味いもんたらふく食っておくんだったっス! よいしょ本も萌える心が燃え尽きるまで集めて読んどくんだったっス! そんで、鍛冶錬金術師の技ももっともっと、この手で――――親父。ウチも世界一の行商人になる約束守れなかったっス。これから……ウチらは母ちゃんトコ行くんスかね…………? 最後に、もっかいだけ…………ウチの弱さをしかりつけて欲しかったっス――――。」





 ――イロハも同様に、黒風・改から光の巨人を眺め、ただただ情けない、口惜しい、そんな気持ちを込めて落涙し…………やがて自分も含め、出会ってきた全ての人々を想って瞼を閉じ、瞑目した――――。





 ――目の前の『終わり』に悔しみを露わにする者は、無論エリー一行のみではなかった。



 戦場で立っている場所は散り散りだが、ライネス、バルザック、改子も巨人を見上げていた。





「――――俺ら…………とうとう死ぬのか……? みんな纏めて…………メランのトコ逝くのか――――!?」




 ――半ば放心しているライネスだったが、両膝を地に付いて頭を抱え、独り喚いた。





「――――違う!! 違うぜ!! 俺らがやるべきことは…………みんな死んじまうような糞みてえなことなんかじゃあねえはずだぜ……!! どうすりゃ……どうすりゃいいんだ!? メラン。俺は……俺らは、おめえの分も元気に生きてやることじゃあねえのかよ――――糞が…………ッ!!」





 ――改造兵から人間的な自己をやっと取り戻してきたはずのライネスは、ただただメランの悲しい死を想い、絶望と希望の狭間で藻掻き苦しんでいた。





「――――何なん、アレ…………世界が終わるっての…………? ――冗談じゃあねえーよッ!! あたしはもっと、もっともっとぶっ殺さなきゃ気が済まないっての!! けっ――――!!」





「――――ああアア……ようやく、俺も終われるかぁぁあ…………長かった。長かったぜえ。俺ぁ、結局作戦で殺しまくっても、芸術に熱中してても俺自身を救えなかったなあ。やっとだ。これで退屈な人生を終わらせることが出来るぜええ。生まれ変われるなら、もっと心豊かに生まれ直してえぜ――――。」






 ――改子は最後まで闘争心に溺れて駆け出し、バルザックは目の前の黙示録でようやく自分自身の憂鬱な人生を強制終了出来る、と絶望よりむしろ安堵して瞼を閉じていった。






「――――あんま詳しい話は聞けなかったから、何が何だかわからんがァ…………どうやらアタシら、クリムゾンローズ盗賊団も年貢の納め時が来ちまったみたいだねエ…………アタシのかわいい息子たちよ。アタシら、暴れるだけ暴れたはずだよねエ…………? 盗賊として、悪人としてぶれずに最後まで生きたはずだよねエ…………?」






 ――子分たちは皆、ローズの問いかけに普段なら全力の雄叫びで返すことで応えるところだったが、さすがに世界の、人類の終末を理解し、一様に項垂れたままだった。沈黙しかお頭に返すことは出来なかった。





「…………そうかい。アタシのかわいい息子たちよ、お前らも悔しいかい。寂しいかい。残念ながら、天下のローズ=エヴェルもおんなじザマさね。悔いを残さずに死ねる人間なんざそうそういないさね…………さあ、最後ぐらいはみんなで手を繋いで、肩を抱き合って終わるとしようじゃあないか。」





「……うっす…………おめえら、集まれ。」





 ローズの呼びかけに、側近も改めて全員に号した。殺し合い以外で終わる時は、せめて寂しくないように皆で一緒に。それがクリムゾンローズ盗賊団の総意だった。





 集まれる限りの子分たちが皆、頭を並べ、巨大な円陣を組んだ。





「――――悔しさは残るけど、アンタたちのお頭でいられて…………サイッコーに愉快な人生だったよ!! クリムゾンローズ盗賊団に!! アタシのかわいい息子たちに――――万歳ッ!!」



「――――オオオオオオオオーーーッッッ!!」






 ――『赤信号もみんなで渡れば恐くない』。彼らはそんな精神で盗賊として蛮勇の限りを尽くしてきた。否、そうして来たから彼らは社会の路に外れた盗賊でも生き生きと生きられたのかもしれない――――かつて亡国の皇女であったはずの己も含め、ローズは子分たちと苦楽も、最期も共にした――――。






 ――――またある処で、ヴォルフガング、そしてリオンハルトも共に最期を迎えようとしていた。






「――――見ろ! リオンハルトッ!! あれがそうだ!! 創世の光だ!! これで…………これで全人類が+10000の世界が来る――――私もお前も、愛しき者との別離の苦痛をわけなく超えられる世界が来るのだ――――!!」





 ――半狂乱になったヴォルフガングは叫ぶが、リオンハルトは静かに首を横に振って否定した。





「――――いいえ。ヴォルフガング。あれは本来の創世の光などではない。アルスリアは、貴方には伝わってなかったようだが、私には何度となく聴こえていた――――あいつが、人類を進化させるどころか、心から憎んでいる恨みに満ちた声が――――。」





「――――何だと。そんな……そんなはずは――――アルスリア。」





「――――創世樹内部に侵入する際にアルスリアに拒絶された時点で、貴方は間違いに気付いていたはずだ。否。その幾度も前から。何年も前から、理解していたはずなのだ…………なのに貴方は見ない振りをし続けた。アルスリアのことも、私のことも――――。」





「…………リオンハルト…………ふっ……そうか。これが報いか。これがつけあがった私への、世界意志の報復か――――。」





「――貴方だけではない。全ては、歪極まりないガラテア帝国で育まれたアルスリアの環境ゆえの報いだ。我々全員が…………アルスリアの悪意を肥大化させたのだ――――。」




 ――リオンハルトは、ひと息、大きく溜め息をついた。つられるように、ヴォルフガングもまた、大きく溜め息をついた。






「――――そうか。私はお前たちの親などと…………ガラテアを牽引するなどと慢心し切っていたのだな。報いなら、甘んじて受けよう。だが、リオンハルト。」





「…………何だ?」





「――最期に手前勝手な言葉を述べるが許せ――――悪くないぞ。強く、賢く育った息子に看取られて死ぬというのは――――。」





「――――!!」






 ――死を受け入れたヴォルフガングから、思わぬ言葉を受けたリオンハルト。動揺し、様々な感情が入り乱れたが――――






「――――もっと早く、そういうことを言って欲しかったな…………だが、私も似た気持ちですよ――――父さん。」








 ――――テイテツもセリーナもライネスも…………ガラテア軍も『震える星』も冒険者たちもクリムゾンローズ盗賊団も、その場で終末を享受するしかない者たちは、皆一様に何事か想い、呟いて…………そして自分たちの『終わり』に瞑目した。





 ――――そして、光の巨人にこの星のエネルギーが集束し……星全てを覆う光が放たれ、全てが包まれた――――途方もなく甲高い音が世界中に響き渡る。鎮魂歌レクイエム葬送曲エンディングというにはあまりにもけたたましい音を伴う、創世の光だ――――。




 この星は、生命なき死の星へと作り変えられたのか――――
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