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第194話 生命を弄ぶ狂科学
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――――ルハイグとの乱戦に割って入ったライネス。ガイたちの窮地を救ったものの、その胸中は複雑なようだ。依然、悲しげな顔つきをしている。
「――てめえ……敵味方も解んなくなってんのか……? 何故俺たちを助ける。」
――ライネスは固くつぶった瞼になお力を入れたまま、苦悩する心と同じく頭を左右に振っている。
「――わかんねえ…………俺にも、俺自身の心が――――だがよオ…………。」
ライネスはただただ哀愁を帯びた目で、地に倒れ伏すルハイグを見遣る。
「――俺、思い出したんだよ。人を改造兵にする時……人間らしい心、ってのか? そいつを奪っちまう改造手術を施す時、必ずこいつが関わってたことによオオ~……俺だけじゃあなく……多分、メランも隊長も改子も……もっと他の改造兵の奴らも――――それを思った途端、何か胸が熱く、苦しくなってよオ。こいつを許せなくなっちまったんだよ――――ああ、ホント俺、何してんだ? 友軍を攻撃するなんて命令違反もいいとこだぜ…………。」
「おめえ…………。」
――ライネスは、未だ己の行動原理が理解出来ずに混乱の中のようだ。だが、ガイは目の前の青年がただの闘争心のみで殺戮を執行することを悦びとする改造兵ではなく、ただの青年になりつつあることを感じ取った。
「――どうやら、ただの敵とは少しばかり事情が違っちまったみてえだな――――大丈夫か、イロハ。」
ルハイグに脚を掴んで地にめり込むほど叩き付けられたイロハ。イロハも練気発動サプリで練気を纏っているとはいえ、ダメージはなかなかに大きい。掴んだ脚は折られ、地に叩き付けられた衝撃で左腕も折れている――――すぐにガイは回復法術でイロハを治療した。
――回復法術の青白い光が灯り、イロハの折れた手足がゴキゴキと鈍い音を立てながら回復していく。
「――ヒッ……痛たたたた、痛い痛い痛い痛い痛い――――かあっ!! ふーっ……回復法術も今更ながら痛みを伴うこと多いっスね~……何なら折れた瞬間より痛いじゃあないっスかあ~……」
痛みに歯を食いしばりながらも、すぐに治癒した手足を使って、イロハはゆっくり沈み込んだ土から立ち上がった。
「――!? がっ、ガイさん!!」
「――何ッ!? ぐあっ!!」
イロハが驚き呼びかけたが、背後を向くと同時にガイは鉄塊のようなもので横薙ぎに吹っ飛ばされた。
「――うおッ!? な、何なんだこいつ…………身体を上半身と下半身に真っ二つにされたってのに、動いてやがる!! 血も出てねえ!?」
――――純然たる改造兵のままだったならきっと戦慄することも無かったライネス。身体を断たれたはずのルハイグを見て、恐怖する。
「ガイッ!」
「――はははははッ!! 俺は絶対に死なん! 死なんぞ!! 貴様を殺すまではなあ、ヒッズ!!」
テイテツが駆け寄り、ガイを診る。何とか打撲程度で済んだようだ。
「――ガイの自在活殺剣は命あるものの肉体を一度両断し、その直後回復法術の応用で治癒・浄化させつつも戦力として不能にする奥義。それが効かないということは、ルハイグ、お前は――――」
「――その通り!! 忌々しい『ガラテア最高の頭脳』めが!! 俺の身体はもう純然たる肉体はほとんど残っちゃいない! 有機生命体としてはほとんど『死んでいる』に等しい! 切っても突いても血は出ない。だがなあ――――」
――ルハイグが何やら練気を集中すると…………斬られた身体の断面、上半身と下半身から繊維質の管のような物が伸びて来た。それらは見る間にお互いを繋いでいき――――
「――機械の身体が……損傷した自らの身体を自己修復したのか。」
――ルハイグの身体は、多少斬られた皮膚の切れ目が残っているものの、ほとんど元の状態へと問題なく自己修復した。エリーなどの物とも違う、機工学的な自己修復機能だ。
「――これで元通りだ。こんな俺を……肉体を失った俺を憐れむか? ――ふざけるな、俺はサイボーグ化したことでどんな人類の肉体をも超えた究極の身体になったのだ!! 最新の改造兵なしでもかなり戦えるさ――――貴様らを抹殺する程度にはなァ!!」
――ルハイグは、自ら捨てた肉体を悲しむこともせず、むしろ誇らしくなおも猛り狂った。
「――ちっ。マジかよ……こりゃあ簡単には倒せねえ…………時間はねえってのに!」
――ガイは殴られた痕をすぐさま回復法術で治療しつつも、ルハイグの予想以上のしぶとさに焦りを募らせる。
「――おぉお~イッ!! ライネス、お前一体一人で抜け出して何やってんだあああアアァ!?」
「――ライネスぅ! そ、そこにいるのはぁ……私たちを改造兵にした人ぉ――――!!」
「――ひひひ。敵味方問わず強い奴に殺し合い吹っ掛けるなんざ…………いっちばん戦いに飢えてんのはライネス。あんたじゃあねえのおおォ!?」
――ライネスが突貫したのを見て、バルザック、メラン、改子も駆けつけて来た。胸中は様々だったが――――
「――都合が良い。純然たる闘争心を忘れた改造兵など、もはや不要ッ!! ライネス=ドラグノン…………『失敗作』である仲間たちに殺されるがいい――――!!」
――ルハイグが何やら電子音と共に念じると――――バルザックと改子の動きがぴたり、と止まった。
「――あ……あ……?」
「――ぐぐっ……こ、ろす――――」
「――隊長……?」
「――改子ぉ!?」
――途端に赤黒い練気が立ち昇り、2人の瞳は真っ赤に光った――――
「――てめえ……敵味方も解んなくなってんのか……? 何故俺たちを助ける。」
――ライネスは固くつぶった瞼になお力を入れたまま、苦悩する心と同じく頭を左右に振っている。
「――わかんねえ…………俺にも、俺自身の心が――――だがよオ…………。」
ライネスはただただ哀愁を帯びた目で、地に倒れ伏すルハイグを見遣る。
「――俺、思い出したんだよ。人を改造兵にする時……人間らしい心、ってのか? そいつを奪っちまう改造手術を施す時、必ずこいつが関わってたことによオオ~……俺だけじゃあなく……多分、メランも隊長も改子も……もっと他の改造兵の奴らも――――それを思った途端、何か胸が熱く、苦しくなってよオ。こいつを許せなくなっちまったんだよ――――ああ、ホント俺、何してんだ? 友軍を攻撃するなんて命令違反もいいとこだぜ…………。」
「おめえ…………。」
――ライネスは、未だ己の行動原理が理解出来ずに混乱の中のようだ。だが、ガイは目の前の青年がただの闘争心のみで殺戮を執行することを悦びとする改造兵ではなく、ただの青年になりつつあることを感じ取った。
「――どうやら、ただの敵とは少しばかり事情が違っちまったみてえだな――――大丈夫か、イロハ。」
ルハイグに脚を掴んで地にめり込むほど叩き付けられたイロハ。イロハも練気発動サプリで練気を纏っているとはいえ、ダメージはなかなかに大きい。掴んだ脚は折られ、地に叩き付けられた衝撃で左腕も折れている――――すぐにガイは回復法術でイロハを治療した。
――回復法術の青白い光が灯り、イロハの折れた手足がゴキゴキと鈍い音を立てながら回復していく。
「――ヒッ……痛たたたた、痛い痛い痛い痛い痛い――――かあっ!! ふーっ……回復法術も今更ながら痛みを伴うこと多いっスね~……何なら折れた瞬間より痛いじゃあないっスかあ~……」
痛みに歯を食いしばりながらも、すぐに治癒した手足を使って、イロハはゆっくり沈み込んだ土から立ち上がった。
「――!? がっ、ガイさん!!」
「――何ッ!? ぐあっ!!」
イロハが驚き呼びかけたが、背後を向くと同時にガイは鉄塊のようなもので横薙ぎに吹っ飛ばされた。
「――うおッ!? な、何なんだこいつ…………身体を上半身と下半身に真っ二つにされたってのに、動いてやがる!! 血も出てねえ!?」
――――純然たる改造兵のままだったならきっと戦慄することも無かったライネス。身体を断たれたはずのルハイグを見て、恐怖する。
「ガイッ!」
「――はははははッ!! 俺は絶対に死なん! 死なんぞ!! 貴様を殺すまではなあ、ヒッズ!!」
テイテツが駆け寄り、ガイを診る。何とか打撲程度で済んだようだ。
「――ガイの自在活殺剣は命あるものの肉体を一度両断し、その直後回復法術の応用で治癒・浄化させつつも戦力として不能にする奥義。それが効かないということは、ルハイグ、お前は――――」
「――その通り!! 忌々しい『ガラテア最高の頭脳』めが!! 俺の身体はもう純然たる肉体はほとんど残っちゃいない! 有機生命体としてはほとんど『死んでいる』に等しい! 切っても突いても血は出ない。だがなあ――――」
――ルハイグが何やら練気を集中すると…………斬られた身体の断面、上半身と下半身から繊維質の管のような物が伸びて来た。それらは見る間にお互いを繋いでいき――――
「――機械の身体が……損傷した自らの身体を自己修復したのか。」
――ルハイグの身体は、多少斬られた皮膚の切れ目が残っているものの、ほとんど元の状態へと問題なく自己修復した。エリーなどの物とも違う、機工学的な自己修復機能だ。
「――これで元通りだ。こんな俺を……肉体を失った俺を憐れむか? ――ふざけるな、俺はサイボーグ化したことでどんな人類の肉体をも超えた究極の身体になったのだ!! 最新の改造兵なしでもかなり戦えるさ――――貴様らを抹殺する程度にはなァ!!」
――ルハイグは、自ら捨てた肉体を悲しむこともせず、むしろ誇らしくなおも猛り狂った。
「――ちっ。マジかよ……こりゃあ簡単には倒せねえ…………時間はねえってのに!」
――ガイは殴られた痕をすぐさま回復法術で治療しつつも、ルハイグの予想以上のしぶとさに焦りを募らせる。
「――おぉお~イッ!! ライネス、お前一体一人で抜け出して何やってんだあああアアァ!?」
「――ライネスぅ! そ、そこにいるのはぁ……私たちを改造兵にした人ぉ――――!!」
「――ひひひ。敵味方問わず強い奴に殺し合い吹っ掛けるなんざ…………いっちばん戦いに飢えてんのはライネス。あんたじゃあねえのおおォ!?」
――ライネスが突貫したのを見て、バルザック、メラン、改子も駆けつけて来た。胸中は様々だったが――――
「――都合が良い。純然たる闘争心を忘れた改造兵など、もはや不要ッ!! ライネス=ドラグノン…………『失敗作』である仲間たちに殺されるがいい――――!!」
――ルハイグが何やら電子音と共に念じると――――バルザックと改子の動きがぴたり、と止まった。
「――あ……あ……?」
「――ぐぐっ……こ、ろす――――」
「――隊長……?」
「――改子ぉ!?」
――途端に赤黒い練気が立ち昇り、2人の瞳は真っ赤に光った――――
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