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第192話 肥大化したエゴと嫉妬
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「――――ふーっ…………ッ!? セリーナ――――!? 何を――――ッ」
「――ぐうううううッ!!」
――セリーナが、あろうことか敵陣で乱舞するが如きに戦うエリーに、突然大槍を突き立てた。
「――ちょ、ちょっと!! 何すんの、セリーナ!? まさか……奴らに何かされたの――――!?」
「――はああああああ…………ッ!!」
――槍は間一髪片腕で止めて受け流されるも、戦闘マシーンと化してしまったセリーナ。練気を、それまであり得なかったほどに限界値を超えて高め…………改造手術を受けた半身の機械部分のカモフラージュが解け、痛ましい姿が露わになる。
「――ぐううううう……ッ! コ、ロス…………私より……強い者は、1人、残らず――――エリー! わた、私よりも強い、エリー……お前から――――!!」
「――そんな、正気に戻ってよ、セリーナ――――ッ!!」
少し離れた処で、ルハイグと対峙しながらエリーとセリーナの同士討ちを見遣るガイたち。
「――て、てめえ……ッ!! セリーナに何をしやがった!?」
――ルハイグは遠巻きに殺し合う2人を見て、ほくそ笑む。
「――ハッ。『セリーナに何を』? 見て解らないのかい。洗脳だよ…………元々高い身体能力と強い闘争心――――そして、エリー=アナジストンのような強者に対する劣等感に付け込んで、殺戮兵器へと洗脳させてもらったのさ。本人に気付かれないように記憶操作も実に上々だ。今のエリー=アナジストンが如何に強大であれ、かつての仲間を切り捨てられるほどの決断がつくまで時間がかかるだろう。その隙にアルスリア中将補佐閣下と『養分の男』は創世樹で融合し、生命の刷新進化は完遂する――――計画通りさ!!」
「――ルハイグ…………かつてのお前は親類がバグという逆境を抱えつつも、温和な人格だった。科学者として狂気的な面も確かにあったが、情に脆く部下に優しい人間だった。一体何があった? お前こそ洗脳されているのではないのか――――?」
――かつての親友の暴挙に、テイテツも声を上げる――――途端に、ルハイグは凄まじい怒気に面を歪めた。
「――俺の方が、洗脳だと!? 温和? 情に脆い? 優しい? ――――そんなものは目的を達成する為の仮面に過ぎん…………ヒッズ!! 貴様を完膚なきまでに叩きのめし!! ガラテアの最高の頭脳として君臨する為のなあ!!」
「……何だと?」
――目の前の禍々しい気色に満ちた科学者の姿からは、テイテツがヒッズ=アルムンドだった頃に認識していたはずの誠実な人格は欠片も感じられなかった。これがルハイグの本性なのだろうか…………。
「――――貴様のような恵まれた頭脳を以てしても、俺の本心が解らんのか……全く、おめでたいことだッ!! 昔に、お前をテイテツ=アルムンドとして戸籍を消し、在野へ放逐したのは俺の思い遣りでも何でもない――――貴様をガラテアから抹消し! 俺こそがガラテアに相応しい頭脳だと証明する為だっ!!」
「――ルハイグ。」
「野郎……単なる嫉妬かよ!!」
――『単なる嫉妬』。その言葉で収めてしまうには余りある憎悪と邪悪、そして狂気がルハイグの中で爆発している。
「……『嫉妬』と一言で片づけられるような者には永遠に解るまいッ!! 俺がこの世に生まれてからどれほど苦しんだか…………貴様らに理解してもらうつもりもない。だがな――――」
――ルハイグは刺すような鋭い視線をテイテツに突き刺し、声を上ずらせて語る。
「――――昔っからそうなんだ。俺がガラテアから身内にいる『バグ』のせいでゴミ屑のように扱われて、努力して這い上がったつもりでも、貴様は俺が遙かに重い荷物を担いで成し遂げたことを……まるで綿毛が舞うようにこなしやがる!! 俺がどんなに温情や周囲との協調性で結果を出そうとしても、貴様はたった一人の『天才的な頭脳』で、すぐに二段も三段も上の結果を出しちまうッ!! 何度己の限界を呪ったことか。何度家族を見殺しにしてでも這い上がろうと思ったことか!! だがな――――」
――ルハイグは、荒々しく自らの白衣を破り裂いた。白衣の下からは、骨の髄まで機械化されたサイボーグの身体が露わになった。
「――とうとうお前もこの幻霧大陸に来たと知った時、またとないチャンスと思ったぞ。ようやく……俺にも好機が向いて来やがった――――戦場の混乱の中、俺の手で貴様をブチ殺し!! これまで貴様の引き立て役だった過去に決別してやる好機がなあッ!!」
――そして、ルハイグは自らの練気を立ち昇らせた。サイボーグの身体は練気のエネルギーをより強く、より禍々しく高めていく…………。
「――てめえっ……だからってエリーとセリーナは関係ねえだろうが、このド畜生がッ!!」
「――ガイ。もう良いのです…………彼を打ち倒しましょう。恐らく、彼を不能にすればセリーナも正気に戻るはずです――――」
「――来るっスよ、2人とも!!」
――――一方的な嫉妬からなる憎悪と狂気。その塊があらゆるものを巻き込んで、眼前のかつての友を斃すべく突貫して来た――――
「――ぐうううううッ!!」
――セリーナが、あろうことか敵陣で乱舞するが如きに戦うエリーに、突然大槍を突き立てた。
「――ちょ、ちょっと!! 何すんの、セリーナ!? まさか……奴らに何かされたの――――!?」
「――はああああああ…………ッ!!」
――槍は間一髪片腕で止めて受け流されるも、戦闘マシーンと化してしまったセリーナ。練気を、それまであり得なかったほどに限界値を超えて高め…………改造手術を受けた半身の機械部分のカモフラージュが解け、痛ましい姿が露わになる。
「――ぐううううう……ッ! コ、ロス…………私より……強い者は、1人、残らず――――エリー! わた、私よりも強い、エリー……お前から――――!!」
「――そんな、正気に戻ってよ、セリーナ――――ッ!!」
少し離れた処で、ルハイグと対峙しながらエリーとセリーナの同士討ちを見遣るガイたち。
「――て、てめえ……ッ!! セリーナに何をしやがった!?」
――ルハイグは遠巻きに殺し合う2人を見て、ほくそ笑む。
「――ハッ。『セリーナに何を』? 見て解らないのかい。洗脳だよ…………元々高い身体能力と強い闘争心――――そして、エリー=アナジストンのような強者に対する劣等感に付け込んで、殺戮兵器へと洗脳させてもらったのさ。本人に気付かれないように記憶操作も実に上々だ。今のエリー=アナジストンが如何に強大であれ、かつての仲間を切り捨てられるほどの決断がつくまで時間がかかるだろう。その隙にアルスリア中将補佐閣下と『養分の男』は創世樹で融合し、生命の刷新進化は完遂する――――計画通りさ!!」
「――ルハイグ…………かつてのお前は親類がバグという逆境を抱えつつも、温和な人格だった。科学者として狂気的な面も確かにあったが、情に脆く部下に優しい人間だった。一体何があった? お前こそ洗脳されているのではないのか――――?」
――かつての親友の暴挙に、テイテツも声を上げる――――途端に、ルハイグは凄まじい怒気に面を歪めた。
「――俺の方が、洗脳だと!? 温和? 情に脆い? 優しい? ――――そんなものは目的を達成する為の仮面に過ぎん…………ヒッズ!! 貴様を完膚なきまでに叩きのめし!! ガラテアの最高の頭脳として君臨する為のなあ!!」
「……何だと?」
――目の前の禍々しい気色に満ちた科学者の姿からは、テイテツがヒッズ=アルムンドだった頃に認識していたはずの誠実な人格は欠片も感じられなかった。これがルハイグの本性なのだろうか…………。
「――――貴様のような恵まれた頭脳を以てしても、俺の本心が解らんのか……全く、おめでたいことだッ!! 昔に、お前をテイテツ=アルムンドとして戸籍を消し、在野へ放逐したのは俺の思い遣りでも何でもない――――貴様をガラテアから抹消し! 俺こそがガラテアに相応しい頭脳だと証明する為だっ!!」
「――ルハイグ。」
「野郎……単なる嫉妬かよ!!」
――『単なる嫉妬』。その言葉で収めてしまうには余りある憎悪と邪悪、そして狂気がルハイグの中で爆発している。
「……『嫉妬』と一言で片づけられるような者には永遠に解るまいッ!! 俺がこの世に生まれてからどれほど苦しんだか…………貴様らに理解してもらうつもりもない。だがな――――」
――ルハイグは刺すような鋭い視線をテイテツに突き刺し、声を上ずらせて語る。
「――――昔っからそうなんだ。俺がガラテアから身内にいる『バグ』のせいでゴミ屑のように扱われて、努力して這い上がったつもりでも、貴様は俺が遙かに重い荷物を担いで成し遂げたことを……まるで綿毛が舞うようにこなしやがる!! 俺がどんなに温情や周囲との協調性で結果を出そうとしても、貴様はたった一人の『天才的な頭脳』で、すぐに二段も三段も上の結果を出しちまうッ!! 何度己の限界を呪ったことか。何度家族を見殺しにしてでも這い上がろうと思ったことか!! だがな――――」
――ルハイグは、荒々しく自らの白衣を破り裂いた。白衣の下からは、骨の髄まで機械化されたサイボーグの身体が露わになった。
「――とうとうお前もこの幻霧大陸に来たと知った時、またとないチャンスと思ったぞ。ようやく……俺にも好機が向いて来やがった――――戦場の混乱の中、俺の手で貴様をブチ殺し!! これまで貴様の引き立て役だった過去に決別してやる好機がなあッ!!」
――そして、ルハイグは自らの練気を立ち昇らせた。サイボーグの身体は練気のエネルギーをより強く、より禍々しく高めていく…………。
「――てめえっ……だからってエリーとセリーナは関係ねえだろうが、このド畜生がッ!!」
「――ガイ。もう良いのです…………彼を打ち倒しましょう。恐らく、彼を不能にすればセリーナも正気に戻るはずです――――」
「――来るっスよ、2人とも!!」
――――一方的な嫉妬からなる憎悪と狂気。その塊があらゆるものを巻き込んで、眼前のかつての友を斃すべく突貫して来た――――
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