創世樹

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第177話 不時着した先

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 ――――窮したところをまたも何とか切り抜けた戦艦フォルテの一行。




 だが、まだ視界が開けるほど霧は薄くはなく――――




「――――!! 前方にバリアを張れッ!! 直ちに回避行動――――!!」




 ――少量の雷雲を発生させる煙幕ののち、一気に高度を下げ逃げ切ったかに見えるフォルテだったが…………今度は前方に針のように聳える高山に気付くのが遅れた。




 ゴッシュは即座にバリアと回避命令を出すが、間に合いそうもない――――




「――ぐううっ、くっ――――!!」




 ――避け切れず衝突した。ふね全体に激しい振動と衝撃が走る――――




「うおおおッ……!!」

「みんな、落ちないようにしっかり掴まって!!」




 ガイが悲鳴を上げてほぼ直角に傾く艦内で、掴める取っ手に必死でしがみつく。エリーもまた手すりなどにしがみつくと即座に近くの者の手を引いて掴んだ。




 ある者は掴めそうな箇所にしがみついて堪え、またある者はエリーのように支えのしっかりしている者を頼った。掴み切れずに艦内を転がり落ちていく者もいるようだ――





「――ぐっ……駄目か。舵がきかん――――総員、更なる衝撃に備えろーッ!! 不時着するぞッ!!」




 ――乗組員やアストラガーロの民たちの阿鼻叫喚の渦の中、ゴッシュは懸命に通信機を作動させ、全員に更なる不時着の衝撃に備えるよう号した。




 先ほどのガラテア軍からの嵐の如く浴びせられた鉄火に加え、岩山への激突。如何に超科学を用いた古代戦艦・フォルテとはいえ、コントロールを失い、地に落ちることは避けられない――――





「――うわああああっ!!」





 ――幻霧大陸の霧を晴らす鍵となったグロウも、もはや他の乗組員同様、パニックになるのを必死に堪え、衝撃に備えるしかなかった。





 ――――ズドゴゴゴゴ…………という大地を擦る破壊音と共に大地震の如く揺れるフォルテ。電気系統もやられたのか、照明が全て消え……しばらく辺りは真っ暗闇に包まれた――――






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 ――それから、どれほど時間が経っただろうか。大地に不時着したフォルテは煙を上げているが、辛うじて動力部やブリッジが大破することなくその巨躯を土の上に横たえていた。爆発する危険も今は無いようだ。





 動ける者から、艦の外へと這い出し、辺りの状況を窺い始めた。





「――みんな、大丈夫? よっ、と……」



「――乗ってる奴全員無事……とまではいかねえだろうが……俺らもゴッシュのおっさんもあちこち身体ぶつけた程度で済んだみてえだな――おお痛え。後で怪我人全員を俺とグロウの練気チャクラで治すのを手伝わなくっちゃあな……」


「――くっ……死なずに済んだか…………だが、これから先一体何が待ち受けているのやら……取り敢えず私も空中走行盤エアリフボードも無事だ。」



「グロウくん、大丈夫ッスかぁ~……おわっ! 美しいお顔に青タン出来てるじゃあないっスかああ~っ……!」



「――ふうーっ……えへへ。イロハだって全身すりむいてるじゃないか……僕の怪我、これくらいすぐ治せるよ。ほら。」



「――どれほどの被害と死傷者が出たかまだ確認が必要そうですが……ガイやグロウのような練気による回復能力者がいることは有難いですね。きっと他にも回復法術ヒーリングの使い手はいるはず……無論、医療従事者も。皆で手分けして確認を――――」



 エリーたちは幸いなことに怪我をしても軽傷で済んだ。他の乗員たちの安否を気に掛けているところだったが――――




「――待って……みんな、あれ――――!!」





 ――視力の利くエリーが何かに気付き、山と山の境目らしき地点を指差した。




 徐々に霧が晴れてきて、他の者も目を凝らせば見えて来る…………。





「あれは…………人か――――!?」





 エリーたちが見据える先にあるのは、集落のようだった。人影らしき姿が見え、少しずつこちらへ向かってくる。





「――あれが……あの人たちが、始祖民族…………僕と、アルスリアに近いものを感じる――――。」





 ――先住民族。つまりは古代種の始祖民族と思しき民たちは不安そうにこちらを見つめているが、やがて手を振り、少しずつこちらへ歩いて来る。どうやら助けてくれるようだ――――。
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