創世樹

mk-2

文字の大きさ
上 下
178 / 223

第177話 不時着した先

しおりを挟む
 ――――窮したところをまたも何とか切り抜けた戦艦フォルテの一行。




 だが、まだ視界が開けるほど霧は薄くはなく――――




「――――!! 前方にバリアを張れッ!! 直ちに回避行動――――!!」




 ――少量の雷雲を発生させる煙幕ののち、一気に高度を下げ逃げ切ったかに見えるフォルテだったが…………今度は前方に針のように聳える高山に気付くのが遅れた。




 ゴッシュは即座にバリアと回避命令を出すが、間に合いそうもない――――




「――ぐううっ、くっ――――!!」




 ――避け切れず衝突した。ふね全体に激しい振動と衝撃が走る――――




「うおおおッ……!!」

「みんな、落ちないようにしっかり掴まって!!」




 ガイが悲鳴を上げてほぼ直角に傾く艦内で、掴める取っ手に必死でしがみつく。エリーもまた手すりなどにしがみつくと即座に近くの者の手を引いて掴んだ。




 ある者は掴めそうな箇所にしがみついて堪え、またある者はエリーのように支えのしっかりしている者を頼った。掴み切れずに艦内を転がり落ちていく者もいるようだ――





「――ぐっ……駄目か。舵がきかん――――総員、更なる衝撃に備えろーッ!! 不時着するぞッ!!」




 ――乗組員やアストラガーロの民たちの阿鼻叫喚の渦の中、ゴッシュは懸命に通信機を作動させ、全員に更なる不時着の衝撃に備えるよう号した。




 先ほどのガラテア軍からの嵐の如く浴びせられた鉄火に加え、岩山への激突。如何に超科学を用いた古代戦艦・フォルテとはいえ、コントロールを失い、地に落ちることは避けられない――――





「――うわああああっ!!」





 ――幻霧大陸の霧を晴らす鍵となったグロウも、もはや他の乗組員同様、パニックになるのを必死に堪え、衝撃に備えるしかなかった。





 ――――ズドゴゴゴゴ…………という大地を擦る破壊音と共に大地震の如く揺れるフォルテ。電気系統もやられたのか、照明が全て消え……しばらく辺りは真っ暗闇に包まれた――――






 <<





 <<





 <<





 ――それから、どれほど時間が経っただろうか。大地に不時着したフォルテは煙を上げているが、辛うじて動力部やブリッジが大破することなくその巨躯を土の上に横たえていた。爆発する危険も今は無いようだ。





 動ける者から、艦の外へと這い出し、辺りの状況を窺い始めた。





「――みんな、大丈夫? よっ、と……」



「――乗ってる奴全員無事……とまではいかねえだろうが……俺らもゴッシュのおっさんもあちこち身体ぶつけた程度で済んだみてえだな――おお痛え。後で怪我人全員を俺とグロウの練気チャクラで治すのを手伝わなくっちゃあな……」


「――くっ……死なずに済んだか…………だが、これから先一体何が待ち受けているのやら……取り敢えず私も空中走行盤エアリフボードも無事だ。」



「グロウくん、大丈夫ッスかぁ~……おわっ! 美しいお顔に青タン出来てるじゃあないっスかああ~っ……!」



「――ふうーっ……えへへ。イロハだって全身すりむいてるじゃないか……僕の怪我、これくらいすぐ治せるよ。ほら。」



「――どれほどの被害と死傷者が出たかまだ確認が必要そうですが……ガイやグロウのような練気による回復能力者がいることは有難いですね。きっと他にも回復法術ヒーリングの使い手はいるはず……無論、医療従事者も。皆で手分けして確認を――――」



 エリーたちは幸いなことに怪我をしても軽傷で済んだ。他の乗員たちの安否を気に掛けているところだったが――――




「――待って……みんな、あれ――――!!」





 ――視力の利くエリーが何かに気付き、山と山の境目らしき地点を指差した。




 徐々に霧が晴れてきて、他の者も目を凝らせば見えて来る…………。





「あれは…………人か――――!?」





 エリーたちが見据える先にあるのは、集落のようだった。人影らしき姿が見え、少しずつこちらへ向かってくる。





「――あれが……あの人たちが、始祖民族…………僕と、アルスリアに近いものを感じる――――。」





 ――先住民族。つまりは古代種の始祖民族と思しき民たちは不安そうにこちらを見つめているが、やがて手を振り、少しずつこちらへ歩いて来る。どうやら助けてくれるようだ――――。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

改造空母機動艦隊

蒼 飛雲
歴史・時代
 兵棋演習の結果、洋上航空戦における空母の大量損耗は避け得ないと悟った帝国海軍は高価な正規空母の新造をあきらめ、旧式戦艦や特務艦を改造することで数を揃える方向に舵を切る。  そして、昭和一六年一二月。  日本の前途に暗雲が立ち込める中、祖国防衛のために改造空母艦隊は出撃する。  「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」が、さらに「千歳」「千代田」「瑞穂」がその数を頼みに太平洋艦隊を迎え撃つ。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

ハミット 不死身の仙人

マーク・キシロ
SF
どこかの辺境地に不死身の仙人が住んでいるという。 誰よりも美しく最強で、彼に会うと誰もが魅了されてしまうという仙人。 世紀末と言われた戦後の世界。 何故不死身になったのか、様々なミュータントの出現によって彼を巡る物語や壮絶な戦いが起き始める。 母親が亡くなり、ひとりになった少女は遺言を手掛かりに、その人に会いに行かねばならない。 出会い編 青春編 ハンター編 解明編 *明確な国名などはなく、近未来の擬似世界です。 *過激な表現もあるので、苦手な方はご注意下さい。

EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~

青空顎門
SF
病で余命宣告を受けた主人公。彼は介護用に購入した最愛のガイノイド(女性型アンドロイド)の腕の中で息絶えた……はずだったが、気づくと彼女と共に見知らぬ場所にいた。そこは遥か未来――時空間転移技術が暴走して崩壊した後の時代、宇宙の遥か彼方の辺境惑星だった。男はファンタジーの如く高度な技術の名残が散見される世界で、今度こそ彼女と添い遂げるために未来の超文明の遺跡を巡っていく。 ※小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様、ノベルバ様にも掲載しております。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...