161 / 223
第160話 クレイジーモーターサイクル4
しおりを挟む
――――狙撃手がグレネードランチャーから放つ弾。撃ち直す度に絶え間なく豪炎をエリーに浴びせ続けている。
「――――くそっ……何なんだ…………何なんだ、この女は――――!?」
狙撃手が恐慌状態に陥るのも無理はない。相手は『鬼』由来の強力な身体能力を誇る超人であり、同時に練気の修行においても比類なき才を持っているエリー=アナジストンである、と彼女を知らぬ者のうち誰が想像出来ようか。
「――畜生……畜生ッ!!」
「――おい!! 相棒、落ち着けッ!! もうそんな化け物に構うな、一気に逃げるぞ!!」
「――エリーさーんッ!! 大丈夫なんスかあーっ!?」
――後続のイロハ自身もグレネード弾の流れ弾や熱の残滓を避けながら、豪炎と黒い爆煙に包まれるエリーを見て、さすがに身を案じた。
――だが、ここまで冒険を共にしてきた者なら、やはり自明の理であろう――――
「――ゲホッ、ゲホッ――――くーっ、熱っつう~…………いい加減、決めに行くわよ。200%開放――――」
「――エリーさん!! 無茶は良くないっス!!」
「――こ、この女――――た、弾がもう…………!!」
――恐慌する狙撃手がそう呟くと同時に、練気を高出力まで上げたエリーが、爆煙から、ぬうっと手を伸ばし、両の手でレーシングカーを掴んだ――――
「――うわあああああああッッ!!」
「――仕方ない。後は任せろ、相棒!! あばよ――――」
「――ふううううう――――ッ!!」
――完全に恐怖し、我を忘れる狙撃手。そのまま轟然と力を込め、レーシングカーを丸ごとひっくり返そうとするエリーだったが――――
「――うわッ!? とっと、っと――――あれェ!?」
――何と、エリーが持ち上げたのは後部席のみ。車体を丸ごと持ち上げたつもりが、後部席のみを引っぺがしてしまった。思わぬ軽さに逆にバランスを崩す。これは、エリーが力加減を間違えたからではない。
――どうやら、操縦席に座する者が操作し、後部席を切り離したようだ。はじめから前部か後部、どちらかがやられた時の為に、そのようなギミックが仕込んであったのだ――――
――そこで一旦レーシングカーは車体の下から一瞬、巨大なバネが飛び出し、高く車体が飛び上がった。猛スピードで走りながらのジャンプ。バネを打ち付けた地面がハンマーで圧したようにへこむ。
操縦者は、強烈なGが掛かる中でも慌てずに、コックピットを操作した。
すると、前輪だけになっていた車体が空中で変形し……前輪の右片方だけが後方へ移動し、2輪の大型バイクとなった。そのまますかさず着地…………軽くなった分、耐久性は弱いが、さらに速そうだ――――
「――おおーっ!! それ、カッコイイっスね…………!!」
――危険極まりないレースの中、イロハは見たことの無いギミックを搭載したレーシングカーを見て思わず感嘆の声を上げた。これも、イロハの脳内の『使えそうな素敵仕様アイデアメモ』に素早く書き留めておくのだった。
「――ちいっ!! 小癪なーっ!!」
「――ぎゃあああああッ!!」
――練気の開放度をかなりの高出力に上げたうえ、弾薬を幾度も浴びせられたエリーは興奮状態。手加減はしているが狙撃手をそのまま後部席ごと後ろへ投げ捨ててしまう。悲鳴を上げて飛んで転がる狙撃手。
「――が、ガイッ!! こっちへ――――」
「――むっ……テイテツ!! 少しの間だけ、遠隔運転出来るか!?」
「――可能です。速度を落としますか?」
「大丈夫だ。要らねエ――――」
――エリーが打っ棄り、投げ捨てられた狙撃手。このままでは後部席ごとガンバに衝突する――――ガイは咄嗟に車体の上に躍り出て、二刀を構え、練気を念じる。
ガイの目の前まで飛んできた刹那――――
「――――はあーッ!!」
――ガイの二刀の奥義。自在活殺剣が決まった。車体ごとX字に一瞬だけ切り裂かれる狙撃手だが…………すぐに狙撃手だけが元通り肉体が修復し、気絶しながらも事なきを得た。
すぐに操縦に戻るガイ。
「――全く、あの馬鹿は……まぁた興奮して我を忘れやがって――」
――ガンバではどうしてもスピードが劣り、前を走る挑戦者たちから後方に座してしまうが、ガイさえいれば……こうして飛んでくる挑戦者を保護するだけやりがいがあったと言うもの。ガイは悪態を吐きつつも少しでも距離を縮めるべく、アクセルを踏む。
――イロハと同様、大型バイクへと変形し、身軽になったレーシングカー。今度は操縦者が脇に納めていた大型拳銃を抜き、ところどころ振り返りながらイロハを撃って来る――――イロハも落ち着いて練気を集中して肉体の反射速度を上げ、銃撃を躱す。
「――なんのぉっ!! あたしが楯になってやる!! はあああーーーっ!!」
エリーはなおも力を込め、超速で走ってイロハを守ろうとするが――――
「――駄目っスエリーさん!! それ以上は――――」
「――へっ? ――うわあっ!?」
――刹那。エリーのブーツ……ロケッタブルエリーは真っ赤に発光したのち、粉々に砕け散ってしまった。バランスを崩して倒れそうになるエリー。
「――だから言ったっス……『それは元はただの金属のブーツなんスから、負荷を掛け過ぎたらオーバーヒートして壊れる』っつったのに~……っ」
――まさかのエリー、脱落。走者の資格は『乗り物』を使用する者のみ――
――現在順位、1位レーシングカー(変形後)。2位イロハ。3位強化機械装甲。4位(最下位)ガンバのガイとグロウ――――
「――――くそっ……何なんだ…………何なんだ、この女は――――!?」
狙撃手が恐慌状態に陥るのも無理はない。相手は『鬼』由来の強力な身体能力を誇る超人であり、同時に練気の修行においても比類なき才を持っているエリー=アナジストンである、と彼女を知らぬ者のうち誰が想像出来ようか。
「――畜生……畜生ッ!!」
「――おい!! 相棒、落ち着けッ!! もうそんな化け物に構うな、一気に逃げるぞ!!」
「――エリーさーんッ!! 大丈夫なんスかあーっ!?」
――後続のイロハ自身もグレネード弾の流れ弾や熱の残滓を避けながら、豪炎と黒い爆煙に包まれるエリーを見て、さすがに身を案じた。
――だが、ここまで冒険を共にしてきた者なら、やはり自明の理であろう――――
「――ゲホッ、ゲホッ――――くーっ、熱っつう~…………いい加減、決めに行くわよ。200%開放――――」
「――エリーさん!! 無茶は良くないっス!!」
「――こ、この女――――た、弾がもう…………!!」
――恐慌する狙撃手がそう呟くと同時に、練気を高出力まで上げたエリーが、爆煙から、ぬうっと手を伸ばし、両の手でレーシングカーを掴んだ――――
「――うわあああああああッッ!!」
「――仕方ない。後は任せろ、相棒!! あばよ――――」
「――ふううううう――――ッ!!」
――完全に恐怖し、我を忘れる狙撃手。そのまま轟然と力を込め、レーシングカーを丸ごとひっくり返そうとするエリーだったが――――
「――うわッ!? とっと、っと――――あれェ!?」
――何と、エリーが持ち上げたのは後部席のみ。車体を丸ごと持ち上げたつもりが、後部席のみを引っぺがしてしまった。思わぬ軽さに逆にバランスを崩す。これは、エリーが力加減を間違えたからではない。
――どうやら、操縦席に座する者が操作し、後部席を切り離したようだ。はじめから前部か後部、どちらかがやられた時の為に、そのようなギミックが仕込んであったのだ――――
――そこで一旦レーシングカーは車体の下から一瞬、巨大なバネが飛び出し、高く車体が飛び上がった。猛スピードで走りながらのジャンプ。バネを打ち付けた地面がハンマーで圧したようにへこむ。
操縦者は、強烈なGが掛かる中でも慌てずに、コックピットを操作した。
すると、前輪だけになっていた車体が空中で変形し……前輪の右片方だけが後方へ移動し、2輪の大型バイクとなった。そのまますかさず着地…………軽くなった分、耐久性は弱いが、さらに速そうだ――――
「――おおーっ!! それ、カッコイイっスね…………!!」
――危険極まりないレースの中、イロハは見たことの無いギミックを搭載したレーシングカーを見て思わず感嘆の声を上げた。これも、イロハの脳内の『使えそうな素敵仕様アイデアメモ』に素早く書き留めておくのだった。
「――ちいっ!! 小癪なーっ!!」
「――ぎゃあああああッ!!」
――練気の開放度をかなりの高出力に上げたうえ、弾薬を幾度も浴びせられたエリーは興奮状態。手加減はしているが狙撃手をそのまま後部席ごと後ろへ投げ捨ててしまう。悲鳴を上げて飛んで転がる狙撃手。
「――が、ガイッ!! こっちへ――――」
「――むっ……テイテツ!! 少しの間だけ、遠隔運転出来るか!?」
「――可能です。速度を落としますか?」
「大丈夫だ。要らねエ――――」
――エリーが打っ棄り、投げ捨てられた狙撃手。このままでは後部席ごとガンバに衝突する――――ガイは咄嗟に車体の上に躍り出て、二刀を構え、練気を念じる。
ガイの目の前まで飛んできた刹那――――
「――――はあーッ!!」
――ガイの二刀の奥義。自在活殺剣が決まった。車体ごとX字に一瞬だけ切り裂かれる狙撃手だが…………すぐに狙撃手だけが元通り肉体が修復し、気絶しながらも事なきを得た。
すぐに操縦に戻るガイ。
「――全く、あの馬鹿は……まぁた興奮して我を忘れやがって――」
――ガンバではどうしてもスピードが劣り、前を走る挑戦者たちから後方に座してしまうが、ガイさえいれば……こうして飛んでくる挑戦者を保護するだけやりがいがあったと言うもの。ガイは悪態を吐きつつも少しでも距離を縮めるべく、アクセルを踏む。
――イロハと同様、大型バイクへと変形し、身軽になったレーシングカー。今度は操縦者が脇に納めていた大型拳銃を抜き、ところどころ振り返りながらイロハを撃って来る――――イロハも落ち着いて練気を集中して肉体の反射速度を上げ、銃撃を躱す。
「――なんのぉっ!! あたしが楯になってやる!! はあああーーーっ!!」
エリーはなおも力を込め、超速で走ってイロハを守ろうとするが――――
「――駄目っスエリーさん!! それ以上は――――」
「――へっ? ――うわあっ!?」
――刹那。エリーのブーツ……ロケッタブルエリーは真っ赤に発光したのち、粉々に砕け散ってしまった。バランスを崩して倒れそうになるエリー。
「――だから言ったっス……『それは元はただの金属のブーツなんスから、負荷を掛け過ぎたらオーバーヒートして壊れる』っつったのに~……っ」
――まさかのエリー、脱落。走者の資格は『乗り物』を使用する者のみ――
――現在順位、1位レーシングカー(変形後)。2位イロハ。3位強化機械装甲。4位(最下位)ガンバのガイとグロウ――――
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
改造空母機動艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
兵棋演習の結果、洋上航空戦における空母の大量損耗は避け得ないと悟った帝国海軍は高価な正規空母の新造をあきらめ、旧式戦艦や特務艦を改造することで数を揃える方向に舵を切る。
そして、昭和一六年一二月。
日本の前途に暗雲が立ち込める中、祖国防衛のために改造空母艦隊は出撃する。
「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」が、さらに「千歳」「千代田」「瑞穂」がその数を頼みに太平洋艦隊を迎え撃つ。


私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシャリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる