創世樹

mk-2

文字の大きさ
上 下
145 / 223

第144話 盗賊幼女流喧嘩殺法!!!!

しおりを挟む
 ――刹那の間に、エリーの拳がローズの鼻筋に炸裂する――――



「――――うらァッ!!」

「――ぐっ!?」



 ――そう思われた一瞬だったが、掛け声と呻き声を上げたのは逆であった――――




 そう。なんと、刹那の間にローズの鋭いボディブローが、エリーのみぞおちへと突き刺さったのだ。エリーは練気《チャクラ》を120%まで高め、ローズは幼女の肉体のはずなのに、その拳は光速にも迫るかという速さでエリーの胴へめり込んだ――



「――くらァッ!! せいっ!! オラァッッッ!!」




「――うっ……ぐあっ、むぅッ――――!!」




 ――速さだけではない。ローズの鉄拳は超人たるエリーの肉体にもダメージを与えるほどに鋭く、強烈な圧を乗せていた。ボクシング崩れの、喧嘩スタイルのワンツーアッパーカットを、元は成人女性だったとはいえ幼女の身体から発するとは思えぬ重圧を込めた気迫の声と共に繰り出し、エリーを数メートル吹っ飛ばした――――




「――なっ、馬鹿な!? エリーの突撃だぞ…………何でガキの身体になったあいつが殴り勝ってやがるんだ!?」




 ――迫りくる下僕たちをみねうちで昏倒させつつも、ガイは驚愕した。もっとも、問うた所で耳栓をしている状態では答えは聴こえないが。




「――ハッハーッ!! ガキの身体になっちまったらぶちのめすのは簡単とでも思ったのかイ!? 残念! 残念!! ズゥアアアアンンンネエエエエエンンンッッッ!! アタシはこのガキの身体の状態の時の方がよっぽど身体能力が高いのさァッ!!」




 体勢を崩したエリーに向け、一瞬にしてマイクを拡声器に持ち替える――――




「――おりゃあ! おッ死ねやアアッ!! KYOOOOOOOOッッッ!!」




「――ぐわっ!!」




 すかさず、ローズのシャウト――――スピーカーから飛んでくる音波弾と遜色ない威力のモノが飛んできて、エリーは正面から喰らってしまった――――爆発でさらに数メートル吹っ飛び、闘技場の地面に落ちる。





「――エリーッ!!」


「――おおおおぉるぁあああああああーーーッ!! やっちまいなァ野郎共ぉぉぉぉッッッ!!」



「――おおおおおオオオオオーーーッッッ!!」




 地に落ちたエリーを見て、拡声器でそのまま下僕たちへ蹂躙するよう命じた。猛り狂った悪漢どもが押し寄せる――――





 ――――並みの練気使いには劣るはずなのに、このローズ=エヴェルはなんと出鱈目な素養を持つのだろう。





 超音波、そして音波弾で攻撃となればその瞬間にだけ攻撃に練気が籠り、充分な破壊力を発揮する。




 相手に距離を詰められても、若返りの副作用なのだろうか。120%開放のエリーをも殴り負かすほどの喧嘩の強さ。幼女にアイドル姿とのギャップに眩暈すら催しそうである。





 加えて、相変わらず下僕たちとの固い結束力と統率力――――戦闘でエリー一行には格下のはずのローズ……そしてクリムゾンローズ盗賊団だったが、その脳裏に『勝利』の二文字がよぎった。




 一瞬にしてエリーの落ちた処に虫の如く集る悪漢たち。数秒ののち――――





「――――オワアアアアアアーーーッ!?」





 ――エリーが落ちた地点から突然、赤黒い爆発が起き、下僕たちはエリーを蹂躙する前に悲鳴を上げて蜘蛛の子を散らすが如く放射線状に吹っ飛んだ。





 そう。一見優勢に見えても、ローズにとって不幸なことに……相手はエリー。それも、ニルヴァ市国でかつてとは比較にならないほど出力をコントロール出来るように成長したエリーであった。




 ――爆発地点から煙が上がったかと思った刹那にはもう、高所にいるローズの至近距離まで迫り、拳を振りかぶっていたエリー――――




「――――300%、開放――――!!」




「――なあァッ!? ――くうっ!!」




 ローズは驚きつつも自身も拳を構える。




 が……さすがに300%まで出力を高めたエリー相手に素手喧嘩《すてごろ》では分が悪すぎた。




 ローズ自身も拳と蹴りを繰り出すが、エリーには最小限の動きで躱され、次々と顔面やみぞおち狙いで豪拳の乱打を喰らってしまう――――




「――おりゃあああああッ!!」


「――ごああああああッッッ!!」




 ――エリーのフィニッシュブローが決まった。ローズは闘技場の貴賓席付近…………およそ10メートル近くだろうか。キリモミ回転をしながら吹っ飛び、口から血を吐いて倒れた。砂煙が立ち昇る。




「――おっ……お頭アアアアアア!!」




 ――下僕たちは皆一様に、慕っている『お頭』がぶちのめされ、この世の終わりのような悲鳴を上げてしまう。




「――ふううーっ…………練気なしの生身とは思えないタフさだったわね……死んだ? ギリ死んでない、よね……?」




 ――エリーは、少しやり過ぎたか、と反省しつつ練気の出力を落とし、ローズのもとへ近付く。エリーの出力300%もの状態での体術を喰らえば、並みの使い手ならばとっくに死んでしまうはず。




 だが――――




「――――!! 嘘でしょ!?」




「――ってっ、てめえええええエエエエエ…………!! やってくれたねエ――――!!」





 吹っ飛んだ時に生じた瓦礫をどかして、全身打撲だらけだが、なんとローズは死ぬどころか意識を失わずにゆっくり立ち上がった。




「――ふ、フフフフ……あんたはやっぱ強いし……おっかないことこの上ないねエ――――やっぱ結局、奥の手を使うことになっちまったアアアア…………!!」




 ――――ボコボコになりながらもどこまでもタフなローズ=エヴェル。顔を腫れ上がらせながらも不敵に嗤った――――
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

改造空母機動艦隊

蒼 飛雲
歴史・時代
 兵棋演習の結果、洋上航空戦における空母の大量損耗は避け得ないと悟った帝国海軍は高価な正規空母の新造をあきらめ、旧式戦艦や特務艦を改造することで数を揃える方向に舵を切る。  そして、昭和一六年一二月。  日本の前途に暗雲が立ち込める中、祖国防衛のために改造空母艦隊は出撃する。  「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」が、さらに「千歳」「千代田」「瑞穂」がその数を頼みに太平洋艦隊を迎え撃つ。

EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~

青空顎門
SF
病で余命宣告を受けた主人公。彼は介護用に購入した最愛のガイノイド(女性型アンドロイド)の腕の中で息絶えた……はずだったが、気づくと彼女と共に見知らぬ場所にいた。そこは遥か未来――時空間転移技術が暴走して崩壊した後の時代、宇宙の遥か彼方の辺境惑星だった。男はファンタジーの如く高度な技術の名残が散見される世界で、今度こそ彼女と添い遂げるために未来の超文明の遺跡を巡っていく。 ※小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様、ノベルバ様にも掲載しております。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

ハミット 不死身の仙人

マーク・キシロ
SF
どこかの辺境地に不死身の仙人が住んでいるという。 誰よりも美しく最強で、彼に会うと誰もが魅了されてしまうという仙人。 世紀末と言われた戦後の世界。 何故不死身になったのか、様々なミュータントの出現によって彼を巡る物語や壮絶な戦いが起き始める。 母親が亡くなり、ひとりになった少女は遺言を手掛かりに、その人に会いに行かねばならない。 出会い編 青春編 ハンター編 解明編 *明確な国名などはなく、近未来の擬似世界です。 *過激な表現もあるので、苦手な方はご注意下さい。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...