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第143話 ローズの声は超音波!!
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――――思いもよらぬ襲撃。そして、思いもよらぬローズ=エヴェルの『呪い』を知ったあたりで……幼女と化した彼女の一号のもと、重厚な筋肉を誇る下僕たちはますますその筋肉を盛り上がらせ、一斉にエリーたちに襲い掛かってきた。
――――とは言うものの、練気《チャクラ》の修行を経たエリーたちと、そんな力などは持たない下僕たち。加えて、シャンバリアの一件でも戦闘ではエリーたちが圧倒していた。
もとより、エリーたちがこの賊たちに負ける道理など無かった――――
「――なんのっ!! てりゃああああッ!!」
――エリーがひと息のうちに烈風を伴う拳を連打するだけで、かなりの数の賊たちが吹っ飛んだ。力の差は明らかだ。
「――ふん…………やっぱ、こうなっちまうかイ…………ごめんよ。アタシのかわいい息子たち。なら……こういうのはどうだい――――」
――戦況は不利だと解り切っているローズ。だが徐にマイクを掲げ、大きく息を吸い込んだ。そして――――
「――――キエエエエエエエエッッッ!!」
――突然、空間が歪むかと錯覚するほどの絶叫……否、『音波』をスピーカー越しに放ち出した。
「――うあっ……」
「――ぐっ、耳が……!」
エリーたちは、辛うじて耳を塞ぐ。塞いでなければ、如何に練気で全身をガードしているとはいえ、鼓膜が破壊されていたかもしれない――
――耳を塞いでいる隙にも、賊たちは手にした武器を突き付けて来る。これにはエリーたちも堪らず、一旦身を引いた。
「ちいっ! ……なるほど、力が無いなりに……そういうことしてくるわけねー……」
「……生い立ちには同情の余地ぁあるが……相変わらず卑怯な女だぜ……」
――賊たちもローズも実力でエリーたちに劣っているのは明白だが、耳を破壊する超音波攻撃による妨害ともなると、簡単には攻勢に出られないかもしれない。
よく賊たちを見ると、黒ずくめの服に付いたフードで解りにくかったが、全員耳には耳栓。ローズによる超音波自爆攻撃《フレンドリーファイア》には対策済みのようだ。超音波を繰り出すスピーカーもかなりの高所に取り付けられている。
「――こりゃあ、やりにくいわねっ……! かと言って、一気にやっちゃうと、殺しちゃうかもしれないし――――」
「――全員、これを耳に。」
「――あっ……なーる……」
即座に戦況を理解したテイテツは、手にしていた鞄に仕舞っていた食用パンを取り出し、適度なサイズに千切って全員に渡した。少々不衛生かもしれないが、耳に詰めれば耳栓代わりにはなる。
「――ふん。やっぱそう来るねエ……でも……こっからだよ――――」
――再びローズが大きく息を吸い込み、上体を仰け反らした次の瞬間――――
「――うわッ!?」
――なんと、奇声を発したローズの超音波が……音だけでなく、質量を伴った巨大な弾――――『音波弾』とでも言うべき弾をスピーカーから撃ち出して来た。足元が爆発し、エリーたちは散り散りに吹っ飛んだ。
「――な、何……何なの、今の!? あいつは、練気は使えないはずじゃあ――――」
――耳栓をしている状態だと会話もままならず、狼狽えかけるエリーたちだが……ここでもバイザー越しにローズを見ていたテイテツが機転を利かせ、素早く端末にタイピングして、全員に文字を見せる。
『落ち着いてください。確かにローズは練気を纏ってはいませんが、あの音波で攻撃を繰り出す瞬間にのみ、弾にだけ練気が籠っています。正当な練気使いには劣るでしょうが、彼女は【半分だけ練気使い】です。若返りの副産物でしょう』と映し出した。
「――半分だけ練気使いって……そんなのあり~っ!?」
――マイク越しにスピーカーから奇声を浴びせるだけならまだ楽だが、僅かに練気を伴った飛び道具……それもなかなかの破壊力を誇る音波弾を繰り出してくるのは、なかなかに厄介である。下僕たちもローズとの結束力の賜物か、ローズが音波弾を撃つタイミングを目で追わずとも即座に対応し、後退したりまた前進したりと統率が取れている。
「――――あーはっはっはっはっはァーーーっ!! さあ、逃げ惑いなアーーーッ!! キエエエエエエエエーーーッッッ!!」
ローズは闘争心をマグマのように燃え上がらせ、続けざまに音波弾を撃って来る。予想以上の威力と弾の速さ、そして下僕たちとの統率力にエリーたちも押される。おまけに超音波から耳を守ろうとすれば会話がやりにくく、こちらの号令も掛けづらい。
「――しゃあないわねえ……ここはあたしが!! 120%開放――――でりゃああああッッ!!」
――何とか埒を開ける為、エリーは下僕たちを必要以上に痛めつけることも覚悟の上で練気の開放度を上げ、一度拳圧で下僕たちを吹っ飛ばした後――――一気に飛び上がり、スピーカーへ突撃する!!
「――な、なアッ!?」
「――てやっ!!」
――これがクリムゾンローズ盗賊団の物なのか、それとも要塞都市・アストラガーロの備え付けのスピーカーなのか定かではないが、今は仕方がない。一瞬で近付き、スピーカーの右側を蹴り砕いた!! ローズの驚く声は左側のスピーカーからのみ聴こえる。
「――よっ――――はっ! てえええいッ!!」
スピーカーのすぐ上辺りに足場があったので、エリーは片腕で掴んで身を翻し、遠心力で左側のスピーカーにも飛んだ。すかさず叩き壊す――
首魁であるローズは、もう目の前だ――――
「――ぐむむぅ――――!!」
「――もらったァーーッ!!」
――エリーは修行の成果である、滑らかで素早い練気の調節で出力を抑え、ローズの顔面めがけ、豪拳を繰り出した――――!!
――――とは言うものの、練気《チャクラ》の修行を経たエリーたちと、そんな力などは持たない下僕たち。加えて、シャンバリアの一件でも戦闘ではエリーたちが圧倒していた。
もとより、エリーたちがこの賊たちに負ける道理など無かった――――
「――なんのっ!! てりゃああああッ!!」
――エリーがひと息のうちに烈風を伴う拳を連打するだけで、かなりの数の賊たちが吹っ飛んだ。力の差は明らかだ。
「――ふん…………やっぱ、こうなっちまうかイ…………ごめんよ。アタシのかわいい息子たち。なら……こういうのはどうだい――――」
――戦況は不利だと解り切っているローズ。だが徐にマイクを掲げ、大きく息を吸い込んだ。そして――――
「――――キエエエエエエエエッッッ!!」
――突然、空間が歪むかと錯覚するほどの絶叫……否、『音波』をスピーカー越しに放ち出した。
「――うあっ……」
「――ぐっ、耳が……!」
エリーたちは、辛うじて耳を塞ぐ。塞いでなければ、如何に練気で全身をガードしているとはいえ、鼓膜が破壊されていたかもしれない――
――耳を塞いでいる隙にも、賊たちは手にした武器を突き付けて来る。これにはエリーたちも堪らず、一旦身を引いた。
「ちいっ! ……なるほど、力が無いなりに……そういうことしてくるわけねー……」
「……生い立ちには同情の余地ぁあるが……相変わらず卑怯な女だぜ……」
――賊たちもローズも実力でエリーたちに劣っているのは明白だが、耳を破壊する超音波攻撃による妨害ともなると、簡単には攻勢に出られないかもしれない。
よく賊たちを見ると、黒ずくめの服に付いたフードで解りにくかったが、全員耳には耳栓。ローズによる超音波自爆攻撃《フレンドリーファイア》には対策済みのようだ。超音波を繰り出すスピーカーもかなりの高所に取り付けられている。
「――こりゃあ、やりにくいわねっ……! かと言って、一気にやっちゃうと、殺しちゃうかもしれないし――――」
「――全員、これを耳に。」
「――あっ……なーる……」
即座に戦況を理解したテイテツは、手にしていた鞄に仕舞っていた食用パンを取り出し、適度なサイズに千切って全員に渡した。少々不衛生かもしれないが、耳に詰めれば耳栓代わりにはなる。
「――ふん。やっぱそう来るねエ……でも……こっからだよ――――」
――再びローズが大きく息を吸い込み、上体を仰け反らした次の瞬間――――
「――うわッ!?」
――なんと、奇声を発したローズの超音波が……音だけでなく、質量を伴った巨大な弾――――『音波弾』とでも言うべき弾をスピーカーから撃ち出して来た。足元が爆発し、エリーたちは散り散りに吹っ飛んだ。
「――な、何……何なの、今の!? あいつは、練気は使えないはずじゃあ――――」
――耳栓をしている状態だと会話もままならず、狼狽えかけるエリーたちだが……ここでもバイザー越しにローズを見ていたテイテツが機転を利かせ、素早く端末にタイピングして、全員に文字を見せる。
『落ち着いてください。確かにローズは練気を纏ってはいませんが、あの音波で攻撃を繰り出す瞬間にのみ、弾にだけ練気が籠っています。正当な練気使いには劣るでしょうが、彼女は【半分だけ練気使い】です。若返りの副産物でしょう』と映し出した。
「――半分だけ練気使いって……そんなのあり~っ!?」
――マイク越しにスピーカーから奇声を浴びせるだけならまだ楽だが、僅かに練気を伴った飛び道具……それもなかなかの破壊力を誇る音波弾を繰り出してくるのは、なかなかに厄介である。下僕たちもローズとの結束力の賜物か、ローズが音波弾を撃つタイミングを目で追わずとも即座に対応し、後退したりまた前進したりと統率が取れている。
「――――あーはっはっはっはっはァーーーっ!! さあ、逃げ惑いなアーーーッ!! キエエエエエエエエーーーッッッ!!」
ローズは闘争心をマグマのように燃え上がらせ、続けざまに音波弾を撃って来る。予想以上の威力と弾の速さ、そして下僕たちとの統率力にエリーたちも押される。おまけに超音波から耳を守ろうとすれば会話がやりにくく、こちらの号令も掛けづらい。
「――しゃあないわねえ……ここはあたしが!! 120%開放――――でりゃああああッッ!!」
――何とか埒を開ける為、エリーは下僕たちを必要以上に痛めつけることも覚悟の上で練気の開放度を上げ、一度拳圧で下僕たちを吹っ飛ばした後――――一気に飛び上がり、スピーカーへ突撃する!!
「――な、なアッ!?」
「――てやっ!!」
――これがクリムゾンローズ盗賊団の物なのか、それとも要塞都市・アストラガーロの備え付けのスピーカーなのか定かではないが、今は仕方がない。一瞬で近付き、スピーカーの右側を蹴り砕いた!! ローズの驚く声は左側のスピーカーからのみ聴こえる。
「――よっ――――はっ! てえええいッ!!」
スピーカーのすぐ上辺りに足場があったので、エリーは片腕で掴んで身を翻し、遠心力で左側のスピーカーにも飛んだ。すかさず叩き壊す――
首魁であるローズは、もう目の前だ――――
「――ぐむむぅ――――!!」
「――もらったァーーッ!!」
――エリーは修行の成果である、滑らかで素早い練気の調節で出力を抑え、ローズの顔面めがけ、豪拳を繰り出した――――!!
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