創世樹

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第137話 足跡

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「――――おっ! 戻って来たぜ!! やっぱあいつのバイクがあって助かったぜ……」




 ――処を戻して、エリー一行はギルド連盟の総本部……そして秘密裏に巨大な戦艦を隠し持っている可能性があるという要塞都市アストラガーロへ進路を取り1週間が過ぎた。




 ガイが憂慮した通り、旅路の途中では荒れて走りづらい道があったり、大きな山を迂回せねばならず、予想よりほんの少し燃料を消耗し、やがて尽きてしまった。




 だが、幸いなことにイロハの一人乗りとはいえ重厚なバイク・黒風があったので、遠くに見える人里まで燃料と食料の買い出しを彼女に頼んでいた。イロハは見るが早いか、大量の燃料や食料、水などをインスタント・ポータブル・カプセルに詰め、黒風を駆って戻って来た。バイクのエンジンが嘶く音がどんどんと大きく近付いて来る。




「――おーっし! ただいまーッス!!」




「ありがと~! イロハちゃん!! ってか随分沢山持って来たわね!?」




「……要塞都市アストラガーロへはもう僅かのはずですが……」




 テイテツが呟く通り、目的地もう目前と言ってもいいほどである。テイテツのバイザーで目を凝らせば、うっすらと要塞都市さながらの円筒形の遠景が見える。




「――それがっスねえ! あそこの集落に住んでる人たち、親切で妙に欲が無いっつーか…………とにかく燃料も食料も安く売ってくれたんスよねえ~。端末から相場を見て判断したっスけど、あそこでまとめ買いするのが得策と思ったっス!! いやあ~、儲け、儲け!!」




「へえ。良かったね、みんな!!」




 グロウもガンバの車体から出てきて、イロハが買い込んできた食料や燃料を運び、手伝う。




「――っと、そうだそうだ……集落で気になる話を耳にしたッス。」




 イロハは大型バイクで走ってきた疲れも見せずにタフに、すぐに燃料を手際よくガンバへ補給しながら話を始める。




「……気になる話?」




「――――何でも、ほんの数日前に……『竜に乗った冒険者』が立ち寄って……少し休んでウチと同じように食事とかバッテリー充電とかを済ませた後、アストラガーロへと飛び去って行ったみたいっス。黒い長髪で、大槍を持ってて、空中走行盤《エアリフボード》を持った……」




「――えっ……それって!!」




 ――思わぬタイミングで耳にした、行方知れずの仲間の消息。それはもちろん――――




「――空中走行盤を現時点の技術力で長旅の乗り物として使いこなせる人間は、そう多くはありません。ガラテア軍もかつてのリフボード愛好家たちとの共同開発でここ数年でようやく試作品レベルのものがほんの僅かに流通したばかり――――その冒険者がセリーナである可能性は充分にあるでしょう。」




「――マジか。期待していいのか、テイテツ?」




「空中走行盤以外にも、黒髪で長髪、大槍、そして……竜などと言うものは練気《チャクラ》の具現化ぐらいでしかまずあり得ないでしょう。ここまで特徴が一致すれば、かなり期待出来ます。」




「――マジマジ!? アストラガーロに……セリーナがいるかもしんないのね!! こりゃあ、着いたら探しまくらなくっちゃねー!!」




 ――これは、仲間同士に結ばれた奇妙な縁か、それとも絆か。目的地に行方不明のセリーナが向かっているかもしれないという情報――――まだ可能性の域を出ないが、一行は仲間と再会出来るかもしれないという可能性に喜び、沸いた。




「――そうと決まっちゃあ、チンタラしてられねえなあ。例の戦艦とやらの存在もそうだが、セリーナと合流する為にもとっとと向かおうぜ。」




「もっちろーん!! へへへ~……」




 ――一行は希望を胸に、手際よく食料を積み、燃料を補給した。




「――あっ、そうそう。こういう旅仲間全員の資源の為の買い物は全員分から折半してたっスけど、しばらくはエリーさんとガイさんのお小遣いから差っ引いとくっスよー。慈悲ナシ。全く、シャンバリアであんなに儲けたのに2人共経済観念が……」





「――ぐっ……はいよー……ちっ。」



「――あー……ガイ、あたしとグロウを助ける前に使い込んだっつってたっけ……どんまーい、ガイ……」





 ――片や、ギャンブルで熱くなりすぎて本当に経済観念のなっていない女。



 片や、恋人と離れてしまった途端にショックで自棄になり酒や何やらで使い込んでしまった、窮地に立つと甲斐性なしになる男。




 2人共、特にガイには同情の余地もありそうだが、すぐにエリーを助ける為に起てなかった苦い負い目から、イロハからの厳罰を甘んじて受け入れるのだった――――





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 そこからさらに数時間ほど走り続けると、一行は要塞都市・アストラガーロへと至った。




 重金属の重々しい扉の前には、手練れの冒険者とみられる屈強な戦士たちが立ち塞がっていた――――
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