138 / 223
第137話 足跡
しおりを挟む
「――――おっ! 戻って来たぜ!! やっぱあいつのバイクがあって助かったぜ……」
――処を戻して、エリー一行はギルド連盟の総本部……そして秘密裏に巨大な戦艦を隠し持っている可能性があるという要塞都市アストラガーロへ進路を取り1週間が過ぎた。
ガイが憂慮した通り、旅路の途中では荒れて走りづらい道があったり、大きな山を迂回せねばならず、予想よりほんの少し燃料を消耗し、やがて尽きてしまった。
だが、幸いなことにイロハの一人乗りとはいえ重厚なバイク・黒風があったので、遠くに見える人里まで燃料と食料の買い出しを彼女に頼んでいた。イロハは見るが早いか、大量の燃料や食料、水などをインスタント・ポータブル・カプセルに詰め、黒風を駆って戻って来た。バイクのエンジンが嘶く音がどんどんと大きく近付いて来る。
「――おーっし! ただいまーッス!!」
「ありがと~! イロハちゃん!! ってか随分沢山持って来たわね!?」
「……要塞都市アストラガーロへはもう僅かのはずですが……」
テイテツが呟く通り、目的地もう目前と言ってもいいほどである。テイテツのバイザーで目を凝らせば、うっすらと要塞都市さながらの円筒形の遠景が見える。
「――それがっスねえ! あそこの集落に住んでる人たち、親切で妙に欲が無いっつーか…………とにかく燃料も食料も安く売ってくれたんスよねえ~。端末から相場を見て判断したっスけど、あそこでまとめ買いするのが得策と思ったっス!! いやあ~、儲け、儲け!!」
「へえ。良かったね、みんな!!」
グロウもガンバの車体から出てきて、イロハが買い込んできた食料や燃料を運び、手伝う。
「――っと、そうだそうだ……集落で気になる話を耳にしたッス。」
イロハは大型バイクで走ってきた疲れも見せずにタフに、すぐに燃料を手際よくガンバへ補給しながら話を始める。
「……気になる話?」
「――――何でも、ほんの数日前に……『竜に乗った冒険者』が立ち寄って……少し休んでウチと同じように食事とかバッテリー充電とかを済ませた後、アストラガーロへと飛び去って行ったみたいっス。黒い長髪で、大槍を持ってて、空中走行盤《エアリフボード》を持った……」
「――えっ……それって!!」
――思わぬタイミングで耳にした、行方知れずの仲間の消息。それはもちろん――――
「――空中走行盤を現時点の技術力で長旅の乗り物として使いこなせる人間は、そう多くはありません。ガラテア軍もかつてのリフボード愛好家たちとの共同開発でここ数年でようやく試作品レベルのものがほんの僅かに流通したばかり――――その冒険者がセリーナである可能性は充分にあるでしょう。」
「――マジか。期待していいのか、テイテツ?」
「空中走行盤以外にも、黒髪で長髪、大槍、そして……竜などと言うものは練気《チャクラ》の具現化ぐらいでしかまずあり得ないでしょう。ここまで特徴が一致すれば、かなり期待出来ます。」
「――マジマジ!? アストラガーロに……セリーナがいるかもしんないのね!! こりゃあ、着いたら探しまくらなくっちゃねー!!」
――これは、仲間同士に結ばれた奇妙な縁か、それとも絆か。目的地に行方不明のセリーナが向かっているかもしれないという情報――――まだ可能性の域を出ないが、一行は仲間と再会出来るかもしれないという可能性に喜び、沸いた。
「――そうと決まっちゃあ、チンタラしてられねえなあ。例の戦艦とやらの存在もそうだが、セリーナと合流する為にもとっとと向かおうぜ。」
「もっちろーん!! へへへ~……」
――一行は希望を胸に、手際よく食料を積み、燃料を補給した。
「――あっ、そうそう。こういう旅仲間全員の資源の為の買い物は全員分から折半してたっスけど、しばらくはエリーさんとガイさんのお小遣いから差っ引いとくっスよー。慈悲ナシ。全く、シャンバリアであんなに儲けたのに2人共経済観念が……」
「――ぐっ……はいよー……ちっ。」
「――あー……ガイ、あたしとグロウを助ける前に使い込んだっつってたっけ……どんまーい、ガイ……」
――片や、ギャンブルで熱くなりすぎて本当に経済観念のなっていない女。
片や、恋人と離れてしまった途端にショックで自棄になり酒や何やらで使い込んでしまった、窮地に立つと甲斐性なしになる男。
2人共、特にガイには同情の余地もありそうだが、すぐにエリーを助ける為に起てなかった苦い負い目から、イロハからの厳罰を甘んじて受け入れるのだった――――
<<
そこからさらに数時間ほど走り続けると、一行は要塞都市・アストラガーロへと至った。
重金属の重々しい扉の前には、手練れの冒険者とみられる屈強な戦士たちが立ち塞がっていた――――
――処を戻して、エリー一行はギルド連盟の総本部……そして秘密裏に巨大な戦艦を隠し持っている可能性があるという要塞都市アストラガーロへ進路を取り1週間が過ぎた。
ガイが憂慮した通り、旅路の途中では荒れて走りづらい道があったり、大きな山を迂回せねばならず、予想よりほんの少し燃料を消耗し、やがて尽きてしまった。
だが、幸いなことにイロハの一人乗りとはいえ重厚なバイク・黒風があったので、遠くに見える人里まで燃料と食料の買い出しを彼女に頼んでいた。イロハは見るが早いか、大量の燃料や食料、水などをインスタント・ポータブル・カプセルに詰め、黒風を駆って戻って来た。バイクのエンジンが嘶く音がどんどんと大きく近付いて来る。
「――おーっし! ただいまーッス!!」
「ありがと~! イロハちゃん!! ってか随分沢山持って来たわね!?」
「……要塞都市アストラガーロへはもう僅かのはずですが……」
テイテツが呟く通り、目的地もう目前と言ってもいいほどである。テイテツのバイザーで目を凝らせば、うっすらと要塞都市さながらの円筒形の遠景が見える。
「――それがっスねえ! あそこの集落に住んでる人たち、親切で妙に欲が無いっつーか…………とにかく燃料も食料も安く売ってくれたんスよねえ~。端末から相場を見て判断したっスけど、あそこでまとめ買いするのが得策と思ったっス!! いやあ~、儲け、儲け!!」
「へえ。良かったね、みんな!!」
グロウもガンバの車体から出てきて、イロハが買い込んできた食料や燃料を運び、手伝う。
「――っと、そうだそうだ……集落で気になる話を耳にしたッス。」
イロハは大型バイクで走ってきた疲れも見せずにタフに、すぐに燃料を手際よくガンバへ補給しながら話を始める。
「……気になる話?」
「――――何でも、ほんの数日前に……『竜に乗った冒険者』が立ち寄って……少し休んでウチと同じように食事とかバッテリー充電とかを済ませた後、アストラガーロへと飛び去って行ったみたいっス。黒い長髪で、大槍を持ってて、空中走行盤《エアリフボード》を持った……」
「――えっ……それって!!」
――思わぬタイミングで耳にした、行方知れずの仲間の消息。それはもちろん――――
「――空中走行盤を現時点の技術力で長旅の乗り物として使いこなせる人間は、そう多くはありません。ガラテア軍もかつてのリフボード愛好家たちとの共同開発でここ数年でようやく試作品レベルのものがほんの僅かに流通したばかり――――その冒険者がセリーナである可能性は充分にあるでしょう。」
「――マジか。期待していいのか、テイテツ?」
「空中走行盤以外にも、黒髪で長髪、大槍、そして……竜などと言うものは練気《チャクラ》の具現化ぐらいでしかまずあり得ないでしょう。ここまで特徴が一致すれば、かなり期待出来ます。」
「――マジマジ!? アストラガーロに……セリーナがいるかもしんないのね!! こりゃあ、着いたら探しまくらなくっちゃねー!!」
――これは、仲間同士に結ばれた奇妙な縁か、それとも絆か。目的地に行方不明のセリーナが向かっているかもしれないという情報――――まだ可能性の域を出ないが、一行は仲間と再会出来るかもしれないという可能性に喜び、沸いた。
「――そうと決まっちゃあ、チンタラしてられねえなあ。例の戦艦とやらの存在もそうだが、セリーナと合流する為にもとっとと向かおうぜ。」
「もっちろーん!! へへへ~……」
――一行は希望を胸に、手際よく食料を積み、燃料を補給した。
「――あっ、そうそう。こういう旅仲間全員の資源の為の買い物は全員分から折半してたっスけど、しばらくはエリーさんとガイさんのお小遣いから差っ引いとくっスよー。慈悲ナシ。全く、シャンバリアであんなに儲けたのに2人共経済観念が……」
「――ぐっ……はいよー……ちっ。」
「――あー……ガイ、あたしとグロウを助ける前に使い込んだっつってたっけ……どんまーい、ガイ……」
――片や、ギャンブルで熱くなりすぎて本当に経済観念のなっていない女。
片や、恋人と離れてしまった途端にショックで自棄になり酒や何やらで使い込んでしまった、窮地に立つと甲斐性なしになる男。
2人共、特にガイには同情の余地もありそうだが、すぐにエリーを助ける為に起てなかった苦い負い目から、イロハからの厳罰を甘んじて受け入れるのだった――――
<<
そこからさらに数時間ほど走り続けると、一行は要塞都市・アストラガーロへと至った。
重金属の重々しい扉の前には、手練れの冒険者とみられる屈強な戦士たちが立ち塞がっていた――――
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
プラス的 異世界の過ごし方
seo
ファンタジー
日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。
呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。
乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。
#不定期更新 #物語の進み具合のんびり
#カクヨムさんでも掲載しています
人生負け組のスローライフ
雪那 由多
青春
バアちゃんが体調を悪くした!
俺は長男だからバアちゃんの面倒みなくては!!
ある日オヤジの叫びと共に突如引越しが決まって隣の家まで車で十分以上、ライフラインはあれどメインは湧水、ぼっとん便所に鍵のない家。
じゃあバアちゃんを頼むなと言って一人単身赴任で東京に帰るオヤジと新しいパート見つけたから実家から通うけど高校受験をすててまで来た俺に高校生なら一人でも大丈夫よね?と言って育児拒否をするオフクロ。
ほぼ病院生活となったバアちゃんが他界してから築百年以上の古民家で一人引きこもる俺の日常。
――――――――――――――――――――――
第12回ドリーム小説大賞 読者賞を頂きました!
皆様の応援ありがとうございます!
――――――――――――――――――――――
帝国少尉の冒険奇譚
八神 凪
ファンタジー
生活を豊かにする発明を促すのはいつも戦争だ――
そう口にしたのは誰だったか?
その言葉通り『煉獄の祝祭』と呼ばれた戦争から百年、荒廃した世界は徐々に元の姿を取り戻していた。魔法は科学と融合し、”魔科学”という新たな分野を生み出し、鉄の船舶や飛行船、冷蔵庫やコンロといった生活に便利なものが次々と開発されていく。しかし、歴史は繰り返すのか、武器も同じくして発展していくのである。
そんな『騎士』と呼ばれる兵が廃れつつある世界に存在する”ゲラート帝国”には『軍隊』がある。
いつか再びやってくるであろう戦争に備えている。という、外国に対して直接的な威光を見せる意味合いの他に、もう一つ任務を与えられている。
それは『遺物の回収と遺跡調査』
世界各地にはいつからあるのかわからない遺跡や遺物があり、発見されると軍を向かわせて『遺跡』や『遺物』を『保護』するのだ。
遺跡には理解不能な文字があり、人々の間には大昔に天空に移り住んだ人が作ったという声や、地底人が作ったなどの噂がまことしやかに流れている。
――そして、また一つ、不可解な遺跡が発見され、ゲラート帝国から軍が派遣されるところから物語は始まる。
非武装連帯!ストロベリー・アーマメンツ!!
林檎黙示録
SF
――いつか誰かが罵って言った。連合の防衛白書を丸かじりする非武装保守派の甘い考えを『ストロベリー・アーマメント』と――
星の名とも地域の名とも判然としないスカラボウルと呼ばれる土地では、クラック虫という破裂する虫が辺りをおおって煙を吐き出す虫霧現象により、視界もままならなかった。しかしこのクラック虫と呼ばれる虫がエネルギーとして有効であることがわかると、それを利用した<バグモーティヴ>と名付けられる発動機が開発され、人々の生活全般を支える原動力となっていく。そして主にそれは乗用人型二足歩行メカ<クラックウォーカー>として多く生産されて、この土地のテラフォーミング事業のための開拓推進のシンボルとなっていった。
主人公ウメコはクラックウォーカーを繰って、この土地のエネルギー補給のための虫捕りを労務とする<捕虫労>という身分だ。捕虫労組合に所属する捕虫班<レモンドロップスiii>の班員として、ノルマに明け暮れる毎日だった。
最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅
散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー
2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。
人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。
主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる