128 / 223
第127話 呵呵大笑
しおりを挟む
――――ニルヴァ市国にて強制離散の憂き目に遭い、一時絶望感に囚われてすらいたエリー一行だが、遂に研究所に囚われの身であったエリーとグロウを救出することに成功した。今は可能な限りガラテア軍から離れる為、ガンバに乗り全速力で荒野を駆けている。
「――テイテツ! 本当にこのルートで逃げれば、追手を掻い潜れんのか!?」
運転席から急ハンドル、アクセルを繰り返しながら興奮してガイはテイテツに尋ねる。
「――大丈夫です。事前に陽動によって将官クラスを含め、兵力の大半をあの研究所から遠ざけていたのが効いた。予定よりもかなり速く実行出来た電撃作戦によるフットワークの軽さも功を奏しています。そこのナビに転送したルートで逃げれば充分に撒けます。」
「――――やった…………はは、やったぜ!! 畜生ッ!! 夢じゃあねえんだな…………本当にエリー、おめえと、グロウを俺たちは助け出せたんだよな――――!!」
「――――ホントホント!! また会えたのね…………夢なんかじゃあないわ!! ヤーハハハハハッ!!」
――離れていて、共に絶望していたガイとエリー。仲間の協力もあって大切な恋人と弟分を救い出せたことに沸き立つ心を抑えきれない。喜び、興奮し、ガイは手元をバンバン、とはたき、エリーはガイに抱きつく。運転がさらに荒れてガンバが揺れ、全員あちこちぶつけたが、それでも皆救出作戦の成功を経て笑顔だった。
「――いたたたた……ちょーっと、ちょっと! エリーさんにガイさん!! 喜ぶのは解るっスけど、運転はしっかりしてくださいッス!! にははは! 頭、たん瘤出来たァ!!」
グロウは内心はやはりアルスリアから伝えられた世界の真実に依然として揺れていたのだが…………喜び勇む一行の空気を悪くしまいと気を遣い、せめて安全地帯に留まるまでは心の裡に秘めているのだった。
「――へへへへ…………もう絶対離さねえぜ、エリー。おめえが遠くへ行っちまって…………俺は自分の脆さに打ちのめされたよ……」
「――ガイ~…………そりゃあこっちの台詞だってば…………奴らの研究所の、ゴッツい独房に入れられてさ。食事はもちろん、トイレも碌に行かせてもらえなかったのよ~!? 信じられる~!? あたし、未だに信じらんない!! あはははは!!」
「――ぬへへへへっへっへえ~。この調子だと、安全地帯に着いたら当分2人でイチャコラしてるに違いないっスね~。あれまあれまあ、命からがら逃げてきたのに、当分熱く激しい夜が続きそうで。にっひっひっひっひ。」
「――ばっ……余計な事言うんじゃあねえよ、イロハ!!」
「えへへへへえ~……いいじゃん、いいじゃん!! 無礼講~。会うの、ニルヴァ市国以来なんだもん……どんだけ離れてた? 1ヶ月以上!? 20代のカップルにあるまじき期間よそれえ!! あたしはいつでもMAXスタンバイ状態よん。その気になったらいつでも来てね、ガイ~…………♡」
「うむむむむむぅ…………!」
「あはははははは!!」
「へへへへへへ……」
「にはははははは!!」
――――敵から逃げる最中とは言え、喜びのあまり羽目を外したエリー、ガイ、イロハはそうして一頻りじゃれつき、青空の下を豪笑しながらガンバで走り続けるのだった――――
<<
――やがて、ガラテア軍の追手を完全に撒き、一時安全地帯までエリーたちは至った。砂埃の吹きすさぶ荒野の真ん中だが、木が囲んであるオアシスで休むことになった。
車の中で目いっぱいはしゃいだエリーたち。少しは落ち着いたようだ。
「――あー……おっかし~……痛快ってこういうこと言うのかしらね~…………未だに夢の中にいるみたいよ…………」
「――夢じゃあねエ…………だろ?」
――小さな湖を望みながら、若き恋人同士は改めてハグし合い、お互いの再会を喜び口付けを交わした。
「――えへへ……」
「――ははは……」
――――これまで数多の災難や修羅場を潜りぬけてきた2人だったが、今回ばかりは堪えただろう。10年前の悲劇以来、あらゆる艱難辛苦を経ても2人が離れ離れになったことなど1度も無かったのだ。
こうして時と距離を経て再会したこと。そして離れ離れになってしまったことで、重ね重ねエリーとガイはお互いに離れていては生きられないソウルメイトであると痛感した。
「――――にっひっひっひっひ~。やっぱ若いカップル同士の逢瀬って素敵っスねえ~……しかも荒野の中にこんな湖の絶景ポイントと来たッス。最高のロケーションじゃあないっスかあ……」
――やや意地が悪い態度ながら、再会したエリーとガイを改めて祝福するイロハ。
「――い、イロハ…………その……奴らからなんか情報は掴めたのか……?」
「バッチリっスよお~!! 連中の資料室に忍び込んで、紙の書類はもちろん、軍事機密も含んだデータまで盗み取ってやったっス!! これからひとまずテイテツさんと今後について相談、進めとくっス!!」
イロハは、懐から軍事機密の書類の束と、外部記憶装置などをしこたま取り出して見せた。この様子ならガラテア軍の動向はかなり解りそうである。
「――イロハちゃ~ん……そのぉ……わ、悪いんだけどお……」
「――わーかってるッス!! もうお腹いっぱいになるくらいにね! ってか、エリーさんもう声が悦んでるじゃあないっスか!! ふひひ。はいこれ。一先ず今晩の夕食と寝床は別ってことで! 気の済むまでイチャイチャしてきてっス~!!」
イロハは、2人が再会した時の為にわざわざインスタント・ポータブル・コテージを用意していた。食料と共にガイに渡す。そして、渡すなりイロハは少し離れた木の下のテントの前へ去っていった。気が利くと言えばいいのか、下世話と言えばいいのか……。
「――ふーっ……さて……目いっぱい働いたら腹が減ったっスねえ……こりゃあ、今後の相談の前に飯っスね! よっしゃ! 今夜はお祝いのステーキっス……あれ、グロウくん?」
「――あっ、うん…………お祝い、だよね。ステーキかあ……」
グロウは、折り畳み式椅子に腰掛け、俯いていた。
「――その様子だと、『けっ、自分だって攫われたのにエリーお姉ちゃんとガイだけ何さ!!』…………って訳じゃあないみたいっスね…………何があったんス? やっぱ、連中に何かされたんスか…………?」
さっきまで興奮してばかりのイロハだったが、目の前のグロウの心中を察して、どうも喜んでばかりではいられないようだ、と心配そうに尋ねる。
「……うん…………ステーキ……ステーキ食べたら、話すよ…………。」
――エリーとガイを外しての食事と今後の展望。今はセリーナが不在のままだが、かつてのエンデュラ鉱山都市から逃げてきた時を思い出す情景。ひとまずグロウとイロハ、テイテツは食事の準備を始めた。少なくとも、今は若き恋人の再会を祝し、心ゆくまで睦み合ってもらう魂の休息を与える3人だった――――
「――テイテツ! 本当にこのルートで逃げれば、追手を掻い潜れんのか!?」
運転席から急ハンドル、アクセルを繰り返しながら興奮してガイはテイテツに尋ねる。
「――大丈夫です。事前に陽動によって将官クラスを含め、兵力の大半をあの研究所から遠ざけていたのが効いた。予定よりもかなり速く実行出来た電撃作戦によるフットワークの軽さも功を奏しています。そこのナビに転送したルートで逃げれば充分に撒けます。」
「――――やった…………はは、やったぜ!! 畜生ッ!! 夢じゃあねえんだな…………本当にエリー、おめえと、グロウを俺たちは助け出せたんだよな――――!!」
「――――ホントホント!! また会えたのね…………夢なんかじゃあないわ!! ヤーハハハハハッ!!」
――離れていて、共に絶望していたガイとエリー。仲間の協力もあって大切な恋人と弟分を救い出せたことに沸き立つ心を抑えきれない。喜び、興奮し、ガイは手元をバンバン、とはたき、エリーはガイに抱きつく。運転がさらに荒れてガンバが揺れ、全員あちこちぶつけたが、それでも皆救出作戦の成功を経て笑顔だった。
「――いたたたた……ちょーっと、ちょっと! エリーさんにガイさん!! 喜ぶのは解るっスけど、運転はしっかりしてくださいッス!! にははは! 頭、たん瘤出来たァ!!」
グロウは内心はやはりアルスリアから伝えられた世界の真実に依然として揺れていたのだが…………喜び勇む一行の空気を悪くしまいと気を遣い、せめて安全地帯に留まるまでは心の裡に秘めているのだった。
「――へへへへ…………もう絶対離さねえぜ、エリー。おめえが遠くへ行っちまって…………俺は自分の脆さに打ちのめされたよ……」
「――ガイ~…………そりゃあこっちの台詞だってば…………奴らの研究所の、ゴッツい独房に入れられてさ。食事はもちろん、トイレも碌に行かせてもらえなかったのよ~!? 信じられる~!? あたし、未だに信じらんない!! あはははは!!」
「――ぬへへへへっへっへえ~。この調子だと、安全地帯に着いたら当分2人でイチャコラしてるに違いないっスね~。あれまあれまあ、命からがら逃げてきたのに、当分熱く激しい夜が続きそうで。にっひっひっひっひ。」
「――ばっ……余計な事言うんじゃあねえよ、イロハ!!」
「えへへへへえ~……いいじゃん、いいじゃん!! 無礼講~。会うの、ニルヴァ市国以来なんだもん……どんだけ離れてた? 1ヶ月以上!? 20代のカップルにあるまじき期間よそれえ!! あたしはいつでもMAXスタンバイ状態よん。その気になったらいつでも来てね、ガイ~…………♡」
「うむむむむむぅ…………!」
「あはははははは!!」
「へへへへへへ……」
「にはははははは!!」
――――敵から逃げる最中とは言え、喜びのあまり羽目を外したエリー、ガイ、イロハはそうして一頻りじゃれつき、青空の下を豪笑しながらガンバで走り続けるのだった――――
<<
――やがて、ガラテア軍の追手を完全に撒き、一時安全地帯までエリーたちは至った。砂埃の吹きすさぶ荒野の真ん中だが、木が囲んであるオアシスで休むことになった。
車の中で目いっぱいはしゃいだエリーたち。少しは落ち着いたようだ。
「――あー……おっかし~……痛快ってこういうこと言うのかしらね~…………未だに夢の中にいるみたいよ…………」
「――夢じゃあねエ…………だろ?」
――小さな湖を望みながら、若き恋人同士は改めてハグし合い、お互いの再会を喜び口付けを交わした。
「――えへへ……」
「――ははは……」
――――これまで数多の災難や修羅場を潜りぬけてきた2人だったが、今回ばかりは堪えただろう。10年前の悲劇以来、あらゆる艱難辛苦を経ても2人が離れ離れになったことなど1度も無かったのだ。
こうして時と距離を経て再会したこと。そして離れ離れになってしまったことで、重ね重ねエリーとガイはお互いに離れていては生きられないソウルメイトであると痛感した。
「――――にっひっひっひっひ~。やっぱ若いカップル同士の逢瀬って素敵っスねえ~……しかも荒野の中にこんな湖の絶景ポイントと来たッス。最高のロケーションじゃあないっスかあ……」
――やや意地が悪い態度ながら、再会したエリーとガイを改めて祝福するイロハ。
「――い、イロハ…………その……奴らからなんか情報は掴めたのか……?」
「バッチリっスよお~!! 連中の資料室に忍び込んで、紙の書類はもちろん、軍事機密も含んだデータまで盗み取ってやったっス!! これからひとまずテイテツさんと今後について相談、進めとくっス!!」
イロハは、懐から軍事機密の書類の束と、外部記憶装置などをしこたま取り出して見せた。この様子ならガラテア軍の動向はかなり解りそうである。
「――イロハちゃ~ん……そのぉ……わ、悪いんだけどお……」
「――わーかってるッス!! もうお腹いっぱいになるくらいにね! ってか、エリーさんもう声が悦んでるじゃあないっスか!! ふひひ。はいこれ。一先ず今晩の夕食と寝床は別ってことで! 気の済むまでイチャイチャしてきてっス~!!」
イロハは、2人が再会した時の為にわざわざインスタント・ポータブル・コテージを用意していた。食料と共にガイに渡す。そして、渡すなりイロハは少し離れた木の下のテントの前へ去っていった。気が利くと言えばいいのか、下世話と言えばいいのか……。
「――ふーっ……さて……目いっぱい働いたら腹が減ったっスねえ……こりゃあ、今後の相談の前に飯っスね! よっしゃ! 今夜はお祝いのステーキっス……あれ、グロウくん?」
「――あっ、うん…………お祝い、だよね。ステーキかあ……」
グロウは、折り畳み式椅子に腰掛け、俯いていた。
「――その様子だと、『けっ、自分だって攫われたのにエリーお姉ちゃんとガイだけ何さ!!』…………って訳じゃあないみたいっスね…………何があったんス? やっぱ、連中に何かされたんスか…………?」
さっきまで興奮してばかりのイロハだったが、目の前のグロウの心中を察して、どうも喜んでばかりではいられないようだ、と心配そうに尋ねる。
「……うん…………ステーキ……ステーキ食べたら、話すよ…………。」
――エリーとガイを外しての食事と今後の展望。今はセリーナが不在のままだが、かつてのエンデュラ鉱山都市から逃げてきた時を思い出す情景。ひとまずグロウとイロハ、テイテツは食事の準備を始めた。少なくとも、今は若き恋人の再会を祝し、心ゆくまで睦み合ってもらう魂の休息を与える3人だった――――
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
どのみちヤられるならイケメン騎士がいい!
あーす。
BL
異世界に美少年になってトリップした元腐女子。
次々ヤられる色々なゲームステージの中、イケメン騎士が必ず登場。
どのみちヤられるんら、やっぱイケメン騎士だよね。
って事で、頑張ってイケメン騎士をオトすべく、奮闘する物語。
キルミー、ダーリン?
naka_nil
ライト文芸
そして、少年と『少女』は出会いましたとさ。めでたしめでたし。これはそんなお話です。
機械都市、ミッドガルで何百年も戦争のためだけに生きてきた人類の落ちこぼれ、戦争嫌いの優の人生は、機械の少女、ヒメノとの出会いで一変する。
「ボクを殺して、ダーリン?」
かつて世界を滅ぼしたと言われる彼女は彼にそう告げた。
彼女は世界を憎む悪魔なのか、それとも人類を救う救世主なのか、あるいは――?
多重世界シンドローム
一花カナウ
青春
この世界には、強く願うことで本来なら起こるべき事象を書き換えてしまう力
《多重世界シンドローム》を発症する人間が存在する。
位相管理委員会(モイライ)はそんな人々を管理するため、
運命に干渉できる能力者によって構成された機関だ。
真面目で鈍感なところがある緒方(オガタ)あやめは委員会の調査員。
ある日あやめは上司である霧島縁(キリシマユカリ)に命じられ、
発症の疑いがある貴家礼於(サスガレオ)の身辺調査を始めるのだが……。
え、任務が失敗すると世界が崩壊って、本気ですか?
--------
『ワタシのセカイはシュジンのイイナリっ! 』https://www.pixiv.net/novel/series/341036 を改稿して掲載中です。
悪徳権力者を始末しろ!
加藤 佑一
SF
何をしても自分は裁かれる事は無いと、悠然としている連中に
特殊能力を身につけた池上梨名、
ハッカーの吉田華鈴、
格闘技が鬼レベルの川崎天衣(あい)、
と共に戯れ合いながら復讐を完結させるお話です。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
禁煙所
夜美神威
SF
「禁煙所」
ここはとある独裁国家
愛煙家の大統領の政策で
公共施設での喫煙
電車・バス内での喫煙
歩きたばこまで認められている
嫌煙家達はいたる所にある
「禁煙所」でクリーンな空気を吸う
夜美神威 ナンバリングタイトル第6弾
便利屋ブルーヘブン、営業中。~そのお困りごと、大天狗と鬼が解決します~
卯崎瑛珠
キャラ文芸
とあるノスタルジックなアーケード商店街にある、小さな便利屋『ブルーヘブン』。
店主の天さんは、実は天狗だ。
もちろん人間のふりをして生きているが、なぜか問題を抱えた人々が、吸い寄せられるようにやってくる。
「どんな依頼も、断らないのがモットーだからな」と言いつつ、今日も誰かを救うのだ。
神通力に、羽団扇。高下駄に……時々伸びる鼻。
仲間にも、実は大妖怪がいたりして。
コワモテ大天狗、妖怪チート!?で、世直しにいざ参らん!
(あ、いえ、ただの便利屋です。)
-----------------------------
ほっこり・じんわり大賞奨励賞作品です。
カクヨムとノベプラにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる