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第125話 再会
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「――――てえいッ!! イイヤッ! そりゃあッ!!」
ガイが二刀と練気を以て、邪魔となる敵を斬り伏せていく。
「――――おりゃあッ!! はあっ!!でええいッ!!」
エリーが拳と火炎を以て、障害となる兵を殴り飛ばして行く。
そして、渡り廊下を挟んで区画と区画の間を通る刹那、遂に――――
「――――ガイ…………っ!!」
「――――エリー…………ッ!!」
――――恋人2人。愛する2人は再会した。
もはや、名前を呼び合う以外に、言葉など要らなかった――――
「――――ガイっ……ああ、ホントにガイなのね…………夢みたい…………ホントに来てくれたのね…………会いたかった!!」
「――――エリーっ…………情けねエ俺を許してくれ…………おめえが攫われたってのに……絶望してすぐに助けに行かなかった不甲斐ない俺をぶん殴ってくれたって構わねえ…………!!」
――――熱く、強く…………2人は抱擁を何度も交わし、口付けをした。互いに戦いによる離別の苦しみと悲しみ、寂しさを経たがゆえの温かな涙を、エリーもガイも堪え切れなかった――――
やや監視カメラの影になっているが、再会を果たした恋人2人の姿は中央管制室の画面の一角に映し出されていた。
「――――お姉ちゃん…………ガイ…………やっと会えたんだね。良かった――――」
「――――永く分かたれて生きていた2人の、切なる再会と言うわけか…………私とダーリンもそうありたかったものだ――――否。そうしてみせるさ…………」
――グロウがモニターを見て2人の再会を素直に喜ぶ中、隣にいるアルスリアは複雑な気持ちだった。敵戦力が合流を果たしたという防衛戦としての落ち度の苦さだけではない。
眼前の映像に見える若き男女は、確かな信頼と互いに常に想い合う感情…………そして人生の喜びも悲しみも共に分かち合う、生きることへの覚悟と挑戦の念が強く在る。
だが、自分たち…………世界システムの中で出会い、創世樹の中で融合することまで決定づけられていると言っていいアルスリアとグロウには、それがまだない。アルスリアの一方通行の愛だ。
いずれ、『種子の女』と『養分の男』が惹かれ合う本能的な情動で2人は一緒になるのかもしれないが、そこにグロウ側の自由意志が在るかと言えば……今は疑問符ばかりが付く。
目の前で確かな愛情の、心の輝きを持って愛し合うエリーとガイの姿に…………アルスリアは嫉妬だけではない、自分たちはああはなれないかもしれないという悲しみ、寂しさ、そして憧れがあった。
「――――ガラテア本国へ増援の要請は済んだかね。向こうもそれを知っているなら、後はダーリン…………グロウ=アナジストンを奪いに来るだろう。兵をここ中央管制室に集めよ。籠城戦も覚悟するんだ。増援さえ間に合えば、我らの勝利だ――」
――アルスリアは下士官たちの手前、平静を装って冷静に指示を出す。
だが、彼女も実質的な戦力は今、自分単身しかいないと理解していた。少しずつ戦いに備える為、自身の練気を練り始めた――――
――一頻り、エリーとガイは抱擁を交わしたのち、涙を拭いて声を掛け合った。
「……今はここで抱き合っている場合じゃあねえ。イロハとテイテツが奴らからこれからの情報を盗みに行ってる。俺たちはグロウを助け出すぜ!!」
「――うん!! 解ってるわ!! …………へへ~……これで貸しイチはチャラね。最高よ、ガイ。」
「――おっ、おめえ……まだそれ根に持ってたのかよ――――むっ!!」
――冗長な会話をしている余裕はない。ガイとエリーを見つけた重装備兵たちが一斉に銃を吼えさせる――――すぐさまガイは弾丸を二刀で弾き、エリーは練気を集中させた拳で弾き返す。
「「でやあああああーッッ!!」」
2人は同時に兵の懐に飛び込み、ある者は斬り伏せ、ある者は殴り飛ばした。
「――ええっ!? 真っ二つに斬ったのに、くっついて元に戻ったわよ……ガイ、これどういう手品!?」
「――説明は後だぜ!! テイテツからの情報によると――――」
ガイはポケットから携帯端末を取り出し、画面にテイテツから送られて来る見取り図などの情報を見遣る。
「――――グロウはこの先の区画…………中央管制室にいるみたいだぜ。恐らく……ニルヴァ市国でやられたあの化け物女もいやがるだろう。」
「――あいつね…………ここに囚われている間も何度か見かけたけど、今は勝てる気がしない。でも、グロウだけでも何とか取り返せるかも!!」
「だよな。よし、行くぜ!!」
――2人は頷き、中央管制室へと急いだ――――
<<
――――それからの2人の猛攻は、依然獅子奮迅の働き。目立ったダメージも負わず、中央管制室への道を塞ぐ敵兵を次々となぎ倒していく。
モニター越しに戦況を見据えるアルスリアも、兵の大半がやられ……確実にこの場所へと迫ってきていることを肌身に感じていた。士気が下がり、この場にいる兵たちも再び狼狽え始めている。
「――――増援は……どうやら間に合いそうもない、か…………仕方ない。私が……アルスリア=ヴァン=ゴエティア、出撃する。皆は、ここにいるグロウ=アナジストンが逃げ出さないよう見張っていたまえ――――」
――手袋をはめ直し、遂にアルスリア自ら出撃することとなった。中央管制室にてアルスリアの実力を知る者は、ある者は意気軒高、またある者は戦慄していた――――
ガイが二刀と練気を以て、邪魔となる敵を斬り伏せていく。
「――――おりゃあッ!! はあっ!!でええいッ!!」
エリーが拳と火炎を以て、障害となる兵を殴り飛ばして行く。
そして、渡り廊下を挟んで区画と区画の間を通る刹那、遂に――――
「――――ガイ…………っ!!」
「――――エリー…………ッ!!」
――――恋人2人。愛する2人は再会した。
もはや、名前を呼び合う以外に、言葉など要らなかった――――
「――――ガイっ……ああ、ホントにガイなのね…………夢みたい…………ホントに来てくれたのね…………会いたかった!!」
「――――エリーっ…………情けねエ俺を許してくれ…………おめえが攫われたってのに……絶望してすぐに助けに行かなかった不甲斐ない俺をぶん殴ってくれたって構わねえ…………!!」
――――熱く、強く…………2人は抱擁を何度も交わし、口付けをした。互いに戦いによる離別の苦しみと悲しみ、寂しさを経たがゆえの温かな涙を、エリーもガイも堪え切れなかった――――
やや監視カメラの影になっているが、再会を果たした恋人2人の姿は中央管制室の画面の一角に映し出されていた。
「――――お姉ちゃん…………ガイ…………やっと会えたんだね。良かった――――」
「――――永く分かたれて生きていた2人の、切なる再会と言うわけか…………私とダーリンもそうありたかったものだ――――否。そうしてみせるさ…………」
――グロウがモニターを見て2人の再会を素直に喜ぶ中、隣にいるアルスリアは複雑な気持ちだった。敵戦力が合流を果たしたという防衛戦としての落ち度の苦さだけではない。
眼前の映像に見える若き男女は、確かな信頼と互いに常に想い合う感情…………そして人生の喜びも悲しみも共に分かち合う、生きることへの覚悟と挑戦の念が強く在る。
だが、自分たち…………世界システムの中で出会い、創世樹の中で融合することまで決定づけられていると言っていいアルスリアとグロウには、それがまだない。アルスリアの一方通行の愛だ。
いずれ、『種子の女』と『養分の男』が惹かれ合う本能的な情動で2人は一緒になるのかもしれないが、そこにグロウ側の自由意志が在るかと言えば……今は疑問符ばかりが付く。
目の前で確かな愛情の、心の輝きを持って愛し合うエリーとガイの姿に…………アルスリアは嫉妬だけではない、自分たちはああはなれないかもしれないという悲しみ、寂しさ、そして憧れがあった。
「――――ガラテア本国へ増援の要請は済んだかね。向こうもそれを知っているなら、後はダーリン…………グロウ=アナジストンを奪いに来るだろう。兵をここ中央管制室に集めよ。籠城戦も覚悟するんだ。増援さえ間に合えば、我らの勝利だ――」
――アルスリアは下士官たちの手前、平静を装って冷静に指示を出す。
だが、彼女も実質的な戦力は今、自分単身しかいないと理解していた。少しずつ戦いに備える為、自身の練気を練り始めた――――
――一頻り、エリーとガイは抱擁を交わしたのち、涙を拭いて声を掛け合った。
「……今はここで抱き合っている場合じゃあねえ。イロハとテイテツが奴らからこれからの情報を盗みに行ってる。俺たちはグロウを助け出すぜ!!」
「――うん!! 解ってるわ!! …………へへ~……これで貸しイチはチャラね。最高よ、ガイ。」
「――おっ、おめえ……まだそれ根に持ってたのかよ――――むっ!!」
――冗長な会話をしている余裕はない。ガイとエリーを見つけた重装備兵たちが一斉に銃を吼えさせる――――すぐさまガイは弾丸を二刀で弾き、エリーは練気を集中させた拳で弾き返す。
「「でやあああああーッッ!!」」
2人は同時に兵の懐に飛び込み、ある者は斬り伏せ、ある者は殴り飛ばした。
「――ええっ!? 真っ二つに斬ったのに、くっついて元に戻ったわよ……ガイ、これどういう手品!?」
「――説明は後だぜ!! テイテツからの情報によると――――」
ガイはポケットから携帯端末を取り出し、画面にテイテツから送られて来る見取り図などの情報を見遣る。
「――――グロウはこの先の区画…………中央管制室にいるみたいだぜ。恐らく……ニルヴァ市国でやられたあの化け物女もいやがるだろう。」
「――あいつね…………ここに囚われている間も何度か見かけたけど、今は勝てる気がしない。でも、グロウだけでも何とか取り返せるかも!!」
「だよな。よし、行くぜ!!」
――2人は頷き、中央管制室へと急いだ――――
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――――それからの2人の猛攻は、依然獅子奮迅の働き。目立ったダメージも負わず、中央管制室への道を塞ぐ敵兵を次々となぎ倒していく。
モニター越しに戦況を見据えるアルスリアも、兵の大半がやられ……確実にこの場所へと迫ってきていることを肌身に感じていた。士気が下がり、この場にいる兵たちも再び狼狽え始めている。
「――――増援は……どうやら間に合いそうもない、か…………仕方ない。私が……アルスリア=ヴァン=ゴエティア、出撃する。皆は、ここにいるグロウ=アナジストンが逃げ出さないよう見張っていたまえ――――」
――手袋をはめ直し、遂にアルスリア自ら出撃することとなった。中央管制室にてアルスリアの実力を知る者は、ある者は意気軒高、またある者は戦慄していた――――
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