124 / 223
第123話 舞い降りた剣
しおりを挟む
「――――よっしゃぁぁぁ!! 発破成功っス!! この研究所の要となる電源や動力源は全部オジャンにしてやったっスよー!!」
「そして、中にいる人命への殺傷は確認出来ません。怪我をしても軽傷程度で済んでいるはずです。」
「……おめえらが仲間にいてくれて、本当に助かったぜ…………」
「なーに言ってるっスか!! ガイさん、リーダーであるあんたが先陣切って行かないことにはこの救出作戦は何も上手くいかないっス!! 礼ならエリーさんとグロウくんを助け出してからにして欲しいっス!! にひひ。」
「――だよな。よっし! 行くぞイロハ、テイテツ!! エリーとグロウ、死んでも奪い返すぜ!!」
――――研究所内で、主に電源や動力部を狙って、周期的に爆発が起きている。そしてその混乱の中――――遂にガイたち3人によるエリーたちの奪還作戦が始まった。
「――な、何だ!? 敵か!? 反乱分子共が大挙して攻めて来たのか!?」
「――げ、現在、被害を確認中です!! 非戦闘員は速やかに地下シェルターへ避難開始! 戦闘員は速やかに警備体制レベル5で散開開始!!」
――エリーを移送中の兵士たちも研究員たちも、突然の強襲に狼狽えている。
激しい爆発音と振動が発生しているが、超人的な聴力を持つエリーの耳には、微かに聴こえていた――――再会するのを諦めかけていた、愛しき恋人の勇猛果敢な雄叫びと、仲間たちの掛け合う声が――――
「――ああ…………ウソ、まさか本当なの――――ガイ! 来てくれたのね――――!!」
――愛しき恋人の声。即ち、自分を助けに来た証。
絶望の淵に沈み、虚ろに満ちていたエリーの双眸は、忽ち希望と闘志の光を灯し、燃え始めた。
「――はあああああッッッ!!」
――ガイが、来てくれた。
その事実だけで、エリーにとっては己の力を漲らせる百万の理由に勝っていた。
急速に練気を高め、高熱を纏ったオーラを立ち昇らせる――
「う、うわっ!?」
「あちぃッ!!」
――エリーの突然の出力に伴う熱と圧で、捕縛していた兵士たちも一瞬怯んだ。
すぐさまエリーは、拘束具を熱と力で引きちぎり、一瞬にして周囲を円の動きで1回転――――兵士と研究員たちに当身を見舞い、昏倒させた。
「――――今行くわ、ガイ――――!!」
エリーは、ガイたちの気配がする方向へ、一気に駆け出した――――
<<
「――――むっ。これは…………」
――突然の強襲による爆発音と衝撃に、さすがのアルスリアも表情を強張らせ、グロウを抱いて周囲を警戒した。
「――まさか……もうここへ来たのか。世界中バラバラに飛ばしたはずだったのに…………忌々しい人間風情め。ダーリンは渡さん。」
アルスリアはしばらくグロウの手を取り辺りを睥睨していたが、すぐに下士官が駆け寄ってきた。
「――――も、申し上げます!! 先のニルヴァ市国侵攻作戦での残党と思しき輩が、当研究所を襲撃しております! れ、連中は僅か3名! ですが予想外の強さに兵たちも苦戦を強いられております! アルスリア中将補佐閣下、大至急防衛戦の指示を仰ぎたく存じますッ!!」
「――ちっ。せっかくダーリンとのデートの最中だと言うのに、無粋な…………他に指揮官はいるんじゃあないのかね? 私は私で任務があるのだが?」
「――そ、それが…………この研究所内の指揮系統を把握している階級の将官殿はほとんど陽動によって遠ざけられた模様!! 指揮可能な将官は…………げ、現在、閣下しかいないと存じますッ!!」
――俄かに殺気立つアルスリア。報告に来た兵士も跪いて平伏する姿勢を取りながらも、敵襲以上に、恐ろしい上官の圧に震えが止まらない。
「…………奴ら、警備も指揮官も手薄な頃合いを狙って最高のタイミングで奪還に来たというわけか…………その狡猾で知恵の利いた作戦、見事と言わざるを得ない、か…………」
――グロウの結婚相手であり、同時に大勢の部下を抱えて任務にあたる軍属でもあるアルスリア。本当はもっとグロウと共に過ごしたい欲求がありながら、上官として指揮を執らねばならない責務に内心唾棄した。一見アドバンテージであるように見えるガラテア軍高官と言う勲章が却って仇となったのだ。
「――仕方ない。中央管制室に向かう。臨時にこのアルスリア=ヴァン=ゴエティアが防衛戦の指揮を執る――――さあ、君も来なさい。」
「わっ…………」
当然アルスリアは、グロウの手を強く握り、指揮を執る場所まで連れて行くことにした。
(――ガイ……みんな、来てくれたんだね! でも…………このままガイたちのもとへ戻って、いいのかな…………)
――グロウは、アルスリアが語るこの星の真実を知ってしまい、とうとう今まで通りエリーたちの仲間でいるべきか、それとも『種子の女』アルスリアと共に己の『養分の男』としての使命を全うすべきか、心は揺れ始めた。
「――――渡すものか。絶対に渡すものか…………大事な大事な婚約者を…………だが、立場を考えれば、それは向こうも同じようなものか……こんなことなら、リオンハルトも連れて来るんだったよ――――」
――どんな荒事にもアルカイックスマイルで通してきたアルスリアも、結婚相手が掻っ攫われるかもしれない危機に、静かではあるが表情を引き締めた。その内心を、自分から大切なモノを奪おうとする存在への憎悪と、大切なモノへの愛情で渦巻かせながら――――
「そして、中にいる人命への殺傷は確認出来ません。怪我をしても軽傷程度で済んでいるはずです。」
「……おめえらが仲間にいてくれて、本当に助かったぜ…………」
「なーに言ってるっスか!! ガイさん、リーダーであるあんたが先陣切って行かないことにはこの救出作戦は何も上手くいかないっス!! 礼ならエリーさんとグロウくんを助け出してからにして欲しいっス!! にひひ。」
「――だよな。よっし! 行くぞイロハ、テイテツ!! エリーとグロウ、死んでも奪い返すぜ!!」
――――研究所内で、主に電源や動力部を狙って、周期的に爆発が起きている。そしてその混乱の中――――遂にガイたち3人によるエリーたちの奪還作戦が始まった。
「――な、何だ!? 敵か!? 反乱分子共が大挙して攻めて来たのか!?」
「――げ、現在、被害を確認中です!! 非戦闘員は速やかに地下シェルターへ避難開始! 戦闘員は速やかに警備体制レベル5で散開開始!!」
――エリーを移送中の兵士たちも研究員たちも、突然の強襲に狼狽えている。
激しい爆発音と振動が発生しているが、超人的な聴力を持つエリーの耳には、微かに聴こえていた――――再会するのを諦めかけていた、愛しき恋人の勇猛果敢な雄叫びと、仲間たちの掛け合う声が――――
「――ああ…………ウソ、まさか本当なの――――ガイ! 来てくれたのね――――!!」
――愛しき恋人の声。即ち、自分を助けに来た証。
絶望の淵に沈み、虚ろに満ちていたエリーの双眸は、忽ち希望と闘志の光を灯し、燃え始めた。
「――はあああああッッッ!!」
――ガイが、来てくれた。
その事実だけで、エリーにとっては己の力を漲らせる百万の理由に勝っていた。
急速に練気を高め、高熱を纏ったオーラを立ち昇らせる――
「う、うわっ!?」
「あちぃッ!!」
――エリーの突然の出力に伴う熱と圧で、捕縛していた兵士たちも一瞬怯んだ。
すぐさまエリーは、拘束具を熱と力で引きちぎり、一瞬にして周囲を円の動きで1回転――――兵士と研究員たちに当身を見舞い、昏倒させた。
「――――今行くわ、ガイ――――!!」
エリーは、ガイたちの気配がする方向へ、一気に駆け出した――――
<<
「――――むっ。これは…………」
――突然の強襲による爆発音と衝撃に、さすがのアルスリアも表情を強張らせ、グロウを抱いて周囲を警戒した。
「――まさか……もうここへ来たのか。世界中バラバラに飛ばしたはずだったのに…………忌々しい人間風情め。ダーリンは渡さん。」
アルスリアはしばらくグロウの手を取り辺りを睥睨していたが、すぐに下士官が駆け寄ってきた。
「――――も、申し上げます!! 先のニルヴァ市国侵攻作戦での残党と思しき輩が、当研究所を襲撃しております! れ、連中は僅か3名! ですが予想外の強さに兵たちも苦戦を強いられております! アルスリア中将補佐閣下、大至急防衛戦の指示を仰ぎたく存じますッ!!」
「――ちっ。せっかくダーリンとのデートの最中だと言うのに、無粋な…………他に指揮官はいるんじゃあないのかね? 私は私で任務があるのだが?」
「――そ、それが…………この研究所内の指揮系統を把握している階級の将官殿はほとんど陽動によって遠ざけられた模様!! 指揮可能な将官は…………げ、現在、閣下しかいないと存じますッ!!」
――俄かに殺気立つアルスリア。報告に来た兵士も跪いて平伏する姿勢を取りながらも、敵襲以上に、恐ろしい上官の圧に震えが止まらない。
「…………奴ら、警備も指揮官も手薄な頃合いを狙って最高のタイミングで奪還に来たというわけか…………その狡猾で知恵の利いた作戦、見事と言わざるを得ない、か…………」
――グロウの結婚相手であり、同時に大勢の部下を抱えて任務にあたる軍属でもあるアルスリア。本当はもっとグロウと共に過ごしたい欲求がありながら、上官として指揮を執らねばならない責務に内心唾棄した。一見アドバンテージであるように見えるガラテア軍高官と言う勲章が却って仇となったのだ。
「――仕方ない。中央管制室に向かう。臨時にこのアルスリア=ヴァン=ゴエティアが防衛戦の指揮を執る――――さあ、君も来なさい。」
「わっ…………」
当然アルスリアは、グロウの手を強く握り、指揮を執る場所まで連れて行くことにした。
(――ガイ……みんな、来てくれたんだね! でも…………このままガイたちのもとへ戻って、いいのかな…………)
――グロウは、アルスリアが語るこの星の真実を知ってしまい、とうとう今まで通りエリーたちの仲間でいるべきか、それとも『種子の女』アルスリアと共に己の『養分の男』としての使命を全うすべきか、心は揺れ始めた。
「――――渡すものか。絶対に渡すものか…………大事な大事な婚約者を…………だが、立場を考えれば、それは向こうも同じようなものか……こんなことなら、リオンハルトも連れて来るんだったよ――――」
――どんな荒事にもアルカイックスマイルで通してきたアルスリアも、結婚相手が掻っ攫われるかもしれない危機に、静かではあるが表情を引き締めた。その内心を、自分から大切なモノを奪おうとする存在への憎悪と、大切なモノへの愛情で渦巻かせながら――――
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
アシュターからの伝言
あーす。
SF
プレアデス星人アシュターに依頼を受けたアースルーリンドの面々が、地球に降り立つお話。
なんだけど、まだ出せない情報が含まれてるためと、パーラーにこっそり、メモ投稿してたのにパーラーが使えないので、それまで現実レベルで、聞いたり見たりした事のメモを書いています。
テレパシー、ビジョン等、現実に即した事柄を書き留め、どこまで合ってるかの検証となります。
その他、王様の耳はロバの耳。
そこらで言えない事をこっそりと。
あくまで小説枠なのに、検閲が入るとか理解不能。
なので届くべき人に届けばそれでいいお話。
にして置きます。
分かる人には分かる。
響く人には響く。
何かの気づきになれば幸いです。
銀河太平記
武者走走九郎or大橋むつお
SF
いまから二百年の未来。
前世紀から移住の始まった火星は地球のしがらみから離れようとしていた。火星の中緯度カルディア平原の大半を領域とする扶桑公国は国民の大半が日本からの移民で構成されていて、臣籍降下した扶桑宮が征夷大将軍として幕府を開いていた。
その扶桑幕府も代を重ねて五代目になろうとしている。
折しも地球では二千年紀に入って三度目のグローバリズムが破綻して、東アジア発の動乱期に入ろうとしている。
火星と地球を舞台として、銀河規模の争乱の時代が始まろうとしている。
虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました
オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、
【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。
互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、
戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。
そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。
暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、
不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。
凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
100000累計pt突破!アルファポリスの収益 確定スコア 見込みスコアについて
ちゃぼ茶
エッセイ・ノンフィクション
皆様が気になる(ちゃぼ茶も)収益や確定スコア、見込みスコアについてわかる範囲、推測や経験談も含めて記してみました。参考になれればと思います。
誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?
伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します
小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。
そして、田舎の町から王都へ向かいます
登場人物の名前と色
グラン デディーリエ(義母の名字)
8才
若草色の髪 ブルーグリーンの目
アルフ 実父
アダマス 母
エンジュ ミライト
13才 グランの義理姉
桃色の髪 ブルーの瞳
ユーディア ミライト
17才 グランの義理姉
濃い赤紫の髪 ブルーの瞳
コンティ ミライト
7才 グランの義理の弟
フォンシル コンドーラル ベージュ
11才皇太子
ピーター サイマルト
近衛兵 皇太子付き
アダマゼイン 魔王
目が透明
ガーゼル 魔王の側近 女の子
ジャスパー
フロー 食堂宿の人
宝石の名前関係をもじってます。
色とかもあわせて。
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
ラストフライト スペースシャトル エンデバー号のラスト・ミッショ
のせ しげる
SF
2017年9月、11年ぶりに大規模は太陽フレアが発生した。幸い地球には大きな被害はなかったが、バーストは7日間に及び、第24期太陽活動期中、最大級とされた。
同じころ、NASAの、若い宇宙物理学者ロジャーは、自身が開発したシミレーションプログラムの完成を急いでいた。2018年、新型のスパコン「エイトケン」が導入されテストプログラムが実行された。その結果は、2021年の夏に、黒点が合体成長し超巨大黒点となり、人類史上最大級の「フレア・バースト」が発生するとの結果を出した。このバーストは、地球に正対し発生し、地球の生物を滅ぼし地球の大気と水を宇宙空間へ持ち去ってしまう。地球の存続に係る重大な問題だった。
アメリカ政府は、人工衛星の打ち上げコストを削減する為、老朽化した衛星の回収にスペースシャトルを利用するとして、2018年の年の暮れに、アメリカ各地で展示していた「スペースシャトル」4機を搬出した。ロシアは、旧ソ連時代に開発し中断していた、ソ連版シャトル「ブラン」を再整備し、ISSへの大型資材の運搬に使用すると発表した。中国は、自国の宇宙ステイションの建設の為シャトル「天空」を打ち上げると発表した。
2020年の春から夏にかけ、シャトル七機が次々と打ち上げられた。実は、無人シャトル六機には核弾頭が搭載され、太陽黒点にシャトルごと打ち込み、黒点の成長を阻止しようとするミッションだった。そして、このミッションを成功させる為には、誰かが太陽まで行かなければならなかった。選ばれたのは、身寄りの無い、60歳代の元アメリカ空軍パイロット。もう一人が20歳代の日本人自衛官だった。この、二人が搭乗した「エンデバー号」が2020年7月4日に打ち上げられたのだ。
本作は、太陽活動を題材とし創作しております。しかしながら、このコ○ナ禍で「コ○ナ」はNGワードとされており、入力できませんので文中では「プラズマ」と表現しておりますので御容赦ください。
この物語はフィクションです。実際に起きた事象や、現代の技術、現存する設備を参考に創作した物語です。登場する人物・企業・団体・名称等は、実在のものとは関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる