106 / 223
第105話 連携に乗せた貸しイチ
しおりを挟む
――逸材である弟子たちを守る為。そして何より、自分たちの住まう国を守る為。ヴィクターとカシムもまた練気を駆使して加勢した。
グロウの練気を通した激しい石つぶてや枯れ葉乱舞による投擲物に加え、カシムが防護壁でエリーたちを守り、ヴィクターは敵の気弾の嵐を練気のブラックホールで飲みこみ、吸い取った。
果たして、深手を負わせた上に磁力を操る攻撃をするバルザックを攻略し、遂にはメランとライネスの撃ち放つ気弾をも実質的に無効化した。
「――グロウ。如何に君の使う練気の量が膨大とはいえあれほど激しく練気を込めた攻撃をし続ければ疲れるだろう。私の防護壁の後ろで少し休んでなさい。」
「――う、うん……」
遠距離からの投擲戦でライネスたち4人を圧倒したグロウ。やはり底知れぬ力を秘めてはいるが、疲労で激しく汗をかいている。素直にカシムの後ろへと身を退けた。
「――ちいィッ!! 隊長の磁力もメランの気弾も効かないってのォ!? ……しゃあない。なら頼みはあたしとライネスの幻覚攻撃だろ! 行くよ、ライネスッ!!」
「――えっ……お、おうッ!!」
――敵の気弾の応酬は止めたが、同時にグロウも少し下がった。ならば格闘戦に幻覚を加味した攻撃のみ。
今のところ、やはりこの2人の繰り出す幻覚攻撃が最も厄介だろうか。攻撃のタイミングが読めない。下手をすると幻覚を見たと同時に死に直結する。
「――――さっき喰らってみて解ったよ! あんたら、一度に大人数に幻覚は仕掛けられないわね!! なら、数が多いこっちの方が断然有利!! もし喰らっても『アレ』があるっしょ!? このまま叩きのめすよ!!」
「よっしゃ!!」
「応ッ!!」
「にひひ! 一気に勝鬨、上げてやるっスよ!!」
――エリーの鼓舞する掛け声に、ガイ、セリーナ、イロハは快活に返事。相手が初見殺しと言ってもいい幻覚攻撃の使い手でも臆さず突撃する。
突貫してくるライネスと改子は2人。こちらは前衛だけでも4人ほど。後衛にグロウとテイテツが控え、さらにカシムとヴィクターが加勢して計8人。充分に勝機はうかがえる。
「――むっ!! こりゃあ――――」
――早速、改子とライネスはガイに仕掛けてきたようだ。突然ガイの視界からライネスが煙のように消え、改子は何十人にも分身して動きが掴めない。
予測不可能な攻撃に、ガイも思わず身を縮めて一瞬止まってしまう。
「――ホラ、こっちだ喰らえエエエイッ!!」
――気が付けば、ガイは背後を改子に取られていた。鋭いナイフの一閃がガイの首に迫る――――
「――――かああああああつッッ!!」
「――なっ…………あっ……!?」
瞬間。改子の幻覚は解けた。どうやら改子本人はガイから見て左斜め前方向の、やや太刀を振りにくい位置から仕掛けようとしていたようだが――――幻覚のかかっていないエリーが即座に、今度こそ『練気の当身』を改子の額に見舞った。
たちまち、改子は全身に纏っていた練気が強制的に立ち消え、エネルギーの流れを阻害されて立ち眩みを起こす。
「――――隙ありッ!!」
――さらに練気の翼竜に跨っていたセリーナが瞬時に間合いを詰め、飛び降りながら大槍の一撃を、ノーガードの状態の改子に喰らわせた――――!!
「――がっ……げぼぉっ――――!!」
――心臓を狙ったセリーナだったが、翼竜のコントロールがまだ少し不安定だったのか、少し体勢が崩れたまま突きを繰り出す形になった。
それでも新装した槍にセリーナの技と力、そして練気の強化で得たひと突きは凄まじい威力だ。急所の心臓は外れたが、脇腹を深々と抉り、穿ち抜いた。血を吐いて蹲る改子――――
「――てりゃあッ!!」
幻覚が解け、位置と情況を把握したガイはすぐさま、改子を蹴飛ばして得物の大型ナイフ2本を遠くへ離した。
「――かっ、改子ォ!! すぐに練気を練って傷を治し――――ぐわっ!?」
「――お兄さんも隙だらけっスよ――――!!」
――ライネスもまた、練気の幻覚で身を隠して死角から狙うつもりでいたが、改子が倒れて動揺したのか練気の流れを乱し、そこをまたすぐさま、今度はイロハが練気の当身をライネスの額に見舞った。同じくよろめき、バランスを崩したところを――――
「――――どおりゃああああああーーーッッッ!!」
「――ぶぎゃああッはあっ――――!!」
――電磁力付与を込めたままの、豪烈なイロハのハンマーのフルスイングがライネスの顔面に炸裂した。なかなかにハンサムなはずのライネスも、一瞬殴られた圧で顔面の造作を崩し、吹っ飛んだ――――
「――ナイスアシストだぜ、エリー!!」
ガイの窮地を救った連携アシストに、エリーとガイは拳を突き合わせて称え合う。
「OK、OK。やられっぱなしだったらガイにも一発くれてやろうかと思ったけど、追撃したからチャラにしたげる。修行中、セリーナとばっか喋ってたから貸しイチね。本来なら極刑もんよ?」
「……あ? んだよ、それ――――」
「――やはり、根に持っていたか。つくづく視線と殺気を感じていたが、この朴念仁の男は全く……」
セリーナは気付いていたが、敢えてガイに言わなかった。練気の実力が互角程度な為、ガイとセリーナが2人きりで修行することが多く、エリーとの愛情を込めたコミュニケーションが不足し、妬いてしまっていたことに。やや恨みがましく、エリーはガイに毒づいた。もっともセリーナはミラ一筋なことに変わりは無いが。
「――何なんだァ、こんな時に2人とも一体? 俺、なんかしでかしたのか…………!?」
「――ふんっ!!」
「――やれやれ……もう敵は打ち破ったも同然。畳みかけるぞ、お前ら!!」
――鼻息を鳴らすエリーと、頭を抱えるセリーナ。明け透けに見えて、久々に女心が動いたエリーだったが、その心の真相に今のガイは気付きもしなかった――――
グロウの練気を通した激しい石つぶてや枯れ葉乱舞による投擲物に加え、カシムが防護壁でエリーたちを守り、ヴィクターは敵の気弾の嵐を練気のブラックホールで飲みこみ、吸い取った。
果たして、深手を負わせた上に磁力を操る攻撃をするバルザックを攻略し、遂にはメランとライネスの撃ち放つ気弾をも実質的に無効化した。
「――グロウ。如何に君の使う練気の量が膨大とはいえあれほど激しく練気を込めた攻撃をし続ければ疲れるだろう。私の防護壁の後ろで少し休んでなさい。」
「――う、うん……」
遠距離からの投擲戦でライネスたち4人を圧倒したグロウ。やはり底知れぬ力を秘めてはいるが、疲労で激しく汗をかいている。素直にカシムの後ろへと身を退けた。
「――ちいィッ!! 隊長の磁力もメランの気弾も効かないってのォ!? ……しゃあない。なら頼みはあたしとライネスの幻覚攻撃だろ! 行くよ、ライネスッ!!」
「――えっ……お、おうッ!!」
――敵の気弾の応酬は止めたが、同時にグロウも少し下がった。ならば格闘戦に幻覚を加味した攻撃のみ。
今のところ、やはりこの2人の繰り出す幻覚攻撃が最も厄介だろうか。攻撃のタイミングが読めない。下手をすると幻覚を見たと同時に死に直結する。
「――――さっき喰らってみて解ったよ! あんたら、一度に大人数に幻覚は仕掛けられないわね!! なら、数が多いこっちの方が断然有利!! もし喰らっても『アレ』があるっしょ!? このまま叩きのめすよ!!」
「よっしゃ!!」
「応ッ!!」
「にひひ! 一気に勝鬨、上げてやるっスよ!!」
――エリーの鼓舞する掛け声に、ガイ、セリーナ、イロハは快活に返事。相手が初見殺しと言ってもいい幻覚攻撃の使い手でも臆さず突撃する。
突貫してくるライネスと改子は2人。こちらは前衛だけでも4人ほど。後衛にグロウとテイテツが控え、さらにカシムとヴィクターが加勢して計8人。充分に勝機はうかがえる。
「――むっ!! こりゃあ――――」
――早速、改子とライネスはガイに仕掛けてきたようだ。突然ガイの視界からライネスが煙のように消え、改子は何十人にも分身して動きが掴めない。
予測不可能な攻撃に、ガイも思わず身を縮めて一瞬止まってしまう。
「――ホラ、こっちだ喰らえエエエイッ!!」
――気が付けば、ガイは背後を改子に取られていた。鋭いナイフの一閃がガイの首に迫る――――
「――――かああああああつッッ!!」
「――なっ…………あっ……!?」
瞬間。改子の幻覚は解けた。どうやら改子本人はガイから見て左斜め前方向の、やや太刀を振りにくい位置から仕掛けようとしていたようだが――――幻覚のかかっていないエリーが即座に、今度こそ『練気の当身』を改子の額に見舞った。
たちまち、改子は全身に纏っていた練気が強制的に立ち消え、エネルギーの流れを阻害されて立ち眩みを起こす。
「――――隙ありッ!!」
――さらに練気の翼竜に跨っていたセリーナが瞬時に間合いを詰め、飛び降りながら大槍の一撃を、ノーガードの状態の改子に喰らわせた――――!!
「――がっ……げぼぉっ――――!!」
――心臓を狙ったセリーナだったが、翼竜のコントロールがまだ少し不安定だったのか、少し体勢が崩れたまま突きを繰り出す形になった。
それでも新装した槍にセリーナの技と力、そして練気の強化で得たひと突きは凄まじい威力だ。急所の心臓は外れたが、脇腹を深々と抉り、穿ち抜いた。血を吐いて蹲る改子――――
「――てりゃあッ!!」
幻覚が解け、位置と情況を把握したガイはすぐさま、改子を蹴飛ばして得物の大型ナイフ2本を遠くへ離した。
「――かっ、改子ォ!! すぐに練気を練って傷を治し――――ぐわっ!?」
「――お兄さんも隙だらけっスよ――――!!」
――ライネスもまた、練気の幻覚で身を隠して死角から狙うつもりでいたが、改子が倒れて動揺したのか練気の流れを乱し、そこをまたすぐさま、今度はイロハが練気の当身をライネスの額に見舞った。同じくよろめき、バランスを崩したところを――――
「――――どおりゃああああああーーーッッッ!!」
「――ぶぎゃああッはあっ――――!!」
――電磁力付与を込めたままの、豪烈なイロハのハンマーのフルスイングがライネスの顔面に炸裂した。なかなかにハンサムなはずのライネスも、一瞬殴られた圧で顔面の造作を崩し、吹っ飛んだ――――
「――ナイスアシストだぜ、エリー!!」
ガイの窮地を救った連携アシストに、エリーとガイは拳を突き合わせて称え合う。
「OK、OK。やられっぱなしだったらガイにも一発くれてやろうかと思ったけど、追撃したからチャラにしたげる。修行中、セリーナとばっか喋ってたから貸しイチね。本来なら極刑もんよ?」
「……あ? んだよ、それ――――」
「――やはり、根に持っていたか。つくづく視線と殺気を感じていたが、この朴念仁の男は全く……」
セリーナは気付いていたが、敢えてガイに言わなかった。練気の実力が互角程度な為、ガイとセリーナが2人きりで修行することが多く、エリーとの愛情を込めたコミュニケーションが不足し、妬いてしまっていたことに。やや恨みがましく、エリーはガイに毒づいた。もっともセリーナはミラ一筋なことに変わりは無いが。
「――何なんだァ、こんな時に2人とも一体? 俺、なんかしでかしたのか…………!?」
「――ふんっ!!」
「――やれやれ……もう敵は打ち破ったも同然。畳みかけるぞ、お前ら!!」
――鼻息を鳴らすエリーと、頭を抱えるセリーナ。明け透けに見えて、久々に女心が動いたエリーだったが、その心の真相に今のガイは気付きもしなかった――――
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。


盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ
ひるま(マテチ)
SF
空色の髪をなびかせる玉虫色の騎士。
それは王位継承戦に持ち出されたチェスゲームの中で、駒が取られると同事に現れたモンスターをモチーフとしたロボット兵”盤上戦騎”またの名を”ディザスター”と呼ばれる者。
彼ら盤上戦騎たちはレーダーにもカメラにも映らない、さらに人の記憶からもすぐさま消え去ってしまう、もはや反則レベル。
チェスの駒のマスターを望まれた“鈴木くれは”だったが、彼女は戦わずにただ傍観するのみ。
だけど、兵士の駒"ベルタ”のマスターとなり戦場へと赴いたのは、彼女の想い人であり幼馴染みの高砂・飛遊午。
異世界から来た連中のために戦えないくれは。
一方、戦う飛遊午。
ふたりの、それぞれの想いは交錯するのか・・・。
*この作品は、「小説家になろう」でも同時連載しております。
法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 野球と海と『革命家』
橋本 直
SF
その文明は出会うべきではなかった
その人との出会いは歓迎すべきものではなかった
これは悲しい『出会い』の物語
『特殊な部隊』と出会うことで青年にはある『宿命』がせおわされることになる
法術装甲隊ダグフェロン 第二部
遼州人の青年『神前誠(しんぜんまこと)』が発動した『干渉空間』と『光の剣(つるぎ)により貴族主義者のクーデターを未然に防止することが出来た『近藤事件』が終わってから1か月がたった。
宇宙は誠をはじめとする『法術師』の存在を公表することで混乱に陥っていたが、誠の所属する司法局実働部隊、通称『特殊な部隊』は相変わらずおバカな生活を送っていた。
そんな『特殊な部隊』の運用艦『ふさ』艦長アメリア・クラウゼ中佐と誠の所属するシュツルム・パンツァーパイロット部隊『機動部隊第一小隊』のパイロットでサイボーグの西園寺かなめは『特殊な部隊』の野球部の夏合宿を企画した。
どうせろくな事が起こらないと思いながら仕事をさぼって参加する誠。
そこではかなめがいかに自分とはかけ離れたお嬢様で、貴族主義の国『甲武国』がどれほど自分の暮らす永遠に続く20世紀末の東和共和国と違うのかを誠は知ることになった。
しかし、彼を待っていたのは『法術』を持つ遼州人を地球人から解放しようとする『革命家』の襲撃だった。
この事件をきっかけに誠の身辺警護の必要性から誠の警護にアメリア、かなめ、そして無表情な人造人間『ラスト・バタリオン』の第一小隊小隊長カウラ・ベルガー大尉がつくことになる。
これにより誠の暮らす『男子下士官寮』は有名無実化することになった。
そんなおバカな連中を『駄目人間』嵯峨惟基特務大佐と機動部隊隊長クバルカ・ラン中佐は生暖かい目で見守っていた。
そんな『特殊な部隊』の意図とは関係なく着々と『力ある者の支配する宇宙』の実現を目指す『廃帝ハド』の野望はゆっくりと動き出しつつあった。
SFお仕事ギャグロマン小説。
深紅の呂旗~僕が呂布に!そして女に!?~
なおとら
ファンタジー
前世の記憶を持つ「小鳥遊 奉」。
彼は普段の日常をすごし、普段通りに眠る・・・いつもと同じだった。
しかしある事件をきっかけに死んでしまうが、気づいたら三国時代の「呂布奉先」
に転生していた!しかも女の子に・・・
僕はこの先どうなるんだろう・・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
主人公最強ものです。三国志演技を元にしておりますが、IF要素が
多く含まれております。よかったらのぞいてみてください!

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる