105 / 223
第104話 弾の嵐
しおりを挟む
――――凄まじい勢いでぶつかり合う、グロウの練気を通した石つぶてとメランの気弾。
「――――くううううぅうぅぅンンン…………!!」
メランは、メス猫が鳴くような嬌声を上げながらも、全力で練気を集中し、気弾を練っては撃ち続けている。
――気弾と石つぶてが激しくぶつかり合い、相殺する破裂音。
バリバリバリバリ…………とけたたましい音を立て、辺りに練気の石の欠片と弾けた気弾の残滓が飛び交い、エリーたちですらも迂闊に手を出せない。
だが――――どうやら、石つぶての数では互角程度でも、グロウの方が攻撃の手そのものは多いようだ。
周囲の石ころに瞬時に練気を通しては飛ばし、その間に練気を木枝に通した光の弓矢を構え――――過たず射る!!
「――何ッ!? ――うンッ……!!」
メランは辛うじて手で掴んで光の矢を止めるが――――
「――なっ……矢が伸びて――――うああアンンンッ!!」
――エリーとの組手同様、例え手元で止められても、『活性化』と『急成長』の能力で木枝の矢は瞬時に伸び、敵を穿つ――――
――間一髪。改造兵として鋭い反射を誇るメランは急所をギリギリで避け、胸元を掠めた。
「――当たったな! 喰らえッ!!」
――傷を付けたことを確認し、即座に例によってグロウは念じる。
「――うゥッ…………こ、これが……改子とライネスが受けた毒の痛みねぇン――――」
――矢をやり過ごしても、石つぶては雨あられと飛んでくる。
メランは強引に身体を動かして躱そうにも、身体は言うことを聞かない。撃ち放った気弾も尽きてしまった――――
「――もう……駄目ェ…………ッ!!」
メランは咄嗟に、己の死を覚悟し瞼を閉じてしまった――――
――だが、石つぶてがメランを蹂躙するよりも先に、練気が割り砕ける破裂音がした。
「――ライネス!!」
「――ギリ、間に合ったみてえだなぁ。すぐにおめえも解毒剤で毒を取るんだィ!! こっからは2人で気弾を撃ちまくるぜ!!」
――メランが奮戦している間に、ライネスは自分の携帯していた解毒剤で熱毒に冒された血を清めていた。威力は多少メランより劣るものの、ライネスも気弾を撃って加勢する。
「――そうねぇン!!」
メランも命拾いしたことを安堵する暇もなく、ライネスが言い終わると同時に解毒剤を服用し、練気で胸元の傷を癒した。胸元の改造軍服がはだけ、豊満な胸が所々露わになるが、そんなことに臆している余裕もない。
「――くうぅンッ!!」
「でりゃりゃりゃりゃりゃァ!!」
――グロウの練気を介した石つぶてや枯れ葉乱舞に対し、2人で気弾を撃ち合い、さらに激しい鉄火場と化していく。もはや単なる銃撃戦を遙かに凌ぐ危険な攻防だ。
それでも……どうやらまだ一手ほど、グロウの方が攻撃が激しいようだ。必死に気弾を撃ち続けるメランとライネスだが、段々と気弾を石つぶてや枯れ葉が突き抜け、押し負けてくる――――
「――や、野郎っ…………なら――――これでどうだィ!!」
――ライネスが虹色の練気を練り直し――――エリーと同じ、赤黒い練気を立ち昇らせた。開放度はエリーに遙かに劣るが、地力はかなり上がった。
「――ッ!!」
――途端に、ライネスの撃ち放つ気弾の威力は増し、膨大な練気を放っているグロウ側も今度は押し負けそうになる。圧される手応えを感じ、今度はグロウが切迫してきた。
「――改子ぉ! このまま撃ち合いになっても、あの子の毒を喰らえば不利よン!! 今はこっちが押してるわン!! 何とかこの隙にあの子を止めてぇ!!」
「――――オーライ!! 覚悟しな、このガキぃ!!」
改子もまた解毒剤を服用して毒を治した。撃ち合いを続ければ解毒剤がいずれ尽きる。改子は両手に大型ナイフを構え、飛び出そうとする。
「――く、来るな…………っ!!」
グロウは石つぶてや枯れ葉乱舞を改子の方にも飛ばすが、当然分散すれば攻撃の手を緩めることになり、穴が開く。改子は巧みに身を弾ませて投擲物を躱しながら、徐々に距離を詰めて来る。ライネスが加勢した気弾の嵐にも負けそうになる――――
「――――!? いてッ!! ――なぁんだァ、これは――――」
――こちらが圧されかけたその時、改子は別の練気の光にぶつかり、弾き飛ばされた。この光の壁は――――
「――グロウ!! 無理をするな。私たちも加勢する!!」
――そう。カシムの練気による防護壁だった。巨大な光の壁は、敵の気弾の嵐を頑丈に防ぐ。
さらに――――
「――何ィ!? 何だァ、あの空間に開いた穴みてえなのは――――お、俺とメランの気弾が吸われる…………!!」
「――お前たちばかりに活躍ばかりさせるほど、俺たちは老いぼれちゃおらんわ!! 戦う理由は俺たちにもあるッ!!」
――敵の放つ気弾の嵐の多くは、ヴィクターの練気のブラックホールによって無きものとした。
――――これで撃ち合いはお互いにほぼ無効化。形勢は再び五分となるか――――
「――――くううううぅうぅぅンンン…………!!」
メランは、メス猫が鳴くような嬌声を上げながらも、全力で練気を集中し、気弾を練っては撃ち続けている。
――気弾と石つぶてが激しくぶつかり合い、相殺する破裂音。
バリバリバリバリ…………とけたたましい音を立て、辺りに練気の石の欠片と弾けた気弾の残滓が飛び交い、エリーたちですらも迂闊に手を出せない。
だが――――どうやら、石つぶての数では互角程度でも、グロウの方が攻撃の手そのものは多いようだ。
周囲の石ころに瞬時に練気を通しては飛ばし、その間に練気を木枝に通した光の弓矢を構え――――過たず射る!!
「――何ッ!? ――うンッ……!!」
メランは辛うじて手で掴んで光の矢を止めるが――――
「――なっ……矢が伸びて――――うああアンンンッ!!」
――エリーとの組手同様、例え手元で止められても、『活性化』と『急成長』の能力で木枝の矢は瞬時に伸び、敵を穿つ――――
――間一髪。改造兵として鋭い反射を誇るメランは急所をギリギリで避け、胸元を掠めた。
「――当たったな! 喰らえッ!!」
――傷を付けたことを確認し、即座に例によってグロウは念じる。
「――うゥッ…………こ、これが……改子とライネスが受けた毒の痛みねぇン――――」
――矢をやり過ごしても、石つぶては雨あられと飛んでくる。
メランは強引に身体を動かして躱そうにも、身体は言うことを聞かない。撃ち放った気弾も尽きてしまった――――
「――もう……駄目ェ…………ッ!!」
メランは咄嗟に、己の死を覚悟し瞼を閉じてしまった――――
――だが、石つぶてがメランを蹂躙するよりも先に、練気が割り砕ける破裂音がした。
「――ライネス!!」
「――ギリ、間に合ったみてえだなぁ。すぐにおめえも解毒剤で毒を取るんだィ!! こっからは2人で気弾を撃ちまくるぜ!!」
――メランが奮戦している間に、ライネスは自分の携帯していた解毒剤で熱毒に冒された血を清めていた。威力は多少メランより劣るものの、ライネスも気弾を撃って加勢する。
「――そうねぇン!!」
メランも命拾いしたことを安堵する暇もなく、ライネスが言い終わると同時に解毒剤を服用し、練気で胸元の傷を癒した。胸元の改造軍服がはだけ、豊満な胸が所々露わになるが、そんなことに臆している余裕もない。
「――くうぅンッ!!」
「でりゃりゃりゃりゃりゃァ!!」
――グロウの練気を介した石つぶてや枯れ葉乱舞に対し、2人で気弾を撃ち合い、さらに激しい鉄火場と化していく。もはや単なる銃撃戦を遙かに凌ぐ危険な攻防だ。
それでも……どうやらまだ一手ほど、グロウの方が攻撃が激しいようだ。必死に気弾を撃ち続けるメランとライネスだが、段々と気弾を石つぶてや枯れ葉が突き抜け、押し負けてくる――――
「――や、野郎っ…………なら――――これでどうだィ!!」
――ライネスが虹色の練気を練り直し――――エリーと同じ、赤黒い練気を立ち昇らせた。開放度はエリーに遙かに劣るが、地力はかなり上がった。
「――ッ!!」
――途端に、ライネスの撃ち放つ気弾の威力は増し、膨大な練気を放っているグロウ側も今度は押し負けそうになる。圧される手応えを感じ、今度はグロウが切迫してきた。
「――改子ぉ! このまま撃ち合いになっても、あの子の毒を喰らえば不利よン!! 今はこっちが押してるわン!! 何とかこの隙にあの子を止めてぇ!!」
「――――オーライ!! 覚悟しな、このガキぃ!!」
改子もまた解毒剤を服用して毒を治した。撃ち合いを続ければ解毒剤がいずれ尽きる。改子は両手に大型ナイフを構え、飛び出そうとする。
「――く、来るな…………っ!!」
グロウは石つぶてや枯れ葉乱舞を改子の方にも飛ばすが、当然分散すれば攻撃の手を緩めることになり、穴が開く。改子は巧みに身を弾ませて投擲物を躱しながら、徐々に距離を詰めて来る。ライネスが加勢した気弾の嵐にも負けそうになる――――
「――――!? いてッ!! ――なぁんだァ、これは――――」
――こちらが圧されかけたその時、改子は別の練気の光にぶつかり、弾き飛ばされた。この光の壁は――――
「――グロウ!! 無理をするな。私たちも加勢する!!」
――そう。カシムの練気による防護壁だった。巨大な光の壁は、敵の気弾の嵐を頑丈に防ぐ。
さらに――――
「――何ィ!? 何だァ、あの空間に開いた穴みてえなのは――――お、俺とメランの気弾が吸われる…………!!」
「――お前たちばかりに活躍ばかりさせるほど、俺たちは老いぼれちゃおらんわ!! 戦う理由は俺たちにもあるッ!!」
――敵の放つ気弾の嵐の多くは、ヴィクターの練気のブラックホールによって無きものとした。
――――これで撃ち合いはお互いにほぼ無効化。形勢は再び五分となるか――――
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

改造空母機動艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
兵棋演習の結果、洋上航空戦における空母の大量損耗は避け得ないと悟った帝国海軍は高価な正規空母の新造をあきらめ、旧式戦艦や特務艦を改造することで数を揃える方向に舵を切る。
そして、昭和一六年一二月。
日本の前途に暗雲が立ち込める中、祖国防衛のために改造空母艦隊は出撃する。
「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」が、さらに「千歳」「千代田」「瑞穂」がその数を頼みに太平洋艦隊を迎え撃つ。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。


私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシャリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる