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第104話 弾の嵐
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――――凄まじい勢いでぶつかり合う、グロウの練気を通した石つぶてとメランの気弾。
「――――くううううぅうぅぅンンン…………!!」
メランは、メス猫が鳴くような嬌声を上げながらも、全力で練気を集中し、気弾を練っては撃ち続けている。
――気弾と石つぶてが激しくぶつかり合い、相殺する破裂音。
バリバリバリバリ…………とけたたましい音を立て、辺りに練気の石の欠片と弾けた気弾の残滓が飛び交い、エリーたちですらも迂闊に手を出せない。
だが――――どうやら、石つぶての数では互角程度でも、グロウの方が攻撃の手そのものは多いようだ。
周囲の石ころに瞬時に練気を通しては飛ばし、その間に練気を木枝に通した光の弓矢を構え――――過たず射る!!
「――何ッ!? ――うンッ……!!」
メランは辛うじて手で掴んで光の矢を止めるが――――
「――なっ……矢が伸びて――――うああアンンンッ!!」
――エリーとの組手同様、例え手元で止められても、『活性化』と『急成長』の能力で木枝の矢は瞬時に伸び、敵を穿つ――――
――間一髪。改造兵として鋭い反射を誇るメランは急所をギリギリで避け、胸元を掠めた。
「――当たったな! 喰らえッ!!」
――傷を付けたことを確認し、即座に例によってグロウは念じる。
「――うゥッ…………こ、これが……改子とライネスが受けた毒の痛みねぇン――――」
――矢をやり過ごしても、石つぶては雨あられと飛んでくる。
メランは強引に身体を動かして躱そうにも、身体は言うことを聞かない。撃ち放った気弾も尽きてしまった――――
「――もう……駄目ェ…………ッ!!」
メランは咄嗟に、己の死を覚悟し瞼を閉じてしまった――――
――だが、石つぶてがメランを蹂躙するよりも先に、練気が割り砕ける破裂音がした。
「――ライネス!!」
「――ギリ、間に合ったみてえだなぁ。すぐにおめえも解毒剤で毒を取るんだィ!! こっからは2人で気弾を撃ちまくるぜ!!」
――メランが奮戦している間に、ライネスは自分の携帯していた解毒剤で熱毒に冒された血を清めていた。威力は多少メランより劣るものの、ライネスも気弾を撃って加勢する。
「――そうねぇン!!」
メランも命拾いしたことを安堵する暇もなく、ライネスが言い終わると同時に解毒剤を服用し、練気で胸元の傷を癒した。胸元の改造軍服がはだけ、豊満な胸が所々露わになるが、そんなことに臆している余裕もない。
「――くうぅンッ!!」
「でりゃりゃりゃりゃりゃァ!!」
――グロウの練気を介した石つぶてや枯れ葉乱舞に対し、2人で気弾を撃ち合い、さらに激しい鉄火場と化していく。もはや単なる銃撃戦を遙かに凌ぐ危険な攻防だ。
それでも……どうやらまだ一手ほど、グロウの方が攻撃が激しいようだ。必死に気弾を撃ち続けるメランとライネスだが、段々と気弾を石つぶてや枯れ葉が突き抜け、押し負けてくる――――
「――や、野郎っ…………なら――――これでどうだィ!!」
――ライネスが虹色の練気を練り直し――――エリーと同じ、赤黒い練気を立ち昇らせた。開放度はエリーに遙かに劣るが、地力はかなり上がった。
「――ッ!!」
――途端に、ライネスの撃ち放つ気弾の威力は増し、膨大な練気を放っているグロウ側も今度は押し負けそうになる。圧される手応えを感じ、今度はグロウが切迫してきた。
「――改子ぉ! このまま撃ち合いになっても、あの子の毒を喰らえば不利よン!! 今はこっちが押してるわン!! 何とかこの隙にあの子を止めてぇ!!」
「――――オーライ!! 覚悟しな、このガキぃ!!」
改子もまた解毒剤を服用して毒を治した。撃ち合いを続ければ解毒剤がいずれ尽きる。改子は両手に大型ナイフを構え、飛び出そうとする。
「――く、来るな…………っ!!」
グロウは石つぶてや枯れ葉乱舞を改子の方にも飛ばすが、当然分散すれば攻撃の手を緩めることになり、穴が開く。改子は巧みに身を弾ませて投擲物を躱しながら、徐々に距離を詰めて来る。ライネスが加勢した気弾の嵐にも負けそうになる――――
「――――!? いてッ!! ――なぁんだァ、これは――――」
――こちらが圧されかけたその時、改子は別の練気の光にぶつかり、弾き飛ばされた。この光の壁は――――
「――グロウ!! 無理をするな。私たちも加勢する!!」
――そう。カシムの練気による防護壁だった。巨大な光の壁は、敵の気弾の嵐を頑丈に防ぐ。
さらに――――
「――何ィ!? 何だァ、あの空間に開いた穴みてえなのは――――お、俺とメランの気弾が吸われる…………!!」
「――お前たちばかりに活躍ばかりさせるほど、俺たちは老いぼれちゃおらんわ!! 戦う理由は俺たちにもあるッ!!」
――敵の放つ気弾の嵐の多くは、ヴィクターの練気のブラックホールによって無きものとした。
――――これで撃ち合いはお互いにほぼ無効化。形勢は再び五分となるか――――
「――――くううううぅうぅぅンンン…………!!」
メランは、メス猫が鳴くような嬌声を上げながらも、全力で練気を集中し、気弾を練っては撃ち続けている。
――気弾と石つぶてが激しくぶつかり合い、相殺する破裂音。
バリバリバリバリ…………とけたたましい音を立て、辺りに練気の石の欠片と弾けた気弾の残滓が飛び交い、エリーたちですらも迂闊に手を出せない。
だが――――どうやら、石つぶての数では互角程度でも、グロウの方が攻撃の手そのものは多いようだ。
周囲の石ころに瞬時に練気を通しては飛ばし、その間に練気を木枝に通した光の弓矢を構え――――過たず射る!!
「――何ッ!? ――うンッ……!!」
メランは辛うじて手で掴んで光の矢を止めるが――――
「――なっ……矢が伸びて――――うああアンンンッ!!」
――エリーとの組手同様、例え手元で止められても、『活性化』と『急成長』の能力で木枝の矢は瞬時に伸び、敵を穿つ――――
――間一髪。改造兵として鋭い反射を誇るメランは急所をギリギリで避け、胸元を掠めた。
「――当たったな! 喰らえッ!!」
――傷を付けたことを確認し、即座に例によってグロウは念じる。
「――うゥッ…………こ、これが……改子とライネスが受けた毒の痛みねぇン――――」
――矢をやり過ごしても、石つぶては雨あられと飛んでくる。
メランは強引に身体を動かして躱そうにも、身体は言うことを聞かない。撃ち放った気弾も尽きてしまった――――
「――もう……駄目ェ…………ッ!!」
メランは咄嗟に、己の死を覚悟し瞼を閉じてしまった――――
――だが、石つぶてがメランを蹂躙するよりも先に、練気が割り砕ける破裂音がした。
「――ライネス!!」
「――ギリ、間に合ったみてえだなぁ。すぐにおめえも解毒剤で毒を取るんだィ!! こっからは2人で気弾を撃ちまくるぜ!!」
――メランが奮戦している間に、ライネスは自分の携帯していた解毒剤で熱毒に冒された血を清めていた。威力は多少メランより劣るものの、ライネスも気弾を撃って加勢する。
「――そうねぇン!!」
メランも命拾いしたことを安堵する暇もなく、ライネスが言い終わると同時に解毒剤を服用し、練気で胸元の傷を癒した。胸元の改造軍服がはだけ、豊満な胸が所々露わになるが、そんなことに臆している余裕もない。
「――くうぅンッ!!」
「でりゃりゃりゃりゃりゃァ!!」
――グロウの練気を介した石つぶてや枯れ葉乱舞に対し、2人で気弾を撃ち合い、さらに激しい鉄火場と化していく。もはや単なる銃撃戦を遙かに凌ぐ危険な攻防だ。
それでも……どうやらまだ一手ほど、グロウの方が攻撃が激しいようだ。必死に気弾を撃ち続けるメランとライネスだが、段々と気弾を石つぶてや枯れ葉が突き抜け、押し負けてくる――――
「――や、野郎っ…………なら――――これでどうだィ!!」
――ライネスが虹色の練気を練り直し――――エリーと同じ、赤黒い練気を立ち昇らせた。開放度はエリーに遙かに劣るが、地力はかなり上がった。
「――ッ!!」
――途端に、ライネスの撃ち放つ気弾の威力は増し、膨大な練気を放っているグロウ側も今度は押し負けそうになる。圧される手応えを感じ、今度はグロウが切迫してきた。
「――改子ぉ! このまま撃ち合いになっても、あの子の毒を喰らえば不利よン!! 今はこっちが押してるわン!! 何とかこの隙にあの子を止めてぇ!!」
「――――オーライ!! 覚悟しな、このガキぃ!!」
改子もまた解毒剤を服用して毒を治した。撃ち合いを続ければ解毒剤がいずれ尽きる。改子は両手に大型ナイフを構え、飛び出そうとする。
「――く、来るな…………っ!!」
グロウは石つぶてや枯れ葉乱舞を改子の方にも飛ばすが、当然分散すれば攻撃の手を緩めることになり、穴が開く。改子は巧みに身を弾ませて投擲物を躱しながら、徐々に距離を詰めて来る。ライネスが加勢した気弾の嵐にも負けそうになる――――
「――――!? いてッ!! ――なぁんだァ、これは――――」
――こちらが圧されかけたその時、改子は別の練気の光にぶつかり、弾き飛ばされた。この光の壁は――――
「――グロウ!! 無理をするな。私たちも加勢する!!」
――そう。カシムの練気による防護壁だった。巨大な光の壁は、敵の気弾の嵐を頑丈に防ぐ。
さらに――――
「――何ィ!? 何だァ、あの空間に開いた穴みてえなのは――――お、俺とメランの気弾が吸われる…………!!」
「――お前たちばかりに活躍ばかりさせるほど、俺たちは老いぼれちゃおらんわ!! 戦う理由は俺たちにもあるッ!!」
――敵の放つ気弾の嵐の多くは、ヴィクターの練気のブラックホールによって無きものとした。
――――これで撃ち合いはお互いにほぼ無効化。形勢は再び五分となるか――――
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