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第93話 逸材 対 逸材
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――――ガイとセリーナの、苦悩しながら、それでも希望を持ちながら…………そんな修行風景の中で――――他の修行者とは一線を画す者が2人並び立っていた。
「――2人とも、練気の出力はもう充分。では――――始め。」
「――ふううううう…………っ!!」
カシムが合図をする。相対している2人は――――エリーとグロウ。2人とも非凡などという言葉では全く足りないほどの練気の基礎的なコントロールを凄まじい早さで会得し、後はその多大なる練気のエネルギーを実戦で、自我流で縦横無尽に使うのみである。
とはいえ、組手をする相手は身体能力も技も超人的なエリーに対し、異能力と練気のエネルギーの多大さ以外は非力な少年であるグロウ。いざ本気で立ち会ってもエリーが一方的に勝ってしまうのは目に見えている。
グロウが戦闘での体捌きを身に付けるまでは、ハンデとしてエリーからは一切攻撃をせず、防御と回避に徹することとした。もし大事があればすかさずエリー自身の『鬼』の練気による超回復か、グロウの治癒の力で治療する寸法。それもヴィクターとカシムが厳しく鍛錬を見ている状態。安全には配慮しているはずだ。
――高めた練気に反応し、辺りに散らばっている木の枯れ葉が宙に舞い上がってグロウの周囲に浮かび――――手裏剣のように鋭くエリーへと撃ち放った!!
「――ふっ!!」
エリーもすぐに反応し、身を翻して飛んでくる枯れ葉を躱す――――が、予想以上の枚数と速さ。躱し切れない――――
「――でりゃああああッ!!」
エリーは火炎の練気を手足に込めて、避け切れない枯れ葉を叩き落とす! 枯れ葉に火炎。ほとんどが粉状の炭になって消えるが――――
「――むっ、うッ……」
――強く練気を練り込んである枯れ葉は、例え枯れ葉であってもさながら鋭く飛び交う手裏剣のような強度を持ち、叩き落とし切れなかった、燃やし切れなかった枯れ葉がエリーの頬や腕、脚を切り裂いた。
「――ご、ごめんお姉ちゃん!! 大丈夫!?」
――もとより他人を傷付けることに躊躇いがあるグロウ。攻撃の手を緩めてしまう。
「――いいのいいの! 遠慮せず攻撃してきて、グロウ!! その為にあたしみたいなうってつけの修行相手がいるんだから。訓練ってなったら、遠慮してちゃ駄目~。」
――常人ならば結構な傷かもしれないが、幸いなことに相手はエリー。練気を少し集中すれば、動画を逆再生するかのように傷は塞がり出血は止まった。笑顔でグロウに返す。
「――――本当に、いいの? じゃあ…………活性化――――化合!!」
「――――ぐっ!? うぬぬぬ……」
しかし、一度決心をすれば、グロウの能力はやはり強力である。放った枯れ葉に付いていた微量の細菌。その細菌を傷口からエリーの体内に混入したことを目視で確認した上で活性化と急成長の力。目亘改子戦でも見せた自然物からの猛毒という二段構えの強力な攻撃だ。
熱毒がたちまち全身を駆け巡り、急激な発熱と眩暈で膝を付くエリー。
だが――――
「――ふんっ!」
――何と今度はエリーは自らの首筋の頸動脈に手刀で傷を付け…………練気による物質の移動。
今、枯れ葉を撃って来たグロウの攻撃と同じ原理で以て、体内の毒素を練気で集中し、勢いよく頸動脈の傷口から絞り出した。
ブシュウッ……と血が噴き出す。常人ならば当然致命傷だが、これもまたエリーだからこその対処。すかさず練気の開放度を高めて超回復で頸動脈の傷も治した。
「――や、やるじゃな~い! グロウ! 姉ちゃん、正直油断してたわ…………毒物とかウイルスとかには強い身体だけど、今のはかなーり効いたわ~……」
毒を荒々しくも排出し、失血しながらもふらふらと立ち上がり……再び練気を集中して体勢を立て直す。
「――――おい、マジかよ……!! あのグロウがエリーに膝を付かせやがった…………!!」
「――――エリーから反撃はしないとはいえ、一方的にエリーが勝つと思っていたが……これは、練気の力だけならグロウが圧倒的に強いのか!?」
――本来の自分の修行に集中したかったガイとセリーナだったが、組手を始めて早々、思いもよらぬ大番狂わせに思わず見入ってしまう。
修行の手を止めてしまう2人を見て、ヴィクターとカシムは「やれやれ……でもここまでなら仕方ないか……」と言った感じで苦笑いをする。
「――グロウよ! その調子だ! 仲間相手とは言え攻撃の手を緩めるな!! エリーはお前に攻撃こそしないが……急所に一撃、寸止めを入れられたと見ればお前の負けとする!!」
ヴィクターが、攻撃を躊躇うグロウに念の為声を掛ける。
攻撃の手を緩めるということは、そのまま自分の生命を守る防御も同時に緩めるということ。組手であり生命の遣り取りではないにせよ、そこは真剣に、強い気持ちで断行せねば鍛錬にならない。
「――わかってるよっ!!」
グロウは、迷いを振り切り、再び辺りの枯れ葉を練気を纏わせてより集め、乱舞させつつ撃ち放った!!
「――ふっふ~ん……二度同じ手は、食わないわよッ!!」
そう気迫と共に声を発すると同時に、エリーは練気で火炎を全身に猛烈な勢いで纏った。元々攻撃的な火力を誇るエリーの炎。飛んでくる枯れ葉は練気で強度を増しているとはいえ、一枚残らず灰となった。
「――よっしゃ! ふっ――――!!」
さらに、炎を纏ったまま駆け出し、グロウへと近付く。これでは枯れ葉程度の攻撃は効きそうにない。距離を詰められればグロウの立つ瀬は無い。
「――岩たちよっ!!
今度はグロウは、地面に手を付き、岩が敷き詰められている地に練気を念じた!!
「――おわっ!?」
突如、エリーの足元の岩が激しく隆起し、エリーを宙へと突き上げた!!
「――なるほど、葉っぱじゃあ燃えるから今度は岩ってわけね!!」
グロウの作戦を見て賞賛しつつも、ただの岩程度なら全て叩き割るつもりでいるエリー。空中でも火炎の噴射エネルギーでバランスを取り、拳を構える――――
「――――増殖、そして活性化だ――――ッ!!」
すると、グロウはさらに飛び上がった岩に念じた。
膨大な練気エネルギーによって、岩の強度がとてつもなく硬くなった! さらに、岩の中に含まれる鉄分を増殖、及び活性化し、岩はなんと巨大な鉄塊と化した――――
――――お誂え向きとばかりに、その鉄塊からは鋭く巨大な棘が伸び、エリーを四方八方から閉じ込めるように飛んでくる――――
「――えっ、ええ~……っ? そこまでするぅ~…………!?」
――さすがにこれにはエリーも危険を感じた。
「うおおっ、ドリャリャッ!!」
素早く、鉄塊を拳と蹴りで強く打つが、強度は凄まじく、ヒビひとつ入らない。
グロウ相手にそこまで高めるまでも無いと高を括っていたが、急遽練気の開放度を高める――――
「――エリーッ!!」
ガイが思わず叫ぶが、刹那の間にエリーは鉄塊に全方向から押し潰された――――
「――2人とも、練気の出力はもう充分。では――――始め。」
「――ふううううう…………っ!!」
カシムが合図をする。相対している2人は――――エリーとグロウ。2人とも非凡などという言葉では全く足りないほどの練気の基礎的なコントロールを凄まじい早さで会得し、後はその多大なる練気のエネルギーを実戦で、自我流で縦横無尽に使うのみである。
とはいえ、組手をする相手は身体能力も技も超人的なエリーに対し、異能力と練気のエネルギーの多大さ以外は非力な少年であるグロウ。いざ本気で立ち会ってもエリーが一方的に勝ってしまうのは目に見えている。
グロウが戦闘での体捌きを身に付けるまでは、ハンデとしてエリーからは一切攻撃をせず、防御と回避に徹することとした。もし大事があればすかさずエリー自身の『鬼』の練気による超回復か、グロウの治癒の力で治療する寸法。それもヴィクターとカシムが厳しく鍛錬を見ている状態。安全には配慮しているはずだ。
――高めた練気に反応し、辺りに散らばっている木の枯れ葉が宙に舞い上がってグロウの周囲に浮かび――――手裏剣のように鋭くエリーへと撃ち放った!!
「――ふっ!!」
エリーもすぐに反応し、身を翻して飛んでくる枯れ葉を躱す――――が、予想以上の枚数と速さ。躱し切れない――――
「――でりゃああああッ!!」
エリーは火炎の練気を手足に込めて、避け切れない枯れ葉を叩き落とす! 枯れ葉に火炎。ほとんどが粉状の炭になって消えるが――――
「――むっ、うッ……」
――強く練気を練り込んである枯れ葉は、例え枯れ葉であってもさながら鋭く飛び交う手裏剣のような強度を持ち、叩き落とし切れなかった、燃やし切れなかった枯れ葉がエリーの頬や腕、脚を切り裂いた。
「――ご、ごめんお姉ちゃん!! 大丈夫!?」
――もとより他人を傷付けることに躊躇いがあるグロウ。攻撃の手を緩めてしまう。
「――いいのいいの! 遠慮せず攻撃してきて、グロウ!! その為にあたしみたいなうってつけの修行相手がいるんだから。訓練ってなったら、遠慮してちゃ駄目~。」
――常人ならば結構な傷かもしれないが、幸いなことに相手はエリー。練気を少し集中すれば、動画を逆再生するかのように傷は塞がり出血は止まった。笑顔でグロウに返す。
「――――本当に、いいの? じゃあ…………活性化――――化合!!」
「――――ぐっ!? うぬぬぬ……」
しかし、一度決心をすれば、グロウの能力はやはり強力である。放った枯れ葉に付いていた微量の細菌。その細菌を傷口からエリーの体内に混入したことを目視で確認した上で活性化と急成長の力。目亘改子戦でも見せた自然物からの猛毒という二段構えの強力な攻撃だ。
熱毒がたちまち全身を駆け巡り、急激な発熱と眩暈で膝を付くエリー。
だが――――
「――ふんっ!」
――何と今度はエリーは自らの首筋の頸動脈に手刀で傷を付け…………練気による物質の移動。
今、枯れ葉を撃って来たグロウの攻撃と同じ原理で以て、体内の毒素を練気で集中し、勢いよく頸動脈の傷口から絞り出した。
ブシュウッ……と血が噴き出す。常人ならば当然致命傷だが、これもまたエリーだからこその対処。すかさず練気の開放度を高めて超回復で頸動脈の傷も治した。
「――や、やるじゃな~い! グロウ! 姉ちゃん、正直油断してたわ…………毒物とかウイルスとかには強い身体だけど、今のはかなーり効いたわ~……」
毒を荒々しくも排出し、失血しながらもふらふらと立ち上がり……再び練気を集中して体勢を立て直す。
「――――おい、マジかよ……!! あのグロウがエリーに膝を付かせやがった…………!!」
「――――エリーから反撃はしないとはいえ、一方的にエリーが勝つと思っていたが……これは、練気の力だけならグロウが圧倒的に強いのか!?」
――本来の自分の修行に集中したかったガイとセリーナだったが、組手を始めて早々、思いもよらぬ大番狂わせに思わず見入ってしまう。
修行の手を止めてしまう2人を見て、ヴィクターとカシムは「やれやれ……でもここまでなら仕方ないか……」と言った感じで苦笑いをする。
「――グロウよ! その調子だ! 仲間相手とは言え攻撃の手を緩めるな!! エリーはお前に攻撃こそしないが……急所に一撃、寸止めを入れられたと見ればお前の負けとする!!」
ヴィクターが、攻撃を躊躇うグロウに念の為声を掛ける。
攻撃の手を緩めるということは、そのまま自分の生命を守る防御も同時に緩めるということ。組手であり生命の遣り取りではないにせよ、そこは真剣に、強い気持ちで断行せねば鍛錬にならない。
「――わかってるよっ!!」
グロウは、迷いを振り切り、再び辺りの枯れ葉を練気を纏わせてより集め、乱舞させつつ撃ち放った!!
「――ふっふ~ん……二度同じ手は、食わないわよッ!!」
そう気迫と共に声を発すると同時に、エリーは練気で火炎を全身に猛烈な勢いで纏った。元々攻撃的な火力を誇るエリーの炎。飛んでくる枯れ葉は練気で強度を増しているとはいえ、一枚残らず灰となった。
「――よっしゃ! ふっ――――!!」
さらに、炎を纏ったまま駆け出し、グロウへと近付く。これでは枯れ葉程度の攻撃は効きそうにない。距離を詰められればグロウの立つ瀬は無い。
「――岩たちよっ!!
今度はグロウは、地面に手を付き、岩が敷き詰められている地に練気を念じた!!
「――おわっ!?」
突如、エリーの足元の岩が激しく隆起し、エリーを宙へと突き上げた!!
「――なるほど、葉っぱじゃあ燃えるから今度は岩ってわけね!!」
グロウの作戦を見て賞賛しつつも、ただの岩程度なら全て叩き割るつもりでいるエリー。空中でも火炎の噴射エネルギーでバランスを取り、拳を構える――――
「――――増殖、そして活性化だ――――ッ!!」
すると、グロウはさらに飛び上がった岩に念じた。
膨大な練気エネルギーによって、岩の強度がとてつもなく硬くなった! さらに、岩の中に含まれる鉄分を増殖、及び活性化し、岩はなんと巨大な鉄塊と化した――――
――――お誂え向きとばかりに、その鉄塊からは鋭く巨大な棘が伸び、エリーを四方八方から閉じ込めるように飛んでくる――――
「――えっ、ええ~……っ? そこまでするぅ~…………!?」
――さすがにこれにはエリーも危険を感じた。
「うおおっ、ドリャリャッ!!」
素早く、鉄塊を拳と蹴りで強く打つが、強度は凄まじく、ヒビひとつ入らない。
グロウ相手にそこまで高めるまでも無いと高を括っていたが、急遽練気の開放度を高める――――
「――エリーッ!!」
ガイが思わず叫ぶが、刹那の間にエリーは鉄塊に全方向から押し潰された――――
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