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第42話 闖入者
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「――っと……こ、これは――――」
メランがエリーとライネスの近くへ辿り着いた時、既にバルザックと改子も来ていた。
「――な、なんてすげえ力のぶつかり合いなの……」
「ぐぬぬ、ライネスの野郎、やっぱ大当たりを引きやがって。それにあの赤い練気……どうやら戦ってる、あのエリーとかいう姉ちゃんをコピーしたみてえだな……ま、益々強くなりやがって……ずりぃぜ!!」
バルザックと改子は、目の前の脅威と驚異に目を爛々とぎらつかせ、闘いの行方を視る。
「――ぐぐぐッ……でやああああああああ!!」
「オオオラアオラアアアアーーーーッ!!」
エリーとライネス。2人の戦闘戦徒は猛り、叫び、互いの血をぶちまけながら宙を突っ切って激突し続けている。
――――だが――――
(――ひゃ、100、%……何度打ち合えば、倒せるの……だ、駄目…………もう、あたしの意識が――――)
(――すげえ! すげえ、すげえ、すげえぞ!! 60%ぐらいは模倣出来た…………こんな闘いを、こんな気の昂りを味わえるなんて、夢みてえだ!! ――――このまま、死ぬまで遊んでやる。)
――エリーは『鬼』の力の制御が利かなくなりつつあり、ライネスは最早自らの生命をこのまま投げ打つ気だ――――高まり過ぎた闘争心が、破滅と暴走を招く――――
「――はっ……あれ、は――――」
メランに抱えられたグロウは、意識を取り戻し、目の前の戦火を見た。エリーが、危ない――――
「――お姉ちゃん!! 僕だよ、グロウ=アナジストンだよ!! しっかり!! 自分を見失っちゃ、駄目だあーーーッ!!」
「――グロウ!? うっ……頭が溶ける……ホントにグロウなの…………!?」
エリーは、手放しかけた意識を、グロウの声で辛うじて留めたが、高まり過ぎた力は、簡単には止まらない。依然として自我を失いそうになる。
「――あのガキ。生きてたんかあ…………今、サイッコーにいい気分なんだよ! 邪魔すんじゃあねえッ!!」
ライネスもグロウに気付いた。
「――エリーお姉ちゃーんッ!! 正気に戻って…………『鬼』になんかなっちゃ駄目だーーーーッッッ!!」
「グロウ…………うっ、ううううっ――――」
「――あのガキぃ~――――ッ!!」
エリーは、何とか意識を保とうと、力の開放度を落とす。それを見て――――ライネスは憤り、グロウのもとまで飛び降りて来た――――
「ひっ――――」
「――邪魔すんなっつってんだろが、ガキィッ!! ――――メラン、このガキ、殺っちまえ。そうすりゃあ、あのエリーとかいう姉ちゃんが本気を出せんだよ――――」
――尋常ではない圧を放ったままのライネス。目の前に近付かれただけで、グロウは気を失ってしまいそうになる。
――――だが――――
「――えっ? そ、そ、そうなのン…………?」
メランが、躊躇う。
これまで生命の重さを毛ほども考えず、目を付けた者は蹂躙して鏖殺してきたはずの戦闘狂の一人――――メランが、何故か、手を下せない。
「――? 何やってんだメラン! そんなガキ殺っちまえ!! 目の前で殺して見せねえと本気で戦わねえ奴とも散々戦ってきただろうが!!」
「――そ、そう、よねん…………だ、だけど……何だか――――」
――メランは、ナイフをグロウの首にあてがいながらも、手を下せない。躊躇している。
(――な、何なのン、この感覚は…………い、今まで何度となく殺ってきたじゃあないの! 何故――――こんなに手が震えて、動かないの――――!?)
ナイフを持つ手が震え、まごつくメラン。ライネスは、争気をそのままに漲らせたまま、叫ぶ。
「――もういいッ!! そいつ、こっちに渡せ! 俺が殺る――――!!」
「あっ――――」
ライネスは、グロウを乱暴に引っ掴み、引き寄せる。怪力のあまり、捕縛していた蔦がぶちぶちっ、と千切れた。
「――あ……あ…………」
グロウは怯えすくみ、捕縛が無くとも身体が動かない――――
「――俺らが楽しめるのは戦いだけなんでなあ――――あばよ――――」
そう告げて、ライネスは拳を振りかぶった――――
「――――どっせえええええええええええいいいいいッッッ!!」
「!?」
唐突に、とてつもない大声が響き渡った。
猛るライネスの怒号でも、自我を失ったエリーのものでもない。
快活な、少女の雄叫びだった――――
次の瞬間――――眩い閃光と爆音が辺りを包んだ!!
「うおっ……」
「な、なんじゃあ、こりゃあ――」
ライネスとバルザックが動揺する。
閃光と爆音の正体は――――花火。
祭りの時などに使われる、鮮やかな色彩と光の花火だった。森中のあちこちで炸裂している。
「な……何だ何だ!? 何なんだあ!?」
突然、死合いの場にそぐわない、晴れ晴れとした花火。忽ちライネスは集中を削がれ――――
「ああっ!? せっかく練り上げた『鬼』の練気が――――」
「――うわああああッ!!」
「なっ!?」
ライネスが、練気を乱して力を落とした刹那。グロウは勇気を振り絞り――――先ほどのメランの時と同じく、ライネスの頭を掴み、念じる!!
「――ふうううううう…………っ!!」
「――な、何なんだよ!? 何をされて――――うおおおおおっ!?」
グロウの切望の碧き光が、花火に混じってことさら光り輝く!!
――やがて、グロウは疲労の為か、その場にへたりこんだ。
「――え……? あ…………? 今のは、一体――――」
ライネスもメラン同様、何をされたのか全身を確認しているうちに――――
「――――軍人さーんッ!! こっち向くっスよーーーーッッ!!」
――またも大声。
現れたのは――――何やら紫色の頭巾を被り、ごてごてのストレージだらけの重そうなリュックを背負った、少女だった。
「――な、なんだァ、娘っ子!! 俺らの邪魔すんなら、消えてもらうぜエえい!! 続け、ライネス、改子、メラン!!」
「――え? お、おう――」
「さっきから何なんだよ、糞がッ!!」
「み、みんな待ってン!!」
バルザックが走り出し、他の3人も続く。
「――――今だア!! イロハァ!!」
「――!?」
またも、大声。岩山から聴こえたそれは、今度は野太い男の声だった。イロハと呼んだ少女と似た、黒い頭巾にこちらも重そうなリュックを背負っている――――
「――にひひひひぃ~。消えてもらうのは、そっちの方っス、よっ!! ――――喰らえ!! 転移玉ッ!!」
少女は、一瞬男の声に気を取られたライネスたちに、謎の虹色の玉を投げつけた!!
「――うおおおっ!?」
「ぬおおおお!!」
「わああああ!?」
「きゃんっ!!」
虹色の玉から、強烈な音と光――――巨大な鳥が泣き喚くような甲高い音と、ただただ真っ白い光が放たれ、4人を包んだ。
光が収束した、次の瞬間――――光に包まれた4人は、光ごと、何処か遠くへ飛んで行ってしまった――――
「――さあって……残ったのは、あの飛んでるピンクの姉さんっスね。ちょっと話を――――うん?」
「――――ウウウウウッ…………があああああああッ!!」
「うわっちちちっちち!!」
――ライネスたちを何とか放逐しつつも、今度はエリーがとうとう『鬼』の力を抑えきれなくなったのか、口から火炎を吐きつけて来た!!
熱を感じつつも、辛うじて躱す、イロハと呼ばれた謎の少女。
「――ありゃああ~……こりゃあ、頭カンカンにイッちまってるっスねえ~っ……聞く耳持たないっていうか、正気失ってるっぽいっス?」
高揚が抑えきれないエリーは、地上に降り、なおもイロハに飛び掛かる――――
「ガアアアッ!!」
「せやッ!!」
――――小柄な身体に、重装備なことを微塵も感じさせないほど軽やかな動きで、冷静にエリーの猛襲を躱す。
「――イロハァーッ!! 一旦、気を鎮めさせるんだアーーーーッ!!」
岩山から、男が叫ぶ。
「言われなくっても……そのつもりっスよ、親父ぃっ!!」
なんと、イロハはこの狂戦士状態のエリーと対峙しても、全く臆さず――――背に担いだどでかいハンマーを両手に握り、走り出した――――!!
「――これで鎮まるっス――――どりゃああああああああああああ!!」
振りかぶったハンマーで、エリーの脳天をカチ割った――――!!
メランがエリーとライネスの近くへ辿り着いた時、既にバルザックと改子も来ていた。
「――な、なんてすげえ力のぶつかり合いなの……」
「ぐぬぬ、ライネスの野郎、やっぱ大当たりを引きやがって。それにあの赤い練気……どうやら戦ってる、あのエリーとかいう姉ちゃんをコピーしたみてえだな……ま、益々強くなりやがって……ずりぃぜ!!」
バルザックと改子は、目の前の脅威と驚異に目を爛々とぎらつかせ、闘いの行方を視る。
「――ぐぐぐッ……でやああああああああ!!」
「オオオラアオラアアアアーーーーッ!!」
エリーとライネス。2人の戦闘戦徒は猛り、叫び、互いの血をぶちまけながら宙を突っ切って激突し続けている。
――――だが――――
(――ひゃ、100、%……何度打ち合えば、倒せるの……だ、駄目…………もう、あたしの意識が――――)
(――すげえ! すげえ、すげえ、すげえぞ!! 60%ぐらいは模倣出来た…………こんな闘いを、こんな気の昂りを味わえるなんて、夢みてえだ!! ――――このまま、死ぬまで遊んでやる。)
――エリーは『鬼』の力の制御が利かなくなりつつあり、ライネスは最早自らの生命をこのまま投げ打つ気だ――――高まり過ぎた闘争心が、破滅と暴走を招く――――
「――はっ……あれ、は――――」
メランに抱えられたグロウは、意識を取り戻し、目の前の戦火を見た。エリーが、危ない――――
「――お姉ちゃん!! 僕だよ、グロウ=アナジストンだよ!! しっかり!! 自分を見失っちゃ、駄目だあーーーッ!!」
「――グロウ!? うっ……頭が溶ける……ホントにグロウなの…………!?」
エリーは、手放しかけた意識を、グロウの声で辛うじて留めたが、高まり過ぎた力は、簡単には止まらない。依然として自我を失いそうになる。
「――あのガキ。生きてたんかあ…………今、サイッコーにいい気分なんだよ! 邪魔すんじゃあねえッ!!」
ライネスもグロウに気付いた。
「――エリーお姉ちゃーんッ!! 正気に戻って…………『鬼』になんかなっちゃ駄目だーーーーッッッ!!」
「グロウ…………うっ、ううううっ――――」
「――あのガキぃ~――――ッ!!」
エリーは、何とか意識を保とうと、力の開放度を落とす。それを見て――――ライネスは憤り、グロウのもとまで飛び降りて来た――――
「ひっ――――」
「――邪魔すんなっつってんだろが、ガキィッ!! ――――メラン、このガキ、殺っちまえ。そうすりゃあ、あのエリーとかいう姉ちゃんが本気を出せんだよ――――」
――尋常ではない圧を放ったままのライネス。目の前に近付かれただけで、グロウは気を失ってしまいそうになる。
――――だが――――
「――えっ? そ、そ、そうなのン…………?」
メランが、躊躇う。
これまで生命の重さを毛ほども考えず、目を付けた者は蹂躙して鏖殺してきたはずの戦闘狂の一人――――メランが、何故か、手を下せない。
「――? 何やってんだメラン! そんなガキ殺っちまえ!! 目の前で殺して見せねえと本気で戦わねえ奴とも散々戦ってきただろうが!!」
「――そ、そう、よねん…………だ、だけど……何だか――――」
――メランは、ナイフをグロウの首にあてがいながらも、手を下せない。躊躇している。
(――な、何なのン、この感覚は…………い、今まで何度となく殺ってきたじゃあないの! 何故――――こんなに手が震えて、動かないの――――!?)
ナイフを持つ手が震え、まごつくメラン。ライネスは、争気をそのままに漲らせたまま、叫ぶ。
「――もういいッ!! そいつ、こっちに渡せ! 俺が殺る――――!!」
「あっ――――」
ライネスは、グロウを乱暴に引っ掴み、引き寄せる。怪力のあまり、捕縛していた蔦がぶちぶちっ、と千切れた。
「――あ……あ…………」
グロウは怯えすくみ、捕縛が無くとも身体が動かない――――
「――俺らが楽しめるのは戦いだけなんでなあ――――あばよ――――」
そう告げて、ライネスは拳を振りかぶった――――
「――――どっせえええええええええええいいいいいッッッ!!」
「!?」
唐突に、とてつもない大声が響き渡った。
猛るライネスの怒号でも、自我を失ったエリーのものでもない。
快活な、少女の雄叫びだった――――
次の瞬間――――眩い閃光と爆音が辺りを包んだ!!
「うおっ……」
「な、なんじゃあ、こりゃあ――」
ライネスとバルザックが動揺する。
閃光と爆音の正体は――――花火。
祭りの時などに使われる、鮮やかな色彩と光の花火だった。森中のあちこちで炸裂している。
「な……何だ何だ!? 何なんだあ!?」
突然、死合いの場にそぐわない、晴れ晴れとした花火。忽ちライネスは集中を削がれ――――
「ああっ!? せっかく練り上げた『鬼』の練気が――――」
「――うわああああッ!!」
「なっ!?」
ライネスが、練気を乱して力を落とした刹那。グロウは勇気を振り絞り――――先ほどのメランの時と同じく、ライネスの頭を掴み、念じる!!
「――ふうううううう…………っ!!」
「――な、何なんだよ!? 何をされて――――うおおおおおっ!?」
グロウの切望の碧き光が、花火に混じってことさら光り輝く!!
――やがて、グロウは疲労の為か、その場にへたりこんだ。
「――え……? あ…………? 今のは、一体――――」
ライネスもメラン同様、何をされたのか全身を確認しているうちに――――
「――――軍人さーんッ!! こっち向くっスよーーーーッッ!!」
――またも大声。
現れたのは――――何やら紫色の頭巾を被り、ごてごてのストレージだらけの重そうなリュックを背負った、少女だった。
「――な、なんだァ、娘っ子!! 俺らの邪魔すんなら、消えてもらうぜエえい!! 続け、ライネス、改子、メラン!!」
「――え? お、おう――」
「さっきから何なんだよ、糞がッ!!」
「み、みんな待ってン!!」
バルザックが走り出し、他の3人も続く。
「――――今だア!! イロハァ!!」
「――!?」
またも、大声。岩山から聴こえたそれは、今度は野太い男の声だった。イロハと呼んだ少女と似た、黒い頭巾にこちらも重そうなリュックを背負っている――――
「――にひひひひぃ~。消えてもらうのは、そっちの方っス、よっ!! ――――喰らえ!! 転移玉ッ!!」
少女は、一瞬男の声に気を取られたライネスたちに、謎の虹色の玉を投げつけた!!
「――うおおおっ!?」
「ぬおおおお!!」
「わああああ!?」
「きゃんっ!!」
虹色の玉から、強烈な音と光――――巨大な鳥が泣き喚くような甲高い音と、ただただ真っ白い光が放たれ、4人を包んだ。
光が収束した、次の瞬間――――光に包まれた4人は、光ごと、何処か遠くへ飛んで行ってしまった――――
「――さあって……残ったのは、あの飛んでるピンクの姉さんっスね。ちょっと話を――――うん?」
「――――ウウウウウッ…………があああああああッ!!」
「うわっちちちっちち!!」
――ライネスたちを何とか放逐しつつも、今度はエリーがとうとう『鬼』の力を抑えきれなくなったのか、口から火炎を吐きつけて来た!!
熱を感じつつも、辛うじて躱す、イロハと呼ばれた謎の少女。
「――ありゃああ~……こりゃあ、頭カンカンにイッちまってるっスねえ~っ……聞く耳持たないっていうか、正気失ってるっぽいっス?」
高揚が抑えきれないエリーは、地上に降り、なおもイロハに飛び掛かる――――
「ガアアアッ!!」
「せやッ!!」
――――小柄な身体に、重装備なことを微塵も感じさせないほど軽やかな動きで、冷静にエリーの猛襲を躱す。
「――イロハァーッ!! 一旦、気を鎮めさせるんだアーーーーッ!!」
岩山から、男が叫ぶ。
「言われなくっても……そのつもりっスよ、親父ぃっ!!」
なんと、イロハはこの狂戦士状態のエリーと対峙しても、全く臆さず――――背に担いだどでかいハンマーを両手に握り、走り出した――――!!
「――これで鎮まるっス――――どりゃああああああああああああ!!」
振りかぶったハンマーで、エリーの脳天をカチ割った――――!!
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