34 / 223
第33話 無意識を超えた意志の力
しおりを挟む
バルザックが深く長い呼吸を整えると――――謎の『圧』と共に、俄かに身体中に光を帯び始めた。
その光はまるで――――
「――俺の回復法術と同じ……いやそれ以上だと!?」
青白い光はバルザックを中心に幾重にも螺旋を描くように回転する軌跡が動き…………みるみるうちに傷が塞がり、出血も治まっていく!!
それはガイが使う回復法術と似通っていたが――――質も量も格上のように思える。急速にダメージを回復させていく……。
「――ふう~っ……ざっとこんなもんさア。こいつが1つ目の手品だ。大抵の傷は、この通り! 大怪我程度ならちょいと練気を集中させるだけで新品同然まで治せる。そのせいか俺らは他人だけでなく……自分のダメージに対する意識が薄くなっちまってなア!! ムグハハハハ!! つい戦いすぎちまうのよ!」
「ん、んな無茶苦茶な――――」
「そして練気は俺ら4人とも使える。全員が俺ぐらいの回復力は持ってる――――練気は、術者の精神力で幾らでもデタラメな能力を開発できるんだぜエ。お前さんにも少しは練気が身体から出てるのが見えるが――――まぁだまだ自分のモノに出来てねえようだな……エネルギーが垂れ流しの状態程度だ。全くもって勿体ねえッ!!」
「――――ッ」
ガイは、絶句した。
『神の御業』と伝えられ、ガイにとって渋々とはいえ鍛錬の末身に付けた回復法術の力。
それはまだ全く会得し切れていなかったこと。チャクラとやらの力のほんの一端に過ぎないこと。練気はバルザック=クレイド然りライネス=ドラグノン、目亘改子、メラン=マリギナ……4人ともが会得しており、その能力は未知数で、人間離れした力を使役していること。
声にも出せず、ガイは内心狼狽するしかなかった。仲間には多少は虚勢を張って、『回復法術は大したことじゃあない』と言いつつ、密かに自信に思っていたが、それを全くと言っていいほど使いこなせていないこと。そして予想を遙かに上回る、敵の実力に――――
「――そしてエエエエエエエエッッッ!!」
「おわっ、あっ!?」
突然、バルザックが大声を上げ、練気を高めて念じると――――突然、ガイの握る2本の刀が重くなった!!
否、重くなっただけではない。
刀が強烈な力で、バルザックに引き寄せられる!!
「なッ……くっ…………この…………ッ!!」
ガイは必死に刀を離すまいと力を込めて握るが、引き寄せる力はあまりにも強すぎる。ガイの両足が地面の土を抉りながら、バルザックに近付いてしまう…………!
「はっはあッ!!」
「くあッ……!」
さらにバルザックが強く念じると――――とうとうガイの両手から2本とも離れ、宙を飛んでバルザックの両掌に張り付いた!!
「――俺の練気の能力は……俺の身体を中心に磁力を操る力だ。相手が金属質の武具を装備していればしているほど良い。フルパワーで念じれば戦闘機だって引っ張れるさア。相手が全身鎧でも着てるようなら、そのままミートマッシャーみてえに圧殺だな、くくく……これが2つ目の手品さ。」
「ち、畜生…………ッ」
ガイは得物をいともたやすく奪い取られ。最早戦う術も皆無に等しい。服の中に仕込んである剃刀やナイフなどの暗器も、バルザックが使う磁力で捻じ曲がってしまった。防護材も金属質の物がいかれてしまい、身体の重心バランスも上手く取れない。
「――さアてェ……どうする? どうするんだ? もう終わりか? 俺を楽しませてくれる時間はもう終わりかい、エエ!?」
――凄むバルザックを前に、とうとう、ガイは余裕を完全に失い、冷静な思考を手放してしまった――――
「――ぐっ……クソがああああーーーッ!!」
ガイはやぶれかぶれ。素手で、僅かばかり剣技の次に鍛錬していた徒手空拳による体術という手札に賭け、突撃した。
「――ほほう! 玉砕覚悟たア、胆力はあるなあ!! 俺にゃあ真似出来ねエ!!」
「ふっ、うおおりゃあッ!!」
ガイはバルザックの手前で一瞬フェイントを加えたステップを踏み、死角から蹴りを浴びせた!!
――――だが、その覚悟や胆力すらも、あまりにも弱い手札であった――――
強烈な打撃音が辺りに響いたが――――
「……くっ……」
分厚い筋肉の塊であるバルザックの強靭な肉体。さらに練気の効果だろうか。尋常ならざる強度。ビリビリと痺れる衝撃を受けたのはガイの右脚の方だった。痛みに苦い声と顔を作る。
――突然、バルザックの創面に、熱が消えた。深い失望の念にも見えた。
「――やれやれ。こいつぁ外れだったなあ。これじゃあ赤子と巨大戦艦だぜ。――――もうお前さんは、俺に蚊ほどもダメージを与えられねえ――――」
「――どらぁっ!!」
ガイは肋骨を狙って素早く二撃、拳によるワンツーを浴びせた。無論、ダメージはない。
「……どうしてくれんだ。」
「せいやあああッ!!」
焼け石に水だが、それでも体術で打ち続けるガイ。
だが、急所を狙った眼球への目潰しに伸ばした手刀でとうとう掴まった。
「――この俺の失望感、絶望感を……一体全体どうしてくれんだああああああああああアアアアアアアアアアアーーーーッッッ!?」
「がッ!!」
そしてバルザックは強烈な力で右手でガイの首根っこ、左手で腰元を掴むと――――ガイへの恨みというより、自分にとって理不尽な運命への怒りか。烈火のような怒気に任せた怒号もそのままに、天高く飛び上がった!!
飛び上がりながら、複雑な回転運動を加えながら宙を豪烈に昇り……そして下る時はその回転運動が何乗にもなるかという速さと圧力を掛ける!! ガイは、ビリビリと全身が軋むのが解った。
「豪破壊衝撃爆砕運動アアアアアアアアアアーーーーーッッッ!!!!」
――――真下に着地し、大地にこれまでで最も大きな破壊音が響き渡った。そしてあまりにも巨大な、あまりにも途方もない圧力がガイの全身を破壊した――――!!
「――ぐッ……ぼあ…………っ!!」
ガイは壮絶な痛みと同時に吐血――――全身の骨も筋肉も内臓も、筆舌し難いほどに爆裂した。四肢が千切れていないのが奇跡的なほどだった。
「――むウンッ!」
そのまま地にガイを投げ捨てるバルザック。
表情は――――闘争の歓喜でも、怒りを、ストレスをぶちまけた後のリラックス状態でもない。
ただただ、失望と虚無感だけだった。
「――はあ~あ……とことん俺ぁついてねえなあああ…………野郎なら少しは骨があると思ってよおおオオオ~……追っかけたのに、蓋を開けりゃあこの程度かいぃ……破壊した感触が全ッッッ然ぬるいぞお~……」
バルザックはまたもさっきのような鬱状態に陥ったのか、倒れ伏すガイの周りをしばし、ぶつぶつと独り言を繰り返しながら歩き回る…………。
>>
>>
>>
――――意識が深淵へと堕ち、生の感覚、痛みすら知覚出来ぬほど死へと向かう、ガイの生命。
――くそっ……畜生、畜生、畜生!!
ここで終わりなんて、認められっか。
だが……このままおっ死ねば…………もう思い悩むことも痛みに苦しむこともなくなるのか――――?
――はは。それもいい加減アリかもな…………。
だが…………そうなったら――――どうなんだっけ?
俺が消えたら――――エリーはどうなんだ――――?
エリー。エリー…………エリー――――エリー。
>>
>>
>>
「――ああ……つれえわ。つれえなあ……ライネスたちは『当たり』を引いたのかねえ。俺だけ外れか。つれえなあ…………」
陰鬱な、仮面のように固まった虚無の顔で歩き回るバルザック。だが、やがてもたげていた首を上げて遠くを見る。
「仕方ねえ。可能性は万に一つも億に一つも京に一つもねえが……他の獲物を追うか…………確か、ライネスの話だと、一番強そうなのは……エリー、とかってピンク髪の女かア……ダメ元で行くか…………」
バルザックは次の目標をエリーに定め、歩き出した。
「――――むん?」
ふと、バルザックは声を漏らした。
左足に違和感を感じ、足元を見遣る――――
「――――!!」
なんと、ガイはバルザックの左足を、しかと掴んでいた!!
「――うご、け……動け……よ…………ぜ、ったい……に…………あ、の……糞、野郎……どもを……いか、せ……いかせ、ちゃ…………うご……け、よ…………おれ、の…………から、だ――――」
――――うわ言を呟き、目の焦点も合っていない。全身は骨という骨は砕け、筋は裂け、内腑は破けている。意識も定まってはいない。
バルザックが何気なく発した『エリー』という言葉がスイッチになったのか。
ガイの中の、エリーに向けた底知れぬ執着心にも似た愛。
その無意識レベルに、細胞レベルに染み付いた悲壮な想いだけが――――無意識のガイの身体を突き動かした。魂の抵抗だ。
(これは――――こいつの練気がさっきまでとはあり得ねえほどに強くなっている……!? 無意識で、第六感的な何かで回復法術を働かせてんのか。いやそれより――――なんでこいつはこれだけ壊し切った身体で…………お、俺の足をこんな力で掴めるってんだ――――!?)
バルザックの目に、最早黄泉の世界に一歩も二歩も踏み込んでいるはずのガイの全身から立ち昇る、極限まで研ぎ澄まされた回復法術の青白い光がハッキリと見える。
「――うっ……うおおっ…………おっ、面白え…………!! ここまでの根性を見せる人間にゃあ、出会ったことがねえッ!! どうせ虫の息だろうが――――最期まで遊んでやるぜ、兄ちゃんよオ!!」
バルザックは己の左足を掴む、粉々に折れているガイの右腕を押し退け、再び構え、練気を集中させた――――!
その光はまるで――――
「――俺の回復法術と同じ……いやそれ以上だと!?」
青白い光はバルザックを中心に幾重にも螺旋を描くように回転する軌跡が動き…………みるみるうちに傷が塞がり、出血も治まっていく!!
それはガイが使う回復法術と似通っていたが――――質も量も格上のように思える。急速にダメージを回復させていく……。
「――ふう~っ……ざっとこんなもんさア。こいつが1つ目の手品だ。大抵の傷は、この通り! 大怪我程度ならちょいと練気を集中させるだけで新品同然まで治せる。そのせいか俺らは他人だけでなく……自分のダメージに対する意識が薄くなっちまってなア!! ムグハハハハ!! つい戦いすぎちまうのよ!」
「ん、んな無茶苦茶な――――」
「そして練気は俺ら4人とも使える。全員が俺ぐらいの回復力は持ってる――――練気は、術者の精神力で幾らでもデタラメな能力を開発できるんだぜエ。お前さんにも少しは練気が身体から出てるのが見えるが――――まぁだまだ自分のモノに出来てねえようだな……エネルギーが垂れ流しの状態程度だ。全くもって勿体ねえッ!!」
「――――ッ」
ガイは、絶句した。
『神の御業』と伝えられ、ガイにとって渋々とはいえ鍛錬の末身に付けた回復法術の力。
それはまだ全く会得し切れていなかったこと。チャクラとやらの力のほんの一端に過ぎないこと。練気はバルザック=クレイド然りライネス=ドラグノン、目亘改子、メラン=マリギナ……4人ともが会得しており、その能力は未知数で、人間離れした力を使役していること。
声にも出せず、ガイは内心狼狽するしかなかった。仲間には多少は虚勢を張って、『回復法術は大したことじゃあない』と言いつつ、密かに自信に思っていたが、それを全くと言っていいほど使いこなせていないこと。そして予想を遙かに上回る、敵の実力に――――
「――そしてエエエエエエエエッッッ!!」
「おわっ、あっ!?」
突然、バルザックが大声を上げ、練気を高めて念じると――――突然、ガイの握る2本の刀が重くなった!!
否、重くなっただけではない。
刀が強烈な力で、バルザックに引き寄せられる!!
「なッ……くっ…………この…………ッ!!」
ガイは必死に刀を離すまいと力を込めて握るが、引き寄せる力はあまりにも強すぎる。ガイの両足が地面の土を抉りながら、バルザックに近付いてしまう…………!
「はっはあッ!!」
「くあッ……!」
さらにバルザックが強く念じると――――とうとうガイの両手から2本とも離れ、宙を飛んでバルザックの両掌に張り付いた!!
「――俺の練気の能力は……俺の身体を中心に磁力を操る力だ。相手が金属質の武具を装備していればしているほど良い。フルパワーで念じれば戦闘機だって引っ張れるさア。相手が全身鎧でも着てるようなら、そのままミートマッシャーみてえに圧殺だな、くくく……これが2つ目の手品さ。」
「ち、畜生…………ッ」
ガイは得物をいともたやすく奪い取られ。最早戦う術も皆無に等しい。服の中に仕込んである剃刀やナイフなどの暗器も、バルザックが使う磁力で捻じ曲がってしまった。防護材も金属質の物がいかれてしまい、身体の重心バランスも上手く取れない。
「――さアてェ……どうする? どうするんだ? もう終わりか? 俺を楽しませてくれる時間はもう終わりかい、エエ!?」
――凄むバルザックを前に、とうとう、ガイは余裕を完全に失い、冷静な思考を手放してしまった――――
「――ぐっ……クソがああああーーーッ!!」
ガイはやぶれかぶれ。素手で、僅かばかり剣技の次に鍛錬していた徒手空拳による体術という手札に賭け、突撃した。
「――ほほう! 玉砕覚悟たア、胆力はあるなあ!! 俺にゃあ真似出来ねエ!!」
「ふっ、うおおりゃあッ!!」
ガイはバルザックの手前で一瞬フェイントを加えたステップを踏み、死角から蹴りを浴びせた!!
――――だが、その覚悟や胆力すらも、あまりにも弱い手札であった――――
強烈な打撃音が辺りに響いたが――――
「……くっ……」
分厚い筋肉の塊であるバルザックの強靭な肉体。さらに練気の効果だろうか。尋常ならざる強度。ビリビリと痺れる衝撃を受けたのはガイの右脚の方だった。痛みに苦い声と顔を作る。
――突然、バルザックの創面に、熱が消えた。深い失望の念にも見えた。
「――やれやれ。こいつぁ外れだったなあ。これじゃあ赤子と巨大戦艦だぜ。――――もうお前さんは、俺に蚊ほどもダメージを与えられねえ――――」
「――どらぁっ!!」
ガイは肋骨を狙って素早く二撃、拳によるワンツーを浴びせた。無論、ダメージはない。
「……どうしてくれんだ。」
「せいやあああッ!!」
焼け石に水だが、それでも体術で打ち続けるガイ。
だが、急所を狙った眼球への目潰しに伸ばした手刀でとうとう掴まった。
「――この俺の失望感、絶望感を……一体全体どうしてくれんだああああああああああアアアアアアアアアアアーーーーッッッ!?」
「がッ!!」
そしてバルザックは強烈な力で右手でガイの首根っこ、左手で腰元を掴むと――――ガイへの恨みというより、自分にとって理不尽な運命への怒りか。烈火のような怒気に任せた怒号もそのままに、天高く飛び上がった!!
飛び上がりながら、複雑な回転運動を加えながら宙を豪烈に昇り……そして下る時はその回転運動が何乗にもなるかという速さと圧力を掛ける!! ガイは、ビリビリと全身が軋むのが解った。
「豪破壊衝撃爆砕運動アアアアアアアアアアーーーーーッッッ!!!!」
――――真下に着地し、大地にこれまでで最も大きな破壊音が響き渡った。そしてあまりにも巨大な、あまりにも途方もない圧力がガイの全身を破壊した――――!!
「――ぐッ……ぼあ…………っ!!」
ガイは壮絶な痛みと同時に吐血――――全身の骨も筋肉も内臓も、筆舌し難いほどに爆裂した。四肢が千切れていないのが奇跡的なほどだった。
「――むウンッ!」
そのまま地にガイを投げ捨てるバルザック。
表情は――――闘争の歓喜でも、怒りを、ストレスをぶちまけた後のリラックス状態でもない。
ただただ、失望と虚無感だけだった。
「――はあ~あ……とことん俺ぁついてねえなあああ…………野郎なら少しは骨があると思ってよおおオオオ~……追っかけたのに、蓋を開けりゃあこの程度かいぃ……破壊した感触が全ッッッ然ぬるいぞお~……」
バルザックはまたもさっきのような鬱状態に陥ったのか、倒れ伏すガイの周りをしばし、ぶつぶつと独り言を繰り返しながら歩き回る…………。
>>
>>
>>
――――意識が深淵へと堕ち、生の感覚、痛みすら知覚出来ぬほど死へと向かう、ガイの生命。
――くそっ……畜生、畜生、畜生!!
ここで終わりなんて、認められっか。
だが……このままおっ死ねば…………もう思い悩むことも痛みに苦しむこともなくなるのか――――?
――はは。それもいい加減アリかもな…………。
だが…………そうなったら――――どうなんだっけ?
俺が消えたら――――エリーはどうなんだ――――?
エリー。エリー…………エリー――――エリー。
>>
>>
>>
「――ああ……つれえわ。つれえなあ……ライネスたちは『当たり』を引いたのかねえ。俺だけ外れか。つれえなあ…………」
陰鬱な、仮面のように固まった虚無の顔で歩き回るバルザック。だが、やがてもたげていた首を上げて遠くを見る。
「仕方ねえ。可能性は万に一つも億に一つも京に一つもねえが……他の獲物を追うか…………確か、ライネスの話だと、一番強そうなのは……エリー、とかってピンク髪の女かア……ダメ元で行くか…………」
バルザックは次の目標をエリーに定め、歩き出した。
「――――むん?」
ふと、バルザックは声を漏らした。
左足に違和感を感じ、足元を見遣る――――
「――――!!」
なんと、ガイはバルザックの左足を、しかと掴んでいた!!
「――うご、け……動け……よ…………ぜ、ったい……に…………あ、の……糞、野郎……どもを……いか、せ……いかせ、ちゃ…………うご……け、よ…………おれ、の…………から、だ――――」
――――うわ言を呟き、目の焦点も合っていない。全身は骨という骨は砕け、筋は裂け、内腑は破けている。意識も定まってはいない。
バルザックが何気なく発した『エリー』という言葉がスイッチになったのか。
ガイの中の、エリーに向けた底知れぬ執着心にも似た愛。
その無意識レベルに、細胞レベルに染み付いた悲壮な想いだけが――――無意識のガイの身体を突き動かした。魂の抵抗だ。
(これは――――こいつの練気がさっきまでとはあり得ねえほどに強くなっている……!? 無意識で、第六感的な何かで回復法術を働かせてんのか。いやそれより――――なんでこいつはこれだけ壊し切った身体で…………お、俺の足をこんな力で掴めるってんだ――――!?)
バルザックの目に、最早黄泉の世界に一歩も二歩も踏み込んでいるはずのガイの全身から立ち昇る、極限まで研ぎ澄まされた回復法術の青白い光がハッキリと見える。
「――うっ……うおおっ…………おっ、面白え…………!! ここまでの根性を見せる人間にゃあ、出会ったことがねえッ!! どうせ虫の息だろうが――――最期まで遊んでやるぜ、兄ちゃんよオ!!」
バルザックは己の左足を掴む、粉々に折れているガイの右腕を押し退け、再び構え、練気を集中させた――――!
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
君を愛することは無いと言うのならさっさと離婚して頂けますか
砂礫レキ
恋愛
十九歳のマリアンは、かなり年上だが美男子のフェリクスに一目惚れをした。
そして公爵である父に頼み伯爵の彼と去年結婚したのだ。
しかし彼は妻を愛することは無いと毎日宣言し、マリアンは泣きながら暮らしていた。
ある日転んだことが切っ掛けでマリアンは自分が二十五歳の日本人女性だった記憶を取り戻す。
そして三十歳になるフェリクスが今まで独身だったことも含め、彼を地雷男だと認識した。
「君を愛することはない」「いちいち言わなくて結構ですよ、それより離婚して頂けます?」
別人のように冷たくなった新妻にフェリクスは呆然とする。別人のように冷たくなった新妻にフェリクスは呆然とする。
そして離婚について動くマリアンに何故かフェリクスの弟のラウルが接近してきた。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】
一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。
しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。
ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。
以前投稿した短編
【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて
の連載版です。
連載するにあたり、短編は削除しました。
セブンス・ヘブンズ・オーソリティ -SEVENTH HEAVEN'S AUTHORITY-
ヴァルヴィリヤ=B=リースフェルト
ファンタジー
とある北欧の小さな村に住む少年は、幼き頃より類まれなる魔法の才覚を備えていた。ところがある日、神様の実験台に選ばれた彼は、この世界の<主人公>にされてしまう。
神々の緞帳の向こうに隠されたこの世界の綻びを解き明かすべく、彼は魔法研究のために高等学院へ通うことになる。そこで沢山の仲間と出会っていく中で、彼と同じように天啓を受けた一人目の<登場人物>を見つける。
そして彼は初めて神様の課題を知る。
『世界はあと五年で崩壊する。七人の賢者で世界を救え』と。
神様の課題に立ち向かう選ばれし開拓者(スティリスタ)たち――七人の賢者。
どうすれば世界の崩壊を食い止めることができるのか、世界の理そのものに抗うべく、魔法の成り立ちや仕組みを科学的・化学的に解明し、彼がたどり着いた答えは――想像を遥かに超える、まさに驚愕すべき世界の真実が明らかになる。
魔法とは一体何なのか。
神様とは一体何なのか。
世界とは一体何なのか。
身を滅ぼしかねないほど知的好奇心の旺盛過ぎる少年と、その個性的過ぎる仲間たちによる、魔法と理系(とロマンス)が交錯する稀代の北欧ハイファンタジー冒険譚。
世界の秘密を知ってしまった少年たちの末路や如何に。
『さあ、君の世界をはじめよう』
今、未曾有の伝説が始まろうとしている――
小袖の花づくし判じ物
スーパーちょぼ:インフィニタス♾
大衆娯楽
江戸の町を舞台に呉服屋の店主 小袖 がアームチェア・ディテクティブに挑んでみたはいいものの――。はたしてミステリ初心者小袖の謎解きは一体何処へ向かうのか?
1話1000字前後を目安に全7話(+あとがき)。
少し不思議で滑稽な江戸時代風謎解きファンタジーです。
ところどころにオーパーツがまじっておりますが、ご笑納いただけますと幸いです◎
転生一九三六〜戦いたくない八人の若者たち〜
紫 和春
SF
二〇二〇年の現代から、一九三六年の世界に転生した八人の若者たち。彼らはスマートフォンでつながっている。
第二次世界大戦直前の緊張感が高まった世界で、彼ら彼女らはどのように歴史を改変していくのか。
後宮の棘
香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。
☆完結しました☆
スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。
第13回ファンタジー大賞特別賞受賞!
ありがとうございました!!
レジェンド・オブ・ダーク 遼州司法局異聞
橋本 直
SF
地球人類が初めて地球外人類と出会った辺境惑星『遼州』の連合国家群『遼州同盟』。
その有力国のひとつ東和共和国に住むごく普通の大学生だった神前誠(しんぜんまこと)。彼は就職先に困り、母親の剣道場の師範代である嵯峨惟基を頼り軍に人型兵器『アサルト・モジュール』のパイロットの幹部候補生という待遇でなんとか入ることができた。
しかし、基礎訓練を終え、士官候補生として配属されたその嵯峨惟基が部隊長を務める部隊『遼州同盟司法局実働部隊』は巨大工場の中に仮住まいをする肩身の狭い状況の部隊だった。
さらに追い打ちをかけるのは個性的な同僚達。
直属の上司はガラは悪いが家柄が良いサイボーグ西園寺かなめと無口でぶっきらぼうな人造人間のカウラ・ベルガーの二人の女性士官。
他にもオタク趣味で意気投合するがどこか食えない女性人造人間の艦長代理アイシャ・クラウゼ、小さな元気っ子野生農業少女ナンバルゲニア・シャムラード、マイペースで人の話を聞かないサイボーグ吉田俊平、声と態度がでかい幼女にしか見えない指揮官クバルカ・ランなど個性の塊のような面々に振り回される誠。
しかも人に振り回されるばかりと思いきや自分に自分でも自覚のない不思議な力、「法術」が眠っていた。
考えがまとまらないまま初めての宇宙空間での演習に出るが、そして時を同じくして同盟の存在を揺るがしかねない同盟加盟国『胡州帝国』の国権軍権拡大を主張する独自行動派によるクーデターが画策されいるという報が届く。
誠は法術師専用アサルト・モジュール『05式乙型』を駆り戦場で何を見ることになるのか?そして彼の昇進はありうるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる