悪役令息の三下取り巻きに転生したけれど、チートがすごすぎて三下になりきれませんでした

三下モブに転生

「ぶべらっ」

　俺はある少年に殴られた勢いに任せて、宙を舞っている最中である。

　そして、無様に地に体を打ち付け、手入れが行き届いた芝生の上をゴロゴロと転がった。

　俺の名はドコニ・デモイル。10歳。

　デモイル伯爵家の三男で、容姿は黒髪、黒目、一重に薄い唇、どこにいても目立たない群衆にふさわしい平凡顔の持ち主だ。

「俺に命令するな！」

　大きな声で叫んでいる少年が俺を殴ったモラハ・ラスゴイ。俺と同じ10歳だ。

　ラスゴイ公爵家の嫡男であり、金髪のデブで嫌なことがあれば暴力に訴えてくるお子様である。まぁ、事実お子様なんだけど。

　今日は10歳くらいか少し上くらいの貴族の子息が集められている。それはモラハ・ラスゴイの側近選別のために顔見せを兼ねた大事なパーティーだからだ。

　その席で俺は公爵家に取り入るよう親に言われていたこともあり、モラハ様に近づいたのだがあっけなく失敗したわけだ。

　体を立て直し起き上がろうとすると、生ぬるい血が鼻から流れるのがわかった。

「っ？！」

　そして思い出したのだ。ここではない世界の記憶というものを。

　平凡な人生の記憶がよみがえりその人生はある事故を境に途中からぷつりとなくなっていた。

　そして、女神様に出会い……あ、記憶を思い出してから最初に見た人物。

　クリームパンのような手を前に突き出したモラハ様が俺を睨みつけている。

　俺はすでに人生を詰んだかもしれない。