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変な子

第11話 愚者の石 ①

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 ──そしてその日、その異常性が原因で、私は人生で初めてとなる友達との喧嘩というものを経験した。

「もう嫌だ!! ジーンくんしつこい!!」

 人のことを怒鳴りつけるなんて、自分には縁のない話だと思っていた。

 ──少し前に遡る。

***

 純水を作った後、いくつか参考書を読ませてもらい、ジーンくんに教わりながらシェリーさんからもらった赤い宝石──紅玉魔石の調合にとりかかっていた。

「エホオノ モロヨ」

 ルベラ鉱石、レッドリザードの鱗、弾ける種を鍋に入れて呪文を唱える。

「スンウッソ ダイカ」

 鍋が光り、魔道具が出来上がったかと思ったその時、ぼんと鍋が爆発して黒い煙が上がった。

「けほっ、こほっ……、あれ!? なにこれ!?」

 鍋の蓋を開けるとそこには真っ黒な石があった。

「それは愚者の石だ」

 特に怪我のひとつもしていないけれど、青ポーションをもらう。完成品を確かめる。

 不思議な熱を持ったその黒い石は、少し力を入れただけで簡単に形を変える柔らかさを持っていた。

「愚者の石ってどれだっけ?」
「このページの……」

 調術の参考者を手に取り捲る。難度の高い魔道具を作ると失敗することがあり、その際に出来るのがこの愚者の石。

 さまざまなエレメントがばらばらになり歪に結びついた塊だとか。

「何がダメだったかな? かき混ぜ方? 温度? イメージ?」
「純粋な経験値不足」

 どうやら、ある程度調合に慣れていないと作れない魔道具だったようだ。

「そっか……。せっかく取ってきた素材だったのに、無駄にしちゃってごめんなさい」

 少し調子に乗っていたかもしれない。少し落ち込む。
 頭を下げると、ジーンくんは手を──彷徨わせ、結局その手を引っ込めた。

「お前、落ち着いてると真面目で良い子ってかんじだよな。なんで家出なんてしてんだ」

 失敗したのに何か褒められたかと思っていたら、不意打ちで問題の根本に触れられてしまう。

「……ごめんなさい」
「俺に言われても……」

 ごもっともなことを言われて思わず肩を落とす。

「じゃなく……なんだ、その……込み入った事情が有るのは察しがつくというか……、上手く慰めの言葉が……、苦手なんだそういうのは」

 視線をあちらこちらへ彷徨わせて、口ごもりながらジーンくんは気まずそうに俯いた。

 そういった仕草から、なんとなく人となりが分かってきた。

 大人っぽいし、調合魔法に関しては先輩だけど、不器用な歳下の男の子なんだ。そうだと思うと、少し歳上ぶりたくなる。

 少し背伸びをして手を伸ばして頭に手を置こうとすると、ぐいと止められた。
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