11 / 12
変な子
第11話 愚者の石 ①
しおりを挟む
──そしてその日、その異常性が原因で、私は人生で初めてとなる友達との喧嘩というものを経験した。
「もう嫌だ!! ジーンくんしつこい!!」
人のことを怒鳴りつけるなんて、自分には縁のない話だと思っていた。
──少し前に遡る。
***
純水を作った後、いくつか参考書を読ませてもらい、ジーンくんに教わりながらシェリーさんからもらった赤い宝石──紅玉魔石の調合にとりかかっていた。
「エホオノ モロヨ」
ルベラ鉱石、レッドリザードの鱗、弾ける種を鍋に入れて呪文を唱える。
「スンウッソ ダイカ」
鍋が光り、魔道具が出来上がったかと思ったその時、ぼんと鍋が爆発して黒い煙が上がった。
「けほっ、こほっ……、あれ!? なにこれ!?」
鍋の蓋を開けるとそこには真っ黒な石があった。
「それは愚者の石だ」
特に怪我のひとつもしていないけれど、青ポーションをもらう。完成品を確かめる。
不思議な熱を持ったその黒い石は、少し力を入れただけで簡単に形を変える柔らかさを持っていた。
「愚者の石ってどれだっけ?」
「このページの……」
調術の参考者を手に取り捲る。難度の高い魔道具を作ると失敗することがあり、その際に出来るのがこの愚者の石。
さまざまなエレメントがばらばらになり歪に結びついた塊だとか。
「何がダメだったかな? かき混ぜ方? 温度? イメージ?」
「純粋な経験値不足」
どうやら、ある程度調合に慣れていないと作れない魔道具だったようだ。
「そっか……。せっかく取ってきた素材だったのに、無駄にしちゃってごめんなさい」
少し調子に乗っていたかもしれない。少し落ち込む。
頭を下げると、ジーンくんは手を──彷徨わせ、結局その手を引っ込めた。
「お前、落ち着いてると真面目で良い子ってかんじだよな。なんで家出なんてしてんだ」
失敗したのに何か褒められたかと思っていたら、不意打ちで問題の根本に触れられてしまう。
「……ごめんなさい」
「俺に言われても……」
ごもっともなことを言われて思わず肩を落とす。
「じゃなく……なんだ、その……込み入った事情が有るのは察しがつくというか……、上手く慰めの言葉が……、苦手なんだそういうのは」
視線をあちらこちらへ彷徨わせて、口ごもりながらジーンくんは気まずそうに俯いた。
そういった仕草から、なんとなく人となりが分かってきた。
大人っぽいし、調合魔法に関しては先輩だけど、不器用な歳下の男の子なんだ。そうだと思うと、少し歳上ぶりたくなる。
少し背伸びをして手を伸ばして頭に手を置こうとすると、ぐいと止められた。
「もう嫌だ!! ジーンくんしつこい!!」
人のことを怒鳴りつけるなんて、自分には縁のない話だと思っていた。
──少し前に遡る。
***
純水を作った後、いくつか参考書を読ませてもらい、ジーンくんに教わりながらシェリーさんからもらった赤い宝石──紅玉魔石の調合にとりかかっていた。
「エホオノ モロヨ」
ルベラ鉱石、レッドリザードの鱗、弾ける種を鍋に入れて呪文を唱える。
「スンウッソ ダイカ」
鍋が光り、魔道具が出来上がったかと思ったその時、ぼんと鍋が爆発して黒い煙が上がった。
「けほっ、こほっ……、あれ!? なにこれ!?」
鍋の蓋を開けるとそこには真っ黒な石があった。
「それは愚者の石だ」
特に怪我のひとつもしていないけれど、青ポーションをもらう。完成品を確かめる。
不思議な熱を持ったその黒い石は、少し力を入れただけで簡単に形を変える柔らかさを持っていた。
「愚者の石ってどれだっけ?」
「このページの……」
調術の参考者を手に取り捲る。難度の高い魔道具を作ると失敗することがあり、その際に出来るのがこの愚者の石。
さまざまなエレメントがばらばらになり歪に結びついた塊だとか。
「何がダメだったかな? かき混ぜ方? 温度? イメージ?」
「純粋な経験値不足」
どうやら、ある程度調合に慣れていないと作れない魔道具だったようだ。
「そっか……。せっかく取ってきた素材だったのに、無駄にしちゃってごめんなさい」
少し調子に乗っていたかもしれない。少し落ち込む。
頭を下げると、ジーンくんは手を──彷徨わせ、結局その手を引っ込めた。
「お前、落ち着いてると真面目で良い子ってかんじだよな。なんで家出なんてしてんだ」
失敗したのに何か褒められたかと思っていたら、不意打ちで問題の根本に触れられてしまう。
「……ごめんなさい」
「俺に言われても……」
ごもっともなことを言われて思わず肩を落とす。
「じゃなく……なんだ、その……込み入った事情が有るのは察しがつくというか……、上手く慰めの言葉が……、苦手なんだそういうのは」
視線をあちらこちらへ彷徨わせて、口ごもりながらジーンくんは気まずそうに俯いた。
そういった仕草から、なんとなく人となりが分かってきた。
大人っぽいし、調合魔法に関しては先輩だけど、不器用な歳下の男の子なんだ。そうだと思うと、少し歳上ぶりたくなる。
少し背伸びをして手を伸ばして頭に手を置こうとすると、ぐいと止められた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]
ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。
「さようなら、私が産まれた国。
私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」
リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる──
◇婚約破棄の“後”の話です。
◇転生チート。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^
◇なので感想欄閉じます(笑)
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
私が産まれる前に消えた父親が、隣国の皇帝陛下だなんて聞いてない
丙 あかり
ファンタジー
ハミルトン侯爵家のアリスはレノワール王国でも有数の優秀な魔法士で、王立学園卒業後には婚約者である王太子との結婚が決まっていた。
しかし、王立学園の卒業記念パーティーの日、アリスは王太子から婚約破棄を言い渡される。
王太子が寵愛する伯爵令嬢にアリスが嫌がらせをし、さらに魔法士としては禁忌である『魔法を使用した通貨偽造』という理由で。
身に覚えがないと言うアリスの言葉に王太子は耳を貸さず、国外追放を言い渡す。
翌日、アリスは実父を頼って隣国・グランディエ帝国へ出発。
パーティーでアリスを助けてくれた帝国の貴族・エリックも何故か同行することに。
祖父のハミルトン侯爵は爵位を返上して王都から姿を消した。
アリスを追い出せたと喜ぶ王太子だが、激怒した国王に吹っ飛ばされた。
「この馬鹿息子が!お前は帝国を敵にまわすつもりか!!」
一方、帝国で仰々しく迎えられて困惑するアリスは告げられるのだった。
「さあ、貴女のお父君ーー皇帝陛下のもとへお連れ致しますよ、お姫様」と。
******
週3日更新です。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
私の家族はハイスペックです!
りーさん
ファンタジー
ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。
でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。
こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね!
のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる