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EP01「〔魔女獄門〕事変」
SCENE-032
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「ヘクセンシュウスの社内規定は部外協力者の扱いに寛容だが、さすがにオケアノスの市民登録も終わっていない人外相手に報奨金は出ないぞ」
だからひとまずお前の手柄ということにしておけ、と訳知り顔のユージンが言い添えてくる。
「市民登録、できるの?」
……こんな見てくれでも、中身は正真正銘の魔物なのに?
報奨金云々よりも、むしろそちらの方が、私にとってはよほど気になる情報だ。
「意思疎通が可能なレベルの知能があり、社会に溶け込めるほどの知性を持ち合わせていると認められれば。当面はテイマーないしそれに類するスキルホルダーの後見を必要とするが、オケアノスでは市民登録を認めると、オケアノス憲章の改正案は本社の会議を通ってる。AWOのメンテナンスが終われば正式に発効される予定だ」
「それって……」
ユージンの言っていることが本当だとすれば。
要するに。ヘクセンシュウスの親会社であり、このオケアノスをいずれの国にも属さないフロンティアとして築き上げ、今もなお、国家権力による介入を許すことなく独立を維持しているマレウス・マレフィカルム社は、二つの異なる世界の間に立ちはだかる『壁』が打ち砕かれるこの日と、その後の展開に備え、水面下で着々と準備を進めていた、というわけで。
「……そこまで準備万端調えておいて、こんなところで躓いてるの?」
なんてお粗末な話だろうと、思わず呆れ顔になる私に、ユージンが「まったくだ」と他人事のように答えて寄越す。
「なんにせよ、イユンクスの自称専門家どもが匙を投げた以上、あとはお前があれをどうにかするか、どうにもできずに世界の方がどうにかなるか、だ。責任は本社のお歴々が取るだろうから、せいぜい気楽にやれ」
……世界がどうにかなったら困るから、ひきこもりの廃ゲーマーなのにわざわざこんなところまで出張ってきてるんでしょうが。
「人払いは必要か?」
「別に。これだけ離れてたら大丈夫なんじゃない?」
ねぇ? と尋ねた私に、カガリがにっこりとする。
「そうだね。巻き込んでも僕は気にならないし」
……いや、私は気にするんだけど?
「私の知り合いもいるから、巻き込まないように気をつけて」
知り合いもいる、というか、ユージンの部下とはだいたい顔見知りだ。
それでなくとも『ユージンの部下』なのだから、こんなところで何かあったら目覚めが悪い。
「……ミリーがそう言うなら」
む、と不服そうな顔をしながらも頷いたカガリに、いい子ね、と私からも頬をすり寄せた。
そんな私たちのすぐ隣で、おもむろに喉元のマイクへ手をやったユージンが口を開く。
「【ウィッチクラフター】と【ライラプス】が対応を引き継ぐ。現場のアルファからデルタ班は待機位置を現在の地点から更に百メートル後退。観測手、イユンクスの役立たずどもは機材の確認を怠るなよ。……あぁ、本物の魔法使いだ。口ばかり達者な誰かさんとは違ってな」
……おお、怖い怖い。
だからひとまずお前の手柄ということにしておけ、と訳知り顔のユージンが言い添えてくる。
「市民登録、できるの?」
……こんな見てくれでも、中身は正真正銘の魔物なのに?
報奨金云々よりも、むしろそちらの方が、私にとってはよほど気になる情報だ。
「意思疎通が可能なレベルの知能があり、社会に溶け込めるほどの知性を持ち合わせていると認められれば。当面はテイマーないしそれに類するスキルホルダーの後見を必要とするが、オケアノスでは市民登録を認めると、オケアノス憲章の改正案は本社の会議を通ってる。AWOのメンテナンスが終われば正式に発効される予定だ」
「それって……」
ユージンの言っていることが本当だとすれば。
要するに。ヘクセンシュウスの親会社であり、このオケアノスをいずれの国にも属さないフロンティアとして築き上げ、今もなお、国家権力による介入を許すことなく独立を維持しているマレウス・マレフィカルム社は、二つの異なる世界の間に立ちはだかる『壁』が打ち砕かれるこの日と、その後の展開に備え、水面下で着々と準備を進めていた、というわけで。
「……そこまで準備万端調えておいて、こんなところで躓いてるの?」
なんてお粗末な話だろうと、思わず呆れ顔になる私に、ユージンが「まったくだ」と他人事のように答えて寄越す。
「なんにせよ、イユンクスの自称専門家どもが匙を投げた以上、あとはお前があれをどうにかするか、どうにもできずに世界の方がどうにかなるか、だ。責任は本社のお歴々が取るだろうから、せいぜい気楽にやれ」
……世界がどうにかなったら困るから、ひきこもりの廃ゲーマーなのにわざわざこんなところまで出張ってきてるんでしょうが。
「人払いは必要か?」
「別に。これだけ離れてたら大丈夫なんじゃない?」
ねぇ? と尋ねた私に、カガリがにっこりとする。
「そうだね。巻き込んでも僕は気にならないし」
……いや、私は気にするんだけど?
「私の知り合いもいるから、巻き込まないように気をつけて」
知り合いもいる、というか、ユージンの部下とはだいたい顔見知りだ。
それでなくとも『ユージンの部下』なのだから、こんなところで何かあったら目覚めが悪い。
「……ミリーがそう言うなら」
む、と不服そうな顔をしながらも頷いたカガリに、いい子ね、と私からも頬をすり寄せた。
そんな私たちのすぐ隣で、おもむろに喉元のマイクへ手をやったユージンが口を開く。
「【ウィッチクラフター】と【ライラプス】が対応を引き継ぐ。現場のアルファからデルタ班は待機位置を現在の地点から更に百メートル後退。観測手、イユンクスの役立たずどもは機材の確認を怠るなよ。……あぁ、本物の魔法使いだ。口ばかり達者な誰かさんとは違ってな」
……おお、怖い怖い。
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