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EP01「〔魔女獄門〕事変」
SCENE-023
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バターしみしみ、蜂蜜ましましの、見るからに体に悪そうな(ちなみに、見かけ倒しではなくちゃんと美味しかった)ハニートーストを、ぺろりと二枚も平らげて。
長らく一度にカロリーバー一食分しか必要とされてこなかった胃容量をまんまと圧迫された私が、「もう食べられないー……」と情けなくスライムクッションに埋もれる様を、カガリはわかりやすく満足そうに眺めていた。
……三食カロリーバー生活に耐えられる私みたいなメンタル強者は、大人しく三食カロリーバー生活してた方が長生きできると思うんだけど……。
美味しいものを食べて寿命が縮む分にはまぁいいか、と諦めの滲む吐息を漏らして。スライムクッションにぐてっ、ともたれながら、AWOにログインしている時と同じ要領で、インベントリの管理機能を手元に呼び出す。
インベントリ自体は空間へ干渉する魔法なのに、中へ入れた物の一覧を、直近の大型アップデートから電脳領域へ常駐するようになったAWOのユーティリティアプリ経由で確認できるという、ゲームの中なら「できて当然」くらいの感覚なのに、いざ現世でできるようになると、まったく意味のわからない謎技術への興味はさておき。
手持ちの素材と相談しつつ。布やら染料やら、いかにも「これからクラフトをはじめます」といったあれこれを、私がインベントリから取り出しては適当に床へ並べはじめると。キッチンでの洗い物を終わらせたカガリがいそいそとやってきて、私の背後に回ると、よいしょと抱え起こした私の背もたれになるよう、クッションとの間に体を捻じ込んできた。
「何を作るの?」
ちなみに、向こうでもこちらでも、私の視界に映るウィンドウの類はカガリからまったく見えていない。
ただ、カガリにはそういうものがある、ということを随分前に話してあるので。私の視線や指先が、カガリからは何もないように見える場所をうろうろと落ち着きなく彷徨っているのを見ても、カガリは平然としている。
「こっちで使う装備一式」
ウィンドウをたぷたぷ操作していると、たまに私の先回りをするよう手の平を差し出してくるのは、〔擬態〕を覚える前からやっていたような、他愛のない悪戯だ。
「とりあえずまともなローブくらいは用意しないと、アミュレットを持ち歩くのにも不便でしょ」
「向こうのミリーの予備の装備は?」
「バーミリオンの装備は色が私に合わないでしょ。あとデザインも」
つまり、だいたい全部。
バーミリオンはその名の通り髪色を赤く染めているし、目鼻立ちもはっきりしているので、生まれ持った黒髪を伸ばしっぱなしにしている、東洋人顔の私とは似合う服の傾向がまったくと言っていいほど違ってくる。
私は一切の妥協なく自分の好みに沿った服よりも、自分に似合うと思える服の中から好みに合うものを選んで着たいタイプだ。
「んー。ミリーにこだわりがあるのは、なんとなくわかった」
納得はできないけど理解はできた、という風情で頷いたカガリが、インベントリから素材を取り出してはそこらに放り出す、という、知らない人が見れば散らかしているだけだと思われかねない作業の手を止めた私ごと体を起こして、よいしょと立ち上がる。
それから、すぐにまた私が下ろされたスライムクッションは、床に『魔女の大釜』を置いて錬金作業をするのにちょうどいいくらいの高さで、みっちりと中身の詰まった高反発クッションくらいの硬さに固まっていた。
長らく一度にカロリーバー一食分しか必要とされてこなかった胃容量をまんまと圧迫された私が、「もう食べられないー……」と情けなくスライムクッションに埋もれる様を、カガリはわかりやすく満足そうに眺めていた。
……三食カロリーバー生活に耐えられる私みたいなメンタル強者は、大人しく三食カロリーバー生活してた方が長生きできると思うんだけど……。
美味しいものを食べて寿命が縮む分にはまぁいいか、と諦めの滲む吐息を漏らして。スライムクッションにぐてっ、ともたれながら、AWOにログインしている時と同じ要領で、インベントリの管理機能を手元に呼び出す。
インベントリ自体は空間へ干渉する魔法なのに、中へ入れた物の一覧を、直近の大型アップデートから電脳領域へ常駐するようになったAWOのユーティリティアプリ経由で確認できるという、ゲームの中なら「できて当然」くらいの感覚なのに、いざ現世でできるようになると、まったく意味のわからない謎技術への興味はさておき。
手持ちの素材と相談しつつ。布やら染料やら、いかにも「これからクラフトをはじめます」といったあれこれを、私がインベントリから取り出しては適当に床へ並べはじめると。キッチンでの洗い物を終わらせたカガリがいそいそとやってきて、私の背後に回ると、よいしょと抱え起こした私の背もたれになるよう、クッションとの間に体を捻じ込んできた。
「何を作るの?」
ちなみに、向こうでもこちらでも、私の視界に映るウィンドウの類はカガリからまったく見えていない。
ただ、カガリにはそういうものがある、ということを随分前に話してあるので。私の視線や指先が、カガリからは何もないように見える場所をうろうろと落ち着きなく彷徨っているのを見ても、カガリは平然としている。
「こっちで使う装備一式」
ウィンドウをたぷたぷ操作していると、たまに私の先回りをするよう手の平を差し出してくるのは、〔擬態〕を覚える前からやっていたような、他愛のない悪戯だ。
「とりあえずまともなローブくらいは用意しないと、アミュレットを持ち歩くのにも不便でしょ」
「向こうのミリーの予備の装備は?」
「バーミリオンの装備は色が私に合わないでしょ。あとデザインも」
つまり、だいたい全部。
バーミリオンはその名の通り髪色を赤く染めているし、目鼻立ちもはっきりしているので、生まれ持った黒髪を伸ばしっぱなしにしている、東洋人顔の私とは似合う服の傾向がまったくと言っていいほど違ってくる。
私は一切の妥協なく自分の好みに沿った服よりも、自分に似合うと思える服の中から好みに合うものを選んで着たいタイプだ。
「んー。ミリーにこだわりがあるのは、なんとなくわかった」
納得はできないけど理解はできた、という風情で頷いたカガリが、インベントリから素材を取り出してはそこらに放り出す、という、知らない人が見れば散らかしているだけだと思われかねない作業の手を止めた私ごと体を起こして、よいしょと立ち上がる。
それから、すぐにまた私が下ろされたスライムクッションは、床に『魔女の大釜』を置いて錬金作業をするのにちょうどいいくらいの高さで、みっちりと中身の詰まった高反発クッションくらいの硬さに固まっていた。
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