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EP01「〔魔女獄門〕事変」
SCENE-020
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「そういうわけだから、もう何個か分、仕込んでもいい?」
「……いいわけないでしょ」
私の命を守る『保険』のために、カガリがやったことは理解できる。
だからといって素面の私が安心安全の苗床プレイに誘われて、ほいほい応じられるかと言えば、そんなわけもなく。
ちょっと待ってほしいというのが正直なところ。
目が覚めたとき、『痛みに近い違和感』だと思っていたものは、いつの間にか違和感どころではない、『鈍い痛み』に変わっていた。
「今日はもう無理。お腹というか、カガリにこじ開けられたあらぬところが痛い……生理きそう……」
「子宮内膜はアミュレットの養分にしたから、当分来ないよ」
「生々しい話やめて……」
布団ごとお腹を抱えて蹲った私の背中を、カガリが「よしよし」と撫でてくる。
……もっと労ってほしい。
カガリが私に使ったであろう〔托卵〕は、HPを貫通してLPを直接削ってくる――文字通り、命を削って命を生み出す――うえ、産後にはいわゆる『産褥』にあたる衰弱期間も設定されている(大抵のプレイヤーはこの間にまた〔托卵〕されてしまうので、〔托卵〕持ちの魔物に捕まると、LPが尽きるまで魔物を産み続ける破目になる)、わりと厄介なスキルだ。
それでなくとも。普通に考えて、カガリによる仕込みの時間を計算に入れたとして、この数時間のうちに魔物姦からの妊娠、果ては出産までを駆け足に経験している私の体に、少しも負担がかかっていない、なんてことがあるわけもなく。
限りなく土下座に近い体勢のまま、痛みのあまり動けなくなっていると。そんな私を見かねたようにカガリが手を出してきて。よいしょと抱え起こした私のことを、綺麗なまま、どこも汚れていないベッドの上へと横たわらせた。
「うぅっ……」
仰向けだと落ち着かなくて。横向きに寝返りを打ち、お腹を抱え直した私に、布団の中まで手を突っ込んできたカガリが、握り拳より一回りくらい大きくて、ふにふにとした感触の、人肌程度にぬくい『何か』を握らせてくる。
「なにこれ……」
「生理の時は温めると楽になるって言ってなかった?」
「言ったけど……」
薄々そんな気はしていたけど。一応布団の中を覗き込んで確かめた『ぬくくて柔いもの』の正体は、案の定、カガリから〔分裂〕したアンバースライムの一塊だった。
……温スライム……。
ちなみに夏場は冷やしスライムもやってくれる。カガリは何かと便利な使い魔だ。
「痛み止めもいる? ナカを触らせてくれるなら、よく効くのを直接入れてあげるけど」
「それって〔托卵〕する苗床に食らわせるやつでしょ……騙されないわよ……」
「痛くなくなるのは本当なのに」
騙そうとなんてしてないよ、と詭弁を吐いたカガリが、そうは見えないほどゆっくりと、布団の中でもぞもぞのたうち回っていた私に覆い被さってくる。
「ミリー、あーん」
その手には、いつの間にか幻世で見慣れた水薬の小瓶が握られていて。
「あー……」
劣化防止に魔法で封のされている瓶を片手でパキッ、と開けて。その中身を自分の口に含んだカガリがおもむろに口づけてくるのを、いちいち抵抗するの面倒で、私はされるがままに受け入れた。
ハニースライムからアンバースライムに進化しているカガリは、ハニースライムだった頃の名残で、魔力が続く限りはいくらでも、『ハニースライムハニー』や『ハニースライムゼリー』といった『ハニースライムのドロップ素材』を生み出すことができるから。
……あまい……。
本来は苦くて飲めたものではない薬を、カガリなら飲みやすくしてくれるだろうという打算が、私の中に少しもなかったといえば嘘になる。
とろりと流し込まれた薬を飲み干すと。さすが、【魔女術師】お手製の魔法薬なだけあって、お腹の鈍い痛みはたちどころに引いていき、その代わり、副作用であっという間に眠くなってくる。
「……痛くなくなったら、もう少し頑張ろうね。ミリー」
とてつもなく不穏な、カガリの声を聞いたような気もしたけど。
すぐ効きよく効く薬の、効果が強いだけあって、とてもじゃないけど抗えるようなものではない、強い眠気に、私の意識は呑まれて落ちた。
「……いいわけないでしょ」
私の命を守る『保険』のために、カガリがやったことは理解できる。
だからといって素面の私が安心安全の苗床プレイに誘われて、ほいほい応じられるかと言えば、そんなわけもなく。
ちょっと待ってほしいというのが正直なところ。
目が覚めたとき、『痛みに近い違和感』だと思っていたものは、いつの間にか違和感どころではない、『鈍い痛み』に変わっていた。
「今日はもう無理。お腹というか、カガリにこじ開けられたあらぬところが痛い……生理きそう……」
「子宮内膜はアミュレットの養分にしたから、当分来ないよ」
「生々しい話やめて……」
布団ごとお腹を抱えて蹲った私の背中を、カガリが「よしよし」と撫でてくる。
……もっと労ってほしい。
カガリが私に使ったであろう〔托卵〕は、HPを貫通してLPを直接削ってくる――文字通り、命を削って命を生み出す――うえ、産後にはいわゆる『産褥』にあたる衰弱期間も設定されている(大抵のプレイヤーはこの間にまた〔托卵〕されてしまうので、〔托卵〕持ちの魔物に捕まると、LPが尽きるまで魔物を産み続ける破目になる)、わりと厄介なスキルだ。
それでなくとも。普通に考えて、カガリによる仕込みの時間を計算に入れたとして、この数時間のうちに魔物姦からの妊娠、果ては出産までを駆け足に経験している私の体に、少しも負担がかかっていない、なんてことがあるわけもなく。
限りなく土下座に近い体勢のまま、痛みのあまり動けなくなっていると。そんな私を見かねたようにカガリが手を出してきて。よいしょと抱え起こした私のことを、綺麗なまま、どこも汚れていないベッドの上へと横たわらせた。
「うぅっ……」
仰向けだと落ち着かなくて。横向きに寝返りを打ち、お腹を抱え直した私に、布団の中まで手を突っ込んできたカガリが、握り拳より一回りくらい大きくて、ふにふにとした感触の、人肌程度にぬくい『何か』を握らせてくる。
「なにこれ……」
「生理の時は温めると楽になるって言ってなかった?」
「言ったけど……」
薄々そんな気はしていたけど。一応布団の中を覗き込んで確かめた『ぬくくて柔いもの』の正体は、案の定、カガリから〔分裂〕したアンバースライムの一塊だった。
……温スライム……。
ちなみに夏場は冷やしスライムもやってくれる。カガリは何かと便利な使い魔だ。
「痛み止めもいる? ナカを触らせてくれるなら、よく効くのを直接入れてあげるけど」
「それって〔托卵〕する苗床に食らわせるやつでしょ……騙されないわよ……」
「痛くなくなるのは本当なのに」
騙そうとなんてしてないよ、と詭弁を吐いたカガリが、そうは見えないほどゆっくりと、布団の中でもぞもぞのたうち回っていた私に覆い被さってくる。
「ミリー、あーん」
その手には、いつの間にか幻世で見慣れた水薬の小瓶が握られていて。
「あー……」
劣化防止に魔法で封のされている瓶を片手でパキッ、と開けて。その中身を自分の口に含んだカガリがおもむろに口づけてくるのを、いちいち抵抗するの面倒で、私はされるがままに受け入れた。
ハニースライムからアンバースライムに進化しているカガリは、ハニースライムだった頃の名残で、魔力が続く限りはいくらでも、『ハニースライムハニー』や『ハニースライムゼリー』といった『ハニースライムのドロップ素材』を生み出すことができるから。
……あまい……。
本来は苦くて飲めたものではない薬を、カガリなら飲みやすくしてくれるだろうという打算が、私の中に少しもなかったといえば嘘になる。
とろりと流し込まれた薬を飲み干すと。さすが、【魔女術師】お手製の魔法薬なだけあって、お腹の鈍い痛みはたちどころに引いていき、その代わり、副作用であっという間に眠くなってくる。
「……痛くなくなったら、もう少し頑張ろうね。ミリー」
とてつもなく不穏な、カガリの声を聞いたような気もしたけど。
すぐ効きよく効く薬の、効果が強いだけあって、とてもじゃないけど抗えるようなものではない、強い眠気に、私の意識は呑まれて落ちた。
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