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EP01「〔魔女獄門〕事変」
SCENE-019
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ボトルに半分ほど残っていた水を飲み干して。人心地ついた私が、特に眠くもないことだし、ベッドから抜け出そうとすると。
「あ……」
体へ力を入れた拍子に、こぽりと溢れたものが足を濡らした。
「あぁ、出てきちゃったね」
生理の日に大量出血した時のそれに似た不快な感覚に、そうではないとわかっていても、私が思わず動きを止めると。何を言われずとも状況を理解したらしいカガリが煮詰めた砂糖のように甘い声を出し、布団の中へと腕を突っ込んで来る。
「最後までしたの? 私、酔ってたのに……」
私のナカで温められたぬるい蜜液を塗り広げるよう、カガリの手の平が、私の足の内側の、膝近くから際どいところにかけてを撫で回した。
ぞわぞわと何かが迫り上がってくる感覚に、体が震える。
最中やそこへ至るまでのやりとりを私が何も覚えていないこととか、どう考えても同意の上ではなかった(当時の私が何を口走り、カガリに対してどんなふうに振る舞っていたとしても、酔っ払いに責任能力なんてものはない)こととか。色々と不本意ではあるけれど。結局のところ、相手がカガリならまぁいいか……と、私があっさり許してしまうような女だから。
それをわかったように、カガリは悪びれる様子もなく、布団やシーツを汚したくなくて動くに動けなくなっていた私を、そんなことはお構いなしに自分の膝の上へと抱き寄せた。
「ミリーの言う最後までって、どこまで? エルフに〔擬態〕した、この体の性器をミリーのナカに挿れて処女じゃなくしたかってこと?」
そういう意味での最後まではしてないよ、なんて。なんの言い訳にもならないことを口にしながら、カガリは私の胸元へと顔を埋めてくる。
「じゃあ何したの……」
「んー?」
その間にも、私のナカからこぽり、こぽりと溢れてくるものがある。
「酔っ払ったミリーはご機嫌で、僕が何をしても気持ちよさそうにしてたよ。それがあんまり可愛くて……僕も蕩けちゃった」
まるで無邪気に笑うカガリの言わんとすることを、私が理解するまでに、しばらく時間がかかった。
……まさか……。
私のナカから、そもそも何が出てきているのか、という話だ。
カガリの手で足の内側にべったりと塗り広げられた蜜液――カガリがいわゆる『精液』を出したことはないから、今回も、ハニースライムだった頃の名残で生成できる『ハニースライムハニー』とか、『ハニースライムゼリー』とか、その類の『何か』だと思っていたもの――が、カガリにいやらしく撫で回されて、気持ち敏感になっていた肌の上をぞろっ、と這い出す。
「うわ……」
それはそれで覚えのある感触に、私の意思とは関係なく背筋が粟立ち、体が震えた。
……スライムだ。
カガリ一人の力で生成された、スキルによって魔力を変換した『何か』でも、分裂体でもない。私という女の子宮の中で育まれた一つの生命。
「処女のまま苗床プレイとか、さすがにマニアックすぎるでしょ……」
我ながらとち狂っているとは思うけど。すっかり記憶が飛んでいる間に、見目麗しいエルフの皮を被った魔物から、処女を奪われるどころか子胤を植え付けられていたことを知って。私が最初に感じたのは、あろうことに、仄暗い悦びだった。
「プレイというか、実際にミリーのナカで繁殖してるわけだから、苗床そのものだよね」
生まれたての、まだろくに形を留めることもできないでいる我が子を掻き集め、手の平に乗せて。カガリがぎゅっ、と両手を重ね合せると。その手が再び開かれたとき、その手の上で、不定形の粘液にしか見えなかった子スライムは、大粒の琥珀に姿を変えていた。
インクルージョンだ。
外側の琥珀はカガリの魔力で形作られたもので。生まれたばかりの子スライムは、天然モノの琥珀が稀に内包している液体や虫のよう、その内側に閉じ込められている。
そうして、もう二度と出されることはない。
「……道理で、奥の方をしつこく小突き回された後みたいな感じがすると思った」
子宮口をこじ開けた挙句、子宮内腔まで侵されていたのだとわかれば、痛みに近い違和感がしぶとく残っていることにも不思議はなかった。
「慣れないうちは向こうのミリーも痛がってから、時間をかけて慣らしてあげたい気持ちもあったんだけど……我慢できなくて」
私の体に物理的な負担をかけたことについては「ごめんね」と、ようやく申し訳なさそうな顔をして見せて。
どこからか引っ張り出してきた革紐を手元の琥珀にくくりつけたカガリが、出来上がった即席のペンダントを、私の首へとかけてくる。
『身代わりのアミュレット』の完成だ。
「これで『死眼』の類と出会しても大丈夫。一番怖いのは不意打ちで、それさえ防げばあとは僕がなんとかするからね」
「即死攻撃持ちなんて滅多にいないし、私の抵抗力を上回ってくるようなのは、それこそダンジョンの最深層にいるかもしれない、ってレベルなのに。心配性なんだから」
「レベル差があってもラックとか、デックス如何によっては致命の一撃になるかもしれないのに。ミリーが楽観的すぎるんだよ」
作り方が作り方だけに、どんな類の即死攻撃も一度は必ず防いでくれる使い捨てのアミュレットは、AWOのシステム上アイテムとは認識されなくて。インベントリにしまうこともできないから、同じ『琥珀』の名を冠するユニークモンスター――アンバースライム――のカガリを差し置いて、私が【珀牢主】の二つ名をもらうほど、琥珀製のアミュレットやアクセサリーをこれでもかと縫い込んだり、飾り付けたりしている幻世でのメイン装備を、私は現世へと持ち込むことができていない。
そのことを、カガリなりに慮った結果がこれなのだとすると。最初からそんなつもりもなかったわけだけど。余計に、カガリのことを咎める気にはならなかった。
「あ……」
体へ力を入れた拍子に、こぽりと溢れたものが足を濡らした。
「あぁ、出てきちゃったね」
生理の日に大量出血した時のそれに似た不快な感覚に、そうではないとわかっていても、私が思わず動きを止めると。何を言われずとも状況を理解したらしいカガリが煮詰めた砂糖のように甘い声を出し、布団の中へと腕を突っ込んで来る。
「最後までしたの? 私、酔ってたのに……」
私のナカで温められたぬるい蜜液を塗り広げるよう、カガリの手の平が、私の足の内側の、膝近くから際どいところにかけてを撫で回した。
ぞわぞわと何かが迫り上がってくる感覚に、体が震える。
最中やそこへ至るまでのやりとりを私が何も覚えていないこととか、どう考えても同意の上ではなかった(当時の私が何を口走り、カガリに対してどんなふうに振る舞っていたとしても、酔っ払いに責任能力なんてものはない)こととか。色々と不本意ではあるけれど。結局のところ、相手がカガリならまぁいいか……と、私があっさり許してしまうような女だから。
それをわかったように、カガリは悪びれる様子もなく、布団やシーツを汚したくなくて動くに動けなくなっていた私を、そんなことはお構いなしに自分の膝の上へと抱き寄せた。
「ミリーの言う最後までって、どこまで? エルフに〔擬態〕した、この体の性器をミリーのナカに挿れて処女じゃなくしたかってこと?」
そういう意味での最後まではしてないよ、なんて。なんの言い訳にもならないことを口にしながら、カガリは私の胸元へと顔を埋めてくる。
「じゃあ何したの……」
「んー?」
その間にも、私のナカからこぽり、こぽりと溢れてくるものがある。
「酔っ払ったミリーはご機嫌で、僕が何をしても気持ちよさそうにしてたよ。それがあんまり可愛くて……僕も蕩けちゃった」
まるで無邪気に笑うカガリの言わんとすることを、私が理解するまでに、しばらく時間がかかった。
……まさか……。
私のナカから、そもそも何が出てきているのか、という話だ。
カガリの手で足の内側にべったりと塗り広げられた蜜液――カガリがいわゆる『精液』を出したことはないから、今回も、ハニースライムだった頃の名残で生成できる『ハニースライムハニー』とか、『ハニースライムゼリー』とか、その類の『何か』だと思っていたもの――が、カガリにいやらしく撫で回されて、気持ち敏感になっていた肌の上をぞろっ、と這い出す。
「うわ……」
それはそれで覚えのある感触に、私の意思とは関係なく背筋が粟立ち、体が震えた。
……スライムだ。
カガリ一人の力で生成された、スキルによって魔力を変換した『何か』でも、分裂体でもない。私という女の子宮の中で育まれた一つの生命。
「処女のまま苗床プレイとか、さすがにマニアックすぎるでしょ……」
我ながらとち狂っているとは思うけど。すっかり記憶が飛んでいる間に、見目麗しいエルフの皮を被った魔物から、処女を奪われるどころか子胤を植え付けられていたことを知って。私が最初に感じたのは、あろうことに、仄暗い悦びだった。
「プレイというか、実際にミリーのナカで繁殖してるわけだから、苗床そのものだよね」
生まれたての、まだろくに形を留めることもできないでいる我が子を掻き集め、手の平に乗せて。カガリがぎゅっ、と両手を重ね合せると。その手が再び開かれたとき、その手の上で、不定形の粘液にしか見えなかった子スライムは、大粒の琥珀に姿を変えていた。
インクルージョンだ。
外側の琥珀はカガリの魔力で形作られたもので。生まれたばかりの子スライムは、天然モノの琥珀が稀に内包している液体や虫のよう、その内側に閉じ込められている。
そうして、もう二度と出されることはない。
「……道理で、奥の方をしつこく小突き回された後みたいな感じがすると思った」
子宮口をこじ開けた挙句、子宮内腔まで侵されていたのだとわかれば、痛みに近い違和感がしぶとく残っていることにも不思議はなかった。
「慣れないうちは向こうのミリーも痛がってから、時間をかけて慣らしてあげたい気持ちもあったんだけど……我慢できなくて」
私の体に物理的な負担をかけたことについては「ごめんね」と、ようやく申し訳なさそうな顔をして見せて。
どこからか引っ張り出してきた革紐を手元の琥珀にくくりつけたカガリが、出来上がった即席のペンダントを、私の首へとかけてくる。
『身代わりのアミュレット』の完成だ。
「これで『死眼』の類と出会しても大丈夫。一番怖いのは不意打ちで、それさえ防げばあとは僕がなんとかするからね」
「即死攻撃持ちなんて滅多にいないし、私の抵抗力を上回ってくるようなのは、それこそダンジョンの最深層にいるかもしれない、ってレベルなのに。心配性なんだから」
「レベル差があってもラックとか、デックス如何によっては致命の一撃になるかもしれないのに。ミリーが楽観的すぎるんだよ」
作り方が作り方だけに、どんな類の即死攻撃も一度は必ず防いでくれる使い捨てのアミュレットは、AWOのシステム上アイテムとは認識されなくて。インベントリにしまうこともできないから、同じ『琥珀』の名を冠するユニークモンスター――アンバースライム――のカガリを差し置いて、私が【珀牢主】の二つ名をもらうほど、琥珀製のアミュレットやアクセサリーをこれでもかと縫い込んだり、飾り付けたりしている幻世でのメイン装備を、私は現世へと持ち込むことができていない。
そのことを、カガリなりに慮った結果がこれなのだとすると。最初からそんなつもりもなかったわけだけど。余計に、カガリのことを咎める気にはならなかった。
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